結論:自火報の設置義務は「用途」と「面積」で決まる
結論から言います。
自動火災報知設備(自火報)をどの建物に設置しなければならないかは、施行令第21条で定められています。判断基準は大きく2つ――建物の用途(何に使う建物か)と延べ面積(建物の広さ)です。
建物の用途は施行令別表第一で分類されており、特定防火対象物(不特定多数が出入りする建物)ほど厳しい基準が適用されます。
甲種4類の試験では、どの用途がどの面積区分か、面積不問の用途はどれか、地階・無窓階・11階以上の特例が頻出です。
面積に関係なく設置が必要な用途 ― 最も危険度が高い建物
以下の用途は、延べ面積が何㎡であってもすべて自火報の設置が義務です。小さな建物でも例外はありません。
(5)項イ:旅館・ホテル・宿泊所
(6)項イ:病院・診療所(入院施設あり)
(6)項ロ:老人短期入所施設・特別養護老人ホーム等
(6)項ハ:老人デイサービスセンター・保育所等
(6)項ニ:幼稚園・特別支援学校
(16の2)項:地下街
(16の3)項:準地下街
なぜこれらの用途は面積不問なのか?
共通しているのは、自力避難が困難な人がいるか、避難環境が特に危険ということです。
- カラオケ・ネットカフェ ― 個室で密閉され、火災に気づきにくい
- 旅館・ホテル ― 宿泊者は深夜に就寝中で、建物構造に不慣れ
- 病院・福祉施設 ― 入院患者・高齢者・障がい者・乳幼児は自力で避難できない
- 地下街 ― 煙が充満しやすく、避難経路が限られる
たとえ10㎡の小さな診療所でも、入院患者がいれば火災時の危険度は非常に高い。だから面積に関係なく自火報が必要なのです。
延べ面積300㎡以上で設置が必要な用途
次のグループは、延べ面積が300㎡以上になると自火報の設置が義務になります。
(2)項イ〜ハ:キャバレー・遊技場・風俗営業店
(3)項:料理店・飲食店
(4)項:百貨店・マーケット・物品販売店
(9)項イ:蒸気浴場(サウナ等)・熱気浴場
(16)項イ:特定複合用途防火対象物
これらは特定防火対象物のうち、面積不問ほどではないが不特定多数の人が出入りする用途です。お客さんが多く、火災時にパニックが起きやすいため、比較的小さい面積から設置が求められます。
300㎡は、目安としてコンビニ3〜4軒分くらいの広さです。
延べ面積500㎡以上で設置が必要な用途
(7)項:学校(小学校・中学校・高校・大学等)
(8)項:図書館・博物館・美術館
(9)項ロ:一般公衆浴場(銭湯等)
(10)項:車両の停車場・船舶の発着場
(11)項:神社・寺院・教会
(12)項:工場・映画スタジオ
(13)項:自動車車庫・駐車場
(15)項:事務所・その他の事業場
(16)項ロ:非特定複合用途防火対象物
これらは主に非特定防火対象物です。利用者が建物の構造に慣れていたり、特定の目的で訪れたりするため、特定防火対象物よりやや緩い基準になっています。
特定と非特定の面積差のポイント:
たとえば、同じ「お風呂」でも、(9)項イの蒸気浴場(サウナ)は300㎡、(9)項ロの一般公衆浴場(銭湯)は500㎡で差があります。サウナは裸で高温空間にいるため火災時の危険度が高く、銭湯より厳しい基準になっています。
延べ面積1,000㎡以上で設置が必要な用途
倉庫は常時人がいない用途です。無人の時間帯が多く、火災時に避難が必要な人が少ないため、1,000㎡という最も緩い基準になっています。
ただし、1,000㎡の倉庫はかなり大きい(テニスコート約4面分)ので、一般的な物流倉庫クラスになれば設置義務がかかります。
面積基準の全体像 ― なぜ差があるのか
面積基準の差を一言で言えば、「火災時の人的リスクが高い用途ほど厳しい」ということです。
(病院・福祉施設・ホテル・カラオケ・地下街)
▼ リスクが高い
300㎡以上 → 不特定多数が出入りする特定防火対象物
(劇場・百貨店・飲食店・サウナ)
▼
500㎡以上 → 利用者が限定的な非特定防火対象物
(学校・事務所・工場・共同住宅)
▼ リスクが低い
1,000㎡以上 → 常時無人の用途
(倉庫)
地階・無窓階・3階以上の階 ― 階の条件による設置義務
建物全体の面積が基準未満でも、特定の階に一定の面積があれば自火報の設置が必要になることがあります。
地階・無窓階で床面積300㎡以上
地階(地下の階)や無窓階(窓がないか、避難用の開口部が基準未満の階)は、煙が充満しやすく避難が困難です。これらの階の床面積が300㎡以上ある場合、建物全体に自火報の設置が必要になります。
3階以上の階で床面積300㎡以上
3階以上の階(上層階)は、避難に時間がかかります。階段が煙で使えなくなるリスクもあるため、これらの階の床面積が300㎡以上ある場合も設置義務が発生します。
ポイント:これらは「その階の床面積」であって、建物全体の延べ面積ではありません。地下1階だけ300㎡あれば、地上階が小さくても設置義務がかかります。
11階以上の階 ― 面積に関係なく設置
11階以上の階がある建物は、その階の面積に関係なく自火報の設置が義務です。
なぜ11階?
はしご車が届く限界が一般的に約31m(おおむね10階)です。11階以上はしご車による外部からの救助が困難になるため、建物内部での早期発見・早期通報がなければ人命救助が間に合わないのです。
だから11階以上は面積を問わず、自火報による火災の早期検知が絶対に必要とされています。
特定一階段等防火対象物
もうひとつ重要な概念が特定一階段等防火対象物です。
これは、地階または3階以上の階に特定用途(飲食店・物品販売店等)があり、かつ屋内階段が1つしかない建物のことです。
階段が1つしかないということは、その階段が煙で使えなくなったら避難経路がゼロになります。極めて危険なため、この建物は面積に関係なく自火報の設置が義務です。
全体のまとめ
面積不問:カラオケ・ホテル・病院・福祉施設・地下街等
300㎡以上:劇場・百貨店・飲食店・サウナ・特定複合等
500㎡以上:学校・事務所・工場・共同住宅・非特定複合等
1,000㎡以上:倉庫
基準の考え方:人的リスクが高い用途ほど厳しい
地階・無窓階・3階以上:床面積300㎡以上で設置義務
11階以上の階:面積に関係なく設置義務(はしご車の限界)
特定一階段等防火対象物:面積に関係なく設置義務
まとめ問題
問題1:自動火災報知設備の設置義務に関する記述のうち、延べ面積に関係なく設置が必要な用途はどれか。
(1)百貨店
(2)事務所
(3)旅館
(4)工場
問題2:自火報の設置義務に関する面積基準の組み合わせとして、正しいものはどれか。
(1)劇場 ― 延べ面積500㎡以上
(2)学校 ― 延べ面積300㎡以上
(3)倉庫 ― 延べ面積1,000㎡以上
(4)共同住宅 ― 延べ面積300㎡以上
問題3:11階以上の階に自火報の設置が義務づけられている主な理由として、最も適切なものはどれか。
(1)11階以上は建築基準法で防火区画が不要となるため
(2)11階以上は一般的にはしご車が届かず、外部からの救助が困難なため
(3)11階以上は電気設備が多く火災の原因になりやすいため
(4)11階以上はエレベーターが設置されていない建物が多いため
問題4:地階・無窓階に関する自火報の設置基準として、正しいものはどれか。
(1)地階であれば床面積に関係なく自火報の設置が必要である
(2)地階の床面積が500㎡以上の場合に自火報の設置が必要である
(3)地階または無窓階の床面積が300㎡以上の場合に自火報の設置が必要である
(4)無窓階であっても建物全体の延べ面積が基準未満なら自火報は不要である
問題5(応用):地上4階建てのビルで、1階が飲食店(100㎡)、2〜4階が事務所(各100㎡)、延べ面積400㎡の場合、自火報の設置義務はあるか。次のうち正しいものはどれか。
(1)延べ面積400㎡で飲食店の基準(300㎡以上)を超えているため設置義務がある
(2)飲食店の面積は100㎡のみなので300㎡未満であり設置義務はない
(3)事務所の基準(500㎡以上)に達していないため設置義務はない
(4)3階以上の階の床面積が300㎡以上ではないため設置義務はない