消防設備士第3類で扱う設備は、不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の3つです。いずれも水や泡とは異なる消火剤を放出しますが、使える消火剤、放出方式、構成機器、安全対策は同じではありません。
この記事では、3設備を現行の消防法施行令・消防法施行規則に沿って整理します。なお、「ガス系消火設備」は学習上よく使われるまとめ方ですが、粉末消火設備の消火剤は固体の粉末です。3設備をすべて「気体を使う設備」と考えないようにしましょう。
最初に押さえる3点
- 第3類の対象は、不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の3設備
- 放出方式は全域放出方式・局所放出方式・移動式の3つ
- 使える消火剤と必要な安全措置は、設備・方式・設置場所によって異なる
消防設備士第3類で扱う3設備
消防法施行規則第33条の3は、甲種・乙種の第三類について、次の3設備を対象としています。甲種は工事と整備、乙種は整備を行える範囲として定められています。
| 設備 | 消防法施行令 | 消火剤の大分類 | 区別するポイント |
|---|---|---|---|
| 不活性ガス消火設備 | 第16条 | 二酸化炭素、窒素、IG-55、IG-541 | 酸素濃度を低下させて燃焼を抑える。CO₂は特に厳しい保安措置がある |
| ハロゲン化物消火設備 | 第17条 | ハロン3種、HFC-23、HFC-227ea、FK-5-1-12 | 消火剤ごとに使える放出方式と設置対象が異なる |
| 粉末消火設備 | 第18条 | 第一種・第二種・第三種・第四種粉末 | 放出後に粉末が残る。加圧用・蓄圧用ガスや粉末固有の機器を用いる |
どの場所にどの設備を設置するかは、単に「水損を避けたいからガス」と決めるものではありません。消防法施行令第13条の表では、駐車場、道路、電気設備、多量の火気を使用する場所、通信機器室、指定可燃物を扱う場所など、部分の用途ごとに選択できる設備が定められています。設計では、同条と各設備の技術基準を組み合わせて確認します。
不活性ガス消火設備
不活性ガス消火設備は、燃えないガスを防護区画などへ放出し、主に酸素濃度を低下させて消火する設備です。消防法施行規則第19条で、次の4種類が消火剤として定められています。
| 消火剤 | 規則上の組成 | 使用できる方式の要点 |
|---|---|---|
| 二酸化炭素(CO₂) | 二酸化炭素 | 全域放出・局所放出・移動式 |
| 窒素 | 窒素 | 全域放出 |
| IG-55 | 窒素50:アルゴン50 | 全域放出 |
| IG-541 | 窒素52:アルゴン40:二酸化炭素8 | 全域放出 |
全域放出方式であっても、4種類をどの場所でも自由に選べるわけではありません。規則第19条第5項は、防護区画の用途・面積・体積などに応じて使用できる消火剤を分けています。局所放出方式と移動式に使用できる不活性ガス消火剤は、いずれも二酸化炭素です。
CO₂は安全対策を別枠で覚える
二酸化炭素を放射する全域放出方式には、人体への危害を防ぐため、20秒以上の遅延装置、緊急停止装置、閉止弁、放出表示灯、注意標識などが定められています。また、工事・整備・点検などで防護区画内に人が入るときは、閉止弁を閉止し、自動手動切替え装置を手動状態に維持します。
重要:閉止弁と緊急停止装置は同じものではない
緊急停止装置は、放出停止の信号を制御盤へ送る装置です。閉止弁は、集合管または操作管に設ける弁で、点検時などに閉止状態とします。名称だけで役割を混同しないようにします。
不活性ガス消火設備の貯蔵方式、起動、配管、安全装置は「不活性ガス消火設備の構造と機能」で詳しく確認できます。
ハロゲン化物消火設備
ハロゲン化物消火設備は、ハロゲン元素を含む消火剤を放出して燃焼を抑える設備です。消防法施行規則第20条が定める消火剤は、次の6種類です。
- ハロン2402
- ハロン1211
- ハロン1301
- HFC-23
- HFC-227ea
- FK-5-1-12
ここで大切なのは、ハロゲン化物消火設備に局所放出方式がない、という整理は誤りだということです。現行規則には全域放出方式・局所放出方式・移動式があり、局所放出方式と移動式で使える消火剤はハロン2402・1211・1301に限定されています。HFC-23、HFC-227ea、FK-5-1-12は全域放出方式で扱います。
| 方式 | 規則上使用できる消火剤 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 全域放出方式 | 設置対象に応じ、ハロン1301、HFC-23、HFC-227ea、FK-5-1-12など | 設置場所によって使用できる剤が異なる |
| 局所放出方式 | ハロン2402・1211・1301 | HFC系やFK-5-1-12ではない |
| 移動式 | ハロン2402・1211・1301 | ホースとノズルで放射する |
ハロンの生産規制と、現行の消防法令で設備・消火剤が規定されていることは別の論点です。「製造されていないから、法令上も使用できない」と単純化せず、設備基準では現在もハロン3種が列挙されていることを確認します。
各消火剤の貯蔵方法、放射時間、起動装置などは「ハロゲン化物消火設備の構造と機能」で学びます。
粉末消火設備
粉末消火設備は、粉末消火剤を加圧用ガスまたは蓄圧用ガスの力で配管へ送り、噴射ヘッドやノズルから放射する設備です。規則第21条では、第一種・第二種・第三種・第四種粉末が定められています。
粉末は気体ではないため、放出後に粉末が残ります。また、貯蔵容器、加圧用または蓄圧用ガス、圧力調整器、定圧作動装置、クリーニング用ガスなど、ガス状の消火剤を扱う設備とは異なる構成を持ちます。
粉末消火設備の法令上の要点
- 全域放出方式・局所放出方式・移動式がある
- 駐車の用に供される部分に設ける粉末消火設備は第三種粉末を使用する
- 道路の用に供される部分には全域放出方式・局所放出方式を設けず、移動式では第三種粉末を使用する
4種類の薬剤、加圧式・蓄圧式、定圧作動装置、クリーニング装置は「粉末消火設備の構造と機能」で確認できます。
3つの放出方式を整理する
全域放出方式
壁・床・天井などで区画された防護区画に消火剤を放出し、区画全体を消火する方式です。開口部の閉鎖、換気停止、消火剤量、圧力上昇への措置などを、設備と消火剤に応じて確認します。
局所放出方式
防護対象物へ消火剤を直接放射する方式です。防護対象物の表面が噴射ヘッドの有効射程内に入り、放射によって可燃物が飛散しないように設計します。
移動式
ホースとノズルを用いて、人が防護対象物へ放射する方式です。固定された設備からホースを引き出して使用するもので、設備全体を持ち運ぶという意味ではありません。
| 設備 | 全域放出 | 局所放出 | 移動式 |
|---|---|---|---|
| 不活性ガス | 4種類 用途による制限あり |
CO₂ | CO₂ |
| ハロゲン化物 | 用途に応じた消火剤 | ハロン3種 | ハロン3種 |
| 粉末 | ○ | ○ | ○ |
この表は方式の有無を整理したものです。実際に設置できるか、どの消火剤を使えるかは、設置場所と各条文の条件まで確認してください。
構成機器は「共通部分」と「固有部分」に分ける
3設備には、消火剤を貯蔵し、配管を通じて放出するという共通の流れがあります。ただし、すべての設備に同じ機器が必ず付くわけではありません。
| 区分 | 主な機器・措置 | 読み方 |
|---|---|---|
| 貯蔵・放出 | 貯蔵容器、容器弁・放出弁、配管、噴射ヘッド | 剤の状態と貯蔵圧力で構成が変わる |
| 区画選択 | 集合管、選択弁など | 複数区画を共用するときに用いる |
| 起動・警報 | 起動装置、制御盤、音響警報、放出表示灯など | 方式・消火剤別の条件を確認する |
| 粉末固有 | 加圧用・蓄圧用ガス、圧力調整器、定圧作動装置、クリーニング関係 | 固体の粉末を安定して搬送するために必要 |
| CO₂の保安 | 遅延装置、緊急停止装置、閉止弁、標識など | 全域放出方式のCO₂に対する特別な措置を分けて覚える |
消防設備士試験での学び方
消防試験研究センターの案内では、第3類を含む甲種は筆記45問と実技7問(鑑別等5問・製図2問)、乙種は筆記30問と実技5問(鑑別等5問)です。科目免除がある場合は問題数と試験時間が変わります。
最初から細かな薬剤量の計算へ進むより、次の順に整理すると、条文の条件を取り違えにくくなります。
- 3設備と消火剤の対応
- 全域放出・局所放出・移動式の違い
- 設備と方式ごとに使用できる消火剤
- 共通機器と固有機器
- CO₂の安全対策
- 設置対象、必要量、放射時間、配管計算
甲種の学習順は「甲種3類ロードマップ」、乙種は「乙種3類ロードマップ」で確認できます。
理解度チェック
以下は、この記事の内容を確認するための当サイト作成問題です。消防試験研究センターの公開問題を転載したものではありません。
問題1 消防設備士第三類の対象として正しい組合せはどれか。
- 水噴霧消火設備・泡消火設備・粉末消火設備
- 不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備
- 屋内消火栓設備・不活性ガス消火設備・粉末消火設備
- ハロゲン化物消火設備・自動火災報知設備・粉末消火設備
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正解:2
消防法施行規則第33条の3は、第三類を不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備としています。
問題2 不活性ガス消火設備の局所放出方式に使用する消火剤はどれか。
- 窒素
- IG-55
- IG-541
- 二酸化炭素
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正解:4
局所放出方式と移動式の不活性ガス消火設備に使用する消火剤は二酸化炭素です。窒素、IG-55、IG-541は全域放出方式で扱います。
問題3 ハロゲン化物消火設備の放出方式に関する説明として正しいものはどれか。
- 局所放出方式は法令上存在しない
- 局所放出方式にはHFC-23だけを使用する
- 局所放出方式にはハロン2402・1211・1301を使用する
- 移動式にはFK-5-1-12だけを使用する
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正解:3
ハロゲン化物消火設備には局所放出方式があります。局所放出方式と移動式に使用する消火剤はハロン2402・1211・1301です。
問題4 粉末消火設備について正しいものはどれか。
- 消火剤は気体なので放出後に残らない
- 全域放出方式だけが認められている
- 加圧用または蓄圧用ガスを用いて粉末を搬送する
- 駐車の用に供される部分では第一種粉末を使用する
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正解:3
粉末は固体であり、加圧用または蓄圧用ガスによって搬送します。全域放出・局所放出・移動式があり、駐車の用に供される部分では第三種粉末を使用します。
問題5 全域放出方式のCO₂消火設備で、工事・整備・点検のため防護区画内に人が入るときの維持方法として正しいものはどれか。
- 閉止弁を開放し、自動状態にする
- 閉止弁を閉止し、自動手動切替え装置を手動状態にする
- 閉止弁は操作せず、音響警報だけを停止する
- 換気装置を停止すれば、ほかの操作は不要である
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正解:2
消防法施行規則第19条の2は、防護区画内に人が立ち入る場合、閉止弁を閉止状態とし、自動手動切替え装置を手動状態に維持することを定めています。
まとめ
- 第三類は不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の3設備を扱う
- 不活性ガスの局所放出・移動式はCO₂を使用する
- ハロゲン化物にも局所放出方式があり、ハロン3種を使用する
- 粉末には全域放出・局所放出・移動式があり、放出後は粉末が残る
- 構成機器と安全対策は、3設備すべてで一律ではない
- 特に全域放出方式のCO₂は、遅延装置・緊急停止装置・閉止弁・標識などを分けて確認する
参考資料
- e-Gov法令検索「消防法施行令」(第13条、第16条~第18条)
- e-Gov法令検索「消防法施行規則」(第19条~第21条、第33条の3)
- 消防試験研究センター「試験科目及び問題数」
- 消防試験研究センター「過去に出題された問題」
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