結論:自火報の回路計算は「電圧降下」と「末端抵抗」がカギ
結論から言います。
自火報の回路計算で問われるのは、大きく分けて3つのテーマです。
どれもオームの法則(V=IR)の応用です。公式自体はシンプルですが、自火報特有の回路構成を理解していないと解けません。1つずつ図を使って解説していきます。
前提知識 ― 感知器回線の基本構成
計算に入る前に、感知器回線の構成をおさらいしましょう。
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L線(+)とC線(−)の2本の電線が出発
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感知器① → 感知器② → 感知器③
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回線の一番末端に
終端器(末端抵抗)
- L線(ライン):受信機から感知器に向かう信号線(+側)
- C線(コモン=共通線):全回線で共有する帰り線(−側)
- 終端器:回線末端に接続する抵抗器。断線監視に使う
受信機はL線とC線を通じて常に微小な電流(監視電流)を流しています。この電流が途切れると「断線」と判定します。
末端抵抗(終端器)の計算
末端抵抗の役割
末端抵抗は回線の一番端に接続されている抵抗器です。受信機から見ると、L線 → 配線 → 末端抵抗 → C線と1つのループ回路ができています。
この回路に微小な監視電流が常に流れていることで、受信機は「回線が正常につながっている」と判断します。もし途中で断線すると電流が流れなくなり、受信機が断線異常を検出します。
監視電流の計算
監視電流はオームの法則で求められます。
V:受信機の出力電圧(通常 DC 24V)
R:回線の全抵抗(配線抵抗+末端抵抗)
計算例①:監視電流を求める
解き方:
回線全体の抵抗 = 配線抵抗 + 末端抵抗 = 40 + 10,000 = 10,040Ω
監視電流 I = V ÷ R = 24 ÷ 10,040 ≒ 0.00239A ≒ 2.4mA
ポイント:末端抵抗(10,000Ω)が配線抵抗(40Ω)よりはるかに大きいため、監視電流は非常に小さい値になります。これが意図的な設計です。大きな電流を流す必要はなく、「電流が流れているかどうか」を監視できればよいのです。
電圧降下の計算
電圧降下とは
受信機から感知器までの配線には電気抵抗があります。電流が流れると、この抵抗によって電圧が下がります。これが電圧降下です。
感知器が正常に動作するには、感知器の端子に一定以上の電圧が必要です。配線が長くなるほど電圧降下が大きくなり、感知器に届く電圧が下がります。
I:回線に流れる電流
r:配線の抵抗(往復分)
配線抵抗の求め方
配線の抵抗は、電線の材質・太さ・長さで決まります。
ρ(ロー):電線の抵抗率(銅線 ≒ 1.72 × 10⁻⁸ Ω·m)
L:電線の長さ(m) ※往復なので片道×2
A:電線の断面積(m²)
試験では、配線抵抗が直接与えられるか、「1kmあたりの抵抗値」が与えられることが多いです。
| 電線の太さ | 1kmあたりの抵抗 |
|---|---|
| 1.2mm(HP線等) | 約 15.9Ω/km |
| 1.6mm | 約 8.95Ω/km |
| 2.0mm | 約 5.73Ω/km |
電線が太いほど抵抗が小さいことがわかります。太い電線は電気の「通り道」が広いので、電流が流れやすいのです。
計算例②:電圧降下を求める
解き方:
STEP 1 配線抵抗を求める
往復距離 = 200m × 2 = 400m = 0.4km
配線抵抗 r = 15.9 × 0.4 = 6.36Ω
STEP 2 電圧降下を求める
Vd = I × r = 0.04 × 6.36 = 0.254V
STEP 3 感知器に届く電圧
24 − 0.254 = 23.75V
この場合、電圧降下は約0.25Vなので、感知器にはほぼ24Vが届いています。しかし配線が長くなったり、電線が細くなったりすると電圧降下が大きくなり、感知器の最低動作電圧を下回るおそれがあります。
電圧降下の許容範囲
自火報の配線では、電圧降下が受信機出力電圧の10%以下に収まるように設計するのが一般的です。
DC 24Vの場合 → 電圧降下は2.4V以下に抑える → 感知器には21.6V以上が届く必要があります。
共通線(C線)の電圧降下
共通線とは
共通線(C線)は、複数の感知器回線が共有する帰り線です。各回線にはそれぞれ専用のL線がありますが、C線は1本にまとめられています。
├ L1線 → 1回線の感知器群 → 末端抵抗 ┐
├ L2線 → 2回線の感知器群 → 末端抵抗 ┤
├ L3線 → 3回線の感知器群 → 末端抵抗 ┤
└───────────── C線(共通線) ←┘
全回線の電流がC線に集まる!
共通線の問題点
ここが重要です。共通線には全回線の電流が合流します。
たとえば3回線が同時に発報すると、それぞれの回線に40mAの電流が流れた場合、共通線には40mA × 3 = 120mAの電流が流れます。
電流が大きくなれば、オームの法則(Vd=I×r)により共通線での電圧降下も大きくなる。これが問題です。
計算例③:共通線の電圧降下
解き方:
共通線に流れる電流 = 40mA × 5 = 200mA(0.2A)
電圧降下 Vd = I × r = 0.2 × 10 = 2.0V
24Vのうち2.0Vが共通線だけで消費されます。さらに各L線でも電圧降下があるので、感知器に届く電圧はさらに低くなります。
共通線の回線数制限
共通線の電圧降下が大きくなりすぎると、感知器が正常に動作しなくなります。そのため、1本の共通線で共有できる回線数には制限があります。
| 受信機の種類 | 共通線1本の回線数 |
|---|---|
| P型1級 | 7回線以下 |
| P型2級 | 5回線以下(全体で5回線以下のため) |
P型1級で共通線1本あたり7回線以下――これは試験頻出の数値です。
8回線以上ある場合は、共通線を2本以上に分けて、それぞれに7回線以下を振り分けます。たとえば15回線なら、共通線を3本に分けて5回線ずつ、といった具合です。
なぜ「7回線」なのか
7回線が同時に発報したときの共通線の電圧降下を計算すると、感知器の最低動作電圧を下回らないギリギリのラインが7回線ということです。8回線以上になると電圧降下が大きくなりすぎて、末端の感知器が正常に動作しない可能性が出てきます。
回路計算のまとめ ― 3つの公式
自火報の回路計算で使う公式をまとめます。すべてオームの法則の応用です。
計算で間違いやすいポイント
- 往復を忘れる:配線は行き(L線)と帰り(C線)の2本分。片道200mなら往復400mで計算する
- 単位の変換:mA → A(÷1000)、m → km(÷1000)の変換ミスに注意
- 共通線の電流:L線は各回線の電流だけだが、C線には全回線の電流が合流する
- 末端抵抗と配線抵抗の桁違い:末端抵抗は数kΩ〜数十kΩ、配線抵抗は数Ω〜数十Ω。監視電流の計算で配線抵抗を無視してはいけないが、大部分は末端抵抗で決まる
全体のまとめ
② 電圧降下はVd=I×r。配線が長い・細いほど大きくなる
③ 電圧降下は受信機出力電圧の10%以下に抑える
④ 共通線には全回線の電流が合流するので電圧降下が大きい
⑤ P型1級の共通線は1本あたり7回線以下
⑥ 配線抵抗の計算は往復距離で計算する(片道×2)
⑦ すべての計算はオームの法則(V=IR)の応用
まとめ問題
理解度チェックとして、4問出題します。
第1問
受信機の出力電圧がDC 24V、配線の往復抵抗が50Ω、末端抵抗が10kΩ(10,000Ω)のとき、監視電流として最も近いものを1つ選べ。
(1)約 0.24mA
(2)約 2.4mA
(3)約 24mA
(4)約 240mA
第2問
感知器回線で、片道の配線距離が300m、電線の抵抗が15.9Ω/km、発報時の電流が50mAのとき、配線による電圧降下として最も近いものを1つ選べ。
(1)約 0.24V
(2)約 0.48V
(3)約 2.4V
(4)約 4.8V
第3問
P型1級受信機において、共通線1本で共有できる感知器回線数の上限として正しいものを1つ選べ。
(1)3回線以下
(2)5回線以下
(3)7回線以下
(4)10回線以下
第4問
感知器回線の配線による電圧降下が大きくなる組み合わせとして、正しいものを1つ選べ。
(1)配線が長い+電線が太い
(2)配線が長い+電線が細い
(3)配線が短い+電線が細い
(4)配線が短い+電線が太い