結論:警戒区域は「600㎡以下・一辺50m以下・1フロア」が基本
自動火災報知設備(自火報)の警戒区域の設定方法は、施行規則第23条で定められています。基本ルールはたった3つです。
警戒区域とは、火災が発生したときに受信機が「どのエリアで火災が起きたか」を表示するための区域の単位のこと。この区域の設定が適切でないと、火災場所を特定できず、初期消火や避難誘導が遅れてしまいます。
甲種4類の試験では、面積・一辺の数値、500㎡以下の小規模特例、竪穴区画の扱いが頻出です。1つずつ見ていきましょう。
そもそも警戒区域とは? ― 受信機が火災場所を示す単位
自火報のシステムでは、建物をいくつかの「ゾーン」に分けて管理します。各ゾーンに感知器を設置し、どのゾーンの感知器が反応したかで火災場所を特定する仕組みです。この「ゾーン」が警戒区域です。
P型受信機の場合、各警戒区域ごとに1つの回線が割り当てられます。1回線に複数の感知器がつながっていて、そのうちどれか1つでも作動すれば、受信機の窓に「この回線=このエリアで火災発生」と表示されます。
つまり、警戒区域が広すぎると「建物のどこかで火災」としかわからず、逆に狭すぎると回線数が膨大になってコストが跳ね上がる。そのバランスを取るために、法令で面積と辺の上限が決められているのです。
基本ルール① 面積は600㎡以下
1つの警戒区域の面積は、600㎡以下でなければなりません(施行規則第23条第4項第2号)。
600㎡は、だいたいテニスコート約2.5面分くらいの広さです。この面積以内なら、感知器が反応したとき「あのあたりだな」と場所を素早く絞り込めます。
たとえば、1フロアが1,200㎡のオフィスビルなら、最低でも2つの警戒区域に分ける必要があります。
基本ルール② 一辺の長さは50m以下
警戒区域の一辺の長さは50m以下です。
なぜ面積だけでなく辺の長さにも制限があるのでしょうか? それは、細長い区域を防ぐためです。
たとえば「幅10m × 奥行60m = 600㎡」は面積的にはOKですが、一辺が60mなのでNG。細長い廊下のような区域では、感知器が反応しても「端から端まで60mのどこか」となり、場所の特定に時間がかかってしまいます。
基本ルール③ 2以上の階にわたらない
警戒区域は、原則として1つの階だけで構成します。1階と2階をまとめて1つの警戒区域にすることはできません。
理由はシンプルです。受信機に「第3警戒区域で火災」と表示されたとき、それが1階なのか2階なのかわからなければ、すぐに駆けつけることができません。階ごとに区域を分けることで、「何階の」「どのエリアか」が一目でわかるようにしているのです。
特例① 500㎡以下なら2つの階を1警戒区域にできる
原則は「1フロア=1区域」ですが、1つの警戒区域の面積が500㎡以下であれば、2つの階にわたって1警戒区域とすることができます。
効果:2つの階をまとめて1警戒区域にできる
制限:3つ以上の階をまたぐことは不可
たとえば、1階が200㎡、2階が200㎡の小さな建物なら、合計400㎡で500㎡以下。この場合、1階と2階をまとめて1つの警戒区域にしてもOKです。
なぜこの特例があるのか?
小さな建物では、階ごとに警戒区域を分けるメリットが少ないからです。各階200㎡程度の2階建て建物なら、「この建物のどこかで火災」とわかれば十分に対応できます。わざわざ回線を増やすコスト負担のほうが大きいため、500㎡以下の緩和措置が設けられています。
特例② 地階は必ず別の警戒区域
地階(地下の階)は、たとえ面積が小さくても地上階と同じ警戒区域にはできません。必ず別の警戒区域として設定します。
なぜ地階は別扱いなのか?
地階は地上階と比べて避難環境が根本的に違うからです。
- 煙が溜まりやすい ― 窓がなく自然排煙ができない
- 避難が困難 ― 避難方向が「上」しかなく、煙の流れと逆行する
- 外部からの救助が難しい ― 消防隊も進入しにくい
地階の火災は地上階より格段に危険です。だから「地下で火災が起きた」ことを受信機で明確に判別できるよう、必ず別区域にするのです。
特例③ 竪穴区画は別の警戒区域
次の場所は、面積に関係なくそれぞれ別の警戒区域として設定しなければなりません。
・ 傾斜路(スロープ)
・ エレベーター昇降路(シャフト)
・ リネンシュート(洗濯物を落とすダクト)
・ パイプダクト(配管スペース)
・ その他これらに類する場所
これらは建物を縦に貫く空間です。共通の特徴は「煙突効果」――煙と火炎が一気に上階へ広がる通路になること。
居室での火災と竪穴での火災では、延焼スピードや対応方法がまるで違います。竪穴を別区域にしておけば、受信機で「階段で火災」「EVシャフトで火災」と特定でき、適切な対応を素早くとれるのです。
なお、竪穴区画は複数の階を縦に貫いているため、「2以上の階にわたらない」という原則の例外にもなります。階段やエレベーターシャフトは、1階から最上階まで通しで1つの警戒区域とするのが一般的です。
特例④ 光電式分離型感知器の緩和 ― 1,000㎡・100m
光電式分離型感知器(送光部と受光部を向かい合わせに設置する煙感知器)を設ける警戒区域には、緩和された基準が適用されます。
| 項目 | 通常 | 光電式分離型 |
|---|---|---|
| 面積 | 600㎡以下 | 1,000㎡以下 |
| 一辺 | 50m以下 | 100m以下 |
なぜ光電式分離型は緩和されるのか?
光電式分離型感知器は、送光部と受光部の間のビーム(光線)で広い空間全体を「線」で監視できます。通常のスポット型感知器が「点」で煙を検知するのに対し、分離型は数十メートルの「線」で検知するため、広い空間でも検知漏れが起きにくいのが特徴です。
体育館や倉庫のような天井が高くて広い空間で使われることが多く、このような場所に通常の600㎡基準を当てはめると区域が細かくなりすぎます。分離型の検知能力に見合った緩和が認められているのです。
まとめ ― 警戒区域の設定ルール一覧
① 面積 → 600㎡以下
② 一辺 → 50m以下
③ 階 → 2以上の階にわたらない【特例・例外】
④ 500㎡以下 → 2つの階を1区域にできる
⑤ 地階 → 必ず別の警戒区域
⑥ 竪穴区画 → 必ず別の警戒区域
⑦ 光電式分離型 → 1,000㎡以下・100m以下
まとめ問題 ― 理解度チェック
記事の内容が身についたか、4問で確認しましょう。
【問題1】警戒区域の基本ルール
自動火災報知設備の警戒区域について、正しいものはどれか。
(1)1警戒区域の面積は500㎡以下でなければならない
(2)1警戒区域の一辺の長さは60m以下でなければならない
(3)1警戒区域の面積は600㎡以下、一辺の長さは50m以下でなければならない
(4)1警戒区域の面積は1,000㎡以下、一辺の長さは100m以下でなければならない
【問題2】小規模建物の特例
2階建ての建物(1階:250㎡、2階:200㎡)に自火報を設置する場合、警戒区域の設定として正しいものはどれか。
(1)各階をそれぞれ別の警戒区域としなければならない
(2)2つの階を合わせて1つの警戒区域とすることができる
(3)地階がなければ警戒区域の設定は不要である
(4)2つの階を合わせて1つの警戒区域とし、さらに隣接する建物も含めることができる
【問題3】竪穴区画の扱い
階段やエレベーター昇降路の警戒区域について、正しいものはどれか。
(1)各階の居室と同じ警戒区域に含めてよい
(2)面積が600㎡以下であれば、居室と同じ警戒区域にできる
(3)それぞれ別の警戒区域としなければならない
(4)エレベーター昇降路は警戒区域の設定が不要である
【問題4】なぜ地階は別区域なのか(応用)
地下1階(面積300㎡)と1階(面積150㎡)がある建物で、合計面積は450㎡で500㎡以下である。この場合、地下1階と1階を1つの警戒区域にまとめることはできるか。また、その理由として最も適切なものはどれか。
(1)できる。500㎡以下なので2つの階を1警戒区域にできるルールが適用される
(2)できない。地階は面積に関係なく地上階と同じ警戒区域にできないため
(3)できる。ただし受信機に地階表示を追加する必要がある
(4)できない。合計面積が300㎡を超えているため