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ハロゲン化物消火設備|6種の消火剤・放出方式・構成を整理

ハロゲン化物消火設備は、ハロゲン元素を含む消火剤を貯蔵容器などから配管へ送り、噴射ヘッドやノズルから放射する設備です。消防設備士第3類で扱い、消防法施行令第17条と消防法施行規則第20条に、消火剤・放出方式・必要量・構成機器が定められています。

この記事では、現行法令に列挙される6種類の消火剤、全域放出方式・局所放出方式・移動式、貯蔵・起動・警報の違いを整理します。

最初に押さえる3点

  • 消火剤はハロン3種・HFC2種・FK-5-1-12の計6種類
  • 局所放出方式と移動式にはハロン2402・1211・1301を使用する
  • 使用できる消火剤、放射時間、起動方式、遅延装置は一律ではない

現行法令が定める6種類の消火剤

消防法施行規則第20条第4項第2号は、ハロゲン化物消火設備に使用する消火剤を次の6種類としています。「ハロンは現在の法令から削除された」「代替消火剤3種だけを覚えればよい」という整理は正しくありません。

区分 消火剤 規則上の名称 使用できる方式の要点
ハロン ハロン2402 ジブロモテトラフルオロエタン 全域放出・局所放出・移動式
設置場所による剤の制限あり
ハロン1211 ブロモクロロジフルオロメタン
ハロン1301 ブロモトリフルオロメタン
HFC HFC-23 トリフルオロメタン 全域放出
用途・面積・体積による制限あり
HFC-227ea ヘプタフルオロプロパン
フッ素化ケトン FK-5-1-12 ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン 全域放出
用途・面積・体積による制限あり

ハロゲン化物の消火作用は、燃焼反応の抑制や冷却など、消火剤によって寄与の仕方が異なります。6種類すべてを「負触媒効果だけで消す」「少量なら人体に安全」と単純化せず、設備基準では使用場所・必要量・放射時間を剤ごとに確認します。

放出方式と使用できる消火剤

方式 使用する消火剤 方式の概要
全域放出方式 設置場所に応じ、ハロン1301、HFC-23、HFC-227ea、FK-5-1-12など 防護区画の全域へ消火剤を放射する
局所放出方式 ハロン2402・1211・1301 防護対象物の表面へ直接放射する
移動式 ハロン2402・1211・1301 固定した貯蔵容器からホースを引き出し、人がノズルで放射する

重要:ハロゲン化物にも局所放出方式がある

消防法施行規則第20条第2項は局所放出方式の噴射ヘッド、第3項第2号は必要量、第4項第2号の3は使用する消火剤を定めています。局所放出方式が存在しないという説明は誤りです。ただし、HFC-23・HFC-227ea・FK-5-1-12は局所放出方式や移動式には使いません。

全域放出方式

壁・床・天井などで区画された防護区画へ消火剤を放射する方式です。噴射ヘッドは、消火剤が全域へ均一かつ速やかに拡散するように設けます。放射前に換気装置を停止し、消火剤と燃焼ガスを安全な場所へ排出する措置も必要です。

局所放出方式

防護対象物のすべての表面を噴射ヘッドの有効射程内に入れ、放射で可燃物が飛散しない位置にヘッドを設けます。使用できるのはハロン3種で、必要量を30秒以内に放射できる構造とします。

移動式

ホース、ノズル、ノズル開閉弁、ホースリールを備え、人が操作して放射する方式です。使用できるのはハロン3種です。HFC-23・HFC-227ea・FK-5-1-12を移動式で使用するという説明は、現行規則と一致しません。

全域放出方式の消火剤は設置場所で決まる

全域放出方式では、6種類から自由に選ぶのではなく、消防法施行規則第20条第4項第2号の2の表を使います。

防火対象物またはその部分 条件 使用する消火剤
鍛造場、ボイラー室、乾燥室など多量の火気を使用する部分、ガスタービン発電機がある部分 ハロン1301
自動車修理、駐車、ガスタービン以外の発電機、変圧器などの電気設備、通信機器室 常時人がいない部分以外、または面積1,000m²以上、または体積3,000m³以上 ハロン1301
上記以外 ハロン1301・HFC-23・HFC-227ea・FK-5-1-12
指定可燃物を貯蔵・取扱う部分 ハロン2402・1211・1301

この表から分かるように、HFC-23・HFC-227ea・FK-5-1-12は、上表の自動車修理・駐車・電気設備・通信機器室のうち、常時人がいない一定規模未満の部分で選択肢になります。「NOAELが設計濃度より高いから、人がいる場所でも安全に使える」という判断へ置き換えてはいけません。

噴射ヘッドの放射圧力と放射時間

全域放出方式では、消火剤ごとに噴射ヘッドの最低放射圧力と放射時間が定められています。

消火剤 最低放射圧力 必要量の放射時間
ハロン2402 0.1MPa 30秒以内
ハロン1211 0.2MPa
ハロン1301 0.9MPa
HFC-23 0.9MPa 10秒以内
HFC-227ea 0.3MPa
FK-5-1-12 0.3MPa

ハロン2402とFK-5-1-12の噴射ヘッドは、消火剤を霧状に放射する構造とします。放射時間はハロン3種が30秒以内、HFC2種とFK-5-1-12が10秒以内です。

必要消火剤量の考え方

必要量は、消火剤と放出方式によって計算方法が異なります。任意の「設計濃度」や独自係数を追加した共通式にまとめず、規則第20条第3項の表と式を使います。

HFC-23・HFC-227ea・FK-5-1-12の全域放出方式

防護区画の体積1m³当たりの消火剤量は、次の範囲です。必要量は、防護区画の体積に該当する値を乗じて求めます。

消火剤 防護区画1m³当たり
HFC-23 0.52kg以上0.80kg以下
HFC-227ea 0.55kg以上0.72kg以下
FK-5-1-12 0.84kg以上1.46kg以下

法令表が示す値自体が1m³当たりの量です。別の濃度係数をさらに掛ける計算ではありません。実際の設計値は、消火剤、火災対象、認定・仕様、圧力損失計算などを合わせて決定します。

ハロン3種と局所放出方式

ハロン3種の全域放出方式は、用途と消火剤に応じた体積1m³当たりの量を使い、自動閉鎖装置のない開口部がある場合は開口面積に応じた量を加算します。局所放出方式は、燃焼面が一面に限定される場合と、それ以外の場合で計算方法が分かれます。

複数の防護区画・防護対象物で貯蔵容器を共用する場合は、それぞれについて計算した量のうち最大の量以上を貯蔵します。

貯蔵・配管・放出の構成

全域放出方式・局所放出方式の一般的な流れは次のとおりです。ただし、選択弁や加圧用ガス容器などは設備構成によって異なります。

貯蔵容器・貯蔵タンク容器弁・放出弁集合管・選択弁専用配管噴射ヘッド

貯蔵容器・貯蔵タンク

貯蔵容器等には安全装置を設け、見やすい場所に消火剤量、消火剤の種類、最高使用圧力(加圧式)、製造年、製造者名を表示します。加圧式には放出弁、一定の蓄圧式容器には容器弁を設けます。

蓄圧式のハロン1211は20℃で1.1MPaまたは2.5MPa、ハロン1301・HFC-227ea・FK-5-1-12は2.5MPaまたは4.2MPaとなるよう、窒素ガスで加圧します。薬剤ごとの充てん比も規則第20条に定められています。

配管と選択弁

配管は専用とし、消火剤に応じた強度・耐食性を持つ鋼管または銅管などを使用します。HFC-23の鋼管は、他の剤より厚いスケジュール80以上が基準です。配管の落差は50m以下とします。

1組の貯蔵容器を複数区画で共用する場合は、区画ごとに選択弁を設けます。貯蔵容器等と選択弁等の間には、安全装置または破壊板を設けます。

起動方式・警報・保安措置

起動方式と保安措置も、ハロン3種とHFC・FK系で同一ではありません。

区分 起動方式 全域放出方式の保安措置
ハロン2402・1211・1301 手動式が原則。常時人がいない場所など、手動式が不適当な場所は自動式にできる 表示灯。ハロン2402・1211は20秒以上の遅延装置。ハロン1301は遅延装置を省略できる
HFC-23・HFC-227ea・FK-5-1-12 自動式 表示灯。防護区画の圧力上昇防止措置。FK-5-1-12は過度の温度低下防止措置も必要

音響警報装置は、起動装置の操作・作動と連動し、消火剤放射前に遮断されず、防護区画または防護対象物にいる人へ有効に報知できるように設けます。全域放出方式は原則として音声警報ですが、ハロン1301には音声としないことができる例外があります。

CO₂設備の安全装置をそのまま当てはめない

全域放出方式のCO₂に定められる閉止弁・緊急停止装置・20秒以上の遅延装置を、ハロゲン化物6種類すべてに一律必須とすることはできません。ハロゲン化物では、剤ごとに規則第20条の起動・警報・保安措置を確認します。

ハロンの生産全廃と回収・再利用

環境省の国家ハロンマネジメント戦略によると、日本では1994年1月1日以降、ハロンの生産等が全廃されました。一方、消防法施行規則第20条は現在もハロン2402・1211・1301を設備基準に列挙しています。

ハロンは「生産が全廃されたので、既存設備も法令上使用禁止」と単純化できません。既存ハロンを回収・再生し、ハロンバンク推進協議会の管理のもと、クリティカルユース(必要不可欠用途)へ再利用する仕組みがあります。設備を撤去するときも、大気へ放出せず適切に回収します。

また、HFCはオゾン層を破壊しない代替剤として一般基準化されていますが、温室効果ガスとして排出抑制の対象です。HFCを「環境に無害」、FK-5-1-12を固定的に「環境に最も優しい」と順位付けせず、現行の環境規制、回収方法、設備条件を含めて判断します。

点検で確認する主な箇所

消防庁の点検要領では、ハロゲン化物消火設備について、次のような箇所を確認します。詳細な方法・周期は「ガス系設備の点検・整備」で扱います。

  • 貯蔵容器・貯蔵タンク、容器弁、放出弁、安全装置
  • 配管、管継手、支持金具、選択弁
  • 起動装置、音響警報装置、表示灯、制御盤
  • 噴射ヘッド、ホース、ノズル、ホースリール
  • 消火剤・燃焼ガスの排出措置
  • HFC-23・HFC-227ea・FK-5-1-12の圧力上昇防止措置
  • FK-5-1-12の過度の温度低下防止措置

理解度チェック

以下は、この記事の内容を確認するための当サイト作成問題です。消防試験研究センターの公開問題を転載したものではありません。

問題1 現行の消防法施行規則がハロゲン化物消火剤として定めるものは、全部で何種類か。

  1. 3種類
  2. 4種類
  3. 5種類
  4. 6種類
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正解:4
ハロン2402・1211・1301、HFC-23・HFC-227ea、FK-5-1-12の6種類です。

問題2 局所放出方式のハロゲン化物消火設備に使用する消火剤として正しい組合せはどれか。

  1. HFC-23・HFC-227ea・FK-5-1-12
  2. ハロン2402・1211・1301
  3. ハロン1301・HFC-23・HFC-227ea
  4. FK-5-1-12だけ
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正解:2
局所放出方式と移動式に使用できるのはハロン2402・1211・1301です。

問題3 全域放出方式で必要量を10秒以内に放射する消火剤はどれか。

  1. ハロン2402・1211・1301
  2. HFC-23・HFC-227ea・FK-5-1-12
  3. ハロン1301だけ
  4. 6種類すべて
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正解:2
HFC-23・HFC-227ea・FK-5-1-12は10秒以内、ハロン3種は30秒以内です。

問題4 全域放出方式の保安措置について正しいものはどれか。

  1. 6種類すべてに20秒以上の遅延装置が必要
  2. 6種類すべてにCO₂用閉止弁が必要
  3. ハロン1301は遅延装置を省略できる
  4. HFC-23は手動起動だけが認められる
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正解:3
ハロン2402・1211は20秒以上の遅延装置を設けますが、ハロン1301には省略できる規定があります。HFC-23・HFC-227ea・FK-5-1-12は自動式です。

問題5 全域放出方式のHFC-227eaについて、規則第20条が定める防護区画1m³当たりの量はどれか。

  1. 0.10kg以上0.20kg以下
  2. 0.32kgで固定
  3. 0.55kg以上0.72kg以下
  4. 0.84kg以上1.46kg以下
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正解:3
HFC-227eaは0.55kg以上0.72kg以下です。0.84kg以上1.46kg以下はFK-5-1-12です。

まとめ

  • ハロゲン化物消火剤は、ハロン3種・HFC2種・FK-5-1-12の計6種類
  • 局所放出方式と移動式にはハロン2402・1211・1301を使用する
  • 全域放出方式の剤は、用途、常時人がいるか、面積、体積で決まる
  • ハロン3種は必要量を30秒以内、HFC2種とFK-5-1-12は10秒以内に放射する
  • ハロン3種は手動起動が原則、HFC2種とFK-5-1-12は自動起動
  • 20秒以上の遅延装置はハロン2402・1211に必要で、ハロン1301には省略規定がある
  • ハロンは生産全廃後も、適正な回収・再利用の仕組みと現行の設備基準がある

第3類3設備の比較は「ガス系消火設備の全体像」、不活性ガスは「不活性ガス消火設備」、次の設備は「粉末消火設備」で確認できます。

参考資料

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