甲種1類

水噴霧・屋外消火栓・動力消防ポンプの設置義務と技術基準|施行令第13条・第19条・第20条をわかりやすく解説

結論から言います。

甲種1類の水系消火設備は全部で5つありますが、そのうち屋内消火栓設備スプリンクラー設備は別の記事で解説済みです。今回は残りの3設備――水噴霧消火設備・屋外消火栓設備・動力消防ポンプ設備の設置義務と技術基準をまとめて解説します。

この3設備は試験での出題頻度が屋内消火栓やスプリンクラーほど高くありませんが、「屋内消火栓設備の設置義務と技術基準」や「スプリンクラー設備の設置義務」との比較で出題されることがあるため、それぞれの特徴を押さえておくことが重要です。

今回解説する3設備
水噴霧消火設備
施行令第13条
施行規則第14条〜第15条
→ 駐車場・危険物がメイン
屋外消火栓設備
施行令第19条
施行規則第22条
→ 大規模建物の外周防護
動力消防ポンプ設備
施行令第20条
施行規則第22条の2
→ 消火栓設備の代替

水噴霧消火設備の設置義務(施行令第13条)

水噴霧消火設備とは?

水噴霧消火設備の構造と機能」で解説したとおり、水噴霧消火設備は水を霧状に噴射して冷却・窒息・乳化の3つの効果で消火する設備です。通常の水系設備(屋内消火栓やスプリンクラー)と違い、油火災にも対応できるのが最大の特徴です。

設置対象

施行令第13条では、水噴霧消火設備を含む「水噴霧消火設備等」(水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン・粉末)の設置対象が定められています。甲種1類に関係する水噴霧消火設備の設置対象は、主に次の3つのカテゴリです。

水噴霧消火設備の設置対象
① 道路の用に供される部分
屋上部分を除く
床面積 600㎡以上
② 駐車場
地階・2階以上:200㎡以上
1階:500㎡以上
屋上部分:300㎡以上
③ 指定可燃物の貯蔵所
可燃性液体類等
指定数量の750倍以上
を貯蔵・取扱い

なぜ駐車場と道路が対象なのか

駐車場や道路部分(トンネルや地下通路など)が対象になる理由は、ガソリンなどの油類が存在するからです。車のガソリンタンクが損傷すれば油火災に発展します。普通の水では油火災を消火できません(水が油の下に沈んで消火効果がない)が、水噴霧なら霧状の水が油面を覆い、冷却と窒息と乳化で消火できます。

地階の駐車場の基準が200㎡と特に厳しいのは、煙と熱がこもりやすく避難が困難になるためです。

スプリンクラー設備等との関係

水噴霧消火設備等は、スプリンクラー設備では対応が難しい場所に設置されます。スプリンクラー設備は水の棒状放水のため油火災に対応できませんが、水噴霧なら対応可能です。

ただし、駐車場に泡消火設備を設置している場合は、水噴霧消火設備の設置は免除されます。泡消火設備も油火災に対応できるからです。

水噴霧消火設備の技術基準(施行規則第14条〜第15条)

噴霧ヘッドの放水量

水噴霧消火設備の放水量は、防護対象によって異なります。

防護対象 放水量
車両等(駐車場・道路) 20 L/min・㎡ 以上
指定可燃物 10 L/min・㎡ 以上

「L/min・㎡」は、防護面積1㎡あたり1分間に何リットルの水を噴霧するか、という単位です。駐車場の方が放水量が多い理由は、ガソリンは引火点が低く燃焼速度が速いため、大量の水で一気に冷却・乳化する必要があるからです。

水源の容量

水源は、最大の防護区域の全噴霧ヘッドが同時に放水したとき、20分間継続できる量が必要です。

計算例
条件:地下駐車場の防護面積100㎡
計算:
放水量 = 20 L/min・㎡ × 100㎡ = 2,000 L/min
水源容量 = 2,000 L/min × 20分 = 40,000 L = 40 m³

加圧送水装置

加圧送水装置と附属装置」で解説した3方式(ポンプ方式・高架水槽方式・圧力タンク方式)のいずれかを使用します。最大防護区域の全噴霧ヘッドを同時に使用した場合に、規定の放水量と放水圧力を維持できる性能が必要です。

配管・排水設備

水噴霧消火設備には排水設備の設置が必要です。大量の水を噴霧するため、放水された水が適切に排水されないと、浸水被害や感電事故の原因になります。特に地下駐車場では排水の確保が重要です。

屋外消火栓設備の設置義務(施行令第19条)

屋外消火栓設備とは?

屋外消火栓設備と動力消防ポンプ設備の構造と機能」で解説したとおり、屋外消火栓設備は建物の外周から放水して、主に1階・2階の火災隣接建物への延焼防止に使う設備です。建物の内部に入らず、外から消火できるのが特徴です。

設置基準

屋外消火栓設備の設置義務は、1階と2階の床面積の合計で判定します。延べ面積(全階の合計)ではないのがポイントです。

建物の構造 1階+2階の床面積
耐火建築物 9,000㎡ 以上
準耐火建築物 6,000㎡ 以上
その他の建築物 3,000㎡ 以上

なぜ「1階+2階」で判定するのか

屋外消火栓は建物の外から放水する設備なので、消火できるのは低層部(1階・2階)に限られます。3階以上は水が届きにくく、放水の角度も制限されます。そのため、「1階と2階の床面積」で判定するのが合理的なのです。

なぜ耐火建築物は基準が緩いのか

耐火建築物は主要構造部が耐火構造で、火災が発生しても一定時間は倒壊しないし、隣室への延焼も遅い。つまり「外から放水して消火する猶予時間」が長いため、より大きな面積でも設置を免除できます。

逆に木造などの「その他の建築物」は、火災が急速に拡大して倒壊のリスクが高いため、3,000㎡と厳しい基準になっています。

設置の免除

次のいずれかの消火設備が有効に設置されている場合、屋外消火栓設備の設置は免除されます。

  • 屋内消火栓設備
  • スプリンクラー設備
  • 水噴霧消火設備
  • 泡消火設備
  • 不活性ガス消火設備
  • ハロゲン化物消火設備
  • 粉末消火設備
  • 動力消防ポンプ設備(規格放水量が設置規模に応じた量以上のもの)

これは、建物内部の消火設備が十分に整っていれば、外部からの消火の必要性が下がるためです。特に屋内消火栓設備やスプリンクラー設備は建物内部で直接消火できるので、屋外消火栓より消火効率が高い場面が多いのです。

屋外消火栓設備の技術基準(施行規則第22条)

防護範囲(水平距離)

屋外消火栓は、ホース接続口からの水平距離 40m以下 で、建物の1階と2階の各部分を包含するように設置します。

屋内消火栓の防護範囲が25m(または15m)なのに対し、屋外消火栓は40mと広い理由は、ホースが長く(20m × 3本 = 60m)、放水量も350 L/minと多いためです。

放水性能

項目 基準値
放水量 350 L/min 以上
放水圧力 0.25 MPa 以上
ノズル先端口径 19mm

参考までに、屋内消火栓設備と比較してみましょう。

項目 屋外消火栓 1号消火栓
放水量 350 L/min 130 L/min
放水圧力 0.25 MPa 0.17 MPa
操作人数 2人以上 2人以上

屋外消火栓のほうが放水量・放水圧力ともに大きい理由は、遠距離から建物外壁に向けて放水する必要があるためです。

水源の容量

屋外消火栓 2個 を同時に使用し、20分間 放水を継続できる量が必要です。

水源容量の計算
350 L/min × 2個 × 20分 = 14,000 L = 14 m³

※ 屋外消火栓が1個しかない場合は、1個分(7 m³)でOK

ホースとノズル

  • ホース:口径65mm、長さ20m × 3本以上
  • ノズル:口径19mm
  • 開閉弁:地盤面からの高さ 1.5m以下

動力消防ポンプ設備の設置義務(施行令第20条)

動力消防ポンプ設備とは?

屋外消火栓設備と動力消防ポンプ設備の構造と機能」で解説したとおり、動力消防ポンプ設備はエンジン駆動の可搬式ポンプで水を送る設備です。建物に固定されたポンプではなく、持ち運び可能なポンプを使うのが特徴です。

設置の位置づけ ─ 「代替設備」

動力消防ポンプ設備は、次の設備の代替として設置できます。

動力消防ポンプ設備で代替できる設備
屋内消火栓設備の代替
規格放水量:0.4 m³/min以上
(= 400 L/min以上)
屋外消火栓設備の代替
規格放水量:0.4 m³/min以上
(= 400 L/min以上)

ここが重要なポイントです。動力消防ポンプは「この建物に設置しなさい」と単独で義務付けられる設備ではなく、屋内消火栓や屋外消火栓の設置義務がある建物において、それらの代わりに設置してもよい設備です。

なぜ代替が認められるのか

固定式のポンプに比べて動力消防ポンプは初期コストが安く、水源も防火水槽や河川を利用できるため、特に地方の小規模施設水道が十分でない地域で有効です。消防ポンプ自体は消防隊が使うものと同等の消火能力があるため、適切に管理されていれば代替手段として十分な消火性能を発揮できます。

動力消防ポンプ設備の技術基準(施行規則第22条の2)

水源までの距離

動力消防ポンプの設置場所から水源(防火水槽・河川・プールなど)まで、ポンプの吸管が容易に届く距離に水源を確保する必要があります。

放水性能

代替対象 規格放水量
屋内消火栓設備の代替 0.4 m³/min 以上
屋外消火栓設備の代替 0.4 m³/min 以上

防護範囲

動力消防ポンプは可搬式なので、固定式の消火栓と違い「ホース接続口からの水平距離」ではなく、ポンプからホースを延長して放水できる範囲で防護します。

建物の1階・2階の各部分に有効に放水できるよう、ポンプの設置場所とホースの長さが十分であることが求められます。

水源の容量

代替する設備と同等の水源量が必要です。たとえば屋外消火栓設備を代替する場合は、規格放水量で20分間放水できる量が目安です。

3設備の比較まとめ

最後に、今回の3設備を一覧表で比較します。

項目 水噴霧 屋外消火栓
設置義務の根拠 施行令第13条 施行令第19条
判定基準 用途+面積 1階+2階の面積+構造
主な対象 駐車場・道路 大規模建物
消火の特徴 霧状放水(油火災可) 棒状放水(外周防護)
放水時間の基準 20分間 20分間
動力消防ポンプ設備のポイント
動力消防ポンプ設備は独立した設置義務がなく、屋内消火栓設備・屋外消火栓設備の代替として設置が認められる設備です。規格放水量0.4 m³/min以上が代替の条件です。

まとめ問題

記事の内容を理解できたか、4問のクイズで確認しましょう。

【問題1】水噴霧消火設備の設置が義務付けられる場所として、正しいものはどれか。

(1)延べ面積3,000㎡以上の事務所ビル
(2)地階の床面積が200㎡以上の駐車場
(3)1階と2階の床面積の合計が6,000㎡以上の工場
(4)延べ面積1,000㎡以上のホテル

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正解:(2)
水噴霧消火設備は、駐車場・道路の用に供される部分・指定可燃物の貯蔵所などが対象です。地階の駐車場は床面積200㎡以上で設置義務が生じます。(1)の事務所、(3)の工場、(4)のホテルは水噴霧消火設備の設置対象ではありません(屋内消火栓設備やスプリンクラー設備の対象です)。

【問題2】屋外消火栓設備の設置義務について、正しいものはどれか。

(1)延べ面積が9,000㎡以上の耐火建築物に設置が必要
(2)1階と2階の床面積の合計が9,000㎡以上の耐火建築物に設置が必要
(3)1階と2階の床面積の合計が3,000㎡以上の耐火建築物に設置が必要
(4)建物のすべての階の床面積の合計が6,000㎡以上の準耐火建築物に設置が必要

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正解:(2)
屋外消火栓設備の設置義務は「1階と2階の床面積の合計」で判定します(延べ面積ではない)。耐火建築物は9,000㎡以上、準耐火建築物は6,000㎡以上、その他は3,000㎡以上です。屋外消火栓は建物の外周から低層部に放水する設備なので、1階と2階の面積で判定するのが合理的です。

【問題3】屋外消火栓設備の技術基準として、誤っているものはどれか。

(1)ホース接続口からの水平距離が40m以下で建物の各部を包含すること
(2)放水量は350 L/min以上であること
(3)放水圧力は0.17 MPa以上であること
(4)水源はノズル2個を同時に使用して20分間放水できる量であること

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正解:(3)
屋外消火栓設備の放水圧力は0.25 MPa以上です。0.17 MPaは屋内消火栓設備(1号消火栓)の基準値です。屋外消火栓は遠距離から放水するため、より高い放水圧力が求められます。

【問題4】動力消防ポンプ設備について、正しいものはどれか。

(1)スプリンクラー設備の代替として設置できる
(2)独立した設置義務があり、一定規模以上の建物に必ず設置する
(3)屋内消火栓設備や屋外消火栓設備の代替として設置できる
(4)規格放水量0.2 m³/min以上あれば屋外消火栓設備の代替ができる

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正解:(3)
動力消防ポンプ設備は独立した設置義務がなく、屋内消火栓設備・屋外消火栓設備の代替設備として設置が認められるものです。(1)のスプリンクラー設備の代替はできません。(2)のように独立した設置義務はありません。(4)の0.2 m³/minでは不足で、0.4 m³/min以上が必要です。

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