甲種4類

差動式感知器の構造と機能|スポット型・分布型のしくみをわかりやすく解説

結論:差動式感知器は「温度の急上昇」で火災を見抜く

結論から言います。

差動式感知器とは、周囲の温度が急激に上昇したときに作動する熱感知器です。「差動」とは温度の変化量(差)で動くという意味で、一定時間内に温度が大きく上がれば「火災だ」と判断します。

前回の感知器全体像の記事で紹介したとおり、差動式は温度が安定した場所(オフィス・居室・廊下など)に向いている感知器です。

差動式にはスポット型分布型の2つの形式があります。

スポット型
1点で温度変化を検出
天井に1個ずつ取付け
一般的な部屋向け
取付面の高さ:8m未満
分布型
広範囲の温度変化を検出
空気管や熱電対を張り巡らす
広い空間向け
取付面の高さ:15m未満

甲種4類の試験では、スポット型の動作原理とリーク孔の役割、分布型の空気管式の構造が頻出です。

差動式スポット型感知器の構造

差動式スポット型は、内部に空気室(感熱室)を持つ感知器です。丸い本体を天井に取り付けて使います。

内部構造

差動式スポット型の構造
① 空気室(感熱室)
 密閉された空間。中の空気が温度変化で膨張・収縮する
② ダイヤフラム(膜)
 空気室の底にある薄い金属の膜。空気の圧力で上下に動く
③ 接点
 ダイヤフラムが押し上げられると接触して回路が閉じる
④ リーク孔(漏気孔)
 空気室に開いた小さな穴。ゆっくりした温度変化を逃がす

動作原理 ― 火災のとき

火災時の動作(急激な温度上昇)
① 火災発生 → 周囲の温度が急上昇
 ▼
② 空気室の空気が急膨張
 → 膨張速度がリーク孔から逃げる速度を上回る
 ▼
③ ダイヤフラムが押し上げられる
 ▼
④ 接点が接触 → 回路が閉じて火災信号を発信

平常時の動作 ― なぜ誤報しないのか

平常時の動作(緩やかな温度上昇)
① 暖房などで温度がゆっくり上昇
 ▼
② 空気室の空気がゆっくり膨張
 → 膨張した空気がリーク孔から少しずつ逃げる
 ▼
③ ダイヤフラムは動かない作動しない

ポイントはリーク孔です。

リーク孔 ― 差動式のカギとなる部品

リーク孔(漏気孔)は、差動式スポット型を理解するうえで最も重要な部品です。試験でも繰り返し出題されます。

リーク孔の役割
■ 緩やかな温度変化(暖房・季節変動など)
→ 膨張した空気がリーク孔からゆっくり逃げる
→ ダイヤフラムに圧力がかからない → 作動しない

■ 急激な温度変化(火災)
→ 空気の膨張が速すぎて、リーク孔から逃げ切れない
→ ダイヤフラムに圧力がかかる → 作動する

つまりリーク孔は、温度変化の「速さ」を判別するフィルターの役割を果たしています。この仕組みがあるから、差動式は日常的な温度変化では作動せず、火災のような急激な温度上昇だけに反応できるのです。

リーク孔が詰まるとどうなる?

リーク孔にほこりや汚れが詰まると、緩やかな温度変化でも空気が逃げられなくなります。すると暖房をつけただけでダイヤフラムが動いてしまい、非火災報(誤報)の原因になります。

逆にリーク孔が広がりすぎると、火災の急激な温度上昇でも空気が逃げてしまい、作動しない(失報)原因になります。

リーク孔の状態が差動式の信頼性を左右する――これは試験で問われるポイントです。

差動式分布型感知器の構造

差動式分布型は、天井に空気管や熱電対を張り巡らせて、広い範囲の温度変化を検出する感知器です。スポット型が「1点」の監視なのに対して、分布型は「面」の監視ができます。

分布型には空気管式熱電対式の2つがあります。

空気管式 ― 銅管で広範囲をカバー

空気管式は、細い銅管(空気管)を天井面に張り巡らせ、管内の空気の膨張で火災を検出します。試験に最もよく出る分布型です。

空気管式の構成
① 空気管
 外径約2mmの細い銅管。天井面に露出して敷設する
② 検出部
 空気管の末端に接続。ダイヤフラム+接点+リーク孔を内蔵
③ 検出部の動作
 火災→空気管内の空気が膨張→検出部のダイヤフラム変位→接点接触

動作原理はスポット型と同じ「空気の膨張→ダイヤフラム→接点」です。違いは、感熱部分が空気管全体に広がっていること。空気管が張られた範囲のどこで温度が急上昇しても検出できます。

空気管の敷設ルール

空気管の敷設には主な規定があります。

項目 基準
管の材質 銅管(外径約2mm)
敷設方法 天井面に露出して取付け
1検出部あたりの空気管長 100m以下
取付面の高さ 15m未満

なぜ銅管なの?

銅は熱伝導率が非常に高い金属です。周囲の温度変化を素早く管内の空気に伝えられるため、感度の良い検出ができます。また、銅は腐食に強く長期間使用できるという利点もあります。

なぜ露出して取り付けるの?

空気管を天井裏に隠してしまうと、室内の温度変化が管に伝わりにくくなります。室内側の天井面に露出させることで、火災の熱をダイレクトにキャッチできます。

熱電対式 ― 電気で温度変化を検出

熱電対式は、2種類の異なる金属を接合した熱電対を天井に複数設置し、温度変化による起電力(ゼーベック効果)で火災を検出する方式です。

熱電対式のしくみ
ゼーベック効果:2種類の金属の接合部に温度差があると起電力が生じる

平常時:各熱電対の温度がほぼ同じ → 起電力が小さい → 作動しない
火災時:火災付近の熱電対だけ温度上昇 → 大きな起電力が発生 → 検出部が火災と判断

熱電対式は空気管式と違い、空気の膨張ではなく電気信号で動作するため、応答速度が速いという特徴があります。ただし、試験に出る頻度は空気管式より低めです。

空気管式 vs 熱電対式

項目 空気管式 熱電対式
検出原理 空気の膨張 起電力(ゼーベック効果)
感熱部 銅管(空気管) 熱電対素子
応答速度 やや遅い 速い
試験の出題頻度 高い 低め

スポット型 vs 分布型 ― どう使い分ける?

スポット型が向く場所
事務室・居室・会議室
廊下・通路
天井高8m未満の一般的な部屋
→ 個別の部屋を1個ずつ監視
分布型が向く場所
工場・倉庫・格納庫
地下駐車場
天井高15m未満の広い空間
→ 広いエリアを面で監視

分布型の最大のメリットは、天井が高い広い空間でも対応できることです。スポット型は取付面の高さ8m未満までですが、分布型は15m未満まで使えます。空気管を広範囲に張り巡らせることで、1つの検出部で広いエリアをカバーできるのも利点です。

差動式感知器の弱点

差動式は優れた感知器ですが、原理上の弱点があります。

弱点1:緩慢な温度上昇に弱い

差動式は「急激な温度上昇」で作動する感知器です。逆に言えば、ゆっくりと温度が上がる火災(くすぶり火災など)ではリーク孔から空気が逃げてしまい、作動しない可能性があります。

この弱点を補うのが補償式感知器(差動式+定温式)です。差動式で捉えられない緩慢な温度上昇も、定温式の機能で「一定温度に達したら作動」というバックアップが効きます。

弱点2:温度変動が大きい場所に不向き

厨房やボイラー室のように、日常的に温度が急変する場所では、火災でなくても差動式が作動してしまう(非火災報)リスクがあります。こうした場所には定温式感知器を使います。

弱点3:リーク孔の詰まりによる誤報

先ほど説明したとおり、リーク孔にほこり等が詰まると、緩やかな温度変化でも空気が逃げられず、非火災報の原因になります。定期的な点検・清掃が欠かせません。

差動式の弱点と対策
緩慢な温度上昇:補償式感知器で補う
温度変動が大きい場所:定温式感知器を使う
リーク孔の詰まり:定期点検で清掃・確認

差動式感知器の試験方法

差動式感知器の作動試験は、加熱試験で行います。

スポット型の試験

加熱試験器を使って感知器を加熱し、受信機が正常に火災表示するか確認します。差動式スポット型は「急激な温度上昇」で作動するため、試験器で素早く加熱することが重要です(ゆっくり加熱するとリーク孔から空気が逃げて作動しない)。

分布型(空気管式)の試験

空気管式の試験には、作動試験のほかに以下の特有の試験があります。

試験名 目的
作動試験 テストポンプで空気を送り、検出部が正常に作動するか確認
流通試験 空気管の詰まりがないか確認(空気が流れるか)
接点水高試験 接点の間隔が適正か確認(水柱の高さで測定)
リーク試験 空気管の漏れがないか確認

空気管式は空気管の「詰まり」「漏れ」「接点の間隔」がすべて性能に影響するため、スポット型よりも試験項目が多くなります。

全体のまとめ

差動式感知器 チェックリスト
動作原理:温度の急激な上昇で作動(変化速度で判断)
キーパーツ:空気室+ダイヤフラム+接点+リーク孔
リーク孔の役割:緩やかな温度変化を逃がすフィルター
スポット型:1点監視、取付面8m未満
分布型(空気管式):銅管で面監視、100m以下/1検出部、取付面15m未満
分布型(熱電対式):ゼーベック効果で検出、応答が速い
弱点:緩慢な温度上昇に弱い → 補償式で補う
不向きな場所:厨房・ボイラー室 → 定温式を使う
空気管式の試験:作動・流通・接点水高・リーク試験の4つ

まとめ問題

問題1:差動式スポット型感知器の動作原理に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)周囲の温度が一定の値に達したときに接点が閉じて作動する
(2)空気室内の空気が温度上昇で膨張し、ダイヤフラムを押し上げて接点が閉じる
(3)煙の粒子が光を散乱させることで作動する
(4)炎の赤外線を検出して作動する

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正解:(2)
差動式スポット型は、火災による急激な温度上昇で空気室の空気が膨張し、ダイヤフラムを押し上げて接点を閉じる仕組みです。(1)は定温式の説明です。(3)は光電式煙感知器の説明です。(4)は炎感知器の説明です。

問題2:差動式スポット型感知器のリーク孔に関する記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)リーク孔は、緩やかな温度変化で膨張した空気を逃がす役割がある
(2)リーク孔が詰まると、日常的な温度変化でも作動する原因になる
(3)リーク孔が広がりすぎると、火災時に作動しない原因になる
(4)リーク孔は、火災時に煙を排出するための穴である

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正解:(4)
リーク孔は煙を排出するための穴ではありません。空気室内で膨張した空気を少しずつ逃がすためのもので、温度変化の速さを判別するフィルターの役割を果たします。(1)(2)(3)はすべて正しい記述です。

問題3:差動式分布型感知器(空気管式)に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)空気管は天井裏に隠蔽して設置しなければならない
(2)空気管の材質はアルミニウム管が使用される
(3)1つの検出部に接続する空気管の長さは100m以下とする
(4)取付面の高さが20m以上の場所にも設置できる

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正解:(3)
1つの検出部に接続する空気管の長さは100m以下と定められています。(1)空気管は天井面に露出して設置します(隠蔽すると室内の温度変化を捉えにくくなる)。(2)空気管は熱伝導率の高い銅管です。(4)差動式分布型の取付面の高さは15m未満までです。

問題4(応用):差動式感知器を設置する場所として、最も不適切なものはどれか。

(1)事務所の執務室
(2)ホテルの客室
(3)厨房
(4)廊下

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正解:(3)
厨房は調理による温度の急変が日常的に起こる場所です。差動式感知器を設置すると、火災でなくても温度の急上昇で作動してしまい非火災報(誤報)の原因になります。厨房には温度の絶対値で判断する定温式感知器が適しています。(1)(2)(4)はいずれも温度が安定した場所であり、差動式が適しています。

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