結論:スプリンクラー設備は「自動で放水する」最も信頼性の高い消火設備
スプリンクラー設備とは、天井に設置されたスプリンクラーヘッドが火災の熱を感知し、人の操作なしに自動で放水を開始する消火設備です。
消防設備の中で最も多くの命を救っている設備であり、病院・ホテル・大規模商業施設など、不特定多数の人が利用する建物に広く設置されています。
スプリンクラー設備には5つの方式があり、建物の用途や環境に応じて使い分けます。
スプリンクラー設備の全体構成
方式によって細部は異なりますが、スプリンクラー設備の基本構成は以下のとおりです。「水系消火設備の全体像」の記事で紹介した共通構成に、スプリンクラー設備特有の機器が加わります。
スプリンクラー設備に特有の機器
「屋内消火栓設備の構造と機能」と比べて、スプリンクラー設備にはいくつか特有の機器があります。
- スプリンクラーヘッド — 天井面に取り付ける放水口。感熱体(ヒュージブルリンクやガラス球)が熱で壊れると自動で放水する。詳しくは次の記事で解説します
- 流水検知装置 — 配管内を水が流れたこと(=ヘッドが開放されたこと)を検知する弁。アラーム弁とも呼ばれます。詳しくは別記事で解説します
- 一斉開放弁 — 開放型スプリンクラーで使用。信号を受けて弁が一気に開き、全ヘッドから一斉に放水する
- 制御弁 — 配管の水を止めるためのバルブ。階ごとに設置し、点検や修理のときに使う
- 末端試験弁 — 配管の末端(一番遠いところ)に設置する試験用の弁。ポンプの起動や流水検知装置の動作を確認するために使う
- 補助散水栓 — スプリンクラーヘッドが届かない場所(押入れ・倉庫等)を補う小型の消火栓
方式① 湿式 — 最も一般的で応答が速い
湿式は、配管内に常時加圧された水が充填されている方式です。スプリンクラー設備の大半がこの方式です。
動作のしくみ
湿式の特徴
- 応答速度が最も速い — 配管内にすでに水が入っているため、ヘッドが開いた瞬間に放水が始まる
- 構造がシンプル — 流水検知装置(湿式アラーム弁)だけで済む
- 凍結する場所には使えない — 配管内の水が凍ると使えないため、暖房のない駐車場や寒冷地の屋外には不向き
日本の一般的なオフィスビル・ホテル・病院・マンションなど、凍結の心配がない場所ではほぼ湿式が採用されます。
方式② 乾式 — 凍結のおそれがある場所用
乾式は、配管内を水の代わりに圧縮空気(または窒素)で満たしておく方式です。
動作のしくみ
乾式の特徴
- 凍結の心配がない — 配管内に水がないため、寒冷地や冷凍倉庫でも使える
- 応答がやや遅い — ヘッドが開いてから、空気が抜けて水が到達するまでにタイムラグがある
- コンプレッサーが必要 — 配管内の空気圧を維持するための圧縮空気供給装置が必要
日本では寒冷地の駐車場や冷凍倉庫など、配管内の水が凍る可能性がある場所に限定的に使われます。
方式③ 予作動式 — 誤放水を絶対に防ぎたい場所用
予作動式は、スプリンクラーヘッドと火災感知器の両方が作動しないと放水しない「二重チェック」方式です。
動作のしくみ
なぜ「二重チェック」が必要なのか
湿式では、ヘッドが物理的な衝撃で壊れたり、配管が破損したりすると火災でなくても水が出てしまいます。これを「誤放水」といいます。
以下のような場所では、誤放水による被害(水損)が甚大になります。
- サーバー室・データセンター — 精密機器が水で全滅する
- 美術館・博物館 — 展示品が取り返しのつかない損害を受ける
- 図書館・文書庫 — 書籍や記録が水で失われる
予作動式なら、感知器が火災を確認し、かつヘッドも熱で開放された場合にだけ放水するため、誤放水のリスクを大幅に減らせます。
予作動式の特徴
- 誤放水を防げる — 二重チェックにより、物理的な衝撃だけでは放水しない
- 配管内は空(大気圧)— 乾式と似ているが、圧縮空気は充填しないタイプが多い
- 構造が複雑 — 感知器、予作動弁、制御盤の連動が必要で、コストが高い
方式④ 開放型 — 一斉に大量放水する
開放型は、ヘッドに感熱体が付いていない方式です。湿式・乾式・予作動式のヘッドは個別に熱で開きますが、開放型は全ヘッドから一斉に放水します。
動作のしくみ
開放型の特徴
- 一斉に放水 — 区画内の全ヘッドが同時に放水するため、急速に燃え広がる火災に有効
- ヘッドに感熱体がない — 開放型ヘッド(開放型スプリンクラーヘッド)を使用
- 一斉開放弁で制御 — 流水検知装置の代わりに一斉開放弁を使用する
- 大量の水を使う — 全ヘッドから同時に放水するため、水源の容量が大きくなる
主な設置場所は劇場の舞台、航空機格納庫、大型工場など、火災が急速に広がるおそれがある場所です。
方式⑤ 放水型 — 高天井の大空間用
放水型ヘッド等を用いるスプリンクラー設備は、天井高さが10mを超える大空間向けの方式です。
なぜ通常のスプリンクラーでは対応できないのか
通常のスプリンクラーヘッドは天井面に設置しますが、天井が高すぎると2つの問題が起きます。
- 熱が届かない — 火災の熱気は上昇しますが、天井が高いと薄まってしまい、ヘッドの感熱体が反応しない
- 水が届かない — 高い天井から放水しても、途中で水が拡散して火元に十分な水量が届かない
放水型ヘッドは、これらの問題を解決するために大量の水を広範囲に強力に放水できる特殊なヘッドを使用します。
放水型の特徴
- 高天井対応 — 天井高さ10m超の空間(アトリウム・展示場・大型倉庫)に設置
- 放水量が大きい — 通常のヘッドより大量の水を放水する
- 火災感知と連動 — 火災感知設備と連動して作動するものが多い
5つの方式を一覧で比較
| 方式 | 配管内 | 主な設置場所 |
|---|---|---|
| 湿式 | 加圧水 | 一般的な建物全般 |
| 乾式 | 圧縮空気 | 寒冷地・冷凍倉庫 |
| 予作動式 | 空(大気圧) | サーバー室・美術館 |
| 開放型 | 空(大気圧) | 舞台・格納庫・工場 |
| 放水型 | 方式による | 天井高10m超の大空間 |
| 方式 | ヘッドの種類 | 作動方式 |
|---|---|---|
| 湿式 | 閉鎖型 | ヘッドが個別に開放 |
| 乾式 | 閉鎖型 | ヘッドが個別に開放 |
| 予作動式 | 閉鎖型 | 感知器+ヘッドの二重チェック |
| 開放型 | 開放型 | 全ヘッド一斉放水 |
| 放水型 | 放水型ヘッド | 感知設備と連動 |
閉鎖型と開放型 — ヘッドの違いが方式を分ける
5つの方式を大きく分けると、ヘッドに感熱体があるかないかで2グループに分かれます。
湿式・乾式・予作動式は閉鎖型ヘッドを使うため、火災が起きたヘッドの周辺だけが放水します。無関係な場所は濡れません。
開放型は開放型ヘッドを使うため、一斉開放弁が開くと区画内のすべてのヘッドから放水します。水損は大きくなりますが、急速に広がる火災を面で制圧できます。
スプリンクラー設備と屋内消火栓設備の使い分け
「屋内消火栓設備の構造と機能」で紹介したように、屋内消火栓は人が操作して消す設備です。一方、スプリンクラーは自動で消す設備です。
法令では、建物の危険度が高い(不特定多数が利用する・大規模)ほど、スプリンクラー設備の設置が求められます。逆に言えば、スプリンクラーが設置されていれば、屋内消火栓の設置基準が緩和されることもあります(これは法令の記事で詳しく解説します)。
まとめ問題
この記事の内容が頭に入っているか、チェックしてみましょう。
第1問
スプリンクラー設備の方式のうち、配管内に常時加圧された水が充填されている方式はどれか。
(1)乾式
(2)湿式
(3)予作動式
(4)開放型
第2問
寒冷地の駐車場にスプリンクラー設備を設置する場合、最も適切な方式はどれか。
(1)湿式
(2)乾式
(3)予作動式
(4)開放型
第3問
予作動式スプリンクラーがサーバー室に採用される主な理由として、最も適切なものはどれか。
(1)配管内に圧縮空気が入っており凍結しないため
(2)全ヘッドから一斉に放水して迅速に消火できるため
(3)感知器とヘッドの二重チェックにより誤放水による水損を防げるため
(4)天井が高い空間でも放水が火元に届くため
第4問
開放型スプリンクラー設備の説明として、誤っているものはどれか。
(1)ヘッドに感熱体が付いていない
(2)一斉開放弁により全ヘッドから同時に放水する
(3)ヘッドが個別に熱で開放して放水する
(4)劇場の舞台や航空機格納庫に設置される
第5問
放水型ヘッド等を用いるスプリンクラー設備が必要になるのは、どのような空間か。
(1)凍結のおそれがある倉庫
(2)精密機器が多いサーバー室
(3)天井高さが10mを超える大空間
(4)不特定多数が出入りする商業施設