結論:感知器の試験は「加熱」「加煙」「減光」の3パターン
感知器が火災を正しく感知できるかを確かめる試験は、感知器のタイプに応じて3つのパターンに分かれます。
考え方はシンプルです。その感知器が「何」を感知するのかに合わせて、同じ刺激を人工的に与える。熱感知器には熱を、煙感知器には煙を、光を使う分離型には光の遮断を。実際の火災と同じ状況をつくって、正しく反応するかを確かめるわけです。
このほか、炎感知器には専用の光源を使った試験、空気管式感知器には空気管特有の試験(流通試験・接点水高試験・リーク試験)もあります。
加熱試験 ― 熱感知器の作動試験
加熱試験は、差動式・定温式・補償式などの熱感知器に行う試験です。
試験の方法
加熱試験器(ヒーターが内蔵された筒状の器具)を天井の感知器にかぶせて加熱し、規定時間内に受信機が火災表示するかを確認します。
② 加熱試験器を感知器にかぶせる
③ ヒーターで加熱を開始、同時にストップウォッチで計測
④ 受信機が火災表示 → 作動時間を記録
⑤ 作動時間が規定値以内か判定
感知器タイプ別の注意点
差動式スポット型 → 素早く加熱するのがコツです。差動式は「急激な温度上昇」で作動する仕組みなので、ゆっくり加熱するとリーク孔から空気が逃げてしまい、正常でも作動しないことがあります。
定温式スポット型 → こちらは「一定温度に達する」と作動するため、加熱速度は関係ありません。公称作動温度まで加熱して、規定時間内に作動するかを確認します。
補償式スポット型 → 差動式+定温式の二刀流なので、加熱試験で両方の機能が動作するか確認します。
定温式の作動時間(規格省令)
定温式感知器は種別(特種・1種・2種)によって作動時間の基準が異なります。公称作動温度の125%の温度を加えたときの作動時間です。
| 種別 | 作動時間 | 感度 |
|---|---|---|
| 特種 | 40秒以内 | 最も敏感 |
| 1種 | 120秒以内 | 標準 |
| 2種 | 300秒以内 | 低感度 |
特種が40秒、1種が120秒(2分)、2種が300秒(5分)。種別の数字が大きいほど感度が低く、作動に時間がかかることを覚えておきましょう。
加煙試験 ― 煙感知器の作動試験
加煙試験は、光電式・イオン化式などの煙感知器に行う試験です。
試験の方法
加煙試験器(煙を発生させる器具)を感知器にかぶせて煙を吹き込み、規定時間内に受信機が火災表示するかを確認します。
② 加煙試験器を感知器にかぶせる
③ 発煙材で煙を発生させる
④ 受信機が火災表示 → 作動時間を記録
⑤ 煙が出た後、感知器が復旧するかも確認
加煙試験の注意点
- 発煙材は試験器メーカーが指定したものを使用する(別の発煙材では煙の粒子径が異なり、正しい試験にならない)
- 天井付近に気流があると煙が流されて正確な試験ができない。エアコン等は試験中に停止する
- 加煙後は感知器内部の煙が抜けて復旧することも確認する(煙が抜けないと非火災報の原因になる)
煙感知器の感度試験
作動試験とは別に、煙感知器には感度試験もあります。これは総合点検(1年ごと)で実施するもので、感度試験器を使って規定の煙濃度で正しく作動するかを確認します。
作動試験は「動くかどうか」、感度試験は「正しい煙濃度で動くか」――目的が違うので混同しないようにしましょう。
減光試験 ― 光電式分離型の作動試験
光電式分離型感知器は、送光部と受光部が離れた場所に設置されており、その間の光が煙で遮られると作動する仕組みです。
この感知器には加煙試験器ではなく、減光フィルターを使います。
試験の方法
② 送光部と受光部の間の光軸上に減光フィルターを置く
③ 光が遮られ、受光量が減少
④ 受信機が火災表示 → 正常に作動と判定
⑤ フィルターを外して復旧を確認
なぜ煙ではなくフィルターを使うのか?
光電式分離型は送光部と受光部の間が5m〜100mも離れています。この距離の空間に均一な煙を充満させるのは現実的に不可能です。だから、煙と同じ効果(光を遮る)を再現できる減光フィルターを使うのです。
炎感知器の作動試験
炎感知器(赤外線式・紫外線式)には、専用の光源を使って試験します。
| 種類 | 試験方法 |
|---|---|
| 赤外線式 | 赤外線光源を監視エリア内から照射し、作動を確認 |
| 紫外線式 | 紫外線光源(またはライター等の炎)を照射し、作動を確認 |
炎感知器が感知するのは炎が発する赤外線や紫外線です。試験でも同じ波長の光を出す光源を使って「炎がある」状態を再現します。
空気管式感知器の特殊試験 ― 5つの試験
差動式分布型(空気管式)は、銅管を天井に張り巡らせる特殊な構造のため、スポット型にはない独自の試験が必要です。
各試験の詳細
③流通試験 ― 空気管が詰まっていないかを確認する試験です。空気管に空気を送り込み、反対側から空気が出てくるかを確認します。空気管は細い銅管(外径約2mm)なので、ほこりや結露水で詰まることがあります。詰まると火災時に空気が流れず、感知器が反応しなくなります。
④接点水高試験 ― 検出部のダイヤフラムの接点間隔が正常かを確認する試験です。テストポンプで空気を送り込み、マノメーター(U字管型の水位計)で接点が閉じる瞬間の圧力を測定します。水柱値が規定範囲内であれば合格です。
接点間隔が広すぎると作動しにくくなり、狭すぎると誤報の原因になります。水柱値が高い=接点間隔が広い=作動しにくい、低い=接点間隔が狭い=誤報しやすいと覚えましょう。
⑤リーク試験 ― 空気管やダイヤフラム周辺に空気漏れがないかを確認する試験です。空気を注入して圧力をかけた後、圧力の降下具合を測定します。リーク量が大きいと、火災で空気が膨張しても漏れてしまい、ダイヤフラムが押し上がらず感知器が作動しません。
なぜスポット型にはない試験が必要なのか?
スポット型感知器は1台完結の小さな装置なので、加熱試験器で動作確認すれば十分です。しかし空気管式は数十mもの銅管が天井に張り巡らされた複雑なシステムです。空気管のどこかに詰まりや漏れがあると、全体の動作に影響します。だから「詰まり」「漏れ」「接点間隔」をそれぞれ個別に確認する試験が必要なのです。
試験器具の一覧
各試験で使う器具を整理しておきましょう。
| 試験 | 対象の感知器 | 使用器具 |
|---|---|---|
| 加熱試験 | 熱感知器 | 加熱試験器 |
| 加煙試験 | 煙感知器(スポット型) | 加煙試験器 |
| 感度試験 | 煙感知器(スポット型) | 感度試験器 |
| 減光試験 | 光電式分離型 | 減光フィルター |
| 作動試験(炎) | 炎感知器 | 炎感知器用光源 |
| 作動・流通・接点水高・リーク試験 | 空気管式 | テストポンプ+マノメーター |
まとめ ― 試験のポイント一覧
熱感知器:加熱試験器で加熱
差動式:素早く加熱(ゆっくりだとリーク孔から逃げる)
定温式の作動時間:特種40秒/1種120秒/2種300秒
煙感知器:加煙試験器で加煙(指定の発煙材を使用)
光電式分離型:減光フィルターで光軸を遮る
炎感知器:専用光源(赤外線 or 紫外線)を照射
空気管式の5試験:作動・作動継続・流通・接点水高・リーク
接点水高試験:マノメーターで水柱値を測定
流通試験:空気管の詰まりを確認
リーク試験:空気管の漏れを確認
まとめ問題
理解度をチェックしましょう。
問題1
光電式分離型感知器の作動試験に用いる器具として、正しいものはどれか。
(1)加熱試験器
(2)加煙試験器
(3)減光フィルター
(4)テストポンプ
問題2
差動式スポット型感知器の加熱試験について、正しいものはどれか。
(1)ゆっくりと加熱したほうが正確な試験ができる
(2)素早く加熱しないとリーク孔から空気が逃げて作動しないことがある
(3)定温式と同じ速度で加熱すればよい
(4)加煙試験器を用いて試験する
問題3
定温式スポット型感知器の作動時間について、誤っているものはどれか。公称作動温度の125%の温度を加えた場合の基準とする。
(1)特種は40秒以内
(2)1種は60秒以内
(3)2種は300秒以内
(4)種別の数字が大きいほど感度が低い
問題4
差動式分布型(空気管式)感知器の接点水高試験について、最も適切なものはどれか。
(1)空気管の詰まりを確認するための試験である
(2)空気管の空気漏れを確認するための試験である
(3)検出部のダイヤフラムの接点間隔が適正かを確認するための試験である
(4)感知器が火災信号を正常に送出するかを確認するための試験である