結論:計測器は「何を・どうつなぐか」がすべて
結論から言います。
電気計測器で最も大切なのは、「何を測るか」と「どうつなぐか」の2つです。
この「並列か直列か」「内部抵抗は大きいか小さいか」のセットは、試験でそのまま出題されます。さらに甲種4類では、絶縁抵抗計(メガー)や回路計(テスター)の使い方もよく問われます。
ひとつずつ見ていきましょう。
電圧計のしくみ
なぜ「並列」につなぐのか?
電圧とは、回路の2点間の電位差(電気的な高さの差)です。2点間の差を測るわけですから、回路を切断せずに横から2点に触れるのが自然です。これが並列接続です。
なぜ内部抵抗が「大きい」のか?
もし電圧計の内部抵抗が小さいと、電圧計自身に大きな電流が流れ込んでしまいます。すると回路の状態が変わり、正確な電圧が測れなくなるのです。
内部抵抗を大きくすることで、電圧計にはほとんど電流が流れず、回路に影響を与えずに測定できます。
倍率器 — 測定範囲を広げる
電圧計には測定できる上限があります。これを超える電圧を測りたいとき、電圧計に直列に抵抗をつなぐことで測定範囲を広げます。この抵抗を倍率器(ばいりつき)といいます。
例:内部抵抗 10kΩ の電圧計で、測定範囲を3倍にしたい場合
倍率器の抵抗 = 10kΩ ×(3 − 1)= 20kΩ
電流計のしくみ
なぜ「直列」につなぐのか?
電流とは、回路を流れる電気の量です。流れの量を測るには、水道メーターのように流れの中に割り込んで通過量を計るしかありません。だから直列接続です。
なぜ内部抵抗が「小さい」のか?
電流計を回路に直列につなぐということは、電流計自体が回路の一部になるということです。もし内部抵抗が大きいと、そこで電圧降下が起きて回路全体の電流が減ってしまい、正確に測れません。
内部抵抗を小さくすることで、電流計があってもなくても回路の状態がほとんど変わらず、正しい電流値が測れます。
分流器 — 測定範囲を広げる
大きな電流を測りたいとき、電流計に並列に抵抗をつなぐことで測定範囲を広げます。この抵抗を分流器(ぶんりゅうき)といいます。
電流の一部を分流器に逃がして、電流計に流れる量を減らすイメージです。
例:内部抵抗 5Ω の電流計で、測定範囲を10倍にしたい場合
分流器の抵抗 = 5Ω ÷(10 − 1)≒ 0.56Ω
倍率器と分流器の比較
| 項目 | 倍率器 | 分流器 |
|---|---|---|
| 用途 | 電圧計の範囲拡大 | 電流計の範囲拡大 |
| つなぎ方 | 電圧計に直列 | 電流計に並列 |
| 公式 | r ×(n − 1) | r ÷(n − 1) |
「倍率器は掛け算(直列 → 抵抗が増える方向)」「分流器は割り算(並列 → 抵抗が減る方向)」と覚えると混同しにくくなります。
回路計(テスター)
回路計とは、1台で電圧・電流・抵抗を測定できる万能計測器です。現場ではテスターまたはマルチメーターとも呼ばれます。
回路計の種類
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| アナログ式 | 針が振れて値を示す。可動コイル型が一般的 |
| デジタル式 | 数値で表示。読み取りミスが少ない |
回路計で測れるもの
| 測定項目 | つなぎ方 |
|---|---|
| 直流電圧(DCV) | 測定箇所に並列 |
| 交流電圧(ACV) | 測定箇所に並列 |
| 直流電流(DCA) | 測定箇所に直列 |
| 抵抗(Ω) | 回路の電源を切って測定 |
回路計の使い方で注意すべきポイント
1. 抵抗測定は必ず電源OFF
電源が入ったまま抵抗を測ると、回路計の内蔵電池と外部電源が干渉して回路計が壊れる可能性があります。抵抗測定(Ωレンジ)は必ず電源を切ってから行います。
2. 測定レンジの選択
予想される値より大きいレンジから測定を始めます。いきなり小さいレンジで大きな電圧や電流を測ると、針が振り切れたり、回路計が破損する危険があります。
3. 0Ω調整(アナログ式のみ)
抵抗測定の前に、2本のテストリードを短絡(ショート)させて針がちょうど0Ωを指すように調整します。内蔵電池の消耗で0点がずれるためです。
絶縁抵抗計(メガー)
絶縁抵抗計は、電線と電線の間や、電線と大地(アース)の間の絶縁状態を確認する計器です。通称「メガー」と呼ばれます(MΩ=メガオームを測ることから)。
なぜ絶縁抵抗を測るのか?
電線の被覆(ひふく)が劣化すると、本来流れるべきでない経路に電流が漏れ出します。これが漏電(ろうでん)です。漏電は感電事故や火災の原因になります。
消防設備は火災時に確実に動かなければなりません。絶縁不良があると、火災報知設備が誤動作したり、いざというときに動かない可能性があります。だから絶縁抵抗の測定は、消防設備の点検で非常に重要なのです。
絶縁抵抗計の基準値
電気設備技術基準では、使用電圧の区分ごとに最低限の絶縁抵抗値が定められています。
| 電路の使用電圧 | 絶縁抵抗値 |
|---|---|
| 300V以下(対地電圧150V以下) | 0.1MΩ以上 |
| 300V以下(その他) | 0.2MΩ以上 |
| 300Vを超えるもの | 0.4MΩ以上 |
消防設備の電路は一般的に対地電圧150V以下なので、0.1MΩ以上が基準になることが多いです。
絶縁抵抗計の使い方
1. 必ず電源を切る
通電中に絶縁抵抗計を使うと、測定用の高電圧で機器を壊すおそれがあります。必ず電源OFFで測定します。
2. 測定電圧の選択
| 電路の使用電圧 | 測定電圧 |
|---|---|
| 300V以下 | 500Vメガー |
| 300V超〜600V以下 | 500Vメガー |
| 600V超 | 1000Vメガー |
3. 測定の種類
接地抵抗計
接地抵抗計は、接地(アース)工事が正しくできているかを確認する計器です。
なぜ接地が必要なのか?
接地とは、機器の金属部分を地面に導体で接続することです。万が一漏電が起きたとき、漏れた電流を大地に逃がして感電を防ぐためです。
接地抵抗が大きいと、漏電しても電流がうまく大地に流れず、感電の危険が増します。だから接地抵抗は規定値以下であることが求められます。
接地工事の種類と抵抗値
| 種類 | 接地抵抗 |
|---|---|
| A種接地工事 | 10Ω以下 |
| B種接地工事 | 計算で決まる |
| C種接地工事 | 10Ω以下(緩和500Ω) |
| D種接地工事 | 100Ω以下(緩和500Ω) |
消防設備の自火報(自動火災報知設備)では、受信機の外箱にD種接地工事が必要です。
測定の方法
接地抵抗計は、被測定接地極のほかに補助接地極を2本(電圧極P・電流極C)地面に打ち込んで測定します。3本の極を一直線に、それぞれ10m以上離して配置するのが基本です。
クランプメーター
クランプメーターは、電線を切断せずに電線を挟むだけで電流を測定できる計器です。
原理
電線に電流が流れると、その周りに磁界が発生します。クランプメーターはこの磁界を検出して電流値に変換します。電磁誘導の原理を利用した計器です。
特徴
消防設備の点検では、通電中の回路の電流を確認する場面で活躍します。回路を切断して電流計を入れるのは現場では手間がかかるため、クランプメーターが便利です。
計測器の使い分け(まとめ)
まとめ問題
問題1:電圧計を回路に接続する方法として、正しいものはどれか。
(1)回路に直列に接続し、内部抵抗は小さいものを用いる
(2)回路に直列に接続し、内部抵抗は大きいものを用いる
(3)回路に並列に接続し、内部抵抗は小さいものを用いる
(4)回路に並列に接続し、内部抵抗は大きいものを用いる
問題2:内部抵抗が 20kΩ の電圧計がある。測定範囲を5倍に拡大するために必要な倍率器の抵抗値として、正しいものはどれか。
(1)4kΩ
(2)20kΩ
(3)80kΩ
(4)100kΩ
問題3:絶縁抵抗計(メガー)に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)電路の絶縁状態を確認するために使用する
(2)測定は電源を切った状態(無通電)で行う
(3)対地電圧150V以下の電路の絶縁抵抗は0.1MΩ以上必要である
(4)通電中の回路の漏れ電流を直接測定できる
問題4(応用):消防設備の点検において、自動火災報知設備の配線の絶縁抵抗を測定した。回路計(テスター)の抵抗レンジではなく、絶縁抵抗計(メガー)を使うべき理由として、最も適切なものはどれか。
(1)回路計より測定値が正確だから
(2)回路計は高い抵抗値を測定できないから
(3)回路計は交流回路にしか使えないから
(4)絶縁抵抗計のほうが測定時間が短いから