ガス系消火設備を考えるときは、最初に消防法施行令第13条の表を確認します。施行令第13条は、場所ごとに設置できる消火設備を限定しているためです。
「水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末から自由に一つ選べる」という意味ではありません。たとえば、飛行機又は回転翼航空機の格納庫に選べるのは泡消火設備か粉末消火設備です。発電機や変圧器などの電気設備がある部分では、不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の3設備が候補になります。
- 施行令第13条は、場所・面積・収容台数と、選べる設備を組み合わせて定めている
- 駐車部分の基準は、地階・2階以上200㎡、1階500㎡、屋上300㎡が基本
- 機械式駐車場は、車両の収容台数が10台以上なら対象
- 全域放出・局所放出・移動式の可否や使用できる消火剤は、施行規則第19条から第21条でさらに絞られる
- 二酸化炭素を放射する全域放出方式には、閉止弁などの安全対策と維持基準がある
設置義務と技術基準の条文を分けて読む
ガス系消火設備に関係する主な条文は、次のように役割が分かれています。
| 条文 | 主な内容 |
|---|---|
| 施行令第13条 | 水噴霧消火設備等を設置すべき場所と、その場所に選べる設備 |
| 施行令第16~18条 | 不活性ガス・ハロゲン化物・粉末消火設備の基本的な技術基準 |
| 施行規則第19~21条 | 噴射ヘッド、消火剤量、放射時間、起動装置、警報装置、配管などの細目 |
| 施行規則第19条の2 | 二酸化炭素を放射する全域放出方式の維持に関する追加基準 |
施行令第13条で候補となる設備を確認し、その後に各設備の方式・消火剤・機器の基準を施行規則で確認する、という順序で読むと整理しやすくなります。
施行令第13条の主な設置対象
施行令第13条第1項の表を、設置対象と選べる設備に分けて整理します。「ガス3設備」は、不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備を指します。
| 防火対象物又はその部分 | 基準 | 選べる消火設備 |
|---|---|---|
| 飛行機又は回転翼航空機の格納庫(別表第一(13)項ロ) | 用途に該当 | 泡・粉末 |
| 屋上の回転翼航空機又は垂直離着陸航空機の発着部分 | 用途に該当 | 泡・粉末 |
| 道路の用に供される部分 | 屋上600㎡以上/その他400㎡以上 | 水噴霧・泡・不活性ガス・粉末 |
| 自動車の修理又は整備の用に供される部分 | 地階又は2階以上200㎡以上/1階500㎡以上 | 泡・ガス3設備 |
| 駐車の用に供される部分 | 地階又は2階以上200㎡以上/1階500㎡以上/屋上300㎡以上 | 水噴霧・泡・ガス3設備 |
| 機械装置により車両を駐車させる部分 | 収容台数10台以上 | 水噴霧・泡・ガス3設備 |
| 発電機、変圧器その他これらに類する電気設備がある部分 | 200㎡以上 | ガス3設備 |
| 鍛造場、ボイラー室、乾燥室その他多量の火気を使用する部分 | 200㎡以上 | ガス3設備 |
| 通信機器室 | 500㎡以上 | ガス3設備 |
| 指定可燃物を貯蔵・取り扱う建築物等 | 危険物政令別表第四の数量の1,000倍以上 | 指定可燃物の種類により異なる |
駐車部分の階別面積を判定するときは、駐車するすべての車両が同時に屋外へ出られる構造の階を除きます。一方、昇降機などの機械装置で駐車させる構造は、収容台数10台以上という別の基準で判定します。
「道路の用に供される部分」と駐車部分は別の区分
ここでいう道路は、車両の交通の用に供されるもので、総務省令が定めるものです。道路部分は、屋上600㎡以上、その他400㎡以上です。駐車部分の200㎡・300㎡・500㎡とは別の基準なので、混同しないようにします。
また、道路部分ではハロゲン化物消火設備は施行令第13条の選択肢に含まれません。移動式の不活性ガス消火設備を道路部分に設けられるのは屋上部分に限られ、粉末消火設備では道路部分に全域放出方式又は局所放出方式を設けることができません。道路部分に設ける移動式粉末消火設備には第三種粉末を使用します。
「危険物施設」ではなく「指定可燃物」の規定
施行令第13条の表が定めるのは、指定可燃物を危険物政令別表第四の数量の1,000倍以上貯蔵・取り扱う建築物等です。危険物施設の消火設備は、危険物関係法令の別の基準で扱われるため、両者を同じものとして覚えないようにします。
指定可燃物は種類によって選べる設備が変わる
指定可燃物が1,000倍以上の場合も、常に5設備から選べるわけではありません。施行令第13条の表は、指定可燃物の種類ごとに次のように定めています。
| 指定可燃物の区分 | 選べる消火設備 |
|---|---|
| 綿花類、木毛・かんなくず、油がしみていないぼろ・紙くず、糸類、わら類、再生資源燃料、一定のゴム類 | 水噴霧・泡・全域放出方式の不活性ガス |
| 動植物油がしみたぼろ・紙くず、石炭・木炭類 | 水噴霧・泡 |
| 可燃性固体類、可燃性液体類、一定の合成樹脂類 | 水噴霧・泡・ガス3設備 |
| 木材加工品・木くず | 水噴霧・泡・全域放出方式の不活性ガス・全域放出方式のハロゲン化物 |
指定可燃物の正式な区分と数量は、危険物の規制に関する政令別表第四で確認します。施行令第13条第2項には、可燃性液体類を除く指定可燃物について、一定のスプリンクラー設備を設けた有効範囲内では同条の消火設備を省略できる規定もあります。
ガス系3設備を選ぶときの追加制限
施行令第13条でガス系設備が候補に入っても、方式や消火剤を自由に選べるわけではありません。施行規則第19条から第21条による代表的な制限を確認します。
不活性ガス消火設備
- 常時人がいない部分以外には、全域放出方式又は局所放出方式を設けることができない
- 駐車部分と通信機器室で常時人がいない部分には、全域放出方式を設ける
- 局所放出方式に使用する消火剤は二酸化炭素
- 移動式に使用する消火剤も二酸化炭素
- 移動式を道路部分に設ける場合は、屋上部分に限る
窒素、IG-55、IG-541を使用できるのは、施行規則が認める全域放出方式の区分です。IG-541を「人がいる場所なら安全」と単純化してはいけません。不活性ガスの全域・局所放出方式そのものに、常時人がいない部分という制限があります。
ハロゲン化物消火設備
- 全域放出方式で使用できる消火剤は、設置場所、常時人の有無、防護区画の面積・体積によって異なる
- 局所放出方式に使用できるのは、ハロン2402、ハロン1211又はハロン1301
- 移動式にもハロン2402、ハロン1211又はハロン1301を使用する
HFC-23、HFC-227ea、FK-5-1-12を局所放出方式や移動式に使えると覚えるのは誤りです。消火剤の区分は、施行規則第20条の表と各号を確認します。
粉末消火設備
- 駐車部分に設ける粉末消火設備には第三種粉末を使用する
- 道路部分には全域放出方式又は局所放出方式を設けることができない
- 道路部分に設ける移動式粉末消火設備には第三種粉末を使用する
粉末消火設備の4種の薬剤、全域・局所・移動式の必要量については「粉末消火設備|4種の薬剤・放出方式・定圧作動装置を整理」で解説しています。
全域放出方式の防護区画
施行令第16条は、全域放出方式の不活性ガス消火設備について、噴射ヘッドを設ける部分を不燃材料で造った壁、柱、床又は天井で区画し、開口部に自動閉鎖装置を設けることを基本としています。ハロゲン化物消火設備と粉末消火設備も、この全域放出方式の噴射ヘッドの設置例によります。
ただし、外部へ漏れる量以上の消火剤を有効に追加放出できる設備では、自動閉鎖装置を設けないことができる規定があります。したがって、「開口部は例外なく自動閉鎖」や「閉鎖できない開口部は壁面積の3%以下」と一律に覚えるのは適切ではありません。消火剤ごとの開口部条件と追加量を施行規則で確認します。
また、防護区画の換気装置は、消火剤を放射する前に停止できる構造とします。ガス系消火設備等に関する消防庁通知も、防護区画内の濃度を維持するため、開口部を必要最小限とし、空調・換気・火気使用設備を設備の作動と連動して制御するよう示しています。
放射時間は消火剤と方式をセットで覚える
「ハロゲン化物はすべて10秒」のような覚え方は誤りです。全域放出方式の代表的な放射時間を、施行規則第19条から第21条に沿って整理します。
| 設備・消火剤 | 全域放出方式の基準 |
|---|---|
| 二酸化炭素 | 通信機器室は3.5分以内/一定の指定可燃物は7分以内/その他は1分以内 |
| 窒素・IG-55・IG-541 | 所定量の10分の9以上を1分以内 |
| ハロン2402・1211・1301 | 所定量を30秒以内 |
| HFC-23・HFC-227ea・FK-5-1-12 | 所定量を10秒以内 |
| 粉末 | 所定量を30秒以内 |
局所放出方式では、二酸化炭素、ハロゲン化物、粉末のいずれも、各条が定める所定量を30秒以内に放射できることが基準です。必要量や放射圧力は別の規定なので、放射時間だけで設備を比較しないようにします。
二酸化炭素消火設備の安全対策
二酸化炭素を放射する全域放出方式には、施行規則第19条に加えて第19条の2の維持基準があります。消防庁は、令和2年12月から令和3年4月までに死亡事故が相次いだことを受け、令和4年9月に政省令等を改正しました。
- 工事、整備、点検などで防護区画内に人が入るときは、閉止弁を閉止した状態にする
- 人が入るときは、自動手動切替え装置を手動状態に維持する
- 消火剤が放射された場合は、消火剤が排出されるまで防護区画内へ人が入らないようにする
- 制御盤付近に、設備の構造と工事・整備・点検時の具体的な措置・手順を定めた図書を備える
閉止弁は、貯蔵容器と選択弁の間の管などに設け、点検時などに二酸化炭素が防護区画へ放射される経路を閉止するための弁です。「出入口付近で押して放出を止めるスイッチ」とは区別します。
警報、起動、遅延、緊急停止、放出表示、閉止弁などの条件は、設備・消火剤・起動方式によって条文が分かれます。これらを「ガス系3設備ですべて同じ」と一括りにせず、対象設備の条文と告示を確認することが重要です。
設置義務を判定する手順
- 場所の用途を特定する
駐車、道路、自動車の修理・整備、電気設備、通信機器室など、施行令第13条のどの行に該当するかを確認します。 - 面積又は収容台数を確認する
駐車部分は階で基準が変わり、機械式駐車場は10台以上という収容台数基準があります。 - 施行令第13条で選べる設備を絞る
5設備すべてが候補になる行もあれば、泡と粉末だけの行もあります。 - 施行規則で方式と消火剤を絞る
全域・局所・移動式の可否、常時人の有無、消火剤の種類を確認します。 - 条例・特例・所轄消防機関の運用を確認する
実際の設計・届出では、建物の構造や使用状況、条例、令第32条の特例適用なども関係します。
確認問題
以下は、施行令第13条と施行規則第19条から第21条をもとに当サイトで作成した問題です。公式試験問題の転載ではありません。
問題1:1階の駐車部分が500㎡の場合、施行令第13条の候補に含まれる設備はどれですか。
答え:水噴霧、泡、不活性ガス、ハロゲン化物、粉末の5設備です。ただし、施行規則による方式・消火剤の制限を別に確認します。
問題2:機械装置で車両を駐車させる部分は、何台以上で対象になりますか。
答え:収容台数10台以上です。
問題3:200㎡以上の電気設備部分で、施行令第13条の候補となる3設備は何ですか。
答え:不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備です。
問題4:全域放出方式のハロゲン化物消火設備は、すべて10秒以内に放射しますか。
答え:いいえ。HFC-23、HFC-227ea、FK-5-1-12は10秒以内ですが、ハロン2402、1211、1301は30秒以内です。
問題5:不活性ガス消火設備の全域放出方式は、常時人がいる部分にも設置できますか。
答え:施行規則第19条は、常時人がいない部分以外に全域放出方式又は局所放出方式を設けることを認めていません。
まとめ
- 施行令第13条は、場所ごとに選べる設備を限定している
- 駐車部分は地階・2階以上200㎡、1階500㎡、屋上300㎡が基本
- 道路部分は屋上600㎡、その他400㎡で、駐車部分とは別基準
- 機械式駐車場は収容台数10台以上が対象
- 電気設備部分と多量の火気使用部分は200㎡以上、通信機器室は500㎡以上
- 指定可燃物は種類により選べる設備が異なる
- 施行規則第19条から第21条で、方式・消火剤・放射時間などをさらに確認する
- 二酸化炭素を放射する全域放出方式は、閉止弁を含む安全対策と維持基準を確認する
参考資料
- e-Gov法令検索「消防法施行令」(第13条、第16~18条)
- e-Gov法令検索「消防法施行規則」(第19条~第21条)
- 総務省消防庁「ガス系消火設備等の設置及び維持に係る留意事項について」
- 総務省消防庁「二酸化炭素消火設備に係る安全対策」
- 総務省消防庁「不活性ガス消火設備等の音響警報装置の基準」
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