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統括防火管理者とは?消防法第8条の2をわかりやすく解説

結論から言います

統括防火管理者(とうかつぼうかかんりしゃ)とは、複数のテナントが入る建物で、建物全体の防火管理を"まとめる"責任者のことです。

ショッピングモールを思い浮かべてください。テナントごとに別々のオーナーがいて、それぞれが防火管理者を選んでいます。でも、廊下・階段・非常口――こうした共用部分の管理は、どのテナントの防火管理者が担当するのでしょう?

「うちの担当じゃない」と全員が思った結果、共用部分が放置される――そんな事態を防ぐために、建物全体を統括する防火管理者が必要なのです。

なぜ統括防火管理者が必要なの?

消防法第8条の防火管理者は、自分の管理権原が及ぶ範囲だけを管理します。テナントAの防火管理者はテナントAだけ、テナントBはテナントBだけ、という仕組みです。

でも、実際の建物にはどのテナントにも属さない共用部分がたくさんあります。

  • 廊下・階段・エレベーターホール
  • 非常口・避難通路
  • 屋上・地下駐車場
  • 防災センター

火災時にこれらの共用部分が管理されていなかったら? 避難経路に荷物が放置されていたり、防火扉が壊れたまま放置されていたり――大惨事につながりかねません。

だから、テナントの壁を超えて建物全体を見渡す"まとめ役"が必要。これが統括防火管理者です。

具体的なイメージを図にしてみましょう。

ショッピングモールの防火管理
3F
テナントC → 防火管理者C
2F
テナントB → 防火管理者B
1F
テナントA → 防火管理者A
共用
廊下・階段・非常口 → 誰が管理する?
統括防火管理者が建物全体を統括!

根拠条文(消防法第8条の2)

(前略)管理について権原が分かれているものの管理について権原を有する者は、(中略)協議して、当該防火対象物についての防火管理に関する事項のうち(中略)全体について必要な業務を統括する防火管理者(以下「統括防火管理者」という。)を定めなければならない。
――消防法 第8条の2 第1項(要約)

現代語訳

管理権原が複数に分かれている建物では、権原を持つ者たちが協議(話し合い)して、統括防火管理者を選ばなければならない――ということです。

ポイントは2つ。

  • 「権原が分かれている」が前提条件――オーナーが1人だけの建物は対象外です
  • 「協議して定める」――誰か1人が勝手に決めるのではなく、権原者全員で話し合って選びます

統括防火管理者が必要な建物(施行令4条の2)

どんな建物で統括防火管理者が必要になるかは、施行令第4条の2で定められています。

大前提として管理権原が分かれていることが必要で、かつ以下のいずれかに該当する場合に選任義務が発生します。

統括防火管理者が必要な建物
前提:管理権原が分かれていること(施行令4条の2)
❶ 高層建築物
高さ31m超(用途を問わない)
❷ 特定防火対象物
地階を除く階数3以上 + 収容人員30人以上
※(6)ロの福祉施設等は10人以上
❸ 地下街・準地下街
規模を問わず対象
❹ 非特定防火対象物
地階を除く階数5以上 + 収容人員50人以上

ポイント整理

  • 高層建築物(高さ31m超)は、用途に関係なく対象になります
  • 特定防火対象物は比較的ゆるい基準(3階以上+30人以上)で対象になります。不特定多数が出入りして避難が難しいからです
  • 非特定防火対象物は厳しめの基準(5階以上+50人以上)。利用者が建物に慣れている分、リスクが低いためです
  • 地下街は避難が極めて困難なので、規模を問わず対象です

「特定は3階+30人、非特定は5階+50人」――この数字の対比は試験でよく問われるので、しっかり覚えておきましょう。

防火管理者との違い

消防法第8条の防火管理者とどう違うのか、整理しましょう。

防火管理者 統括防火管理者
根拠法 法8条 法8条の2
管理範囲 自分の権原の範囲 建物全体(共用部分含む)
選任方法 管理権原者が選任 権原者が協議して選任
必要資格 甲種 or 乙種 甲種のみ
消防計画 自分の範囲の計画 建物全体の計画

ここで注意したいのは、統括防火管理者は甲種防火管理者の資格が必要という点です。建物全体を統括するわけですから、乙種(小規模建物用)の知識では足りないということですね。

統括防火管理者の職務

消防法第8条の2で規定された統括防火管理者の主な職務は以下のとおりです。

  • 建物全体の消防計画の作成――各テナントの計画を踏まえた全体計画
  • 避難訓練の実施――建物全体での合同訓練
  • 共用部分の管理――廊下・階段・避難口の状態維持
  • 各テナントの防火管理者への指示

特に4つ目が重要です。統括防火管理者には、各テナントの防火管理者に対して必要な指示をする権限があります。各防火管理者は正当な理由がない限り、その指示に従わなければなりません。

また、管理権原者が統括防火管理者を選任しない場合は、消防長または消防署長が選任を命令できることも覚えておきましょう。

まとめ

  • 統括防火管理者は、管理権原が分かれている建物で全体の防火管理を統括する責任者(消防法8条の2)
  • 必要な理由は、テナントごとの防火管理だけでは共用部分の管理が抜け落ちるから
  • 管理権原者が協議して選任する(1人が勝手に決めるのではない)
  • 必要な建物の基準:特定は3階+30人、非特定は5階+50人、高層建築物は用途不問
  • 資格は甲種防火管理者のみ(乙種では不可)
  • 各テナントの防火管理者に対する指示権限を持つ

理解度チェック!まとめ問題

Q1. 統括防火管理者の選任方法

統括防火管理者の選任に関する記述で正しいものはどれか。

A)統括防火管理者は消防署長が指名する
B)統括防火管理者は管理権原者が協議して定める
C)統括防火管理者は乙種防火管理者の資格でも選任できる
D)統括防火管理者は管理権原が分かれていない建物でも必要である

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正解:B)管理権原者が協議して定める

消防法8条の2第1項に「協議して定めなければならない」と規定されています。消防署長が指名するのではなく、あくまで権原者同士の話し合いで決めます。A)は消防署長が指名するわけではありません。C)統括防火管理者は甲種の資格が必須です。D)管理権原が分かれていることが前提条件です。

Q2. 選任が必要な建物の判断

次のうち、統括防火管理者の選任が必要ないものはどれか(いずれも管理権原は分かれているものとする)。

A)高さ35mのオフィスビル
B)地上2階建て・収容人員20人の飲食店ビル
C)地下街
D)地上5階建て・収容人員60人の事務所ビル

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正解:B)地上2階建て・収容人員20人の飲食店ビル

飲食店は特定防火対象物なので「地階を除く階数3以上+収容人員30人以上」が条件です。2階建て・20人ではどちらの条件も満たしません。A)は高さ31m超の高層建築物で対象。C)は地下街で規模を問わず対象。D)は非特定で「5階以上+50人以上」の条件を満たすので対象です。

Q3. 制度の本質を考える(応用問題)

防火管理者制度(消防法8条)があるにもかかわらず、統括防火管理者制度(消防法8条の2)が別途設けられている本質的な理由はどれか。

A)防火管理者1人では業務量が多すぎて対応できないから
B)テナントごとの防火管理では共用部分の管理責任が曖昧になり、防火管理の空白地帯が生じるから
C)統括防火管理者は防火管理者の上位資格であり、大規模建物では高い資格が求められるから
D)建物の所有者と防火管理者は兼務できないと法律で定められているから

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正解:B)テナントごとの防火管理では共用部分の管理責任が曖昧になり、防火管理の空白地帯が生じるから

統括防火管理者制度の本質は「防火管理の空白地帯をなくすこと」です。テナントごとの防火管理者はそれぞれ自分の範囲だけを管理するため、廊下・階段・避難口などの共用部分が"どこのテナントの責任でもない"状態になりかねません。この問題を解決するのが統括防火管理者です。A)は業務量の問題ではなく責任範囲の問題です。C)統括防火管理者は"上位資格"ではなく"別の役割"です。D)そのような規定はありません。

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