結論:自火報は「感知→伝達→警報」の3ステップで命を守る
結論から言います。
自動火災報知設備(自火報)とは、火災の発生を自動的に感知し、受信機に信号を送り、建物全体に警報を鳴らすシステムです。人が火災に気づいて通報するよりも圧倒的に速く、初期段階で建物中の人に避難を促せます。
甲種4類は、この自火報を工事・整備できる資格です。試験ではシステム全体の構成と信号の流れが繰り返し出題されます。まずは全体像をしっかり掴みましょう。
自火報を構成する機器
自火報は、以下の6つの機器で構成されています。
各機器の役割をもう少し詳しく
感知器は、火災が起こったことを最初にキャッチする「目」です。熱感知器・煙感知器・炎感知器があり、設置場所の環境に合わせて使い分けます(詳しくは別記事で解説します)。
発信機は、人が火災を発見したときに手動で押すボタンです。感知器が自動で検出する前に人が気づいた場合の「非常ベル」のような役割を果たします。押し込み式(P型発信機)が一般的です。
受信機は、自火報の心臓部です。感知器や発信機からの信号を受けて、火災が起きた場所(警戒区域)を表示し、地区音響装置を鳴動させます。防災センターや管理人室など、常時人がいる場所に設置します。
中継器は、感知器と受信機の距離が遠い場合や、信号の種類を変換する必要がある場合に使います。小規模な建物では使わないこともあります。
地区音響装置は、建物にいる人に火災を知らせるベルやサイレンです。受信機からの指令で鳴動します。
表示灯は、発信機の位置を知らせるための赤いランプです。火災時にパニック状態でも発信機の場所がすぐわかるように、常時点灯しています。
信号の流れ
実際に火災が発生したとき、自火報がどのように動作するか、信号の流れを追ってみましょう。
自動感知の場合
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② 感知器が作動 → 火災信号を発信(回線の電流変化など)
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③ 受信機が受信 → 火災灯(赤ランプ)点灯+地区表示(どの区域か表示)
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④ 地区音響装置が鳴動 → ベル・サイレンが全館に鳴り響く
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⑤ 管理者が確認 → 受信機の表示で火災場所を特定 → 消防機関へ通報・避難誘導
手動発信の場合
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② 発信機が作動 → 火災信号を受信機に送信+応答ランプ点灯
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③ 受信機が受信 → 自動感知と同じ処理(火災灯+地区表示+音響鳴動)
発信機を押した場合も、その先の処理は感知器が作動した場合とまったく同じです。受信機から見れば、「どちらも同じ回線に火災信号が来た」ということになります。
P型とR型 ― 2つのシステム方式
自火報には大きく分けてP型とR型の2つの方式があります。
P型の仕組み
P型は、警戒区域ごとに1本の回線を引く方式です。たとえば10の警戒区域がある建物なら、受信機から10本の回線が出ます。
ある回線の感知器が作動すると、その回線に電流が流れ、受信機は「この回線(=この区域)で火災が起きた」と判断します。
ただし、同じ回線上のどの感知器が作動したかまではわかりません。「3階東側」はわかるが、「3階東側の会議室A」か「3階東側の給湯室」かまでは特定できない、ということです。
R型の仕組み
R型は、感知器1つ1つに固有のアドレス(番号)が割り振られています。感知器が作動すると、「アドレス○○番の感知器が火災を検出しました」というデジタル信号を中継器経由で受信機に送ります。
受信機は「どの感知器か」まで特定できるため、火災の場所をピンポイントで表示できます。
P型とR型の比較
| 項目 | P型 | R型 |
|---|---|---|
| 信号方式 | 回線ごとの電流変化 | アドレス付きデジタル信号 |
| 火災場所の特定 | 警戒区域まで | 感知器単位まで |
| 配線 | 区域ごとに専用回線 | 共通の伝送路 |
| 規模 | 小〜中規模向け | 大規模向け |
| コスト | 比較的安い | 高い(機器が高性能) |
試験ではP型が中心です。P型1級・P型2級の違いは受信機の記事で詳しく解説します。
配線の基本構成
自火報の配線は、信号を送る線と電力を供給する線に分かれます。
主な配線の種類
| 配線 | 役割 |
|---|---|
| 感知器回線 | 感知器の火災信号を受信機に伝える |
| 地区音響回線 | 受信機から地区音響装置へ鳴動の指令を送る |
| 表示灯回線 | 表示灯への電源供給 |
| 電源回線 | 受信機への常用電源供給 |
末端抵抗(終端抵抗)
P型の感知器回線には、回線の一番末端に終端抵抗(末端抵抗)を取り付けます。
なぜ終端抵抗が必要なの?
終端抵抗がないと、回線が断線しても受信機が気づけないからです。
正常時は終端抵抗を通じて微小な電流(監視電流)が流れています。もし途中で断線すると電流が途切れるため、受信機は「断線した」とすぐに判断できます。これが断線監視です。
電源 ― 常用電源と予備電源
自火報は火災時に確実に動かなければなりません。そのため、電源は二重化されています。
予備電源の容量
予備電源は、停電後も一定時間は自火報を動作させ続ける必要があります。
| 状態 | 必要時間 |
|---|---|
| 監視状態 | 10分間以上 |
| その後の作動(警報) | 10分間以上 |
つまり、停電しても最低20分間は自火報が動作できるだけの蓄電池が必要です。「監視10分+作動10分」は試験頻出の数字です。
なぜ「専用回路」なの?
常用電源は分電盤から専用の回路で供給しなければなりません。他の機器と同じ回路にしてしまうと、他の機器のブレーカーが落ちたときに自火報の電源も一緒に落ちてしまうからです。火災時に確実に動くための基本中の基本です。
自火報と他の設備の連動
自火報は単独で動くだけでなく、他の消防設備と連動して動作することがあります。
| 連動先 | 動作内容 |
|---|---|
| 防火戸・防火シャッター | 煙感知器の信号で自動閉鎖 |
| 排煙設備 | 煙感知器の信号で排煙口開放 |
| 消防機関へ通報する火災報知設備 | 受信機からの信号で自動通報 |
| 非常放送設備 | 受信機からの信号で避難誘導放送 |
自火報が「火災を感知して知らせる」だけでなく、建物全体の安全システムの起点になっていることがわかります。これが「自火報=消防設備の要」と言われる理由です。
全体像のまとめ
信号の流れ:感知器/発信機 → 受信機 → 地区音響装置
方式:P型(回線方式)とR型(アドレス方式)
配線:感知器回線には末端に終端抵抗(断線監視)
電源:常用電源(AC100V専用回路)+予備電源(蓄電池:監視10分+作動10分)
連動:防火戸・排煙・通報設備・非常放送と連携
まとめ問題
問題1:自動火災報知設備の構成機器のうち、火災信号を受けて火災の発生場所を表示し、地区音響装置を鳴動させる機器として、正しいものはどれか。
(1)感知器
(2)発信機
(3)受信機
(4)中継器
問題2:P型の感知器回線の末端に終端抵抗を設ける目的として、正しいものはどれか。
(1)感知器の誤作動を防止するため
(2)感知器の感度を調整するため
(3)配線の断線を監視するため
(4)受信機の消費電力を抑えるため
問題3:自動火災報知設備の予備電源に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)予備電源は、常用電源と同じ回路から供給してよい
(2)予備電源の容量は、監視状態で10分間以上、その後の作動状態で10分間以上である
(3)予備電源には、乾電池を使用することができる
(4)常用電源が正常であれば、予備電源を設けなくてもよい
問題4(応用):P型とR型の自動火災報知設備に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)P型は、警戒区域ごとに専用の回線を設ける方式である
(2)R型は、感知器に固有のアドレスを持たせ、個々の感知器を識別できる方式である
(3)P型は、どの感知器が作動したかを受信機で個別に特定できる
(4)R型は、大規模な建物に適している