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水噴霧消火設備の構造と基準|噴霧ヘッド・水源・排水設備

結論:水噴霧消火設備は「噴霧ヘッドで水を霧状に放射する消火設備」

水噴霧消火設備は、水を噴霧ヘッドから霧状に放射し、防護対象物の火災を有効に消火するための設備です。消防法施行令第7条では消火設備の一つとして扱われ、設置対象や技術基準は、消防法施行令第13条・第14条、消防法施行規則第16条・第17条で確認します。

学習上は、スプリンクラー設備と似た「水を使う設備」として覚えがちですが、読み方は異なります。水噴霧では、噴霧ヘッド、防護対象物、放射区域、一斉開放弁、水源水量、排水設備をセットで整理します。

この記事で整理する範囲

この記事では、消防法施行令第13条・第14条、消防法施行規則第16条・第17条をもとに、水噴霧消火設備の構造と基準を整理します。過去問頻度、製品名、事故年表、未確認の学習効果は扱わず、条文から確認できる項目を優先します。

水噴霧消火設備等を設置する対象

消防法施行令第13条は、「水噴霧消火設備等」を設置すべき防火対象物又はその部分を定めています。ここで重要なのは、水噴霧消火設備だけが常に指定されるわけではなく、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備などとの選択関係で示される点です。

防火対象物又はその部分 水噴霧が選択肢に入るか 確認ポイント
道路の用に供される部分 入る 屋上部分600m2以上、その他400m2以上などの面積条件がある
駐車の用に供される部分 入る 地階・2階以上200m2以上、1階500m2以上、屋上300m2以上、機械式10台以上などを確認する
指定可燃物を大量に貯蔵・取扱いする部分 品名区分により入る 危険物政令別表第四の品名区分ごとに、設置できる消火設備が分かれる
発電機・変圧器などの電気設備部分 第13条の表では入らない 不活性ガス、ハロゲン化物、粉末が掲げられている。水噴霧を電気設備一般の標準設備として説明しない
通信機器室 第13条の表では入らない 床面積500m2以上の場合も、不活性ガス、ハロゲン化物、粉末が掲げられている

水噴霧を「電気設備まわりで広く使える設備」と覚えると危険です。消防法施行令第14条には、高圧の電気機器がある場所では、電気機器と噴霧ヘッド・配管との間に電気絶縁を保つための必要な空間を保つことが示されています。つまり、電気設備まわりでは絶縁距離や設計条件の確認が前提です。

水噴霧消火設備の基本構成

水噴霧消火設備は、次の要素で整理します。

  • 水源:防護対象物の火災を有効に消火できる水量を確保する
  • 加圧送水装置:水源の水を噴霧ヘッドへ送る
  • 一斉開放弁:放射区域の噴霧ヘッドへ同時に送水する弁
  • 配管:一斉開放弁の二次側で金属製のものには防食処理を行う
  • 噴霧ヘッド:防護対象物を有効防護空間に包含するように設ける
  • 排水設備:道路・駐車部分では水を有効に排水できるように設ける
  • 非常電源:水噴霧消火設備には非常電源を附置する

噴霧ヘッドは、防護対象物の形状、構造、性質、数量、取扱い方法に応じ、標準放射量で火災を有効に消火できるよう、必要な個数を適当な位置に設けます。

放射区域と一斉開放弁

消防法施行規則第16条では、放射区域を「一の一斉開放弁により同時に放射する区域」としています。放射区域は、防護対象物が存する階ごとに設けます。

このため、水噴霧消火設備を読むときは、閉鎖型スプリンクラーヘッドのように「ヘッドごとに熱で個別開放する」と考えるのではなく、一斉開放弁で放射区域ごとに放射すると整理します。

起動装置

水噴霧消火設備の自動式の起動装置は、自動火災報知設備の感知器の作動、閉鎖型スプリンクラーヘッドの開放、又は火災感知用ヘッドの作動・開放と連動して、加圧送水装置及び一斉開放弁を起動できるものとします。

手動式の起動装置については、スプリンクラー設備の手動式起動装置の例によるほか、直近の見やすい箇所に起動装置である旨の標識を設けます。

指定可燃物を扱う部分の水量

指定可燃物を貯蔵し、又は取り扱う防火対象物に設置する水噴霧消火設備では、防護対象物のすべての表面を噴霧ヘッドの有効防護空間内に包含するように設けます。

この場合の水源水量は、消防法施行規則第16条第2項で、次のように定められています。

区分 水源水量の考え方
指定可燃物を貯蔵・取扱いする部分 床面積1m2につき10L/minで計算した量を20分間放射できる量以上
床面積が50m2を超える場合 床面積を50m2として計算する

例として、指定可燃物の対象部分が80m2であっても、水源水量の計算では50m2として扱います。この場合は、50m2 × 10L/min・m2 × 20分 = 10,000L、つまり10m3以上という整理になります。

道路・駐車部分の噴霧ヘッドと水源水量

道路の用に供される部分又は駐車の用に供される部分に設置する水噴霧消火設備は、消防法施行規則第17条で別に整理されています。

噴霧ヘッドの配置

道路・駐車部分では、道路の幅員又は車両の駐車位置を考慮し、防護対象物を水噴霧で有効に包含し、かつ、車両の周囲の床面の火災を有効に消火できるように噴霧ヘッドを設けます。

標準放射量は、床面積1m2につき20L/minです。指定可燃物の10L/min・m2と混同しないようにします。

水源水量

区分 水源水量
道路の用に供される部分 道路区画面積が最大となる部分について、1m2につき20L/minで計算した量を20分間放射できる量以上
駐車の用に供される部分 床面積を用いる。ただし50m2を超える場合は50m2として、1m2につき20L/minで計算した量を20分間放射できる量以上

駐車部分が100m2の場合でも、水源水量の計算では50m2として扱います。50m2 × 20L/min・m2 × 20分 = 20,000L、つまり20m3以上です。

加圧送水装置の送水量

道路・駐車部分の加圧送水装置は、次の水量のうち大きいものを送水できる必要があります。

  • 道路を長さ10m以上となるように区分したとき、道路区画面積が最大となる部分の全噴霧ヘッドを同時に標準放射量で放射する水量
  • 駐車部分で、区画境界堤で区画された部分の面積に、これと接する車路部分の面積を加えた区画面積が最大となる部分の全噴霧ヘッドを同時に標準放射量で放射する水量
  • 隣接する二つの道路区画面積又は区画面積を合計した面積のうち、最大となるものの全噴霧ヘッドを同時に標準放射量で放射する水量

水源水量の50m2上限と、加圧送水装置の送水量計算は混同しやすい部分です。水源は「20分放射できる量」、加圧送水装置は「同時放射する噴霧ヘッドへ送れる量」と分けて読みます。

排水設備の基準

水噴霧消火設備は放射した水を扱うため、道路・駐車部分では排水設備も重要です。

道路の用に供される部分

  • 道路には、排水溝に向かって有効に排水できる勾配をつける
  • 道路の中央又は路端に排水溝を設ける
  • 排水溝は、長さ40m以内ごとに1個の集水管を設け、消火ピットに連結する
  • 消火ピットは、油分離装置付とし、火災危険の少ない場所に設ける
  • 排水溝及び集水管は、加圧送水装置の最大能力の水量を有効に排水できる大きさ及び勾配を有する

駐車の用に供される部分

  • 車両が駐車する場所の床面には、排水溝に向かって2/100以上の勾配をつける
  • 車両が駐車する場所には、車路に接する部分を除き、高さ10cm以上の区画境界堤を設ける
  • 消火ピットは、油分離装置付とし、火災危険の少ない場所に設ける
  • 車路の中央又は両側に排水溝を設ける
  • 排水溝は、長さ40m以内ごとに1個の集水管を設け、消火ピットに連結する
  • 排水溝及び集水管は、加圧送水装置の最大能力の水量を有効に排水できる大きさ及び勾配を有する

駐車部分では、2/100以上の勾配、10cm以上の区画境界堤、40m以内ごとの集水管を組み合わせて確認します。

加圧送水装置の読み方

消防法施行規則第16条では、水噴霧消火設備の加圧送水装置について、高架水槽方式、圧力水槽方式、ポンプ方式の式が示されています。

方式 意味
高架水槽方式 H = h1 + h2 必要落差 = 噴霧ヘッドの設計圧力換算水頭 + 配管の摩擦損失水頭
圧力水槽方式 P = p1 + p2 + p3 必要圧力 = 噴霧ヘッドの設計圧力 + 摩擦損失水頭圧 + 落差の換算水頭圧
ポンプ方式 H = h1 + h2 + h3 全揚程 = 噴霧ヘッドの設計圧力換算水頭 + 摩擦損失水頭 + 落差

ポンプの吐出量は、同時に放射するすべての噴霧ヘッドから必要量を放射できる量以上です。また、加圧送水装置には、噴霧ヘッドの放射圧力が性能範囲の上限値を超えないための措置を講じます。

スプリンクラー設備との違い

項目 水噴霧消火設備 スプリンクラー設備
ヘッドの読み方 噴霧ヘッドを防護対象物に対して配置する 閉鎖型・開放型などヘッド種類で整理する
放射区域 一斉開放弁で同時に放射する区域 閉鎖型ではヘッド開放や流水検知装置と関連づける
水源水量 指定可燃物、道路、駐車部分で10L又は20L、20分を確認する 設備方式やヘッド個数に応じた規定を確認する
排水設備 道路・駐車部分では排水溝、集水管、油分離装置付消火ピットを確認する 水噴霧の道路・駐車部分ほど排水設備を中心に読まない

水噴霧消火設備は、スプリンクラー設備の延長としてではなく、消防法施行令第13条の「水噴霧消火設備等」と、消防法施行規則第16条・第17条の技術基準を組み合わせて読みます。

理解度チェック

【問題1】消防法施行令第13条の表で、駐車の用に供される部分の消火設備として選択肢に入るものはどれか。

  1. 水噴霧消火設備
  2. 誘導灯
  3. 非常警報設備
  4. 連結送水管
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正解:A
駐車の用に供される部分では、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備が選択肢として示されています。

【問題2】指定可燃物を貯蔵・取扱いする部分に設置する水噴霧消火設備の水源水量について、正しいものはどれか。

  1. 床面積1m2につき10L/minで計算し、20分間放射できる量以上とする
  2. 床面積1m2につき20L/minで計算し、60分間放射できる量以上とする
  3. 床面積に関係なく一律1,000Lとする
  4. 水源水量は加圧送水装置の種類だけで決まる
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正解:A
指定可燃物を貯蔵・取扱いする部分では、床面積1m2につき10L/minで計算した量を、20分間放射できる量以上とします。床面積が50m2を超える場合は50m2として計算します。

【問題3】駐車の用に供される部分の水源水量について、正しいものはどれか。

  1. 床面積が50m2を超える場合は50m2として、1m2につき20L/minで20分間放射できる量以上とする
  2. 床面積が50m2を超えても、全床面積だけで計算する
  3. 1m2につき10L/minで10分間放射できる量以上とする
  4. 排水設備があれば水源水量は不要である
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正解:A
駐車部分では、床面積が50m2を超える場合は50m2として、1m2につき20L/minで計算した量を20分間放射できる量以上とします。

【問題4】駐車の用に供される部分に設ける排水設備について、正しいものはどれか。

  1. 床面に排水溝へ向かう2/100以上の勾配をつける
  2. 区画境界堤の高さは1cm以上でよい
  3. 集水管は100m以内ごとに1個でよい
  4. 消火ピットに油分離装置は不要である
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正解:A
駐車部分では、車両が駐車する場所の床面に、排水溝へ向かう2/100以上の勾配をつけます。区画境界堤は10cm以上、集水管は40m以内ごとに1個、消火ピットは油分離装置付です。

【問題5】水噴霧消火設備の放射区域について、正しいものはどれか。

  1. 一の一斉開放弁により同時に放射する区域をいう
  2. 閉鎖型スプリンクラーヘッド1個が受け持つ区域をいう
  3. 消火器を配置する歩行距離の範囲をいう
  4. 避難器具を設置する階だけをいう
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正解:A
放射区域は、一の一斉開放弁により同時に放射する区域です。消防法施行規則第16条では、防護対象物が存する階ごとに設けることとされています。

まとめ

  • 水噴霧消火設備は、噴霧ヘッドで水を霧状に放射する消火設備として整理する。
  • 設置対象は消防法施行令第13条、技術基準は同令第14条と消防法施行規則第16条・第17条で確認する。
  • 発電機・変圧器などの電気設備部分や通信機器室は、令第13条の表では水噴霧が選択肢に入っていない。
  • 指定可燃物では10L/min・m2、20分、床面積50m2上限を確認する。
  • 道路・駐車部分では20L/min・m2、20分を確認し、駐車部分の水源水量では50m2上限を確認する。
  • 排水設備では、2/100以上の勾配、10cm以上の区画境界堤、40m以内ごとの集水管、油分離装置付消火ピットを押さえる。

次に読む記事

  1. 次の記事:「屋外消火栓・動力消防ポンプの構造と機能
  2. 設置基準:「水噴霧・屋外消火栓の設置基準
  3. 水系消火設備:「水系消火設備の全体像
  4. 流水検知装置:「流水検知装置と一斉開放弁

参考法令

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