結論:炎感知器は「炎の光(赤外線・紫外線)」で火災を検出する
結論から言います。
炎感知器とは、炎が発する赤外線や紫外線を検出して火災を見つける感知器です。
差動式や定温式は「熱」、光電式やイオン化式は「煙」で火災を判断しますが、炎感知器は「光(電磁波)」で判断します。
最大の特徴は、天井の高さに制限がないこと。熱も煙も上昇気流に頼りますが、光は距離があっても届くため、体育館やアトリウムなど天井高20mを超える空間でも使えます。
甲種4類の試験では、赤外線式と紫外線式の検出原理の違い、それぞれの誤報要因、設置場所の使い分けが頻出です。
赤外線式の動作原理 ― CO₂共鳴放射を見つける
赤外線式感知器が検出するのは、ただの赤外線ではありません。CO₂共鳴放射と呼ばれる、炎に特有の赤外線です。
CO₂共鳴放射とは?
有機物(紙・木・プラスチックなど)が燃えると、必ず二酸化炭素(CO₂)が発生します。高温のCO₂は波長4.3μm(マイクロメートル)付近の赤外線を強く放射するという性質があります。
これが「CO₂共鳴放射」です。赤外線式感知器はこの特定の波長だけを狙って検出します。
→ 高温のCO₂が発生する
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② CO₂が波長4.3μm付近の赤外線を放射
→ これがCO₂共鳴放射
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③ 感知器の焦電素子が検出
→ 特定波長の赤外線だけをフィルタリング
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④ 炎特有のちらつき(フリッカー)も確認
→ 安定した赤外線(暖房等)と区別 → 火災信号を発報!
なぜ波長4.3μmに絞るのか?
太陽光やヒーターも赤外線を出しますが、4.3μm付近の赤外線は大気中のCO₂に吸収されるという特性があります。つまり、遠くの太陽光は途中で4.3μmの成分が吸収されて減衰するのに対し、近くの炎からのCO₂共鳴放射はダイレクトに届きます。
さらに、炎には独特のちらつき(フリッカー)があります。赤外線式はこのちらつきのパターンも見て、ヒーターなどの「安定した赤外線」と炎の「揺らぐ赤外線」を区別します。
焦電素子(パイロ素子)とは
赤外線式の中核部品が焦電素子(しょうでんそし)です。英語で「パイロエレクトリック素子」、略してパイロ素子とも呼ばれます。
焦電素子は、赤外線を受けると温度変化に応じて電圧を発生する素子です。赤外線が「変化する」(=炎のちらつき)ときに電圧が出るので、安定した熱源(暖房など)には反応しにくいという優れた特性があります。
紫外線式の動作原理 ― 炎だけが出す短波長紫外線
紫外線式感知器が検出するのは、波長185〜260nm付近の短波長紫外線です。
なぜ短波長紫外線なのか?
太陽も紫外線を出していますが、波長の短い紫外線は大気のオゾン層でほぼ吸収されて地表には届きません。一方、炎は至近距離で短波長紫外線を放射するため、大気に吸収される前に感知器に届きます。
つまり、地表で短波長紫外線が検出されたら、それは近くに炎がある証拠ということです。
→ 波長185〜260nm付近
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② 紫外線放電管が検出
→ 短波長UVを受けると管内で放電が起きる
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③ 放電パルスをカウント
→ 一定数以上のパルスで炎と判定 → 火災信号を発報!
検出素子は紫外線放電管(UVチューブ)と呼ばれます。短波長紫外線を受けると管内のガスが放電する仕組みで、放電のパルス数をカウントして炎を判定します。
赤外線式と紫外線式の比較 ― 使い分けのポイント
どちらも炎の光を検出しますが、得意な環境と苦手な環境が異なります。
| 比較項目 | 赤外線式 | 紫外線式 |
|---|---|---|
| 検出波長 | 4.3μm(赤外線) | 185〜260nm(紫外線) |
| 検出素子 | 焦電素子 | 紫外線放電管 |
| 屋外使用 | 可能 | 不向き |
| 主な誤報要因 | 高温物体のちらつき | 溶接・放電・太陽光 |
| 応答速度 | やや遅い | 速い |
赤外線式が屋外でも使える理由
太陽光にも赤外線は含まれますが、赤外線式はCO₂共鳴放射(4.3μm)という特定波長に絞っているうえ、炎のちらつき(フリッカー)パターンも見ています。このダブルチェックのおかげで、太陽光による誤報をかなり抑えられます。
紫外線式が屋外に不向きな理由
理論上、短波長紫外線はオゾン層で吸収されるため太陽光では反応しないはずですが、実際には直射日光に含まれる散乱光成分で誤報することがあります。また、溶接のアークや放電現象(スパーク)も強い紫外線を出すため、これらが近くにある環境では非火災報の原因になります。
紫外線式の応答が速い理由
紫外線式は放電パルスのカウントで即座に判定できるため、応答速度が非常に速いのが特徴です。赤外線式はフリッカーパターンの分析に時間がかかるため、やや遅くなります。
炎感知器の最大の強み ― 取付面の高さに制限なし
これは感知器の全体像でも触れましたが、とても重要なので改めて整理します。
体育館・アトリウム・吹き抜け・展示ホール・大規模倉庫など、天井高が20mを超える空間では炎感知器が唯一の選択肢です。
監視距離と視野角
炎感知器は「光を受ける」感知器なので、監視距離(どこまで届くか)と視野角(どの範囲を見られるか)があります。
- 公称監視距離:感知器から炎までの最大距離(製品ごとに異なる)
- 視野角:感知器の正面から左右に広がる検出範囲の角度
設置するときは、監視空間のすべてを視野角でカバーできる位置に取り付ける必要があります。死角ができないよう、複数台を組み合わせて設置するのが一般的です。
また、炎感知器は天井だけでなく壁面にも設置できるという特徴があります。熱感知器や煙感知器は天井面に付けるのが原則ですが、炎感知器は光を直接受けるため、壁に付けて斜め下を監視することも可能です。
炎感知器の非火災報(誤報)の原因
炎感知器にも非火災報(誤報)のリスクがあります。赤外線式と紫外線式で原因が異なるので、しっかり区別しましょう。
試験で特に狙われるポイント:
- 紫外線式は溶接作業がある場所に設置してはいけない(アーク光が強い紫外線を出す)
- 赤外線式は安定した赤外線源(ヒーターなど)では誤報しにくい(ちらつきがないと反応しないから)
炎アナログ式感知器
炎感知器にもアナログ式があります。熱アナログ式と同じ考え方で、炎の強さ(赤外線・紫外線の量)を数値データとしてR型受信機に送信し続ける方式です。
受信機側で火災判定を行うため、環境に合わせた感度調整がしやすいのがメリットです。
全体のまとめ
最大の特徴:取付面の高さに制限なし(上昇気流に頼らない)
赤外線式:CO₂共鳴放射(4.3μm)+フリッカー検出 / 焦電素子 / 屋外OK
紫外線式:短波長UV(185〜260nm)/ 紫外線放電管 / 応答速度が速い / 屋外不向き
赤外線の誤報:ちらつきのある高温物体・反射光
紫外線の誤報:溶接のアーク・放電・殺菌灯・直射日光
設置の特徴:天井だけでなく壁面設置も可能 / 監視距離と視野角がある
使用場所:体育館・アトリウム・吹き抜け・大規模倉庫(天井高20m超)
まとめ問題
問題1:赤外線式炎感知器の動作原理に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)炎が発する可視光線の明るさの変化を検出する
(2)炎の燃焼で発生するCO₂が放射する特定波長の赤外線を検出する
(3)炎の熱による周囲の温度上昇を赤外線センサーで検出する
(4)炎の煙が赤外線を遮ることによる光量の変化を検出する
問題2:紫外線式炎感知器に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)炎が発する短波長紫外線(185〜260nm付近)を検出する
(2)検出素子として紫外線放電管(UVチューブ)を使用する
(3)溶接作業が行われる場所でも問題なく使用できる
(4)赤外線式に比べて応答速度が速い
問題3:炎感知器の特徴に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)熱感知器と同様に、取付面の高さは8m未満に制限されている
(2)煙感知器と同様に、上昇気流を利用して火災を検出する
(3)光(電磁波)で検出するため、取付面の高さに制限がない
(4)天井面にのみ設置でき、壁面への設置は認められていない
問題4:赤外線式炎感知器と紫外線式炎感知器の比較に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)赤外線式は屋外では使用できないが、紫外線式は屋外に適している
(2)紫外線式は赤外線式より応答速度が速いが、溶接のアーク光で誤報しやすい
(3)赤外線式は安定した赤外線を出すヒーターによる非火災報が多い
(4)紫外線式は大気中のオゾンの影響を受けないため、屋外に最適である
問題5(応用):次の場所のうち、炎感知器を設置するのが最も適切な場所はどれか。
(1)ホテルの客室(天井高2.5m、宿泊者が就寝する)
(2)オフィスの事務室(天井高3m、パソコンや書類が多い)
(3)大規模展示ホール(天井高25m、吹き抜け構造)
(4)レストランの厨房(天井高3m、調理で煙が出る)