この記事の要点
消防設備点検資格者は、消防用設備等の点検に関する資格です。消防設備士とは異なり、工事や整備を行う資格ではありません。消防法17条の3の3、消防法施行令36条、消防法施行規則31条の6を中心に、点検できる範囲、有資格者点検が必要な防火対象物、講習・再講習の考え方を整理します。
消防設備点検資格者とは
消防設備点検資格者とは、消防法17条の3の3でいう「総務省令で定める資格を有する者」に当たる資格者です。防火対象物に設置された消防用設備等や特殊消防用設備等について、定期点検を行う場面で出てきます。
大事なのは、消防設備点検資格者は点検の資格であって、消防用設備等の工事や整備を行う資格ではない、という点です。工事や整備は消防設備士免状の区分で整理します。
根拠条文
制度の出発点は消防法17条の3の3です。同条は、防火対象物の関係者に対して、消防用設備等又は特殊消防用設備等を定期に点検し、その結果を消防長又は消防署長へ報告することを求めています。
そのうち、政令で定める防火対象物では、消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させる必要があります。この「総務省令で定める資格を有する者」が、消防法施行規則31条の6に定める消防設備点検資格者です。
※ 条文全文は e-Gov法令検索(消防法)、有資格者点検の対象は e-Gov法令検索(消防法施行令)、点検・報告と資格要件は e-Gov法令検索(消防法施行規則) で確認できます。
消防設備士との違い
消防設備士と消防設備点検資格者は、名前は似ていますが、扱える業務が違います。試験では「工事」「整備」「点検」を分けると整理しやすくなります。
| 資格 | 工事 | 整備 | 点検 |
|---|---|---|---|
| 甲種消防設備士 | 免状区分に応じて可 | 免状区分に応じて可 | 対応する設備を点検可 |
| 乙種消防設備士 | 不可 | 免状区分に応じて可 | 対応する設備を点検可 |
| 消防設備点検資格者 | 不可 | 不可 | 資格区分に応じて可 |
「消防設備点検資格者なら何でも点検できる」と見るのではなく、どの区分の資格で、どの設備を点検できるかを確認します。
資格区分
消防設備点検資格者には、主に第1種、第2種、特種の区分があります。第1種と第2種は、消防用設備等の種類に対応して覚えます。
| 区分 | 対象の考え方 | 例 |
|---|---|---|
| 第1種 | 消火系、水系、消火活動を支える設備を中心に扱う | 消火器、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、消防用水、連結送水管など |
| 第2種 | 警報系、避難系の設備を中心に扱う | 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報器、非常警報設備、誘導灯、避難器具など |
| 特種 | 特殊消防用設備等を扱う区分 | 通常の消防用設備等とは別に認定された特殊消防用設備等 |
細かい設備の対応関係は消防庁長官が定める区分で確認します。学習上は、まず「第1種=消火系」「第2種=警報・避難系」「特種=特殊消防用設備等」と大枠を押さえるとよいです。
有資格者による点検が必要な防火対象物
すべての防火対象物で、必ず消防設備士又は消防設備点検資格者に点検させるわけではありません。消防法施行令36条2項が、有資格者点検の対象を定めています。
| 区分 | 有資格者点検が必要になる条件 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 特定用途系 | 別表第一(1)項から(4)項、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(16)項イ、(16の2)項、(16の3)項で、延べ面積1,000平方メートル以上 | 用途と面積をセットで見る |
| 非特定用途系 | 別表第一(5)項ロ、(7)項、(8)項、(9)項ロ、(10)項から(15)項、(16)項ロ、(17)項、(18)項で、延べ面積1,000平方メートル以上、かつ消防長又は消防署長が指定したもの | 面積だけでなく指定の有無も見る |
| 避難階以外に特定用途がある一階段系 | 特定用途部分が避難階以外の階にあり、その階から避難階又は地上に直通する階段が原則2以上ないもの | 面積だけで判断しない |
| 二酸化炭素の全域放出方式 | 全域放出方式の不活性ガス消火設備のうち、二酸化炭素を放射するものが設置されている防火対象物 | 施行規則31条の6の2で追加される対象 |
有資格者点検の対象外でも、施行令36条1項の点検不要対象などを除き、関係者による点検と報告まで不要になるわけではありません。消防法17条の3の3は、対象に応じて「有資格者に点検させる」場合と「自ら点検する」場合を分けています。
点検周期と報告周期
消防法施行規則31条の6では、点検は設備の種類と点検内容に応じて、1年以内で消防庁長官が定める期間ごとに行うこととされています。
点検結果の報告周期は、防火対象物の用途で分かれます。特定用途系は1年に1回、非特定用途系は3年に1回が基本です。点検の実施周期と、消防長又は消防署長への報告周期を混同しないようにします。
講習と受講資格
消防設備点検資格者は、登録講習機関が行う講習の課程を修了し、免状の交付を受けることで資格者として扱われます。日本消防設備安全センターが、消防設備点検資格者講習と再講習を案内しています。
主な受講資格には、消防設備士、電気工事士、管工事施工管理技士、建築士、一定の学歴と消防用設備等の工事・整備実務経験を持つ者、消防用設備等の工事又は整備について5年以上の実務経験を持つ者などがあります。
※ 講習の区分、日程、申請条件は変更されることがあるため、受講前は 日本消防設備安全センターの消防設備点検資格者講習案内 を確認してください。
再講習を受けない場合
消防法施行規則31条の6第8項は、消防庁長官が定める期間ごとに登録講習機関の講習を修了し、免状の交付を受けなかった場合、消防設備点検資格者の資格を失うものとしています。
実務では「一度取れば永久に何もしなくてよい資格」と見ないことが重要です。日本消防設備安全センターの案内でも、免状交付日以後最初の4月1日から5年以内、その後は再講習修了日以後最初の4月1日から5年以内という考え方で再講習が案内されています。
試験で押さえるポイント
- 消防設備点検資格者は、工事や整備ではなく点検に関する資格である
- 根拠は消防法17条の3の3と消防法施行規則31条の6で整理する
- 甲種消防設備士は免状区分に応じて工事・整備、乙種消防設備士は免状区分に応じて整備を扱う
- 有資格者点検の対象は、消防法施行令36条2項で確認する
- 特定用途系は延べ面積1,000平方メートル以上が基本だが、一階段系や二酸化炭素全域放出方式は別に確認する
- 点検周期と報告周期は同じ意味ではない
- 消防設備点検資格者には再講習がある
関連する制度も確認しよう
消防設備点検資格者は、点検報告制度や消防設備士制度とつながるテーマです。次の記事と合わせると、法令共通の資格者制度を整理しやすくなります。
- 「点検報告制度」― 点検・報告の全体像
- 「消防設備士制度」― 工事・整備・免状区分
- 「防火対象物点検報告制度」― 名前が似ている別制度
- 「特定防火対象物と非特定防火対象物」― 用途区分の確認
- 「法令共通ロードマップ」― 法令共通テーマの学習順
理解度チェック
Q1. 消防設備点検資格者が行える業務
消防設備点検資格者の業務として正しいものはどれか。
A)自動火災報知設備の新設工事
B)消防用設備等の整備
C)資格区分に応じた消防用設備等の点検
D)甲種消防設備士が行うべき工事の代行
Q2. 有資格者点検が必要な防火対象物
消防設備士又は消防設備点検資格者による点検が必要になるものとして、最も適切なものはどれか。
A)延べ面積500平方メートルの物販店舗
B)延べ面積1,200平方メートルの劇場
C)延べ面積1,200平方メートルの共同住宅で、消防長又は消防署長の指定がないもの
D)延べ面積300平方メートルの事務所
Q3. 再講習
消防設備点検資格者について正しいものはどれか。
A)一度免状を受ければ、再講習を受けなくても資格を失わない
B)消防法施行規則には、一定期間ごとの講習を受けない場合に資格を失う規定がある
C)再講習は消防設備士だけに必要で、点検資格者には関係しない
D)再講習を受ければ、工事と整備もできるようになる
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