消防設備士制度ってなに?
消防設備士制度とは、消防用設備等や特殊消防用設備等の工事・整備について、一定の知識と技能を持つ有資格者の範囲を定める免状制度です。
根拠になる中心条文は消防法第17条の5です。ただし、現在の条文は「すべての工事・整備は消防設備士だけ」と単純に書いているわけではありません。消防設備士免状を受けていない者は、法令で定める工事または整備を行ってはならない、という形で対象範囲を政令に委ねています。
試験では、次の3点を押さえると整理しやすくなります。
- 甲種は、指定区分に応じた工事と整備を行える
- 乙種は、指定区分に応じた整備を行える
- 点検は17条の5の独占業務ではなく、点検報告制度(17条の3の3)側で整理する
この記事では、消防法第17条の5から第17条の14、消防法施行令第36条の2、消防法施行規則第33条の3を中心に、消防設備士制度の全体像を整理します。
消防法第17条の5の要点
消防法第17条の5は、無免状者が一定の工事または整備を行うことを禁止する条文です。
消防設備士免状を受けていない者は、消防用設備等または特殊消防用設備等の工事(設置に係るもの)または整備のうち、政令で定めるものを行ってはならない、という内容です。
ここで重要なのは、条文が「政令で定めるもの」と書いている点です。対象となる工事・整備は、消防法施行令第36条の2で具体化されています。
※ 条文全文は e-Gov法令検索(消防法)、対象範囲は e-Gov法令検索(消防法施行令)、指定区分や講習時期は e-Gov法令検索(消防法施行規則) で確認できます。
消防設備士でなければできない工事・整備
消防法施行令第36条の2は、消防設備士でなければ行ってはならない工事・整備を定めています。試験向けには、工事の対象と整備の対象が少し違う点を押さえます。
| 区分 | 政令上の主な対象 | 注意点 |
|---|---|---|
| 設置に係る工事 | 屋内消火栓、スプリンクラー、泡消火設備、自動火災報知設備、避難器具の一部など | 消火器と漏電火災警報器は、工事対象の列挙には入っていない |
| 整備 | 上記設備に加え、消火器・漏電火災警報器など | 総務省令で定める軽微な整備は除かれる |
以前の条文説明では、工事の例外を中心に説明しているものがあります。しかし現在の消防法第17条の5はその形ではなく、対象となる工事・整備を政令で定める構造です。
甲種と乙種の違い
消防設備士免状の種類は、消防法第17条の6で甲種消防設備士免状と乙種消防設備士免状に分けられています。
| 区分 | 17条の6上の扱い | 指定区分 |
|---|---|---|
| 甲種 | 指定区分に応じた工事または整備 | 特類、1類〜5類 |
| 乙種 | 指定区分に応じた整備 | 1類〜7類 |
最大の違いは、設置に係る工事を行えるかどうかです。甲種は指定区分に応じた工事と整備、乙種は指定区分に応じた整備、という整理になります。
点検は別制度として整理する
点検は消防設備士制度と関係しますが、17条の5の「工事・整備」と同じ独占業務ではありません。消防法第17条の3の3では、一定の防火対象物について、消防設備士免状を受けている者または総務省令で定める資格を有する者に点検をさせることが定められています。
そのため、試験では次のように分けると安全です。
- 工事・整備の資格範囲:消防法第17条の5・第17条の6、施行令第36条の2、施行規則第33条の3で見る
- 点検報告制度の資格者:消防法第17条の3の3、施行令第36条、施行規則第31条の6で見る
甲種・乙種の違いについてさらに詳しく知りたい方は「甲種と乙種の違い|受験前に知っておくべきこと」をご覧ください。
類別の対象設備
消防設備士は、免状の指定区分ごとに扱える設備が決まっています。施行規則第33条の3では、甲種は特類と1〜5類、乙種は1〜7類の区分が置かれています。
| 類 | 主な対象設備 | 免状区分 |
|---|---|---|
| 特類 | 特殊消防用設備等 | 甲種のみ |
| 1類 | 屋内消火栓・スプリンクラー・水噴霧消火設備・屋外消火栓設備 | 甲種・乙種 |
| 2類 | 泡消火設備 | 甲種・乙種 |
| 3類 | 不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備 | 甲種・乙種 |
| 4類 | 自動火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備・消防機関へ通報する火災報知設備 | 甲種・乙種 |
| 5類 | 金属製避難はしご・救助袋・緩降機 | 甲種・乙種 |
| 6類 | 消火器 | 乙種のみ |
| 7類 | 漏電火災警報器 | 乙種のみ |
6類と7類は、施行規則上の指定区分として乙種に置かれています。理由を「工事とみなされないから」と断定して覚えるより、甲種の指定区分には6類・7類がなく、乙種の整備区分に6類・7類があると条文ベースで押さえる方が確実です。
消防設備士の主な義務
免状を取得したあとも、消防設備士にはいくつかの義務があります。法令科目では、条番号と数字が狙われやすい部分です。
①工事着手の届出(消防法17条の14)
甲種消防設備士は、第17条の5に基づく政令で定める工事をしようとするとき、工事に着手しようとする日の10日前までに、消防長又は消防署長へ届け出なければなりません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 届出義務者 | 甲種消防設備士 |
| 届出先 | 消防長又は消防署長 |
| 期限 | 工事着手日の10日前まで |
②講習の受講義務(消防法17条の10)
消防設備士は、総務省令で定めるところにより、都道府県知事(総務大臣が指定する市町村長その他の機関を含む。)が行う講習を受けなければなりません。
| タイミング | 期限 |
|---|---|
| 初回 | 免状交付後の最初の4月1日から2年以内 |
| 2回目以降 | 講習を受けた日後の最初の4月1日から5年以内 |
「初回2年、以後5年」とだけ覚えるより、施行規則第33条の17の最初の4月1日からという基準も合わせて確認しておくと正確です。
義務講習の詳細(受講時期・内容・手続き)は「義務講習(法定講習)」の記事で解説しています。
③免状の携帯義務(消防法17条の13)
消防設備士は、その業務に従事するときは、消防設備士免状を携帯していなければなりません。工事だけでなく、消防設備士としての業務に従事するときの義務として押さえます。
免状の交付・書換え・再交付
免状まわりは、消防法と消防法施行令を分けて見ると整理できます。
- 交付:消防法第17条の7。消防設備士試験に合格した者に対し、都道府県知事が免状を交付する
- 書換え:消防法施行令第36条の5。記載事項に変更があるときは遅滞なく申請する
- 再交付:消防法施行令第36条の6。亡失・滅失・汚損・破損の場合に申請できる
- 旧免状の提出:亡失した免状を再交付後に発見した場合は、10日以内に提出する
試験は消防法第17条の8、指定試験機関は消防法第17条の9に規定されています。第17条の8を「書換え・再交付」の根拠として覚えないよう注意してください。
免状の申請手続きについては「免状申請と届出手続き」をご覧ください。
免状の返納命令
消防設備士免状の返納命令は、消防法第17条の7第2項が、危険物取扱者免状に関する第13条の2第5項を準用する形で定められています。
つまり、消防設備士が消防法または消防法に基づく命令の規定に違反しているときは、免状を交付した都道府県知事が免状の返納を命ずることができます。
返納命令を受け、その日から1年を経過していない者には、都道府県知事が免状の交付を行わないことができます。条文上は「1年経てば必ず交付される」ではなく、交付しないことができる期間の問題として整理します。
罰則も最低限押さえる
第17条の5違反、工事着手届の未届、返納命令違反は、罰則の対象になります。
| 違反内容 | 主な罰則 | 根拠 |
|---|---|---|
| 第17条の5違反 | 6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | 消防法第42条第1項第10号 |
| 工事着手届を怠った場合 | 30万円以下の罰金又は拘留 | 消防法第44条第8号 |
| 返納命令違反 | 30万円以下の罰金又は拘留 | 消防法第44条第9号 |
試験で狙われるポイント
| ひっかけパターン | 正しい整理 |
|---|---|
| 乙種消防設備士は工事もできる | 乙種は指定区分に応じた整備。工事は甲種側の範囲 |
| 6類・7類にも甲種がある | 6類・7類は乙種の指定区分 |
| 点検は17条の5の独占業務である | 点検は17条の3の3の点検報告制度側で整理する |
| 講習は交付日から単純に2年以内 | 免状交付後の最初の4月1日から2年以内 |
| 工事着手届は消防庁長官に出す | 消防長又は消防署長に、着手10日前まで |
| 書換え・再交付の根拠は消防法17条の8 | 17条の8は試験。書換え・再交付は施行令36条の5・36条の6で見る |
関連する記事をセットで学ぼう
消防設備士制度は試験そのものに直結するテーマです。受験を考えている方は以下の記事も確認してみてください。
- 「甲種と乙種の違い」― 受験するならまず知っておきたい基本
- 「受験資格まとめ」― 甲種の受験資格を確認
- 「どれから受ける?受験順序」― おすすめの取得順
- 「義務講習(法定講習)」― 講習の受講時期を整理
- 「消防設備点検資格者とは?」― 点検資格者との違い
- 「点検報告制度とは?」― 点検報告制度の全体像
まとめ問題
問題1(知識確認)
消防設備士制度について、正しい記述はどれか。
(1)乙種消防設備士は、指定区分に応じた工事と整備を行うことができる。
(2)甲種消防設備士は、指定区分に応じた工事または整備を行うことができる。
(3)消防用設備等の点検は、消防法17条の5の独占業務である。
(4)消火器と漏電火災警報器には、甲種の指定区分がある。
問題2(知識確認)
消防設備士の講習について、正しい記述はどれか。
(1)免状の交付を受けた日から5年以内に最初の講習を受ける。
(2)免状交付後の最初の4月1日から2年以内に最初の講習を受ける。
(3)講習は消防長だけが実施する。
(4)講習を受けなくても免状返納命令の対象にはならない。
問題3(応用)
ある建物で自動火災報知設備の新規設置工事を行うことになった。この工事について、正しい記述はどれか。
(1)乙種4類の消防設備士が工事を行うことができる。
(2)甲種4類の消防設備士が工事に着手する場合、着手日の7日前までに届け出る。
(3)甲種4類の消防設備士が工事に着手する場合、着手日の10日前までに消防長又は消防署長へ届け出る。
(4)消防設備点検資格者が工事を行うことができる。
まとめ
- 消防法第17条の5は、無免状者が政令で定める工事・整備を行うことを禁止する条文
- 甲種は指定区分に応じた工事または整備、乙種は指定区分に応じた整備
- 点検は17条の5の独占業務ではなく、17条の3の3の点検報告制度側で整理する
- 6類・7類は乙種の指定区分。甲種には6類・7類がない
- 講習は初回が「免状交付後の最初の4月1日から2年以内」、以後は「講習後の最初の4月1日から5年以内」
- 甲種の工事着手届は、着手10日前までに消防長又は消防署長へ届け出る
消防設備士を目指す方は、「【法令共通】完全ロードマップ」で法令科目の全体像をつかんでから各類の学習に進むのがおすすめです。
消防設備士試験の合格を目指すなら
法令・構造・実技…独学で全てをカバーするのは大変です。
通信講座ならプロの講師が効率的に合格へ導いてくれます。
参考書で独学したい方は「おすすめ参考書と勉強法」もチェック!
※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。