甲種1類/乙種1類

甲種1類の水力計算|全揚程・吐出量・水源水量の解き方

甲種第1類の製図計算では、図面と問題文から条件を拾い、屋内消火栓設備などに必要なポンプの全揚程、吐出量、水源水量を求めます。

この記事では、消防試験研究センターが公開する甲種第1類の問題と解答をもとに、計算欄へどのように式を組み立てるかを順番に確認します。図面そのものの読み方は「甲種1類の製図の基礎」を先に参照してください。

この記事の範囲:公式公開問題で確認できる1号消火栓設備の計算を中心に扱います。問題文で与えられていない配管損失、流速、管内径、採点方法を推測で補いません。

最初に3種類の数値へ分ける

計算を始める前に、使用する数値を次の3種類へ分けます。

数値の出所 確認方法
問題文で与えられる値 ホース・配管の摩擦損失水頭 単位、継手・弁を含むかを読む
図面から読む値 基準水面から最高位消火栓までの高さ 床高さと開閉弁の高さを確認する
法令に基づく値 必要圧力水頭、ポンプ吐出量、水源水量 設備種別と算定個数を確認する

この区分を答案用紙の余白へ書き出すと、同じ損失を二重に足すことや、放水量とポンプ吐出量を取り違えることを防ぎやすくなります。

公式公開問題の計算結果

消防試験研究センターが公開する甲種第1類の製図問題には、1号消火栓設備の配管系統図から、全揚程、ポンプ吐出量、水源水量を求める例があります。

公開されている条件と解答を、計算項目ごとに整理すると次のとおりです。

項目 計算式 答え
全揚程 7.8+5+20+17 49.8m
ポンプ吐出量 150×2 300L/min以上
水源水量 2.6×2 5.2m³以上

以降では、それぞれの式を分解します。

全揚程の解き方

4つの水頭を足す

公開問題の1号消火栓設備では、次の4項目を足しています。

  • ホースの摩擦損失水頭:7.8m
  • 配管の摩擦損失水頭:5m
  • 最高位消火栓までの落差:20m
  • ノズル先端で必要な圧力に対応する水頭:17m

全揚程 H

H = ホース損失 + 配管損失 + 高低差 + 必要圧力水頭

H = 7.8 + 5 + 20 + 17 = 49.8m

公開問題では小数点以下第1位まで求めるよう指定されており、公式解答は49.8mです。計算後に独自判断で50mへ切り上げません。

記号の名前だけで判断しない

公開問題では、ホース損失、配管損失、落差にそれぞれ記号が付いています。しかし、h1・h2・h3などの使い方は教材や問題によって異なる場合があります。

「h1は常に実揚程」と暗記するのではなく、問題文にある記号の定義を読みます。答案には、与えられた記号または数値を使って、何を加えたか分かる式を書きます。

0.17MPaと17mの関係

1号消火栓は、ノズル先端の放水圧力を0.17MPa以上とする基準があります。公開問題の全揚程計算では、これに対応する圧力水頭として17mを加えています。

一般的な学習上は0.1MPaを約10mの水頭として換算します。ただし、厳密な換算値や必要な桁数は問題の指定に従います。

ポンプ吐出量の解き方

1号消火栓は150L/minを使う

消防法施行規則第12条第1項第7号ハは、ポンプの吐出量を、屋内消火栓の設置個数(2を超える場合は2)に150L/minを乗じた量以上としています。

算定個数が2個の場合は次のとおりです。

150L/min × 2 = 300L/min以上

130L/minと150L/minを区別する

数値 意味 使う場面
130L/min以上 1号消火栓のノズル先端で求める放水量 放水性能、水源水量との関係
150L/min×算定個数 ポンプに求める吐出量 加圧送水装置の能力

「130×2=260L/min」は水源水量の由来を考えるときには現れますが、1号消火栓のポンプ吐出量の答えではありません。公式公開問題も150×2=300L/minを正答としています。

算定個数の上限

1号消火栓では、屋内消火栓の設置個数が最も多い階の個数を使い、2個を超える場合は2個として計算します。

最も多い階の設置個数 算定個数 ポンプ吐出量
1個 1個 150L/min以上
2個 2個 300L/min以上
3個以上 2個 300L/min以上

水源水量の解き方

1号消火栓の水源水量は、屋内消火栓の設置個数(2を超える場合は2)に2.6m³を乗じた量以上です。

2.6m³ × 2 = 5.2m³以上

2.6m³は、1号消火栓の放水量130L/minを20分間確保する水量と対応します。

  • 130L/min × 20分 = 2,600L
  • 2,600L = 2.6m³

ここでも、算定個数は最も多い階の個数を使い、2個を超える場合は2個です。建物全体にある消火栓の総数を掛けません。

摩擦損失を自分で計算する問題

消防庁告示第32号を基準にする

消防法施行規則第12条第1項第7号チは、配管の摩擦損失計算を消防庁長官が定める基準によるものとしています。具体的な基準は、消防庁告示第32号「配管の摩擦損失計算の基準」です。

告示では、次の情報を使って配管の大きさの呼びごとに摩擦損失水頭を求め、各区間を合計します。

  • 配管内を流れる水または泡水溶液の流量
  • 管の種別と基準内径
  • 直管の長さ
  • 管継手・バルブ類の種類と等価管長
  • 流水検知装置を使用する場合は、その損失

区間ごとの計算手順

  1. 水源から計算対象の放水口までの経路を決める。
  2. 流量または管の呼びが変わる箇所で区間を分ける。
  3. 各区間の流量、管種、呼び、直管長を整理する。
  4. 継手とバルブを、告示の表に従って等価管長へ換算する。
  5. 区間ごとの摩擦損失水頭を求め、最後に合計する。

注意:等価管長を「直管長の10〜30%」などの固定割合で加える基準ではありません。管種・呼び・継手・バルブの種類に応じ、告示の表または問題文で与えられた値を使います。

問題文が「配管の摩擦損失水頭は、継手・弁を含み5m」と与えている場合は、その5mを使います。継手分をもう一度足すと二重計上になります。

サイト作成の演習問題

次は、計算手順を確認するための当サイト作成問題です。公式公開問題そのものではありません。

条件

  • 設備:1号消火栓
  • ホースの摩擦損失水頭:6.4m
  • 配管の摩擦損失水頭:継手・弁を含み4.2m
  • 最高位消火栓までの落差:18.5m
  • 最も多い階の消火栓設置個数:3個

設問1:全揚程

1号消火栓の必要圧力水頭17mを加えます。

6.4+4.2+18.5+17=46.1m

設問2:ポンプ吐出量

設置個数は3個ですが、算定個数の上限は2個です。

150×2=300L/min以上

設問3:水源水量

水源水量も2個を上限として算定します。

2.6×2=5.2m³以上

間違いやすい箇所

誤り 確認すること
ポンプ吐出量を130×2とする 1号消火栓のポンプ吐出量は150×算定個数
建物全体の消火栓数を掛ける 最も多い階の個数を使い、2個超は2個
継手・弁の損失を二重に足す 問題文の損失値に含まれる範囲を読む
記号だけで項目を決める 問題ごとのh1・h2・h3の定義を読む
答えを独自に切り上げる 指定された単位と小数桁に従う
摩擦損失に固定割合を使う 告示の表または問題文の値を使う

確認問題

問題1:1号消火栓が最も多い階に4個ある場合、ポンプ吐出量は何L/min以上か。

解答を見る

300L/min以上です。算定個数は2個が上限なので、150×2で求めます。

問題2:1号消火栓が最も多い階に1個だけある場合、水源水量は何m³以上か。

解答を見る

2.6m³以上です。2.6×1で求めます。

問題3:配管損失5mが「継手・弁を含む」と示されているとき、別に継手の等価管長を加算するか。

解答を見る

加算しません。与えられた5mに含まれているため、さらに足すと二重計上になります。

まとめ

  • 数値を「問題文」「図面」「法令」の3種類に分ける。
  • 公式公開問題の全揚程は7.8+5+20+17=49.8m。
  • 1号消火栓のポンプ吐出量は150L/min×算定個数。
  • 1号消火栓の水源水量は2.6m³×算定個数。
  • 設置個数が最も多い階の個数を使い、2個超は2個とする。
  • 摩擦損失は消防庁告示第32号または問題文で与えられた条件に従う。

次は「甲種1類ロードマップ」で、構造・法令・鑑別・製図の学習順序を確認してください。水力計算の基礎式は「配管の流体力学」、屋内消火栓の種類は「屋内消火栓の構造と機能」で整理しています。

参考資料

独学が不安な方へ

※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。

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