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水噴霧消火設備の構造と機能|噴霧ヘッド・冷却窒息乳化効果をわかりやすく解説

結論:水噴霧消火設備は「霧状の水で油火災・電気火災にも対応できる」設備

結論から言います。

水噴霧消火設備とは、水を微細な霧状にして噴射する消火設備です。普通の放水(棒状や水滴状)では消しにくい油火災や電気火災にも対応できるのが最大の特徴です。

水系消火設備の全体像」の記事で紹介した5つの水系設備のうち、水噴霧消火設備は水の使い方が最も特殊な設備です。今回はその構造と機能を詳しく解説します。

水噴霧の3つの消火効果 — 冷却・窒息・乳化

水噴霧消火設備が強力な理由は、3つの消火効果を同時に発揮するからです。

水噴霧の3つの消火効果
❶ 冷却効果
霧状の水は表面積が非常に大きい
→ 熱を効率よく吸収
→ 少ない水量で高い冷却力

棒状放水より冷却効率が格段に高い

❷ 窒息効果
霧状の水が熱で大量の水蒸気に変化
→ 体積が約1,700倍に膨張
→ 燃焼面の酸素を押しのける

酸素濃度を下げて窒息消火

❸ 乳化効果
霧状の水が油の表面に付着
水膜(エマルション)を形成
→ 可燃性蒸気の発生を抑制

油火災に有効な独自の効果

特に乳化効果は水噴霧ならではの消火効果です。通常の放水では油に水をかけても油が飛び散って逆に危険ですが、霧状の細かい水滴なら油面を穏やかに覆って水膜を作れます。

なぜ電気火災にも使えるのか?

「水は電気を通すから危険なのでは?」と思うかもしれません。確かに、連続した水流(棒状放水)は電気を通します。

しかし霧状の水は水滴が細かく分散しているため、水滴同士がつながった連続的な水の道ができません。電気を通す「導体」にならないんです。

だから水噴霧消火設備は変電設備やケーブル室など、電気設備がある場所にも設置できます。

水噴霧消火設備の構成

水噴霧消火設備の構成は、開放型スプリンクラー設備と似ています。大きく分けて次の機器で構成されます。

水噴霧消火設備の構成
水源(地下水槽等)
加圧送水装置(消防ポンプ)
高圧で水を送る(噴霧に高い圧力が必要)
一斉開放弁
感知器の信号で弁を開放
配管
噴霧ヘッド
水を微細な霧状に噴射

ポイントは、スプリンクラー設備との違いです。

  • ヘッドは開放型のみ(感熱体なし)
  • 制御は一斉開放弁で行う(「流水検知装置と一斉開放弁」の記事で解説)
  • 起動は火災感知器との連動が基本

噴霧ヘッドの構造 — 水を「霧」にするしくみ

水噴霧消火設備の心臓部は噴霧ヘッドです。このヘッドが水を霧状に変換します。

霧化のしくみ

噴霧ヘッドには主に次の方式があります。

噴霧ヘッドの霧化方式
衝突型(デフレクター型)
高圧の水をノズルから噴出
デフレクター(反射板)に衝突
水が細かく砕けて霧状に

構造がシンプルで最も一般的

渦巻型(スワール型)
ヘッド内部で水に旋回を与える
ノズルから円錐状に噴出
遠心力で水膜が破れて霧化

より細かい霧を生成できる

どちらの方式でも、水を霧状にするには高い水圧が必要です。そのため水噴霧消火設備のポンプは、スプリンクラー設備より高い吐出圧力が求められます。

スプリンクラーヘッドとの違い

見た目が似ているので混同しやすいですが、噴霧ヘッドとスプリンクラーヘッドには明確な違いがあります。

項目 噴霧ヘッド SPヘッド(閉鎖型)
感熱体 なし(開放型) あり(グラスバルブ等)
放水状態 霧状(微細な水滴) 水滴状(シャワー状)
噴射圧力 高圧 比較的低圧
制御方式 一斉開放弁 個別開放(ヘッドごと)
対応火災 普通・油・電気 主に普通火災

動作フロー — 感知器連動で自動噴霧

水噴霧消火設備の動作フローを確認しましょう。

水噴霧消火設備の動作フロー
① 火災発生
② 火災感知器が作動 → 受信機へ信号
③ 一斉開放弁が開放 + ポンプ自動起動
④ 高圧水が配管を通って噴霧ヘッドへ
⑤ 噴霧ヘッドから霧状に放射 → 消火

開放型スプリンクラーと同じく、火災感知器と連動して自動的に起動します。手動起動弁も設けられており、人の手で起動することもできます。

主な設置場所 — 油や電気を扱う場所

水噴霧消火設備は、通常の水系設備では対応しにくい場所に設置されます。

設置場所 理由
駐車場・自動車修理場 ガソリンや油が燃える油火災に対応するため
変電設備・発電設備 電気火災に対応でき、絶縁油の乳化効果も期待できる
危険物施設 引火性液体を扱う場所で乳化効果が有効
ケーブル室・通信機器室 霧状の水なら感電リスクが低く、水損も比較的少ない
道路トンネル 車両火災(油+普通火災)に対応でき、排煙効果もある

共通するのは「油や電気がある場所」ということ。普通の水をそのまま放水すると油が飛散したり感電したりするリスクがありますが、霧状にすることでこれらの問題を解決しています。

スプリンクラー設備との比較まとめ

最後に、混同しやすいスプリンクラー設備との違いを整理しましょう。

スプリンクラー vs 水噴霧 比較
スプリンクラー設備
水の状態: 水滴状(シャワー)
主な消火効果: 冷却
ヘッド: 閉鎖型が主(感熱体あり)
制御: ヘッドが個別に開放
対応火災: 主に普通火災
設置場所: ホテル・病院・商業施設等
水噴霧消火設備
水の状態: 霧状(微細な水滴)
主な消火効果: 冷却+窒息+乳化
ヘッド: 開放型のみ(感熱体なし)
制御: 一斉開放弁で区域ごと
対応火災: 普通・油・電気火災
設置場所: 駐車場・変電設備・危険物

理解度チェック! 練習問題

ここまでの内容を確認しましょう。

【問題1】水噴霧消火設備が油火災に有効な理由として、最も適切なものはどれか。

  1. 棒状の水を大量に放水して油を押し流すため
  2. 霧状の水が油面に水膜を形成し、可燃性蒸気の発生を抑える乳化効果があるため
  3. 水の温度が他の設備より低いため
  4. 放水量がスプリンクラー設備より多いため
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正解:B(霧状の水が油面に水膜を形成し、可燃性蒸気の発生を抑える乳化効果があるため)
水噴霧消火設備は水を微細な霧状にして噴射するため、油の表面に水膜(エマルション)を穏やかに形成します。この乳化効果により可燃性蒸気の発生が抑えられます。棒状放水で油に水をかけると飛散して逆に危険です。

【問題2】水噴霧消火設備が電気火災に使用できる理由として、正しいものはどれか。

  1. 使用する水が蒸留水であるため
  2. 放水圧力が低く、電気設備に衝撃を与えないため
  3. 霧状の水滴が分散しており、連続した導体にならないため
  4. 配管に絶縁材料を使用しているため
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正解:C(霧状の水滴が分散しており、連続した導体にならないため)
棒状放水は水が連続した流れになるため電気を通しますが、霧状の水は水滴が細かく分散しているため、連続的な水の道(導体)ができません。そのため感電のリスクが低く、電気火災にも使用できます。

【問題3】水噴霧消火設備の噴霧ヘッドについて、正しい記述はどれか。

  1. グラスバルブ型の感熱体を備えた閉鎖型ヘッドである
  2. 感熱体を持たない開放型ヘッドであり、一斉開放弁と組み合わせて使用する
  3. ヘッドごとに個別に開放して放水する
  4. スプリンクラーヘッドと同じ構造で、そのまま兼用できる
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正解:B(感熱体を持たない開放型ヘッドであり、一斉開放弁と組み合わせて使用する)
噴霧ヘッドには感熱体がなく、常時開放状態です。火災感知器の信号で一斉開放弁が開き、配管に水が流れると噴霧ヘッドから霧状に放射されます。スプリンクラーの閉鎖型ヘッドのように個別に開放する方式ではありません。

【問題4】水噴霧消火設備の消火効果として、水噴霧に特有のものはどれか。

  1. 冷却効果
  2. 窒息効果
  3. 乳化効果
  4. 除去効果
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正解:C(乳化効果)
冷却効果と窒息効果は他の水系消火設備にも共通する効果です。乳化効果(エマルション効果)は、霧状の水が油面に水膜を形成して可燃性蒸気を抑える現象で、水噴霧消火設備に特有の消火効果です。除去効果は可燃物そのものを取り除く方法で、水噴霧の効果ではありません。

【問題5】水噴霧消火設備の設置場所として、最も適切なものはどれか。

  1. ホテルの客室
  2. 百貨店の売場
  3. 自走式駐車場
  4. 病院の病室
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正解:C(自走式駐車場)
水噴霧消火設備は、油火災や電気火災のリスクがある場所に設置されます。駐車場はガソリンを積んだ車両があるため油火災のリスクが高く、水噴霧消火設備の代表的な設置場所です。ホテル・百貨店・病院は主にスプリンクラー設備の対象です。

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