消防設備士は、設備の種類ごとに業務範囲が決まる国家資格
消防設備士は、消防用設備等または特殊消防用設備等の工事、整備、点検に関わる国家資格です。消防設備士免状には甲種と乙種があり、さらに担当できる設備が特類・第1類から第7類に分かれています。
大切なのは、「消防設備士」という一つの免状ですべての設備を扱えるわけではないことです。甲種・乙種の別と、免状に指定された類によって業務範囲が決まります。
最初に押さえる5点
- 甲種は、指定された類の工事・整備・点検ができる
- 乙種は、指定された類の整備・点検ができる
- 乙種試験は誰でも受験でき、甲種試験には受験資格がある
- 試験日程と申請期間は都道府県ごとに確認する
- 合格後は免状交付申請を行い、交付後は写真書換えと法定講習を別々に管理する
仕事内容、働き方、収入を調べたい方は消防設備士の仕事内容・働き方、この記事では資格制度と受験から免状交付後までの全体像を確認してください。
甲種と乙種の違い
| 項目 | 甲種 | 乙種 |
|---|---|---|
| 業務範囲 | 免状に指定された種類の工事・整備・点検 | 免状に指定された種類の整備・点検 |
| 種類 | 特類、第1類~第5類 | 第1類~第7類 |
| 受験資格 | あり。特類と第1~5類でも条件が異なる | なし。年齢・学歴・実務経験を問わず受験可能 |
| 試験手数料 | 6,600円 | 4,400円 |
乙種には工事の業務範囲がありません。たとえば乙種第7類は漏電火災警報器の整備・点検に対応しますが、工事まで行える区分という意味ではありません。
甲種・乙種の比較を詳しく確認したい場合は、消防設備士の甲種と乙種の違いを参照してください。
免状は甲種6種類・乙種7種類
試験・免状の組合せは、甲種6種類と乙種7種類です。設備の区分は次のように整理されています。
| 類 | 甲種 | 乙種 | 工事整備対象設備等 |
|---|---|---|---|
| 特類 | ○ | ― | 特殊消防用設備等 |
| 第1類 | ○ | ○ | 屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、屋外消火栓設備、パッケージ型消火設備等 |
| 第2類 | ○ | ○ | 泡消火設備、特定駐車場用泡消火設備、パッケージ型消火設備等 |
| 第3類 | ○ | ○ | 不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、パッケージ型消火設備等 |
| 第4類 | ○ | ○ | 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備等 |
| 第5類 | ○ | ○ | 金属製避難はしご、救助袋、緩降機 |
| 第6類 | ― | ○ | 消火器 |
| 第7類 | ― | ○ | 漏電火災警報器 |
特類は、従来の消防用設備等の単なる総称ではありません。総務大臣が同等以上の性能があると認定した特殊消防用設備等に対応する区分です。また、第1類から第3類に同じパッケージ型設備が含まれる場合があるため、設備名だけで自己判断せず、公式試験案内の区分を確認します。
各類の特徴は消防設備士の種類・類別一覧でも確認できます。
どの類を受けるかは、目的から決める
すべての人に共通する「最初に取るべき類」や難易度順位はありません。次の順番で選ぶと、受験後の用途と試験区分がずれにくくなります。
- 担当したい設備を確認する
現在の仕事、就職先の募集要項、学校で学んでいる分野から、対象設備を特定します。 - 工事を担当するか確認する
工事を資格者として担当するなら対応する甲種、整備・点検なら甲種または乙種を検討します。 - 甲種の受験資格を確認する
条件を満たさない場合は、受験できる乙種や別の受験資格ルートを確認します。 - 試験科目と免除条件を確認する
既得免状や電気工事士等による科目免除は、申請する試験の公式一覧表で確認します。 - 勤務先の資格制度を確認する
対象類、受験費用、免状申請、講習、資格手当の支給条件を確認します。
たとえば、消火器の整備・点検を担当する目的なら乙種第6類、自動火災報知設備の工事まで担当する目的なら甲種第4類が候補です。ただし、人気や合格率だけで決めず、実際の担当設備から選びます。
受験資格
乙種は誰でも受験できる
乙種消防設備士試験に受験資格の制限はありません。年齢、学歴、実務経験を問わず受験できます。
甲種第1類~第5類は複数の受験資格がある
甲種第1類から第5類には、国家資格等によるものと学歴によるものなど、複数の受験資格があります。代表例は次のとおりです。
- 受験する類以外の甲種消防設備士免状を持つ人
- 乙種消防設備士免状の交付後、2年以上、所定の工事整備対象設備等の整備経験がある人
- 電気工事士、電気主任技術者、技術士など、公式案内に指定された資格を持つ人
- 指定された機械、電気、工業化学、土木、建築の学科・課程を修めた人
- 受験する類に係る消防用設備等の工事補助を5年以上経験した人
乙種免状を使う実務経験ルートは、「同一類の乙種を持って2年経過すれば自動的に受験できる」という制度ではありません。公式案内では、乙種免状の交付を受けた後2年以上の工事整備対象設備等の整備経験が条件です。免状を持っている期間だけでなく、経験の内容と証明を確認してください。
甲種特類は指定された3種類以上の甲種免状が必要
甲種特類を受験するには、次の3種類以上の免状交付を受けている必要があります。
- 甲種第1類・第2類・第3類のうち、いずれか一つ
- 甲種第4類
- 甲種第5類
受験資格は細かな条件や必要書類があります。申請前に消防設備士の受験資格と、消防試験研究センターの最新案内を確認してください。
試験科目・問題数・試験時間
| 試験 | 筆記 | 実技 | 試験時間 |
|---|---|---|---|
| 甲種特類 | 45問 | なし | 2時間45分 |
| 甲種第1類~第5類 | 45問 | 鑑別等5問・製図2問 | 3時間15分 |
| 乙種第1類~第7類 | 30問 | 鑑別等5問 | 1時間45分 |
筆記はマーク・カードを使う四肢択一式です。実技は実際の機器を操作する試験ではなく、写真、イラスト、図面等を使った記述式です。甲種特類には実技試験がありません。
一部免除を申請した場合は、免除される問題数に応じて試験時間が短縮されます。実技試験の形式は消防設備士の実技試験で整理しています。
合格基準は筆記と実技で分けて確認する
甲種特類以外の合格基準は、次の両方を満たすことです。
- 筆記試験:各科目40%以上、かつ、筆記全体で60%以上
- 実技試験:実技全体で60%以上
甲種の鑑別等と製図に、それぞれ独立して60%という基準が示されているわけではありません。実技試験全体で判定されます。
甲種特類は、筆記の各科目40%以上かつ全体60%以上が合格基準です。科目免除を受けた場合は、免除された問題を除いて判定されます。
科目免除は申請制
すでに消防設備士免状を持つ人、電気工事士、電気主任技術者、技術士等は、受験する種類と保有資格の組合せにより、試験科目の一部免除を申請できる場合があります。
免除範囲は「資格を一つ持っていれば全類で同じ」ではありません。甲種・乙種、受験する類、保有免状・資格によって、免除される科目、問題数、実技、試験時間が変わります。甲種特類には科目免除がありません。
申請方法と具体的な問題数は、消防設備士試験の科目免除と、消防試験研究センターの甲種・乙種一覧表を照合してください。
申込みから免状交付までの流れ
- 受験する類を決める
担当したい設備、工事の有無、受験資格から試験種類を選びます。 - 受験地の試験日程を確認する
消防試験研究センターの各支部ページで、試験日、受付期間、会場、実施する試験種類を確認します。 - 受験資格と免除の証明書類を準備する
甲種受験資格や科目免除を申請する場合は、指定された書類と提出方法を確認します。 - 電子申請または書面申請を行う
試験手数料は甲種6,600円、乙種4,400円です。払込方法や別途必要な払込手数料は申請方法で確認します。 - 受験票を確認する
写真、集合時刻、会場、持ち物、使用できない物を、受験地の案内に従って準備します。 - 受験して結果を確認する
合格者番号は公式サイトでも公示され、受験者には結果通知が送られます。 - 免状交付を申請する
合格後、申請先都道府県の案内に従い、申請書類、手数料、返送用封筒等を準備します。
試験の実施回数や受付期間は都道府県、試験種類、年度によって異なります。「全国一律で年に何回」と決めつけず、受験地の最新日程を確認してください。電子申請は消防設備士試験の電子申請、当日の準備は消防設備士試験当日の確認事項で説明しています。
勉強は公式情報を基準に組み立てる
必要な学習期間は、受験する類、甲種・乙種、関連知識、科目免除、使える時間によって変わります。固定の勉強時間を達成することより、試験範囲ごとの理解状態を確認する方が確実です。
- 公式の試験科目・問題数・免除後の範囲を確認する
- 公式の公開問題を解き、法令・基礎知識・構造機能・実技に弱点を分ける
- 教材で根拠を確認し、選択肢ごとに誤りの理由を説明する
- 実技は名称だけでなく、用途、構造、作業、図面上の関係を記述する
- 受験案内と受験票を読み、当日の条件を確認する
消防試験研究センターは、過去に出題された問題の一部を甲種・乙種別に公開しています。公開範囲だけで本試験の全問題や出題頻度を推定せず、現在の形式を確認する資料として使います。教材選びは消防設備士の過去問・問題集の使い方を参照してください。
合格後に必要な3つの管理
1. 免状交付申請
試験に合格しただけでは免状は交付されません。結果通知書と都道府県の案内を確認し、新規免状の交付を申請します。新規交付手数料は1種類につき2,900円で、納付方法は申請先都道府県により異なります。
すでに他の消防設備士免状を持っている場合は、新しい種類を既得免状へ追加する手続になります。必要書類、写真、返送方法は消防設備士免状の申請・書換えで確認してください。
2. 写真の書換え
免状の写真は、撮影日から10年を経過する前に書換えが必要です。これは免状そのものに一律の有効期限があり、試験を受け直すという意味ではありません。氏名・本籍等の書換え、再交付、写真書換えは別の手続です。
3. 消防設備士講習
消防設備士免状の交付を受けた人は、業務への従事・不従事にかかわらず、消防法第17条の10に基づく講習の対象です。
- 初回:免状交付日以後の最初の4月1日から2年以内
- 2回目以降:前回受講日以後の最初の4月1日から5年以内
単純に「免状交付日から2年後」「受講日から5年後」と数える制度ではありません。免状の種類に応じた講習区分と受講期限は、消防設備士講習の受講期限・申込方法で確認してください。
よくある質問
消防設備士は全部で何種類ですか
甲種は特類と第1類~第5類の6種類、乙種は第1類~第7類の7種類です。試験・免状の組合せとしては13種類ですが、一つの免状ですべての設備を扱えるわけではありません。
乙種第4類を持って2年たてば甲種第4類を受験できますか
免状の保有期間だけでは足りません。乙種消防設備士免状の交付後、2年以上、所定の工事整備対象設備等の整備経験を有することが受験資格です。経験の内容と実務経験証明書について、申請先支部の案内を確認してください。
乙種だけで消防設備の工事はできますか
消防設備士制度上、乙種の業務範囲は指定された設備の整備・点検です。工事は対応する甲種の範囲です。実際の工事では、作業内容に応じて他の資格制度も確認する必要があります。
合格率が高い類から受けるべきですか
合格率は受験者の構成や年度によっても変わり、個人の難しさをそのまま示すものではありません。担当したい設備、甲種・乙種の業務範囲、受験資格、学習経験を基準に選んでください。
消防設備士免状は5年で失効しますか
法定講習の受講サイクルと免状の失効は同じ意味ではありません。写真は10年ごとに書換え、講習は最初の4月1日を起点に初回2年・以後5年で管理します。講習未受講時の扱いは講習記事で確認してください。
まとめ
- 消防設備士は、甲種・乙種と類別によって業務範囲が決まる
- 甲種は指定された類の工事・整備・点検、乙種は整備・点検に対応する
- 乙種は誰でも受験でき、甲種には複数の受験資格がある
- 試験手数料は甲種6,600円、乙種4,400円
- 合格基準は、筆記の各科目40%・全体60%と、実技全体60%を分けて確認する
- 合格後は免状交付、10年写真書換え、最初の4月1日起算の講習期限を別々に管理する
参考にした公式情報
- 一般財団法人消防試験研究センター「消防設備士について」
- 一般財団法人消防試験研究センター「消防設備士試験案内」
- 一般財団法人消防試験研究センター「受験資格」
- 一般財団法人消防試験研究センター「甲種について」
- 一般財団法人消防試験研究センター「試験科目及び問題数」
- 一般財団法人消防試験研究センター「試験の方法」
- 一般財団法人消防試験研究センター「過去に出題された問題」
- 一般財団法人消防試験研究センター「新規免状の交付」
- e-Gov法令検索「消防法」
- 総務省消防庁「消防設備士の定期的な講習受講について」
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