甲種5類/乙種5類

避難器具8種類と安全な使い方|避難はしご・緩降機・救助袋

マンションのバルコニーにある金属製のふたは、避難器具用ハッチです。内部には金属製のつり下げはしごなどが格納されています。

ただし、すべてのハッチが同じ方法で開き、同じ操作ではしごを展張するわけではありません。避難器具は製品・設置方法・建物の避難計画によって使い方が異なります。この記事では、法令上の8種類を整理したうえで、避難はしご・緩降機・救助袋を使う前に確認すべきことを解説します。

安全上の注意
この記事は個別製品の取扱説明書ではありません。実際の操作は、設置場所の使用方法表示、製品の取扱説明書、建物の消防計画、管理者や消防機関の指示に従ってください。訓練でも、居住者だけで無断展張・降下を行わないでください。

法令の表に登場する避難器具は8種類

消防法施行令第25条第2項第1号の表には、次の8種類が登場します。旧記事の「6種類」は誤りで、避難橋と避難用タラップも別の器具です。

器具 移動方法の概要 使用時に関係する主な部分
すべり台 傾斜した滑り面を降下する 滑り面、側板、手すり、降着部
避難はしご 横桟に足を掛けて昇降する 縦棒、横桟、取付け部、安全装置
救助袋 展張した袋本体の内部を降下する 入口、袋本体、取付け部、降着部
緩降機 着用具で身体を保持し、調速器を介して降下する 調速器、ロープ、着用具、取付け具
避難橋 橋を使って別の建築物などへ移動する 床面、手すり、支持部、接続先
滑り棒 棒を抱えて滑り降りる 棒、取付け部、降着部
避難ロープ ロープを使って降下する ロープ、取付け部、降着部
避難用タラップ 踏み段などを使って移動する 踏み段、支持部、手すりなど

この表は、8種類から好みの器具を自由に選べるという意味ではありません。設置できる器具は、防火対象物の用途区分と設置階を組み合わせて令第25条の表で確認します。詳しい読み方は「避難器具の全体像と適応表」で整理しています。

消防設備士第五類の対象は3種類

法令の表に8種類が登場する一方、消防設備士第五類の対象は金属製避難はしご・救助袋・緩降機です。消防法施行規則第33条の3は、甲種第五類をこの3設備の工事または整備、乙種第五類を整備の区分としています。

「避難器具8種類」と「第五類の対象3種類」は目的の異なる分類です。また、避難設備には避難器具だけでなく誘導灯・誘導標識も含まれます。

使う前に共通して確認する5項目

避難器具は、設置されているだけでは安全に使えません。日常の確認と、管理者が実施する訓練が重要です。

  1. 器具の場所と避難経路:自宅・勤務先のどこにあり、どこへ降り、降りた後にどこへ進むのかを確認する。
  2. 使用方法表示:ふたや格納箱の周辺にある表示を読み、開放・展張・装着の手順を確認する。
  3. 操作する場所:ハッチの上や器具の周囲に、植木鉢、物干し器具、収納箱などを置かない。
  4. 降下空間と降着場所:器具の下、壁面、下階のバルコニー、地上の避難空地に障害物がない状態を保つ。
  5. 訓練方法:管理者、消防機関、消防設備業者などの指導下で、設置製品に合った操作を確認する。

使用方法表示が読めない、ふたや格納箱が変形している、腐食や部品の脱落が見える、周囲が塞がれている場合は、勝手に操作・修理せず、建物の管理者へ連絡してください。

避難はしごの種類と使い方の考え方

金属製避難はしごは、構造上、固定はしご・立てかけはしご・つり下げはしごに区分されます。避難器具用ハッチに格納されるものは、つり下げはしごの一種です。「ハッチ用」を独立した4種類目として数えないでください。

避難ハッチに格納されたはしご

製品により、上ぶたのロック、下ぶたの開き方、はしごを展張する操作が異なります。旧記事の「ふたを開ければ自動で展開される」という一律の説明は安全ではありません。

使用時の一般的な確認順は次のとおりです。

  1. 使用方法表示を読み、器具の種類と操作手順を確認する。
  2. 下階や降下方向に人・物・火炎・煙などの危険がないか確認し、周囲へ声を掛ける。
  3. 表示された手順で上ぶたを開き、ロック解除や展張操作を行う。
  4. はしごと下ぶたが使用状態になったことを確認する。
  5. 表示された姿勢と順序で降下し、降りた後は避難経路を塞がない場所へ移動する。

これは共通する確認事項を示したもので、設置製品の操作手順を置き換えるものではありません。自宅の避難ハッチについては、管理者が行う訓練で実物の表示と操作を確認してください。

固定・立てかけ・つり下げで操作が違う

固定はしごは建築物に固定された状態、立てかけはしごは使用時に立てかける構造、つり下げはしごは取付け部につり下げて使用する構造です。安全装置や取付け方法も異なるため、避難ハッチの手順を他のはしごへ流用できません。

部品と構造は「金属製避難はしご・すべり台・その他の器具」を参照してください。

緩降機の仕組みと使い方の考え方

緩降機は、着用具で身体を保持し、使用者の自重と調速器の働きによって降下する器具です。ロープの両端に着用具があり、連続交互に使用できる機構を持ちます。

緩降機には、常時取付け具に固定されるものと、使用時に取り付けるものがあります。したがって、「アームを引き出してベルトを巻くだけ」という一律の手順にはできません。

訓練では、次の点を設置製品の表示に沿って確認します。

  • 取付け具、調速器、ロープ、着用具の位置
  • 固定式か可搬式か、使用時に必要な取付け操作
  • ロープを降下側へ準備する方法と、地上の安全確認
  • 着用具を装着する正しい位置と締め方
  • 開口部から移る姿勢、降下後の着用具の外し方
  • 一度に使用できる人数と、製品表示の最大使用荷重

「体力は不要」「特別な操作は不要」「体重に関係なく同じ速度」と言い切ることはできません。着用具の誤装着、取付け不足、ロープの絡み、降下空間の障害物は重大な危険につながります。必ず指導者のいる訓練で確認してください。

救助袋は展張と地上側の準備が必要

救助袋は、使用時に垂直または斜めに展張し、袋本体の内部を滑り降りる器具です。垂直式と斜降式があり、構造・展張方法・降下空間が異なります。

救助袋は、格納状態から袋本体を展張し、取付け部、入口、降着部などを使用状態にする必要があります。種類によっては地上側での支持や誘導も関係するため、居住者が説明を読んだだけで単独展張する器具とは考えないでください。建物の消防計画に基づき、訓練を受けた担当者の指示で使用します。

垂直式をすべて「らせん状の内袋」と説明するのも正確ではありません。消防庁告示は、落下防止について複数の構造を認めています。構造の詳細は「緩降機と救助袋の構造」で確認できます。

残り5種類も共通手順では使えない

すべり台、避難橋、滑り棒、避難ロープ、避難用タラップは、移動方法も必要な姿勢も異なります。特に、すべり台を「園児なら誰でも安全」、避難ロープを「2~3階用」といった短い言葉だけで判断してはいけません。

実際の器具は、設置場所の使用方法表示と建物の避難計画に従います。施設の利用者は、管理者の誘導を受けて使用し、訓練なしに独自の方法を試さないでください。

設置義務は「2方向避難」だけでは決まらない

避難器具の設置義務は、単に「階段が1つなら必要、2つなら免除」とは決まりません。消防法施行令第25条には5つの設置基準があり、次の条件を組み合わせて階ごとに判定します。

  • 防火対象物の用途区分
  • 地階・2階・3階以上などの対象階
  • 収容人員と、用途別の算定方法
  • 下階にある用途
  • 無窓階、特定主要構造部、直通階段の数

直通階段や避難階段などによる個数の減少・設置不要の規定もありますが、構造や区画を含む複数条件があります。個別の建物は、設計図書と現地を確認して所轄消防機関へ相談してください。条文の読み方は「避難器具の設置義務」で解説しています。

マンションの住民が日常的にできること

ハッチの上下と避難経路を塞がない

避難ハッチの上に物を置くと上ぶたを開けられません。下階のハッチ周辺や降下位置に物があると、下ぶたやはしごの展張、降下後の移動を妨げます。バルコニーの避難経路を含め、管理規約と使用細則に従って常に空けておきます。

表示と器具の異常を管理者へ伝える

使用方法表示が剥がれている、文字が読めない、ふたが変形している、著しい腐食がある、周囲の改修で使いにくくなったなどの異常を見つけたら、管理会社や管理組合へ連絡します。居住者が塗装、注油、部品交換、展張試験を行うと、かえって機能を損なうことがあります。

管理者が実施する訓練に参加する

ウェブ記事を読むだけでは、ふたの重さ、ロック位置、着用具の装着、降り始めの姿勢は分かりません。消防機関や消防設備業者などが関わる訓練で、自分の建物に設置された器具と避難経路を確認してください。訓練回数を一律に「年1回」と決めつけず、その建物の消防計画に従います。

火災時は器具だけで避難方法を決めない

避難方法は、出火場所、煙や炎の状況、使用できる階段、建物の区画、居場所によって変わります。避難器具を常に最初に使う、または常に最後に使うと一律には決められません。

火災を発見したときは、自身の安全を確保できる範囲で周囲へ知らせ、119番通報し、建物の消防計画、放送、管理者、消防機関の指示に従います。避難器具を使う場合も、降下先に煙・炎・障害物がないか確認し、設置場所の表示どおりに操作してください。

よくある誤解

誤解 正しい確認方法
避難器具は6種類 令第25条の表には8種類が登場する。
避難ハッチは開ければ必ず自動展張する ロック・ふた・展張操作は製品表示で確認する。
ハッチ用はしごは独立した4種類目 金属製つり下げはしごの一種として整理する。
階段が2つなら必ず設置不要 令第25条と規則第26条の条件を個別に確認する。
8種類すべてが消防設備士第五類の対象 第五類は金属製避難はしご・救助袋・緩降機の3種類。
住民が自分で展張・修理して確認する 異常は管理者へ伝え、訓練・点検は安全管理のもとで行う。

まとめ

  • 消防法施行令第25条の表に登場する避難器具は8種類。
  • 消防設備士第五類の対象は、金属製避難はしご・救助袋・緩降機。
  • 避難ハッチや緩降機の操作は製品ごとに異なり、共通の短い手順では説明できない。
  • 使用前に、表示、操作場所、降下空間、降着場所、避難経路を確認する。
  • 住民は周囲を塞がず、異常を管理者へ伝え、管理者が実施する訓練に参加する。
  • 設置義務は、用途・階・収容人員・下階用途・階段などを組み合わせて判定する。

器具の法令上の分類は「避難器具の全体像」、設置場所に必要な空間は「降下空間・操作面積」、維持管理は「避難器具の点検・整備」へ進んでください。

参考資料・一次情報

個別の建物や製品では、設計図書、使用方法表示、取扱説明書、消防計画、自治体条例、所轄消防機関の指導を優先してください。

※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。図や画像だけで機器を判断せず、製品表示・取扱説明書・公式資料を確認してください。

記事、模擬試験、ミニテストは学習の補助を目的としています。試験の申請や実務上の判断では、最新の法令、試験実施機関、所轄消防機関、製品の公式資料等も確認してください。

内容の誤りやお気づきの点は、お問い合わせフォームからご連絡ください。詳しくは免責事項をご確認ください。

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