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スプリンクラー設備の技術基準|ヘッド間隔・水源水量・放水性能・末端試験弁をわかりやすく解説

結論から言います。

スプリンクラー設備の技術基準は、「ヘッドの配置」「放水性能」「水源水量」「付属設備」の4本柱で構成されています。「スプリンクラー設備の設置義務」で「どの建物に必要か」が決まったら、次はこの技術基準に従って「どう設計・施工するか」を決めます。

試験では、放水量・水源水量の計算問題、末端試験弁の目的、送水口の役割などが頻出です。数字が多い分野ですが、計算の考え方は「屋内消火栓設備の技術基準」と同じ「放水量 × 時間 × 個数」のパターンなので、セットで覚えましょう。

スプリンクラー設備の技術基準 ─ 4本柱
ヘッドの配置
取付面の高さ
ヘッド間距離
防護面積
放水性能
放水量
放水圧力
散水パターン
水源水量
同時開放個数
放水時間20分
計算方法
付属設備
送水口
制御弁・末端試験弁
補助散水栓

ヘッドの配置基準 ─ 「どこに、どれだけ付けるか」

取付面の高さ制限

スプリンクラーヘッドは天井面に取り付けますが、天井が高すぎるとヘッドに届く熱が弱くなり、作動が遅れます。そのため閉鎖型ヘッドには取付面の高さ制限があります。

ヘッドの種類 取付面の高さ 理由
閉鎖型(標準型・高感度型) 10m以下 熱が届く範囲
開放型 制限なし 感知器が別にある
放水型 10m超に対応 大空間専用設計

閉鎖型ヘッドは自分自身の感熱体で火災を検知するため、天井が10mを超えると熱が十分に届かず作動しない可能性があります。一方、開放型は別途設置された感知器の信号で一斉開放するため、取付面の高さに制限がありません。

天井高10mを超えるアトリウムや大型倉庫には、放水型スプリンクラーヘッド(「スプリンクラー設備の全体像と方式」で解説)を使用します。

ヘッドの配置間隔と防護面積

ヘッドは防護対象のすべての部分をカバーするように配置しなければなりません。配置を決める2つのポイントは:

  • ヘッド1個あたりの防護面積 ── 1つのヘッドがカバーできる床面積の上限
  • ヘッドから壁・障害物までの距離 ── 散水が届く範囲に収める

防護面積は建物の構造(耐火構造かどうか)と用途によって異なります。

防護面積の考え方
耐火建築物:火災の拡大が遅い → ヘッド1個の防護面積を広くできる
それ以外:火災の拡大が速い → ヘッド1個の防護面積を狭くする(=多くのヘッドが必要)

つまり、耐火建築物はヘッドの必要個数が少なくて済み、木造などの建物はヘッドの密度を高くする必要があるということです。

ヘッドの取付位置の注意点

ヘッドの取付位置にはいくつかの細かいルールがあります。

  • 天井面との距離:ヘッドのデフレクター(散水板)は天井面から30cm以内に取り付ける
  • 壁からの距離:壁に近すぎると散水パターンが偏る。壁から適切な距離を確保
  • 梁や障害物:梁の下面から60cm以上離す(梁が散水を遮るのを防ぐ)
  • 照明器具・ダクト:散水の障害となる物から離して設置
なぜ30cm以内なのか?
火災時の熱気流は天井面に沿って広がります。ヘッドが天井から離れすぎていると、この熱気流がヘッドに届かず、感熱体の作動が遅れてしまいます。だから「天井にできるだけ近く」が基本です。

放水性能 ─ 「どれだけの水をどんな圧力で出すか」

閉鎖型ヘッドの放水量と放水圧力

ヘッドの種類 放水量 放水圧力
標準型ヘッド 80 L/min以上 0.1 MPa以上
1.0 MPa以下
小区画型ヘッド 50 L/min以上 0.1 MPa以上
1.0 MPa以下
高感度型(QR)ヘッド 80 L/min以上 0.1 MPa以上
1.0 MPa以下

屋内消火栓との放水性能の違い

屋内消火栓の技術基準」と比較してみましょう。

比較項目 屋内消火栓(1号) スプリンクラー(標準型)
1個あたりの放水量 130 L/min 80 L/min
同時使用個数 最大2個 8〜10個
合計放水量 260 L/min 640〜800 L/min
圧力上限 0.7 MPa 1.0 MPa

スプリンクラーは1個あたりの放水量は屋内消火栓より少ないですが、同時に多くのヘッドが開放するため、合計の放水量ははるかに大きくなります。

また、圧力の上限が1.0 MPa(屋内消火栓は0.7 MPa)と高いのは、スプリンクラーは人が直接ホースを構えるわけではなく、反動力を気にする必要がないからです。

水源水量の計算 ─ 「何m³の水を確保するか」

計算の基本式

屋内消火栓と同じ考え方です。

水源水量 = 放水量 × 20分 × 同時開放個数
放水時間は20分が基準
同時開放個数は建物の構造・用途で決まる

ヘッド1個あたりの必要水量

ヘッドの種類 計算 1個あたり
標準型・高感度型 80 × 20 = 1,600 L 1.6 m³
小区画型 50 × 20 = 1,000 L 1.0 m³

同時開放個数 ─ 一度に何個開くと想定するか

閉鎖型ヘッドは火元のものから順に開放しますが、設計上は「一度にN個が開放する」と想定して水源を確保します。このNが同時開放個数です。

区分 同時開放個数
一般の防火対象物 10個
耐火建築物で一定条件を満たすもの 8個
小区画型ヘッドを使用する場合 4個

耐火建築物のほうが同時開放個数が少ないのは、火災の拡大が遅く、一度に多くのヘッドが開放する可能性が低いからです。

水源水量の計算例

計算例①:標準型ヘッド・一般建築物(10個)
水源水量 = 1.6 m³ × 10個 = 16.0 m³
計算例②:標準型ヘッド・耐火建築物(8個)
水源水量 = 1.6 m³ × 8個 = 12.8 m³
計算例③:小区画型ヘッド(4個)
水源水量 = 1.0 m³ × 4個 = 4.0 m³

屋内消火栓の水源水量(1号消火栓で5.2 m³)と比べると、スプリンクラーのほうがはるかに大量の水が必要です。同時開放個数が多い分、大きな水槽を用意しなければなりません。

ポンプの吐出量

ポンプは同時開放するすべてのヘッドに規定の放水量を供給できなければなりません。

ポンプ吐出量 = 放水量 × 同時開放個数
区分 計算 必要吐出量
標準型・一般(10個) 80 × 10 800 L/min以上
標準型・耐火(8個) 80 × 8 640 L/min以上
小区画型(4個) 50 × 4 200 L/min以上

ポンプの全揚程は「配管の流体力学」で学んだ H = h₁(落差)+ h₂(摩擦損失)+ h₃(放水圧力)で計算します。スプリンクラーは配管が長く、高層建物では落差も大きいため、全揚程は屋内消火栓より大きくなるのが一般的です。

付属設備 ─ 「スプリンクラーを支える脇役たち」

送水口 ─ 消防隊が外部から水を送り込む接続口

送水口のしくみ
消防ポンプ車(外部)
ホースで接続
送水口(1階外壁面・双口型)
配管に直接送水
スプリンクラー配管(各階へ)

送水口は建物の1階の外壁面または屋外に設置される、消防隊専用の接続口です。

  • 双口型(そうこうがた)── 2つの接続口が並んだ形式が標準
  • 目的 ── 建物内のポンプが故障したり、水源が枯渇した場合に、消防ポンプ車から直接配管に水を送り込む
  • 常時使用するものではない ── あくまで緊急時のバックアップ

送水口には「スプリンクラー送水口」と表示し、見やすい場所に設置します。消防隊が建物に到着してすぐに見つけられることが重要だからです。

制御弁 ─ 階ごとに水を止める弁

  • 各階ごとに設置する(原則)
  • 目的:特定の階の配管だけを止めて点検・修理を行うため
  • 常時は「開」の状態で管理する(閉じていると放水できない)
  • 制御弁の場所には標識を設ける

制御弁が「閉」のまま放置されると、その階のスプリンクラーは火災時に作動しません。定期点検で制御弁が「開」であることを確認するのは重要なチェック項目です。

末端試験弁 ─ 配管の末端で動作を確認する弁

末端試験弁は試験で最も出題されるスプリンクラーの付属設備です。

末端試験弁とは
設置場所:配管の最も遠い末端(ポンプから最も離れた位置)
構成:試験弁 + 圧力計 + 排水管
オリフィス:ヘッド1個分の放水量と同等の水を流すための絞り

末端試験弁で確認する3つのこと

  1. 流水検知装置(アラーム弁)の作動 ── 水が流れたことを正しく検知するか
  2. ポンプの自動起動 ── 流水検知装置の信号でポンプが自動起動するか
  3. 末端の放水圧力 ── 最も遠い地点でも規定の放水圧力(0.1 MPa以上)を確保できるか
なぜ「末端」なのか?
ポンプから最も遠い場所が最も圧力が低くなる場所です(「配管の流体力学」で学んだ摩擦損失のため)。ここで規定の圧力が出ていれば、それより近い場所はすべてOKということ。最も条件の悪い場所で確認するのが末端試験弁の意義です。

補助散水栓 ─ ヘッドが届かない場所をカバー

スプリンクラーヘッドは天井面に設置するため、ヘッドの散水が行き届かない場所が出てくることがあります。

  • 押入れ・クローゼットの中
  • 天井裏の一部
  • 小さな機械室

こうした場所をカバーするために設置するのが補助散水栓(ほじょさんすいせん)です。見た目は小型の消火栓で、ホースとノズルが収められています。

  • 放水性能:60 L/min以上、0.25 MPa以上(2号消火栓と同等)
  • ホース長さ:防護対象をカバーする長さ
  • 1人で操作可能

「スプリンクラーの手が届かない場所を、人の手で補う」設備というわけです。

非常電源

屋内消火栓と同様に、停電時にもポンプを動かせるよう非常電源が必要です。

非常電源の種類 容量
自家発電設備 40分以上
蓄電池設備 30分以上

まとめ

この記事のポイント
1. 取付面の高さ ── 閉鎖型ヘッドは10m以下。10m超は放水型を使用
2. 放水性能 ── 標準型80 L/min以上、小区画型50 L/min以上。放水圧力0.1〜1.0 MPa
3. 水源水量 ── 放水量 × 20分 × 同時開放個数。標準型10個なら16 m³
4. 同時開放個数 ── 一般10個、耐火建築物8個、小区画型4個
5. 送水口 ── 1階外壁の双口型。消防隊が外部から送水するバックアップ
6. 末端試験弁 ── 最も遠い末端でアラーム弁の作動・ポンプ起動・圧力を確認
7. 補助散水栓 ── ヘッドが届かない場所をカバー。2号消火栓と同等の性能

理解度チェック!確認問題

問1:閉鎖型スプリンクラーヘッドの取付面の高さについて、正しいものはどれか。

(1)5m以下でなければならない
(2)10m以下でなければならない
(3)15m以下でなければならない
(4)制限はない

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正解:(2)10m以下でなければならない
閉鎖型ヘッドは自身の感熱体で火災の熱を検知するため、天井が高すぎると熱が十分に届かず作動が遅れます。そのため取付面の高さは10m以下と定められています。10mを超える大空間には放水型ヘッドを使用します。(4)の「制限なし」は開放型ヘッドの場合です。

問2:標準型スプリンクラーヘッドを使用し、耐火建築物で同時開放個数が8個の場合、必要な水源水量はいくらか。

(1)4.0 m³
(2)8.0 m³
(3)12.8 m³
(4)16.0 m³

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正解:(3)12.8 m³
標準型ヘッド1個あたりの必要水量 = 80 L/min × 20分 = 1,600 L = 1.6 m³。同時開放個数8個なので、水源水量 = 1.6 × 8 = 12.8 m³。(1)は小区画型4個の場合、(4)は一般建築物10個の場合です。

問3:末端試験弁について、誤っているものはどれか。

(1)配管の最も遠い末端に設置する
(2)流水検知装置の作動を確認できる
(3)末端試験弁を開くとポンプが自動起動する
(4)実際にスプリンクラーヘッドを開放して試験する

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正解:(4)実際にスプリンクラーヘッドを開放して試験する ← これが誤り
末端試験弁はヘッドを開放せずに試験を行う設備です。弁にはオリフィス(絞り)が設けられていて、ヘッド1個分と同等の水量を流すことで、流水検知装置の作動やポンプの自動起動を確認します。実際にヘッドを開放してしまうと散水による水損が発生し、ヘッドの交換も必要になるため、末端試験弁で代替するのです。

問4:スプリンクラー設備の送水口について、正しいものはどれか。

(1)送水口は建物の最上階に設置する
(2)送水口は常時使用し、ポンプの補助として水を送る
(3)送水口は双口型とし、建物の1階の外壁面に設置する
(4)送水口は建物内部の防災センターに設置する

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正解:(3)送水口は双口型とし、建物の1階の外壁面に設置する
送水口は消防隊が建物の外から消防ポンプ車で送水するための接続口です。消防車がアクセスしやすい1階の外壁面に、2本のホースを同時に接続できる双口型で設置します。(1)は最上階ではなく1階、(2)は常時使用するものではなくバックアップ用、(4)は外壁面であり防災センター内ではありません。

問5(応用):スプリンクラー設備の放水圧力の上限(1.0 MPa)が屋内消火栓設備(0.7 MPa)より高い理由として、最も適切なものはどれか。

(1)スプリンクラーのほうが高い位置に設置されるため、圧力損失を補う必要があるから
(2)スプリンクラーは人が直接ホースを構えないため、反動力の心配がないから
(3)スプリンクラーの配管は屋内消火栓より太いため、高い圧力に耐えられるから
(4)スプリンクラーのほうが水源水量が多いため、高圧で送水する必要があるから

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正解:(2)スプリンクラーは人が直接ホースを構えないため、反動力の心配がないから
屋内消火栓は人がホースを構えて放水するため、圧力が高すぎると反動力で操作者が制御できなくなります。上限0.7 MPaはこの安全限界です。一方、スプリンクラーは天井のヘッドから自動で散水するため、人が反動力を受けることはありません。そのため上限を1.0 MPaまで引き上げられるのです。(1)は圧力損失の補填は全揚程で考慮するもので上限とは別の話、(3)は配管口径と耐圧の話、(4)は水源水量と圧力上限は直接関係しません。

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