甲種5類/乙種5類

緩降機・救助袋の構造|調速器・降下速度・垂直式と斜降式

緩降機(かんこうき)と救助袋は、どちらも消防設備士第五類が扱う避難器具です。ただし、構造の根拠や検定制度上の扱いは同じではありません。

先に押さえる3点

  • 緩降機は、調速器・調速器の連結部・ロープ・着用具で構成される。
  • 救助袋には垂直式と斜降式があり、速度や出口付近の取手数などの基準が異なる。
  • 検定対象は緩降機。救助袋は第五類の対象だが、検定品目ではない。

甲種第五類は金属製避難はしご・救助袋・緩降機の工事又は整備、乙種第五類は同じ3種類の整備を行えます。第五類の対象全体や設置義務の読み方は「避難器具の全体像」で確認してください。

緩降機と救助袋の違い

項目 緩降機 救助袋
降下の方法 着用具で身体を保持し、自重と調速器の働きで降下する 垂直又は斜めに展張した袋本体の内部を滑り降りる
主な根拠 緩降機の技術上の規格を定める省令 消防庁告示「避難器具の基準」
検定 検定対象 検定対象ではない

第五類の対象であることと、消防法上の検定品目であることは別の話です。ここを一括して覚えないようにしましょう。

緩降機の構造と仕組み

緩降機の法令上の定義

「緩降機の技術上の規格を定める省令」第2条は、緩降機を、使用者が他人の力を借りず、自重によって自動的に連続交互に降下できる機構を持つものと定義しています。

ロープの両端に着用具が連結され、一方の使用者が降下すると反対側の着用具が上がります。「連続交互」は、この動きを表す重要な語です。

4つの基本構成

省令第3条が挙げる構成は、次の4つです。

部品 役割・基準の要点
調速器 降下速度を一定の範囲に調節する装置
調速器の連結部 取付け具と調速器を連結する部分
ロープ しんは耐食加工したワイヤロープ、外装は綿糸又はポリエステル
着用具 使用者が着用し、身体を保持する用具

旧記事ではロープを単に「鋼製ワイヤーロープ」としていました。しかし、省令が示すロープは、ワイヤロープのしんに綿糸又はポリエステルの外装を施す構成です。

固定式と可搬式

  • 固定式緩降機:常時、取付け具に固定して使用するもの
  • 可搬式緩降機:使用時に取付け具へ取り付けるもの

可搬式は、調速器の質量が10kg以下で、安全環によって取付け具へ確実かつ容易に取り付けられる構造でなければなりません。

調速器に求められること

省令第4条は、調速器について次のような要求を置いています。

  • 堅ろうで耐久性があること
  • 常時分解掃除などをしなくても作動すること
  • 降下時に発生する熱で機能に異常を生じないこと
  • 降下時にロープを損傷しないこと
  • 砂などの異物が容易に入らない措置があること
  • カバーが堅固で、ロープがプーリーなどから外れないこと

現在の消防試験研究センターの甲種公式公開問題でも、調速器について「規格省令に定められている事項」を見分ける問題が掲載されています。内部のブレーキ方式を一律に断定するより、まず省令の要求事項を正確に押さえるのが安全です。

最大使用荷重と降下速度

項目 省令上の基準
最大使用荷重 最大使用者数 × 1,000N以上
強度試験 最大使用荷重の3.9倍に相当する静荷重を5分間加える
降下速度 所定の荷重で16cm/秒以上150cm/秒以下
繰返し時の速度 20回の平均降下速度の80%以上120%以下

「使用荷重100kg」と丸暗記するのではなく、省令の表現は最大使用者数に1,000Nを乗じた値以上です。1人用なら最大使用荷重は1,000N以上になります。

降下速度試験では、250N、最大使用者数に応じた650Nの荷重、最大使用荷重に相当する荷重を左右交互に加えます。いずれも16cm/秒以上150cm/秒以下であることが求められます。

安全率10・4という整理には注意
旧記事は「ロープの安全率10、取付金具の安全率4」としていましたが、現行の緩降機規格は、最大使用荷重に対する3.9倍の強度試験や、着用具のベルトに対する6.5倍の引張荷重など、部位ごとに具体的な試験条件を定めています。根拠の異なる数値を一組の安全率として扱わないようにしてください。

救助袋の構造と仕組み

垂直式と斜降式

消防庁告示「避難器具の基準」は、救助袋を、使用時に垂直又は斜めに展張し、袋本体の内部を滑り降りるものと定義しています。

救助袋は、入口金具・袋本体・緩衝装置・取手・下部支持装置などで構成されます。ただし、強い降着衝撃を受けるおそれがないものは緩衝装置を、垂直式は下部支持装置を設けないことができます。

項目 垂直式 斜降式
展張方向 垂直 斜め
平均滑降速度 毎秒4m以下で、途中停止せず連続滑降できる 毎秒7m以下で、途中停止せず連続滑降できる
出口付近の取手 4個以上 6個以上
下部支持装置 設けないことができる 袋本体を確実に支持し、容易に操作できるものが必要

垂直式の基準

  • 入口は、直径50cm以上の球体が通過できること
  • 袋本体は、途中で停止せず連続して滑り降りられること
  • 滑降部は、布を重ねた二重構造、外面に網目の辺が5cm以下の無結節網を付けた構造、又は同等の落下防止性能を持つ構造であること
  • 出口付近に4個以上の取手を左右均等に取り付けること
  • 袋本体の下端に、直径4mm以上で、袋本体の全長に4mを加えた長さ以上の誘導綱を取り付けること
  • 誘導綱の先端に、夜間に識別しやすい300g以上の砂袋などを取り付けること

垂直式を必ず「内袋がらせん状の二重構造」と説明するのは正確ではありません。告示は落下防止の方法として、二重構造だけでなく外面の網や、同等の性能を持つ別構造も認めています。

斜降式の基準

  • 展張時によじれや片だるみがないこと
  • 滑り降りる方向に縫い合わせ部を設けないこと
  • 降着部に受布と保護マットを取り付けること
  • 本体布と展張部材を下部支持装置へ強固かつ均等に取り付けること
  • 出口付近に6個以上の取手を左右対称に取り付けること

斜降式を「高齢者や身体の不自由な人に適する」と一律に決める規定はありません。建物ごとの器具選定や実際の避難計画は、用途・階・収容人員・設置場所・利用者の状況を含め、所轄消防機関や有資格者と確認する必要があります。

操作面積と降下空間

消防庁告示「避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目」は、避難器具用ハッチに格納したものを除く救助袋について、設置部分を含む操作面積を幅1.5m以上・奥行1.5m以上としています。操作に支障のない範囲で形を変える場合も、2.25m2以上が必要です。

現在の乙種公式公開問題にも、この操作面積を確認する問題があります。緩降機・垂直式救助袋・斜降式救助袋では降下空間も異なるため、寸法は「降下空間・操作面積」で器具別に整理してください。

検定対象は緩降機

日本消防検定協会が公表する検定品目のうち、避難設備は金属製避難はしごと緩降機です。救助袋はこの検定品目一覧に含まれません。

  • 緩降機:型式承認と型式適合検定の対象
  • 救助袋:第五類の工事整備対象設備だが、検定品目ではない

「第五類の対象3種類はすべて検定品」という覚え方は誤りです。

公式公開問題から見える確認ポイント

消防試験研究センターが現在公開している問題では、第五類について次のような論点を確認できます。

  • 甲種:緩降機の調速器に求められる構造
  • 甲種実技:1人用緩降機の取付け具にかかる基本荷重とアンカー計算
  • 乙種:救助袋の操作面積
  • 乙種:操作面積・降下空間・避難空地・避難通路の用語

公式問題を転載したものではありません。出題例から学習項目を要約しています。公開問題は年度固定の全問題集ではないため、「必ず出る」「最頻出」といった断定も避けましょう。

まとめ

  • 緩降機は、自重により自動的に連続交互に降下できる機構を持つ。
  • 緩降機は、調速器・調速器の連結部・ロープ・着用具で構成される。
  • 最大使用荷重は最大使用者数×1,000N以上、降下速度は所定の試験で16cm/秒以上150cm/秒以下。
  • 救助袋は垂直式と斜降式に分かれ、平均滑降速度はそれぞれ毎秒4m以下、毎秒7m以下。
  • 垂直式の落下防止構造は二重構造だけに限定されない。
  • 検定対象は緩降機。救助袋は第五類の対象だが検定品目ではない。

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参考資料・一次情報

本記事は試験学習用の整理です。個別の建物における設置・工事・整備は、現行法令、製品の取扱説明書、設計図書、所轄消防機関の指導に従ってください。

※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。図や画像だけで機器を判断せず、製品表示・取扱説明書・公式資料を確認してください。

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