消防設備士と消防設備点検資格者の違いは、行える業務と資格区分です。
消防設備士は、免状の種・類に応じて消防用設備等の工事・整備・点検を扱います。消防設備点検資格者は、資格区分に応じた点検を行う資格であり、工事や整備はできません。
ただし、消防設備士であればすべての設備を点検できるわけではなく、消防設備点検資格者にも第1種・第2種・特種の区分があります。「どちらが上か」ではなく、担当する設備と業務に必要な区分を確認することが大切です。
先に押さえる違い
- 甲種消防設備士:免状区分に応じた工事・整備・点検
- 乙種消防設備士:免状区分に応じた整備・点検
- 消防設備点検資格者:資格区分に応じた点検
- 消防設備士は試験合格後に免状を申請し、点検資格者は講習と修了考査を経て免状の交付を受ける
- 消防設備士講習と、点検資格者の5年ごとの再講習は別制度
消防設備士と消防設備点検資格者の比較
| 比較項目 | 消防設備士 | 消防設備点検資格者 |
|---|---|---|
| 主な業務 | 甲種は工事・整備・点検、乙種は整備・点検 | 点検 |
| 業務範囲 | 交付を受けた免状の種・類に対応する設備 | 交付を受けた第1種・第2種・特種に対応する設備 |
| 取得方法 | 消防設備士試験に合格し、免状の交付を申請 | 登録講習機関の講習を受け、修了考査に合格して免状の交付を受ける |
| 区分 | 甲種特類、甲種第1~5類、乙種第1~7類 | 第1種、第2種、特種 |
| 受験・受講資格 | 乙種は制限なし。甲種は区分ごとの受験資格が必要 | 消防設備士、電気工事士、建築士、所定の実務経験などの受講資格が必要 |
| 取得後の講習 | 初回2年・以後5年の消防設備士講習 | 免状の有効期限までに5年ごとの再講習 |
消防試験研究センターは、甲種消防設備士が工事・整備・点検、乙種消防設備士が整備・点検を行えると案内しています。いずれも、持っている免状に対応する設備が範囲です。
消防設備点検資格者は、消防法17条の3の3でいう「総務省令で定める資格を有する者」に当たります。一定の防火対象物では、消防設備士または消防設備点検資格者に消防用設備等を点検させる必要があります。
違い1:工事・整備・点検の範囲
甲種消防設備士
甲種消防設備士は、免状の区分に対応する消防用設備等について、工事・整備・点検を扱えます。たとえば甲種第4類は、自動火災報知設備など第4類の対象設備が範囲です。第1類や第6類の設備まで自動的に扱えるわけではありません。
乙種消防設備士
乙種消防設備士は、免状の区分に対応する設備の整備・点検を扱えます。工事はできません。第6類は消火器、第7類は漏電火災警報器だけに設けられた乙種の区分です。
消防設備点検資格者
消防設備点検資格者は、点検を行う資格です。消防用設備等の工事や整備を行う資格ではありません。点検で不良箇所を見つけても、その後の工事・整備は、対象設備に対応する消防設備士免状など必要な資格を確認して行います。
点検はすべて消防設備士だけの独占業務ではない
消防法施行令36条2項などの対象では消防設備士または消防設備点検資格者による点検が必要です。一方、対象外では関係者が自ら点検できる場合があります。有資格者点検の対象は、建物の用途、延べ面積、階段の状況、設置設備などで確認します。
有資格者点検が必要な防火対象物は「消防用設備等の点検報告制度」、点検資格者制度そのものは「消防設備点検資格者とは」で詳しく整理しています。
違い2:資格区分と対象設備
消防設備士は設備ごとの「類」、消防設備点検資格者は第1種・第2種・特種で範囲を分けます。
| 点検資格者の区分 | 対象の考え方 | 設備例 |
|---|---|---|
| 第1種 | 主に消火系統の設備 | 消火器、屋内消火栓、スプリンクラー、泡・ガス・粉末消火設備、消防用水、連結送水管など |
| 第2種 | 主に警報・避難系統の設備 | 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報器、避難器具、誘導灯など |
| 特種 | 特殊消防用設備等 | 総務大臣の認定を受けた特殊消防用設備等 |
第1種が第2種より上位という関係ではありません。対象設備が異なります。また、第1種と第2種だけでは特殊消防用設備等を扱う特種の範囲を満たしません。
細かな対応関係には、非常警報設備、誘導灯、消防用水など、単純な「消防設備士の類」と一対一にしにくい設備もあります。実務で担当する設備は、日本消防設備安全センターの資格区分表で確認してください。
違い3:試験と講習
消防設備士は試験に合格して免状を申請する
消防設備士試験は、筆記試験と、写真・イラスト・図面等を使う記述式の実技試験で行われます。甲種特類には実技試験がありません。乙種は誰でも受験でき、甲種は学歴、資格、実務経験など区分ごとの要件を満たす必要があります。
試験手数料は、甲種6,600円、乙種4,400円です。合格後は免状の新規交付申請が必要で、試験合格だけで自動交付されるわけではありません。
点検資格者は3日間の講習と修了考査
日本消防設備安全センターの第1種・第2種講習は、それぞれ3日間です。講習の最後に2時間の修了考査があります。「講習へ出席すれば無条件で取得できる」「ほぼ全員合格」とする公表根拠は確認できないため、修了考査を含む取得手続として理解してください。
受講料は、公式講習案内の掲載時点で、科目免除なし等のA区分が34,410円、所定の科目免除を受けるB区分が32,310円です。払込手数料などは別に必要です。金額や申請方法は、受講回の案内を優先してください。
点検資格者の受講資格
消防設備士免状の交付を受けている人は、それ自体が第1種・第2種講習の受講資格の一つです。消防設備士を取得した後、必ず5年の実務経験を積まなければ受講できない、という制度ではありません。
代表的な受講資格には、次のものがあります。
- 甲種または乙種の消防設備士
- 第一種または第二種電気工事士
- 1級または2級管工事施工管理技士
- 1級または2級建築士
- 所定部門の技術士第二次試験合格者
- 第一種・第二種・第三種電気主任技術者
- 消防用設備等の工事または整備について5年以上の実務経験を有する者
上記は一部です。学歴と工事・整備経験を組み合わせる受講資格などもあります。なお、5年以上の実務経験で申請する区分では、点検、設計、工事の管理監督、機器の製造・販売などは対象経験に含まれないと案内されています。自己判断せず、講習の手引と必要証明書類を確認してください。
取得後の講習制度も違う
| 資格 | 期限の考え方 | 未受講時の扱い |
|---|---|---|
| 消防設備士 | 初回は免状交付後の最初の4月1日から2年以内。以後は受講後の最初の4月1日から5年以内 | 自動失効ではないが、返納命令の運用上の違反として扱われる |
| 消防設備点検資格者 | 免状交付後の最初の4月1日から5年以内。その後も再講習による免状の有効期限を管理 | 有効期限までに再講習を受けない場合は資格を喪失 |
消防設備士講習の期限は「消防設備士の義務講習」で確認できます。点検資格者の再講習と混同しないよう、持っている免状ごとに期限を管理してください。
どちらを選ぶかは担当業務から決める
工事を担当したい
対象設備の工事を担当するなら、対応する甲種消防設備士を検討します。甲種には受験資格があるため、先に自分が使える資格・学歴・実務経験と必要書類を確認してください。
整備を担当したい
対象設備の整備には、その設備に対応する甲種または乙種消防設備士を確認します。点検資格者だけでは整備はできません。
点検対象を広げたい
一つの消防設備士免状で点検できる設備は、その免状の類に対応する範囲です。点検業務で複数系統の設備を担当するなら、必要な消防設備士免状を増やす方法と、第1種・第2種の点検資格者を取得する方法を、勤務先の業務に合わせて比較します。
未経験で受験資格がない
乙種消防設備士は受験資格の制限がありません。ただし、最初に受ける類を乙種第6類へ固定する必要はありません。仕事で扱う設備、工事の要否、甲種受験資格、試験日程から選びます。受験資格の詳細は「消防設備士の受験資格」、甲乙の違いは「消防設備士の甲種と乙種の違い」を確認してください。
よくある質問
消防設備士があれば、点検資格者は不要ですか?
一律には決まりません。消防設備士は免状の類に対応する設備が範囲です。勤務先が複数系統の点検を行う場合は、第1種・第2種の点検資格者が業務に合うことがあります。会社の担当設備と配置要件を確認してください。
点検資格者があれば、消防設備士は不要ですか?
工事や整備を行うなら不要とはいえません。点検資格者は点検の資格であり、消防設備士の工事・整備の範囲を代替しません。
点検資格者の第1種と第2種は両方必要ですか?
担当設備によります。消火系統だけなら第1種、警報・避難系統だけなら第2種が対応します。両系統を点検するなら両方を検討します。特殊消防用設備等には特種を確認します。
消防設備士を取れば、すぐ点検資格者講習を受けられますか?
甲種または乙種の消防設備士免状は受講資格の一つです。試験合格だけでなく、免状の交付を受けていることを確認し、申請時に必要な免状の写しなどを用意します。
まとめ
- 甲種消防設備士は免状区分に応じた工事・整備・点検、乙種は整備・点検を扱う
- 消防設備点検資格者は資格区分に応じた点検を行い、工事・整備はできない
- 消防設備士は種・類、点検資格者は第1種・第2種・特種で対象設備が分かれる
- 消防設備士免状は、点検資格者講習の受講資格の一つで、固定の5年実務経験は不要
- 点検資格者の第1種・第2種講習は各3日間で、最後に2時間の修了考査がある
- 消防設備士講習と点検資格者の再講習は、期限と未受講時の扱いが異なる
- 取得順は一律に決めず、担当設備、工事・整備・点検のどれを行うかで判断する
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参照した公式ページ
- 消防試験研究センター「消防設備士試験」
- 消防試験研究センター「甲種について」
- 消防試験研究センター「試験の方法」
- 日本消防設備安全センター「消防設備点検資格者とは」
- 日本消防設備安全センター「第1種・第2種消防設備点検資格者講習」
- 日本消防設備安全センター「消防設備点検資格者再講習」
- e-Gov法令検索「消防法」
- e-Gov法令検索「消防法施行規則」
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