消防設備士制度ってなに?
消防設備士試験を受けようとしている皆さんにとって、一番身近なテーマがこれ。「消防設備士制度」そのものです。
結論から言います。
消防設備士制度とは、消防用設備等の工事・整備を行うために必要な国家資格のしくみです。消防法第17条の5で「消防設備士でなければ工事・整備をしてはならない」と定められています。
ポイントは3つ。
- 甲種は工事・整備・点検、乙種は整備・点検のみ
- 消防設備士でなければできない業務がある(独占業務)
- 免状取得後も講習の受講義務がある(一生モノではない)
この記事では、消防法第17条の5〜第17条の11を中心に、消防設備士制度の全体像を解説していきます。
消防法第17条の5(条文)
まずは制度の根幹となる条文から。
第十七条の五 消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置に係る工事又は整備は、消防設備士に行わせなければならない。ただし、消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置に係る工事のうち政令で定める軽微な工事はこの限りでない。
条文を現代語訳すると
「消防用設備等の工事や整備は、消防設備士にやらせなさい。ただし、政令で定める軽微な工事は除く。」
つまり、消防用設備等の工事・整備は誰でもできるわけではないということ。消防設備士の資格を持った人でなければ、原則として手を出せません。
これがいわゆる「独占業務」です。
甲種と乙種の違い
消防設備士には甲種と乙種の2種類があります。最大の違いは「工事ができるかどうか」です。
| 区分 | できること | 補足 |
|---|---|---|
| 甲種 | 工事・整備・点検 | 特類+1〜5類の6区分 |
| 乙種 | 整備・点検のみ | 1〜7類の7区分 |
「工事」と「整備」の違い
ここが試験で狙われるポイントです。
- 工事 ―― 消防用設備等を新しく設置すること(新築時の設備取付、増設など)
- 整備 ―― 既に設置されている設備を修理・交換・補修すること
- 点検 ―― 設備が正常に機能するか確認・検査すること
甲種は「つくる」から「直す」「確認する」まで全部できる。乙種は「直す」と「確認する」だけ。「つくる」(工事)ができるのが甲種の特権です。
類別の対象設備
消防設備士は類ごとに扱える設備が決まっています。
| 類 | 対象設備 |
|---|---|
| 特類(甲種のみ) | 特殊消防用設備等 |
| 1類 | 屋内消火栓・スプリンクラー・水噴霧消火設備など |
| 2類 | 泡消火設備 |
| 3類 | 不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備 |
| 4類 | 自動火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備・消防機関へ通報する火災報知設備 |
| 5類 | 金属製避難はしご・救助袋・緩降機 |
| 6類(乙種のみ) | 消火器 |
| 7類(乙種のみ) | 漏電火災警報器 |
6類と7類は乙種しかありません。なぜなら、消火器の設置や漏電火災警報器の設置は「工事」とみなされないため、甲種を設ける必要がないからです。
逆に特類は甲種しかありません。特殊消防用設備等は高度な設備なので、工事ができる甲種のみが対象です。
図解:消防設備士の資格体系
独占業務 ―― 消防設備士でなければできないこと
消防設備士制度の最大の特徴は「独占業務」があることです。
消防法17条の5により、消防用設備等の工事と整備は消防設備士でなければ行えません。無資格者が行うと違法です。
ただし例外がある
条文に「政令で定める軽微な工事」は除くと書かれていましたね。施行令第36条の2で定められている軽微な工事には、たとえば以下のようなものがあります。
- 消火器の設置(だから6類は乙種のみ)
- 漏電火災警報器の設置(だから7類は乙種のみ)
- その他、電源や水源に直接触れない範囲の軽微な取付け
これらは「工事」に該当しないため、消防設備士でなくても行えます。ただし整備は消防設備士が必要です。
点検はどうなの?
実は点検については、消防設備士の独占業務ではありません。消防設備士または消防設備点検資格者が行えます。
| 業務 | 必要な資格 |
|---|---|
| 工事 | 甲種消防設備士のみ |
| 整備 | 消防設備士(甲種 or 乙種) |
| 点検 | 消防設備士 or 消防設備点検資格者 |
消防設備士の義務
消防設備士は資格を取ったら終わりではありません。消防法では、免状を持つ者にいくつかの義務を課しています。
①工事着手の届出(消防法17条の14)
甲種消防設備士が工事を行うときは、工事に着手する日の10日前までに、消防長又は消防署長に届け出なければなりません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 届出義務者 | 甲種消防設備士 |
| 届出先 | 消防長又は消防署長 |
| 届出期限 | 着手日の10日前まで |
乙種には届出義務はありません。乙種は工事ができないので当然ですね。
②講習の受講義務(消防法17条の10)
消防設備士は、都道府県知事が行う講習を定期的に受講しなければなりません。
| タイミング | 期限 |
|---|---|
| 免状取得後の初回 | 交付を受けた日から2年以内 |
| 2回目以降 | 前回の講習を受けた日から5年以内 |
ここは試験で頻出です。「初回は2年、以降は5年」と覚えましょう。講習を受けないと免状の返納命令を受ける可能性があります。
③免状の携帯義務
消防設備士は、工事や整備を行うときに免状を携帯しなければなりません。消防職員から提示を求められたら見せる必要があります。
免状の交付・書換え・再交付
交付(消防法17条の7)
消防設備士試験に合格したら、都道府県知事から免状が交付されます。試験を実施するのは都道府県知事ですが、実際の試験事務は一般財団法人 消防試験研究センターに委託されています。
書換え(消防法17条の8)
氏名や本籍地の都道府県に変更があった場合は、免状の書換えを申請します。
再交付(消防法17条の8)
免状を紛失・汚損した場合は、再交付を申請できます。再交付後に亡失した免状を発見した場合は、10日以内に発見した免状を返納しなければなりません。
図解:消防設備士の義務まとめ
免状の返納命令(消防法17条の9)
消防設備士が以下に該当する場合、都道府県知事は免状の返納を命ずることができます。
- 消防関係法令に違反したとき
- 消防用設備等の工事・整備について不誠実な行為をしたとき
- 講習を受講しなかったとき
返納命令を受けると、免状を返さなければなりません。ただし、返納命令の日から1年を経過すれば、再び試験を受けて免状の交付を受けることができます。
なぜこんな制度があるの?
消防用設備等は、火災が起きたときに人の命を守る設備です。消火器、スプリンクラー、火災報知器、避難はしご――これらが正しく設置されていなかったら、いざというとき動きません。
もし誰でも自由に工事・整備できたらどうなるでしょう?
- 配管の接続ミスでスプリンクラーから水が出ない
- 配線の間違いで火災報知器が鳴らない
- 避難はしごの取り付けが甘くて、使用中に落下する
こんなことが起きたら命に関わります。
だからこそ、消防用設備等の工事・整備は専門知識と技術を持った有資格者に限定する必要があるんです。さらに、技術は日々進歩し法令も改正されるため、定期的な講習で知識をアップデートさせる義務も課されています。
消防設備士制度は、「設備をつける」だけでなく「設備を正しくつけ続ける」ために存在する制度なんですね。
試験で狙われるポイント
| ひっかけパターン | 正誤 |
|---|---|
| 「乙種消防設備士は工事を行うことができる」 | × → 整備・点検のみ |
| 「消防設備士の講習は3年ごとに受講する」 | × → 初回2年、以降5年 |
| 「工事着手届は消防庁長官に届け出る」 | × → 消防長又は消防署長 |
| 「工事着手届は着手日の7日前までに届け出る」 | × → 10日前まで |
| 「免状を亡失して再交付後、旧免状を発見したら30日以内に返納」 | × → 10日以内 |
| 「点検は消防設備士の独占業務である」 | × → 点検資格者でも可 |
まとめ問題
記事の内容を理解できたか、チェックしてみましょう!
問題1(知識確認)
消防設備士制度について、正しい記述はどれか。
(1)乙種消防設備士は、消防用設備等の工事、整備及び点検を行うことができる。
(2)甲種消防設備士は、消防用設備等の工事、整備及び点検を行うことができる。
(3)消防用設備等の点検は、消防設備士でなければ行うことができない。
(4)消防用設備等のすべての工事は、消防設備士でなければ行うことができない。
問題2(知識確認)
消防設備士の講習について、正しい記述はどれか。
(1)免状の交付を受けた日から5年以内に最初の講習を受講しなければならない。
(2)免状の交付を受けた日から2年以内に最初の講習を受講し、以後5年以内ごとに受講しなければならない。
(3)講習は消防長が実施する。
(4)講習を受講しなくても罰則はない。
問題3(応用)
ある建物で自動火災報知設備の新規設置工事を行うことになった。この工事について、正しい記述はどれか。
(1)乙種4類の消防設備士が工事を行うことができる。
(2)甲種4類の消防設備士が工事に着手する場合、着手日の7日前までに届け出なければならない。
(3)甲種4類の消防設備士が工事に着手する場合、着手日の10日前までに消防長又は消防署長に届け出なければならない。
(4)消防設備点検資格者が工事を行うことができる。