甲種1類/乙種1類

【甲種1類】水力計算の完全攻略|全揚程・流量・摩擦損失・ポンプ出力の解き方

甲1の水力計算は「4パターン」で攻略できる

結論から言います。

甲種1類の試験で出る水力計算は、大きく分けて4パターンしかありません。

甲1 水力計算の4パターン
① 全揚程
実揚程+摩擦損失
+放水圧力水頭
② 流量と流速
連続の式 Q = Av
配管径と流速の関係
③ 摩擦損失
配管長 × 単位損失
継手の等価長を加算
④ ポンプ出力
P = 0.163QH/η
全揚程と流量から算出

すべてのパターンの土台は「配管の流体力学|ベルヌーイの定理・摩擦損失・ハーゼンウィリアムズ式」で解説した基本法則です。この記事では理論の深堀りは省略し、「試験で確実に解ける」ことだけに集中します。各パターンの公式→解き方→練習問題を1セットで攻略しましょう。

パターン① 全揚程の計算

使う公式

全揚程の公式

H = h₁ + h₂ + h₃

h₁:実揚程(ポンプ中心から最高位の放水口までの垂直距離)[m]
h₂:摩擦損失水頭(配管・継手の摩擦による損失)[m]
h₃:放水圧力換算水頭(ノズル先端で必要な圧力を水頭に換算)[m]

圧力と水頭の換算:1MPa ≒ 100m水頭です。たとえば必要放水圧力が0.17MPaなら、h₃ = 17m となります。

現場でのイメージ

地下のポンプ室から屋上近くの消火栓まで水を押し上げるとき、ポンプには3つの仕事が求められます。「高さまで持ち上げる力」「配管の摩擦に打ち勝つ力」「ノズルから勢いよく放水する力」――この3つの合計が全揚程です。

10階建てビルなら実揚程だけで30m以上。そこに摩擦損失と放水圧力を足すと、ポンプは50m以上の揚程が必要になります。

練習問題①

【問題】ポンプ中心から最上階の消火栓放水口まで垂直距離が28m、配管の摩擦損失水頭が9m、必要放水圧力が0.17MPaである。ポンプの全揚程は何mか。

解答を見る

正解:54m

Step 1:放水圧力を水頭に換算
0.17MPa × 100 = 17m

Step 2:全揚程を計算
H = 28 + 9 + 17 = 54m

3つの要素を足すだけのシンプルな計算です。圧力の換算(MPa→m)を間違えないことがポイントです。

パターン② 流量と流速の計算(連続の式)

使う公式

公式 意味
Q = A × v 流量 = 断面積 × 流速
A₁v₁ = A₂v₂ 管径が変わっても流量は同じ

断面積A = π × (d/2)²(dは管の内径)です。

解き方のコツ

この計算で最もミスしやすいのは単位の変換です。

  • 管径:mm → m に換算(例:50mm = 0.05m → 半径0.025m)
  • 流量:m³/s → L/min に換算(× 1000 × 60 = × 60,000)

庭のホースの先端を指でつまむと水の勢いが増しますよね。あれは断面積が小さくなって流速が上がったから。水の量(流量Q)自体は変わっていません。配管でも同じことが起きています。

練習問題②

【問題】断面積0.002m²の配管を流速2.5m/sで水が流れている。流量は何L/minか。

解答を見る

正解:300 L/min

Step 1:流量を求める
Q = A × v = 0.002 × 2.5 = 0.005 m³/s

Step 2:単位を変換
0.005 m³/s × 1000 = 5 L/s
5 L/s × 60 = 300 L/min

練習問題③

【問題】上の配管が途中で断面積0.001m²に細くなった。このとき流速は何m/sになるか。

解答を見る

正解:5 m/s

連続の式より:A₁v₁ = A₂v₂
0.002 × 2.5 = 0.001 × v₂
v₂ = 0.005 ÷ 0.001 = 5 m/s

断面積が半分になると、流速は2倍になります。流量(300 L/min)は変わりません。

パターン③ 摩擦損失の計算

使う公式

摩擦損失水頭の公式

h₂ = 単位摩擦損失 × 等価管長

単位摩擦損失:配管1mあたりの水頭損失 [m/m]
等価管長 = 配管の実長 + 継手・弁類の等価長 [m]

摩擦損失の理論的な計算にはハーゼンウィリアムズ式を使いますが、試験では単位摩擦損失が表や条件として与えられることがほとんどです。そのため、「等価管長を正しく求める」ことが実質的なカギになります。

現場でのイメージ

配管の中を水が流れると、管壁との摩擦で少しずつエネルギーを失います。長い配管ほど、また細い管ほど損失は大きくなります。さらに、エルボ(曲がり部分)やバルブ(弁)を通過するたびにも損失が発生します。

継手類は「まっすぐな管何m分に相当するか」という等価長で換算します。たとえば90°エルボ1個が「直管2m相当」なら、等価長として2mを加算するわけです。

練習問題④

【問題】配管の実長が40m、継手・弁類の等価長の合計が12mである。単位摩擦損失が0.15 m/mのとき、摩擦損失水頭は何mか。

解答を見る

正解:7.8m

Step 1:等価管長を求める
等価管長 = 40 + 12 = 52m

Step 2:摩擦損失水頭を求める
h₂ = 0.15 × 52 = 7.8m

継手の等価長を忘れて実長だけで計算する(40 × 0.15 = 6.0m)のが典型的なミスです。必ず等価長を加算しましょう。

パターン④ ポンプ出力の計算

使う公式

ポンプ出力の公式

P = 0.163 × Q × H ÷ η

P:ポンプ出力 [kW]
Q:流量 [m³/min]
H:全揚程 [m]
η:ポンプ効率(0〜1の小数で表す)
0.163 = 9.8 ÷ 60(重力加速度÷秒→分換算)

解き方のコツ

この公式を使うには、まずパターン①〜③で全揚程Hと流量Qを求めておく必要があります。つまりポンプ出力は、他の計算の総仕上げとして出題されることが多いのです。

流量の単位に注意してください。この公式ではQの単位がm³/min(毎分)です。L/minで与えられている場合は÷1000してから代入します。たとえば300 L/min = 0.3 m³/minです。

ポンプ効率ηは問題文で指定されます。実際のポンプ効率は0.5〜0.7程度が一般的です。効率が低いほど、必要な出力は大きくなります。

練習問題⑤

【問題】ポンプの全揚程が50m、送水量が0.3m³/min、ポンプ効率が0.5である。必要な電動機出力は何kWか。小数第2位を四捨五入して答えよ。

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正解:4.9kW

P = 0.163 × Q × H ÷ η
P = 0.163 × 0.3 × 50 ÷ 0.5
P = 2.445 ÷ 0.5 = 4.89 ≒ 4.9kW

もし効率が0.7だったら P = 2.445 ÷ 0.7 ≒ 3.5kW。効率が上がると必要出力が下がるのは直感どおりですね。

練習問題⑥(総合問題)

【問題】以下の条件でポンプの必要出力を求めよ。

  • ポンプ中心から最高位放水口までの垂直距離:35m
  • 配管の摩擦損失水頭:12m
  • 必要放水圧力:0.25MPa
  • 送水量:0.4 m³/min
  • ポンプ効率:0.6
解答を見る

正解:7.8kW

Step 1:放水圧力を水頭に換算
0.25MPa × 100 = 25m

Step 2:全揚程を求める
H = 35 + 12 + 25 = 72m

Step 3:ポンプ出力を求める
P = 0.163 × 0.4 × 72 ÷ 0.6
P = 4.6944 ÷ 0.6 = 7.824 ≒ 7.8kW

パターン①(全揚程)とパターン④(出力)を組み合わせた総合問題です。このように段階を踏んで解くのが定番パターンです。

公式クイックリファレンス(早見表)

試験直前にサッと確認できるよう、全公式を1か所にまとめました。

パターン 公式
全揚程 H = h₁ + h₂ + h₃
流量 Q = A × v
連続の式 A₁v₁ = A₂v₂
摩擦損失 h₂ = 単位損失 × 等価管長
ポンプ出力 P = 0.163QH/η [kW]
圧力換算 1MPa ≒ 100m水頭
流量換算 1 m³/min = 1000 L/min

理解度チェック

ここまでの内容を4択問題で確認しましょう。

Q1. 全揚程

ポンプ中心から最上階放水口まで30m、摩擦損失7m、必要放水圧力0.17MPaのとき、全揚程として正しいものはどれか。

(1)37m (2)47m (3)54m (4)64m

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正解:(3)54m

H = 30 + 7 + 17 = 54m(0.17MPa = 17m水頭)

(1)は摩擦損失+実揚程だけで放水圧力を忘れたパターン。3つの要素を全部足しましょう。

Q2. 流量

断面積0.003m²の配管を流速2m/sで水が流れている。流量として正しいものはどれか。

(1)6 L/min (2)60 L/min (3)360 L/min (4)600 L/min

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正解:(3)360 L/min

Q = 0.003 × 2 = 0.006 m³/s
= 0.006 × 1000 = 6 L/s
= 6 × 60 = 360 L/min

(1)はm³/sの値をそのままLにした間違い。(4)は×100,000としたもの。単位変換は「×1000で→L、×60で→/min」の2ステップです。

Q3. 摩擦損失

配管の実長40m、継手等の等価長10m、単位摩擦損失が0.15m/mのとき、摩擦損失水頭として正しいものはどれか。

(1)6.0m (2)7.5m (3)9.0m (4)10.5m

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正解:(2)7.5m

等価管長 = 40 + 10 = 50m
h₂ = 0.15 × 50 = 7.5m

(1)は実長だけで計算した場合(0.15 × 40 = 6.0m)。継手の等価長を忘れる典型的なミスです。

Q4. ポンプ出力

全揚程60m、流量0.4m³/min、ポンプ効率0.5のとき、必要出力として正しいものはどれか。

(1)3.9kW (2)4.9kW (3)5.9kW (4)7.8kW

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正解:(4)7.8kW

P = 0.163 × 0.4 × 60 ÷ 0.5
= 3.912 ÷ 0.5 = 7.824 ≒ 7.8kW

(1)はη(効率)で割り忘れた場合の値(0.163 × 0.4 × 60 = 3.912)。効率で割ることを忘れると、実際に必要な値より小さくなってしまいます。

まとめ

甲種1類の水力計算は、次の4パターンに集約できます。

  • 全揚程:H = 実揚程 + 摩擦損失 + 放水圧力水頭(MPa→m換算を忘れずに)
  • 流量と流速:Q = Av、連続の式で管径変化に対応(単位変換がカギ)
  • 摩擦損失:等価管長 = 実長 + 継手等価長(継手の加算を忘れない)
  • ポンプ出力:P = 0.163QH/η(Qの単位はm³/min、ηで割る)

水力計算は、パターンを覚えて数値を当てはめれば確実に得点できる分野です。各パターンの理論をもっと深く学びたい方は、以下の記事もあわせてどうぞ。

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