漏電火災警報器とは? ── 結論から言います
漏電火災警報器(ろうでんかさいけいほうき)は、建物の電気配線から漏れた電流(漏電)を検知して、火災になる前に警報を鳴らす設備です。
構成はとてもシンプルで、たった3つの機器でできています。
自動火災報知設備(自火報)が「熱や煙」で火災を見つけるのに対し、漏電火災警報器は「電流の漏れ」で火災の原因そのものを見つける設備です。火が出る前に危険を察知できるのが大きな特徴ですね。
📚 この記事でわかること
- 漏電火災警報器の3大構成機器(ZCT・受信機・音響装置)とそれぞれの役割
- ZCTが漏電を検知する電磁誘導の原理を「行きと帰りの電流差」で直感的に理解
- 公称作動電流値200〜1000mA、130%で0.3秒以内などの頻出数値
- 集合型と分離型の違い、漏電ブレーカーとの違いを表で整理
- 乙7本試験レベルの練習問題4問+Q&Aで知識を定着
漏電火災の現場 ── 数百mAが建物を焼く
「たった300mA(0.3A)で火が出るの?」と思う方が多いはずです。実はこれが怖いところで、小さな電流でも金属ラスに長時間流れ続けると発熱が蓄積して着火温度に達するのです。
管理人が現場で実際に見たケースでは、築40年の飲食店の壁内配線で絶縁被覆が経年劣化し、数百mAの漏電が数カ月間続いていました。漏電火災警報器が発報したことで発覚し、壁を剥がすと金属ラスが黒く焦げていたそうです。あと半年放置していれば、営業中の店舗で火災が起きていた可能性が高い。「ブレーカーが落ちないから安全」という思い込みが一番危ないのが漏電火災です。
なぜ漏電火災警報器が必要なのか
ここで「漏電ってそんなに危ないの?」と思うかもしれません。実は、漏電が特に危険な建物があります。それがラスモルタル造の建物です。
ラスモルタル造とは?
ラスモルタル造とは、壁の下地に金属製の網(メタルラス)を張り、その上にモルタルを塗って仕上げた構造のことです。古い木造建築や商店街の建物に多く見られます。
ここで厄介なのは、漏れる電流が微小だということ。ブレーカー(配線用遮断器)は大電流の短絡には反応しますが、数百mA程度の漏電では落ちません。でもその微小な電流が金属ラスに長時間流れ続けると、ジュール熱(Q=I²Rt)で少しずつ温度が上がり、最終的に火災になります。
つまり、ブレーカーでは防げない火災を防ぐのが漏電火災警報器の役割です。
変流器(ZCT)── 漏電を見つけるセンサー
漏電火災警報器の心臓部が変流器(ZCT:零相変流器)です。「零相変流器」と聞くと難しそうですが、原理はシンプルです。
ZCTの動作原理
ZCTは、ドーナツ型(トロイダル型)の鉄心に二次コイルを巻いた構造をしています。この穴に、電源線(L線とN線)をまとめて通すのがポイントです。
たとえば、L線に10A流れていて、N線に9.7A戻ってきたとします。差の0.3A(300mA)はどこへ行ったのか? ── 途中で金属ラスなどに漏れ出したわけです。ZCTはこの「行きと帰りの差」を検知します。
この原理は電磁誘導(ファラデーの法則)そのものです。甲4の電気の基礎で学んだ知識がここで活きてきますね。
変流器の種類
変流器には2つのタイプがあります。
- 貫通型 ── ドーナツの穴に電線を通すタイプ。一般的に使われる
- 分割型 ── ドーナツを2つに分割でき、既設の電線に後から取り付けられるタイプ
分割型は既存の建物に後付けできるメリットがありますが、合わせ面にゴミが入ると感度が落ちるため、取り付け時の注意が必要です。
受信機 ── 漏電を判定する頭脳
変流器が検知した信号を受け取り、「警報を鳴らすかどうか」を判定するのが受信機です。
受信機の主な機能
- 漏電電流の判定 ── 設定された電流値(公称作動電流値)を超えたら作動
- 音響装置の制御 ── 漏電検出時にベルやブザーを鳴らす
- 電源灯の表示 ── 通電中であることを示す(赤色灯)
- 作動表示 ── 漏電を検出したことを表示する
受信機の型式
公称作動電流値と感度
受信機には公称作動電流値(こうしょうさどうでんりゅうち)が設定されています。これは「この電流値の漏電を検出したら作動する」という基準値です。
- 公称作動電流値:200mA、300mA、400mA、500mA、1000mAの5段階
- 感度電流:公称作動電流値の50%以上100%以下で確実に作動すること
- 作動時間:公称作動電流の130%の電流で0.3秒以内に作動すること
たとえば公称作動電流値が200mAの受信機なら、100mA〜200mAで作動し、260mA(200mA×130%)で0.3秒以内に作動する必要があります。
音響装置 ── 警報を鳴らす
漏電を検知したことをベルまたはブザーで知らせます。
- 音圧:1mの距離で70dB以上
- 受信機に内蔵されている場合と、外付けの場合がある
- 音響が停止しても、受信機の作動表示は残るので、漏電があったことはわかる
自火報の地区音響装置(90dB/92dB)に比べると小さめですが、これは漏電火災警報器が「建物全体への避難指示」ではなく、「管理者への注意喚起」を目的としているためです。
試験頻出数値総まとめ
乙7の構造問題で問われる数値を一覧にまとめます。この数字を覚えるだけで、乙7筆記の設備基礎の半分は解けます。
🔢 漏電火災警報器の構造 頻出数値BOX
| 項目 | 数値 | ワンポイント |
|---|---|---|
| 公称作動電流値(5段階) | 200/300/400/500/1000mA | 最小200mA/最大1000mA |
| 感度電流(作動範囲) | 公称値の50〜100% | 下限50%で作動することが必要 |
| 作動時間基準 | 130%で0.3秒以内 | 公称値の1.3倍で即作動 |
| 音響装置の音圧 | 1mで70dB以上 | 地区音響90dB/92dBと区別 |
| 漏電ブレーカーの感度 | 15〜30mA | 比較用。数十mAは感電防止 |
| 対象となる契約電流(設置義務) | 50Aを超える | 設置義務の記事で詳述 |
※「200・300・400・500・1000」の5段階は、電圧200Vの商用配線に合わせた数値。120%で1秒以内(参考)も含め数値はセットで暗記推奨。
漏電ブレーカーとの違い
「漏電を検知する」という点では漏電ブレーカー(漏電遮断器)と似ていますが、目的がまったく違います。
漏電ブレーカーは感度が高い(15〜30mA)ので、人体に危険な電流にはすぐ反応して電気を止めます。一方、漏電火災警報器は感度が200mA以上と低め。なぜか?
それは、建物の電気配線には正常時でもわずかな漏れ電流(対地静電容量による漏れなど)が存在するから。ブレーカー並みの感度にすると誤報だらけになってしまいます。火災につながるレベルの漏電(数百mA)だけを確実に捉える ── それが漏電火災警報器の設計思想です。
ひっかけNGパターン ── 乙7受験者が間違えやすい5つ
⚠️ 試験で狙われる間違いやすいポイント
- 「漏電ブレーカー=漏電火災警報器」と混同 → 前者は遮断・人体保護、後者は警報・火災予防。全く別物
- 「ZCTは電流計の一種」と答える → ZCTは差動電流を検出する変流器。普通のCT(計器用変流器)とは目的が違う
- 「集合型=変流器と音響装置が一体」と書く → 正しくは変流器と受信機が一体。音響装置は別
- 「公称作動電流値100mA〜」と書く → 200mAから始まる5段階。100mAは漏電ブレーカー寄り
- 「漏電を検出すると電路を遮断する」と書く → 警報器は遮断しない。警報を鳴らすのみ
信号の流れをまとめよう
最後に、漏電が検出されてから警報が鳴るまでの流れを整理します。
自火報と比べると構成がシンプルですが、それは検知対象が「熱・煙」ではなく「電流」という1種類だけだから。構成は単純でも、ラスモルタル造の建物を漏電火災から守る重要な設備です。
学習ナビ ── 構造問題を満点に持っていく3STEP
STEP 1 ── 3機器を唱える
変流器(ZCT)→受信機→音響装置の順を口に出して覚える。「検知→判定→警報」と役割でセット
STEP 2 ── 数値5個を暗記
200/300/400/500/1000mA・130%で0.3秒・70dB・15〜30mA。穴埋め問題を5問解いて定着
STEP 3 ── 原理を図で理解
ZCTの行きと帰りの電流差→電磁誘導の流れを図で描けるようにする。鑑別でも問われる
乙7の全体像を押さえる
この構造記事の知識は、乙7の以下の記事とつながっています。流れで押さえるとより定着します。
- 「漏電火災警報器の設置義務」── どんな建物に設置するか
- 「漏電火災警報器の設置基準」── 具体的な取付位置・配線
- 「漏電火災警報器の点検・整備」── 試験方法と結果判定
- 「乙7鑑別攻略」── 機器写真から名称と用途を答える
- 「乙7ロードマップ」── 学習の順番と全体像
独学で「原理がわからない」と感じたら
ZCTの「行きと帰りの電流差」「電磁誘導で二次コイルに電流が流れる」という原理は、文字だけで理解するのがかなり難しい分野です。管理人も動画で磁束の動きを見て初めて腹落ちしました。独学でつまずいたら、動画講義や現物写真に触れるのが近道です。
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現場で定番の漏電点検工具
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まとめ問題
第1問
漏電火災警報器の構成機器として、正しい組合せはどれか。
(1)変流器・受信機・感知器
(2)変流器・受信機・音響装置
(3)変流器・中継器・音響装置
(4)検知器・受信機・音響装置
第2問
漏電火災警報器の変流器(ZCT)が漏電を検知する原理として、正しいものはどれか。
(1)電線の温度上昇を感知する
(2)電路の電圧低下を検出する
(3)往復電流の差による磁束の変化を検出する
(4)接地抵抗の変化を検出する
第3問
漏電火災警報器の受信機について、正しいものはどれか。
(1)公称作動電流値は15mAと30mAの2段階である
(2)漏電を検出すると自動的に電路を遮断する
(3)公称作動電流の130%の電流で0.3秒以内に作動する
(4)集合型は変流器と音響装置が一体になったものである
第4問
漏電火災警報器と漏電ブレーカーの違いについて、誤っているものはどれか。
(1)漏電ブレーカーは人体の感電防止が目的である
(2)漏電火災警報器は火災の予防が目的である
(3)漏電ブレーカーの感度電流は漏電火災警報器より高い
(4)漏電火災警報器は漏電を検知しても電路を遮断しない
よくある質問(Q&A)
Q1. ZCTは普通のCT(変流器)と何が違うのですか?
普通のCTは1本の電線を通して電流を測定しますが、ZCTはL線とN線を両方通して差を測るのが根本的な違いです。ZCTの「Z」はZero Sequence(零相)の略で、行きと帰りが等しい正常時の合計電流=0から、漏れが生じた時の差分を検出するという意味です。
Q2. 漏電火災警報器は停電時も作動しますか?
漏電火災警報器は電源が必要な設備のため、停電時は作動しません。ただし、停電時は電線に電流が流れないため、そもそも漏電による火災も起こりません。予備電源(電池)の搭載義務はないのが自火報との違いです。
Q3. 集合型と分離型はどちらが試験で出やすいですか?
両方とも頻出ですが、特に「集合型は変流器と受信機が一体」「分離型は別筐体」という違いが問われます。小規模建物は集合型、大規模は分離型と覚えると、鑑別でも使い分けができます。
Q4. 乙7の「構造」分野は何点くらい出ますか?
乙7の筆記は15問、うち構造・機能は約5〜6問を占めます。このうち数値(公称作動電流値・作動時間など)で2問、機器の役割で2問、動作原理で1問という配分が一般的。数値を外すと一気に不合格ラインに近づくので、必ず暗記しましょう。
一次情報で確認
📖 出題根拠の一次情報
- 消防法施行規則(e-Gov法令検索) ── 第24条の3(漏電火災警報器の基準)
- 消防法(e-Gov法令検索) ── 第17条(消防用設備等の設置)
- 消防庁公式サイト ── 漏電火災警報器の技術基準
- 日本消防検定協会 ── 型式認定機器リスト
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