甲種第1類の実技試験では、鑑別等5問と製図2問が出題されます。実技試験は、写真・イラスト・図面などを使った記述式です。
この記事では、消防試験研究センターが公開している甲種第1類の問題を手がかりに、配管系統図から条件を拾い、ポンプの全揚程・吐出量・水源水量を求めるまでの読み方を整理します。
最初に確認:図面の記号、必要な小数桁、使用する損失水頭などは、問題文と凡例に従います。非公開の採点点数や、すべての問題に共通する独自記号を前提にしません。
甲種第1類の製図で確認するもの
消防試験研究センターが公開する甲種試験の例では、第1類の製図として、屋内消火栓設備の配管系統図を読み、次の3項目を計算する問題が掲載されています。
- ポンプの全揚程
- ポンプの吐出量
- 水源水量
したがって、学習の中心は「記号だけの暗記」ではありません。問題文、配管系統図、寸法、損失水頭を結び付け、どの数値をどの式に入れるか判断することが重要です。
図面の種類と役割
| 図面 | 主に読み取ること |
|---|---|
| 配管系統図 | 水源から放水口までの接続、立管、階高、最高位の放水口、配管経路 |
| 平面図 | 消火栓やヘッドの位置、各部分までの水平距離、配管ルート |
| 立面図・断面図 | 床高さ、放水口の高さ、上下方向の位置関係 |
同じ設備でも、図面の用途によって省略される情報があります。系統図は実際の縮尺や平面上の位置をそのまま表すとは限らないため、寸法線や問題文の条件を優先します。
配管系統図を読む順番
1. 設備の種類を確定する
最初に、1号消火栓、易操作性1号消火栓、2号消火栓、広範囲型2号消火栓、スプリンクラー設備など、対象設備を確認します。設備の種類が変わると、必要な放水量、放水圧力、水源水量、水平距離の基準も変わります。
2. 水の経路をたどる
ポンプ方式の屋内消火栓設備では、水源、吸水管、加圧送水装置、吐出側配管、立管、各階の消火栓へ向かう経路をたどります。次に、計算対象となる最も条件の厳しい消火栓を探します。
全揚程の計算では、一般に最も高い位置にある消火栓が重要です。ただし、問題に別の指定があれば、その条件に従います。
3. 損失水頭と実揚程を分ける
図面と問題文から拾う値を、次のように分けます。
- ホースの摩擦損失水頭:問題文で与えられた値を使う。
- 配管の摩擦損失水頭:直管、継手、弁などを含む条件を確認する。
- 実揚程:基準となる水面などから、最も高い放水口までの高さを図面から読む。
- 放水に必要な圧力水頭:対象となる消火栓の基準を確認する。
「摩擦損失」と「高さによる水頭」は別の値です。階数だけを掛けるのではなく、図面に示された床高さと開閉弁の高さを確認します。
公開問題で確認する全揚程の計算
消防試験研究センターの公開問題では、1号消火栓の配管系統図について、ホースの摩擦損失水頭を7.8m、配管の摩擦損失水頭を5m、最高位消火栓までの落差を20mとする例が示されています。
この例の全揚程は、次のように求めます。
全揚程 H
H = ホースの摩擦損失水頭 + 配管の摩擦損失水頭 + 実揚程 + 17m
H = 7.8 + 5 + 20 + 17 = 49.8m
ここで加える17mは、1号消火栓のノズル先端で必要な放水圧力0.17MPaに対応させた圧力水頭です。公開問題は小数点以下第1位まで求めるよう指定しているため、49.8mと答えます。根拠なく整数へ切り上げる問題ではありません。
全揚程のチェックポイント
- 問題文がホース損失と配管損失を分けているか。
- 配管損失に継手や弁が含まれているか。
- 最高位消火栓までの高さを正しく読んだか。
- 対象設備に応じた必要圧力を使ったか。
- 指定された単位と小数桁で答えたか。
吐出量と水源水量の計算
1号消火栓のポンプ吐出量
消防法施行規則第12条では、1号消火栓のポンプ吐出量を、屋内消火栓の設置個数(2を超える場合は2)に150L/minを乗じた量以上としています。
同一階で2個を算定する場合は、次の計算です。
150L/min × 2 = 300L/min以上
1号消火栓のノズル先端で求める放水量130L/min以上と、ポンプに求める吐出量150L/min×算定個数は同じ数値ではありません。製図計算では、何の能力を求めているかを区別します。
1号消火栓の水源水量
1号消火栓の水源水量は、屋内消火栓の設置個数(2を超える場合は2)に2.6m³を乗じた量以上です。
2.6m³ × 2 = 5.2m³以上
「130L/min×20分=2.6m³」と関連付けると覚えやすい一方、法令上の水源水量とポンプ吐出量は、それぞれの規定を確認して計算します。
平面図で確認する水平距離
屋内消火栓の配置を平面図で確認するときは、各階の各部分が、対象となる消火栓のホース接続口から規定の水平距離内に入るかを確認します。
| 消火栓の種類 | 水平距離 |
|---|---|
| 1号・易操作性1号 | 25m以下 |
| 2号 | 15m以下 |
| 広範囲型2号 | 25m以下 |
これはホースを実際に引き回した長さではなく、ホース接続口からの水平距離です。壁や扉の位置も図面に示されますが、問題が何を求めているかを読んでから判定します。
スプリンクラーヘッドは一律の間隔で覚えない
スプリンクラーヘッドの配置は、用途・構造、ヘッドの種別、感度種別、取付面からの高さなどによって基準が分かれます。消防法施行令第12条や消防法施行規則第13条の2・第13条の6などを確認し、問題の条件に合う基準を選びます。
「ヘッド間隔は一律2.3〜3.2m」「取付面は必ず10m以下」といった一つの数値だけで、すべてのスプリンクラー設備を判定することはできません。
凡例と図記号の扱い
図記号は、図面の情報を短く表すために使います。ただし、試験対策では、丸囲みの英字などをすべての問題に共通する記号として決め付けないことが大切です。
- 問題文に作図方法の指定があるか確認する。
- 凡例がある場合は、凡例の記号と名称を対応させる。
- 配管の接続点、分岐、上下階への接続を確認する。
- 図面にない機器や数値を推測で足さない。
消防試験研究センターの公開問題でも、作図問題では「凡例記号を用いること」と条件が示される例があります。問題ごとの指示を読むことが基本です。
設備の構成を読むときの注意
送水口
スプリンクラー設備の送水口は、消防ポンプ自動車から設備へ送水するためのものです。消防法施行規則第14条と消防庁告示第37号に、位置、結合金具、逆止弁などの基準があります。
図面では、対象設備の配管系統と送水方向を確認します。「常に消火ポンプのすぐ吐出側へ接続する」「ポンプ故障時だけ使う」と単純化せず、問題に示された設備構成を読みます。
流水検知装置・制御弁・末端試験弁
閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いる設備では、流水検知装置または圧力検知装置、制御弁、末端試験弁などの位置関係を確認します。末端試験弁は、流水検知装置または圧力検知装置の作動を試験できるよう、配管の末端に設けます。
乾式、予作動式、開放型などでは構成が異なります。すべての方式を「各階の立管に同じ順番で置く」とは限りません。
製図計算で避けたい間違い
- 放水量とポンプ吐出量の混同:1号消火栓では130L/minと150L/min×個数を使い分ける。
- 実揚程の読み落とし:階高だけでなく、基準水面と開閉弁の高さを確認する。
- 損失の二重計上:問題文が「継手・弁を含む」としているときは重ねて加えない。
- 算定個数の誤り:法令上の上限個数と、建物に実際に設けた個数を区別する。
- 勝手な丸め:問題が指定する小数桁に従う。
- 単位の混同:m、MPa、L/min、m³を区別する。
実技試験全体の合格基準は60%以上ですが、個々の記入欄について「単位忘れは何点減」「記号違いは一律0点」といった詳細な採点基準は、公式ページでは公表されていません。根拠のない減点数ではなく、問題文の要求に過不足なく答える練習を優先します。
確認問題
問題1:1号消火栓2個を算定する場合、ポンプ吐出量は何L/min以上か。
解答を見る
300L/min以上です。150L/min×2で求めます。
問題2:ホース損失7.8m、配管損失5m、実揚程20mの1号消火栓設備では、必要な全揚程はいくらか。
解答を見る
49.8mです。7.8+5+20+17で求めます。
問題3:1号消火栓2個を算定する場合、水源水量は何m³以上か。
解答を見る
5.2m³以上です。2.6m³×2で求めます。
まとめ
- 甲種第1類の実技は、鑑別等5問と製図2問。
- 公開問題では、配管系統図から全揚程・吐出量・水源水量を求める例がある。
- 全揚程は、摩擦損失、実揚程、必要圧力水頭を分けて計算する。
- 1号消火栓では、放水量130L/min以上とポンプ吐出量150L/min×算定個数を混同しない。
- 図記号、丸め方、単位は、問題文と凡例の指定を優先する。
次は「製図の実践(水力計算)」で、摩擦損失と全揚程の計算を確認してください。設備の基準は「スプリンクラー設備の技術基準」、点検時の確認は「水系消火設備の点検」で整理しています。
参考資料
- 消防試験研究センター「試験科目及び問題数」
- 消防試験研究センター「試験の方法」
- 消防試験研究センター「過去に出題された問題」
- e-Gov法令検索「消防法施行令」
- e-Gov法令検索「消防法施行規則」
- 総務省消防庁「スプリンクラー設備等の送水口の基準」
※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。