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消防設備士の甲種と乙種の違い|どっちを受けるべき?

結論:甲種は「工事」ができる、乙種は「整備・点検」まで

消防設備士の甲種と乙種の違いを一言でいうと、「工事ができるかどうか」です。

  • 甲種 ―― 消防用設備等の工事・整備・点検のすべてができる
  • 乙種 ―― 消防用設備等の整備・点検のみ(工事はできない)

ここでいう「工事」とは、消防用設備等を新しく設置したり、大規模に改修したりする作業のことです。「整備」は既存設備の部品交換や修理、「点検」は定期的に動作確認を行う作業を指します。

つまり、設備を「つくる」なら甲種、設備を「診る・直す」なら乙種で十分ということですね。

では、具体的に何がどう違うのか、順番に見ていきましょう。

甲種と乙種の違い一覧

比較項目 甲種 乙種
できる業務 工事・整備・点検 整備・点検のみ
受験資格 あり(学歴・資格・実務経験のいずれか) なし(誰でも受験可)
筆記問題数 45問 30問
実技試験 鑑別+製図 鑑別のみ
試験時間 3時間15分 1時間45分
対象の類 1類〜5類(特類もあり) 1類〜7類

ポイントは3つです。

1つ目は「受験資格」。乙種は年齢・学歴を問わず誰でも受験できます。一方、甲種には受験資格が必要です(詳しくは後述します)。

2つ目は「製図試験の有無」。甲種には実技試験に「製図」が加わります。これが甲種の難易度を上げている最大の要因です。

3つ目は「対象の類」。6類(消火器)と7類(漏電火災警報器)には甲種がありません。乙種のみです。

類ごとの甲種・乙種の対応表

消防設備士の免状は、扱える設備の種類(「類」)によって分かれています。各類で甲種・乙種のどちらがあるかを整理しましょう。

対象設備 甲種/乙種
1類 屋内消火栓・スプリンクラー等 甲種・乙種
2類 泡消火設備 甲種・乙種
3類 不活性ガス・ハロゲン化物・粉末消火設備 甲種・乙種
4類 自動火災報知設備・ガス漏れ警報設備等 甲種・乙種
5類 避難器具(避難はしご・緩降機等) 甲種・乙種
6類 消火器 乙種のみ
7類 漏電火災警報器 乙種のみ

6類と7類に甲種がない理由は、これらの設備の工事に「消防設備士の独占業務」がないためです。消火器の設置は特別な配線や配管を必要としませんし、漏電火災警報器の工事は電気工事士の資格で行えます。

なお、甲種には「特類」もあります。特類は特殊消防用設備等(従来の消防用設備等に代わる特殊な設備)を対象にした上位資格で、甲種1〜3類のいずれかを持っていることが受験資格の一つになります。

試験内容の違い

甲種と乙種では、試験の出題範囲と問題数が異なります。

筆記試験の違い

科目 甲種 乙種
消防関係法令(共通) 8問 6問
消防関係法令(類別) 7問 4問
基礎的知識 10問 5問
構造・機能・整備 20問 15問
合計 45問 30問

筆記試験の出題内容自体は甲種も乙種も同じ分野です。甲種のほうが問題数が多い分、幅広い知識が求められます。

合格基準はどちらも同じで、筆記は各科目40%以上かつ全体60%以上、実技は60%以上です。

実技試験の違い

ここが甲種と乙種の最大の違いです。

実技科目 甲種 乙種
鑑別等試験(5問) あり あり
製図試験(2問) あり なし

鑑別試験は、写真やイラストを見て設備の名称・用途・操作方法などを記述する試験です。これは甲種・乙種ともに出題されます。

製図試験は、平面図上に感知器や配管を配置したり、系統図を完成させたりする試験です。設備の設置基準を正確に理解していないと解けない問題で、甲種の合否を分ける最大のポイントになります。

「実技試験」という名前ですが、実際に設備を操作するわけではなく、筆記試験と同じ日に紙の上で行います。

受験資格の違い

乙種:受験資格なし

乙種は年齢・学歴・実務経験を問わず、誰でも受験できます。消防設備士に興味があれば、いきなり受験してOKです。

甲種:受験資格が必要

甲種を受験するには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

【学歴による受験資格】

  • 大学・短大・高専で機械、電気、工業化学、建築学などの学科を修了
  • 上記の学科で15単位以上を修得

【資格による受験資格】

  • 乙種消防設備士の免状を取得し、2年以上の実務経験がある
  • 電気工事士(第1種・第2種)の免状を持っている
  • 技術士の登録を受けている
  • 電気主任技術者(第1種〜第3種)の免状を持っている
  • 1級または2級の建築士免許を持っている
  • 配管技能士・管工事施工管理技士などの関連資格を持っている

【実務経験による受験資格】

  • 消防用設備等の工事の補助として5年以上の実務経験
  • 消防行政に関する事務のうち消防用設備等に関する事務について1年以上の経験

最も多いパターンは、「乙種を先に取って実務経験2年」「電気工事士の免状で直接甲種を受験」のどちらかです。

特に電気工事士(第2種でOK)を持っていれば、すべての類の甲種に受験資格があります。消防設備士を本格的に目指す方には、電気工事士を先に取得するルートがおすすめです。

難易度の違い

一般的に、甲種のほうが乙種より難しいとされています。理由は主に2つです。

1. 製図試験がある

乙種にはない製図試験が、甲種の合格率を下げる最大の要因です。製図は設置基準の暗記だけでなく、図面上で正しく計算・配置する応用力が求められます。

2. 問題数が多い

筆記45問(乙種30問)+実技7問(乙種5問)と、全体のボリュームが大きくなります。各科目40%以上の足切りラインがあるため、苦手科目を作れません。

ただし、筆記試験の内容は甲種も乙種も同じ分野をカバーしているため、「筆記だけなら大差ない」というのが実態です。乙種で合格できる実力があれば、製図対策を上乗せするだけで甲種に挑戦できます。

どっちを受けるべき?

まず乙種から受けるのがおすすめなケース

  • 消防設備の勉強が初めてで、まずは基礎を固めたい
  • 甲種の受験資格がまだない
  • 点検・整備の仕事に従事したい(工事は行わない)
  • ビルメンテナンス業界で資格手当がほしい

最初から甲種を受けるのがおすすめなケース

  • 電気工事士など、甲種の受験資格をすでに持っている
  • 消防設備の工事(施工)に携わりたい
  • 防災会社・消防設備会社で働いている(または目指している)
  • 将来的に独立・開業を考えている

迷ったときの判断基準

受験資格があるなら、甲種を受けましょう。

理由はシンプルです。甲種は乙種の上位互換で、甲種を持っていれば乙種のできる業務(整備・点検)もすべてカバーできます。同じ類を乙種→甲種と2回受けるより、最初から甲種を1回で取ったほうが効率的です。

ただし、受験資格がない場合は乙種しか選べませんので、まずは乙種を取得し、実務経験を積みながら甲種へのステップアップを目指すのが現実的なルートです。

消防設備士はどれから受ける?おすすめの受験順序を目的別に解説」の記事では、どの類から受けるべきかを目的別に紹介していますので、あわせて参考にしてみてください。

よくある疑問

Q. 甲種を持っていれば、同じ類の乙種は不要?

はい、不要です。甲種の免状があれば、その類の工事・整備・点検のすべてができます。乙種を別途取得する必要はありません。

Q. 乙種を取ってから甲種を受けると、何か免除はある?

残念ながら、同じ類の乙種→甲種で科目免除はありません。ただし、「乙種の免状+2年の実務経験」で甲種の受験資格が得られるという意味では、乙種が甲種へのステップになります。

他の類の免状や電気工事士による科目免除については、「消防設備士の科目免除とは?電気工事士・他の類の免状で試験を有利に」をご覧ください。

Q. 6類・7類は乙種しかないのに、甲種の受験資格に使える?

はい、使えます。たとえば乙種6類の免状を取得し、2年以上の実務経験を積めば、甲種1類〜5類のどの類でも受験資格を満たします。

まとめ

ポイント 甲種 乙種
業務範囲 工事+整備+点検 整備+点検
受験のハードル 受験資格+製図対策が必要 誰でもすぐ受験可
こんな人向き 施工・独立志向 点検メイン・入門

甲種は乙種の上位互換です。受験資格があるなら甲種を受けたほうが二度手間になりません。受験資格がなければ、まず乙種を取得して経験を積み、甲種にステップアップしていきましょう。

理解度チェック

問題1 消防設備士の甲種と乙種の違いとして、正しいものはどれか。

(1)甲種は消防用設備等の工事・整備・点検ができるが、乙種は点検のみできる。
(2)甲種は消防用設備等の工事・整備・点検ができるが、乙種は整備・点検のみできる。
(3)甲種も乙種も消防用設備等の工事・整備・点検ができるが、甲種は大規模施設のみ対応できる。
(4)甲種は1類〜7類すべてに対応し、乙種は6類・7類のみに対応する。

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正解:(2)
甲種は工事・整備・点検のすべて、乙種は整備・点検ができます。(1)は「乙種は点検のみ」としている点が誤りです。乙種でも整備(部品交換や修理など)は行えます。

問題2 消防設備士の甲種を受験するために必要な条件として、正しいものはどれか。

(1)乙種消防設備士の免状があれば、実務経験なしで甲種を受験できる。
(2)甲種には受験資格が不要で、乙種と同じく誰でも受験できる。
(3)電気工事士の免状を持っていれば、甲種の受験資格を満たす。
(4)甲種を受験するには、消防署での勤務経験が必須である。

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正解:(3)
電気工事士(第1種・第2種いずれでも可)の免状があれば、甲種の受験資格を満たします。(1)は誤りで、乙種の免状だけでは不十分で、2年以上の実務経験が必要です。(2)は誤りで、甲種には受験資格が必要です。(4)も誤りで、消防署勤務は必須ではありません。

問題3 甲種消防設備士の試験に関する記述として、誤っているものはどれか。

(1)甲種の実技試験には、乙種にはない「製図」が含まれる。
(2)甲種の筆記試験は45問、乙種の筆記試験は30問である。
(3)合格基準は甲種・乙種ともに同じで、筆記は各科目40%以上かつ全体60%以上である。
(4)6類(消火器)には甲種があり、消火器の設置工事を行うには甲種6類の免状が必要である。

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正解:(4)
6類(消火器)には甲種はなく、乙種のみです。消火器の設置は特別な配線・配管工事を必要としないため、消防設備士の独占業務としての「工事」に該当しません。(1)(2)(3)はいずれも正しい記述です。

問題4【応用】 消防設備士の甲種と乙種のどちらを受験すべきか判断する場面を考える。次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

(1)消防設備の点検業務だけに従事する場合でも、甲種のほうが業務範囲が広いので、必ず甲種を取得すべきである。
(2)電気工事士の免状を持っている人が消防設備士4類を取得したい場合、まず乙種4類を取得してから甲種4類を受験するのが最も効率的である。
(3)乙種6類の免状を取得して2年以上の実務経験を積めば、甲種4類の受験資格を得ることができる。
(4)甲種の製図試験は実際に設備を工事する試験であるため、現場経験がなければ合格は不可能である。

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正解:(3)
乙種の免状(何類でもOK)を取得し、2年以上の実務経験を積めば、甲種1類〜5類のいずれの類でも受験資格を満たします。(1)は「必ず甲種を取得すべき」が不適切です。受験資格の取得にかかる時間やコストも考慮すべきで、点検のみの業務なら乙種で十分な場合もあります。(2)は、電気工事士の免状があればいきなり甲種4類を受験できるため、わざわざ乙種を経由する必要はありません。(4)は、製図試験は紙の上で図面を描く試験であり、現場経験がなくても学習すれば合格できます。

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