甲種5類/乙種5類

甲種5類の製図|緩降機の荷重・アンカー本数・間隔計算

甲種第五類の「製図」は、線をきれいに描く練習だけではありません。図面から寸法と荷重の向きを読み、緩降機の取付部に生じる力、金属拡張アンカーの本数・間隔を計算する力も問われます。

現在の公式公開例で確認できる4項目

  1. 固定部を設計するための基本荷重
  2. 取付け具の支点に働く力
  3. 金属拡張アンカーの最少本数
  4. 金属拡張アンカー相互の最小間隔

本記事では、消防試験研究センターが公開している甲種第五類の問題と解答、消防庁告示「避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目」を軸に、計算の順序を整理します。公式問題そのものは転載せず、公開例から読み取れる考え方とオリジナル例題で解説します。

甲種第五類は鑑別等5問・製図2問

消防設備士試験の甲種第一類から第五類は、筆記45問に加えて、実技試験として鑑別等5問・製図2問が出題されます。甲種第五類は機械分野で構成され、科目免除がない場合の試験時間は合計3時間15分です。

ここでいう実技試験は、器具を実際に操作する試験ではなく、写真、イラスト、図面などを使う記述式です。現在の公式公開例では、第五類の鑑別等で金属拡張アンカーボルトの呼び径とスリーブ長さを識別し、製図で一人用緩降機の取付け具を計算しています。

公開例は試験範囲の全部ではない
消防試験研究センターは、過去に出題した問題の一部を学習の目安として公開しています。公開例だけから「毎回この4問」「設置個数が必出」「製図は60点」といった出題頻度・配点を断定することはできません。

最初に押さえる取付部の用語

用語 意味
固定部 柱、床、はりなど構造上堅固な部分、又は堅固に補強された部分
取付け具 避難器具を固定部へ取り付けるための器具
金属拡張アンカー コンクリートに穿孔し、スリーブを打ち込んで固定するアンカー。告示の標準工法はスリーブ打込み式
埋込深さ 仕上げ部分の厚さを除いたスリーブの長さ
穿孔深さ コンクリートへあける穴の深さ。埋込深さと同じ値ではない

緩降機の構造と取付け具は「緩降機・救助袋の構造」、固定部・開口部・降下空間は「避難器具の降下空間・操作面積」で整理しています。

計算1:基本荷重を求める

消防庁告示第2号は、避難器具の種類に応じて別表第一の荷重を組み合わせ、固定部がその合成力に耐えることを求めています。まず、問題文で指定された器具の人数・付加荷重と、別表又は問題で与えられた荷重値を確認します。

現在の公式公開例は一人用緩降機で、解答は次の計算です。

1人 × 3.9kN + 付加荷重0.1kN

基本荷重 = 4.0kN

「使用者の体重をkgで入れる」「一律に安全率を掛ける」という計算ではありません。問題の条件と告示別表の荷重を、単位kNのまま扱います。器具の人数や付加荷重が変われば結果も変わるため、4.0kNだけを固定暗記しないことが大切です。

計算2:モーメントから支点に働く力を求める

取付け具の構造図では、基本荷重が作用する位置から支点までの距離と、支点間の距離を読み取ります。回転のつり合いを使い、左右のモーメントを等しくします。

支点に働く力 F = 基本荷重 W × 荷重点までの距離 L ÷ 支点間距離 h

W・F:kN、L・h:同じ長さ単位

公式公開例では、W=4.0kN、L=875mm、h=250mmです。

F = 4.0 × 875 ÷ 250 = 14kN

875mmと250mmは両方ともmmなので、比を取ると長さの単位は消えます。図面の寸法をcmとmmで混在させないこと、荷重点からどの支点までの距離かを取り違えないことが重要です。

計算3:金属拡張アンカーの最少本数

告示第2号の金属拡張アンカーによる標準工法では、次の式を満たす必要があります。

F ÷ N < P

F:固定部に発生する応力(kN)
N:引張力のかかるアンカー本数(N≧2)
P:アンカー1本の許容引抜荷重(kN)

公式公開例はF=14kN、M10、コンクリート設計基準強度18N/mm²で、P=5.7kNです。

  1. 14 ÷ 5.7 = 約2.46
  2. Nは整数で、2.46より大きくする
  3. 最少本数は3本

式は「以下」ではなくF÷N<Pです。F÷Pがちょうど整数になる場合、その整数本では等号になってしまうため、さらに1本必要です。また、Nは取付け部にある全ボルト数ではなく、引張力がかかる金属拡張アンカーの本数です。

計算4:アンカー間隔・へりあき

金属拡張アンカーの配置では、埋込深さを基準に二つの寸法を確認します。

  • アンカー相互の間隔:埋込深さの3.5倍以上
  • へりあき:埋込深さの2倍以上

公式公開例のM10は埋込深さ40mmなので、最小間隔は40×3.5=140mmです。へりあきも確認する問題なら、40×2=80mm以上となります。

呼び径別の数値表

告示第2号の表へ、最小間隔と最小へりあきを計算して加えると次のようになります。

呼び径 埋込深さ 穿孔深さ下限 最小間隔 最小へりあき
M10 40mm 60mm 140mm 80mm
M12 50mm 70mm 175mm 100mm
M16 60mm 90mm 210mm 120mm
M20 80mm 110mm 280mm 160mm

許容引抜荷重P

呼び径 15N/mm²以上 18N/mm²以上 21N/mm²以上
M10 4.7kN 5.7kN 6.7kN
M12 7.5kN 8.9kN 10.5kN
M16 10.9kN 13.0kN 15.0kN
M20 18.5kN 22.2kN 26.0kN

Pは呼び径だけで決まりません。コンクリートの設計基準強度との交点から選びます。軽量コンクリートや気泡コンクリートの部分は、告示の金属拡張アンカー標準工法の対象外です。

オリジナル例題

次の条件は学習用に作成したもので、公式問題の転載ではありません。

条件

  • 基本荷重W:4.2kN
  • 荷重点までの距離L:900mm
  • 支点間距離h:300mm
  • アンカー:M12
  • コンクリート設計基準強度:18N/mm²

問1:支点に働く力

F=4.2×900÷300=12.6kN

問2:アンカー最少本数

M12・18N/mm²のPは8.9kNです。12.6÷8.9=約1.42ですが、N≧2なので、最少本数は2本です。確認すると12.6÷2=6.3<8.9を満たします。

問3:最小間隔・へりあき・穿孔深さ

M12の埋込深さは50mmです。最小間隔は50×3.5=175mm、最小へりあきは50×2=100mm、穿孔深さの下限は70mmです。

答案を作るときの確認順

  1. 条件へ印を付ける:人数、付加荷重、呼び径、コンクリート強度、図面寸法を拾う
  2. 基本荷重をkNで出す:問題で指定された荷重を使い、kgへ勝手に変えない
  3. 図の支点と距離を確認する:モーメントの腕L・hを取り違えない
  4. F÷N<Pを満たす整数を選ぶ:N≧2と不等号に注意する
  5. 埋込深さを基準に寸法を出す:間隔3.5倍、へりあき2倍、穿孔深さ下限を分ける
  6. 計算式・単位・答えを書く:途中式を残し、kN・mm・本を答案上で区別する

旧記事から訂正したポイント

  • 甲種第五類の製図を「設置個数・降下空間・図記号が中心」と断定しない
  • 「○に緩」「○に救垂」などの独自図記号を公式記号として暗記しない
  • 操作面積を器具共通の0.5m×0.5mとして扱わない
  • 避難器具用ハッチの開口を直径60cmとしない。告示は直径0.5m以上の円が内接する大きさ
  • 取付部を「破断荷重÷使用荷重」という一律の安全率だけで判定しない
  • 金属拡張アンカーをkgの引抜強度だけで選ばず、F÷N<P、呼び径、コンクリート強度、埋込深さ、間隔、へりあきを確認する

設置義務・必要個数・適応器具は「避難器具の設置義務」、点検時の取付具・支持部の確認は「避難器具の点検・整備」を参照してください。

まとめ

  • 甲種第五類の実技は鑑別等5問・製図2問。
  • 現在の公式公開例では、一人用緩降機の基本荷重、支点の力、アンカー本数・間隔が扱われている。
  • 支点の力は、荷重と距離からモーメントのつり合いで求める。
  • アンカー本数はF÷N<P、かつN≧2を満たす最小整数とする。
  • アンカー間隔は埋込深さの3.5倍以上、へりあきは2倍以上。
  • 埋込深さ、穿孔深さ、呼び径、コンクリート強度を混同しない。
  • 公開例は一部であり、非公開の配点・頻度・出題パターンは断定しない。

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参考資料・一次情報

本記事は試験学習用の整理です。実際の設計・施工では、器具の認定仕様、製造者の設計資料、建築物の構造、所轄消防機関の運用を確認し、必要な資格と安全管理のもとで行ってください。

独学が不安な方へ

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