甲3の薬剤量計算は「4ステップ」で攻略できる
結論から言います。
甲種3類で出題される薬剤量の計算は、次の4ステップを順番にこなすだけです。
各ステップで使う公式はシンプルなかけ算・わり算だけです。この記事では公式→解き方→練習問題の流れで、1ステップずつ攻略していきます。
制度や設備の概要については「ガス系消火設備の全体像と消火原理」「ガス系消火設備の設置義務と技術基準」で詳しく解説しています。
Step 1:防護区画の体積を求める
使う公式
体積の公式
V = 長さ × 幅 × 高さ [m³]
防護区画の壁・床・天井で囲まれた空間の体積を求める
梁やダクトなどで凹んだ部分は除外しない(安全側に大きく計算)
現場でのイメージ
ガス系消火設備は、部屋全体に消火剤(CO₂やハロンガスなど)を充満させて火を消す仕組みです。つまり、部屋が広ければ広いほど、必要な消火剤の量も増えます。
サーバールームを想像してみてください。サーバーラックが並んでいても、ガスは部屋の隅々まで行き渡る必要があります。だから体積計算は「部屋の外形寸法」で行い、ラックなどの中身は引きません。
練習問題①
【問題】幅8m × 奥行10m × 天井高3.5mのサーバールームを防護区画とする。防護区画の体積は何m³か。
Step 2:基本薬剤量を求める
使う公式
基本薬剤量の公式
W = V × 薬剤量原単位 [kg]
V:防護区画の体積 [m³]
薬剤量原単位:消火剤1m³あたりの必要量 [kg/m³]
(防護対象物の種類・消火剤の種類によって異なる)
薬剤量原単位の考え方
薬剤量原単位は「1m³の空間を消火するのに何kgの消火剤が必要か」を表す数値です。この値は試験問題で条件として与えられるので暗記は不要ですが、次のような傾向があることを知っておくと有利です。
- 消火剤の種類によって異なる:CO₂は比較的多め、ハロゲン化物は少なめ
- 防護対象物によって異なる:油火災と電気火災では必要濃度が違う
- 表面火災より深部火災のほうが多い:奥深くまで燃えている火は消しにくい
練習問題②
【問題】防護区画の体積が280m³のサーバールームに、二酸化炭素消火設備を全域放出方式で設置する。薬剤量原単位が1.2 kg/m³と指定されているとき、基本薬剤量は何kgか。
Step 3:開口部の補正を加算する
使う公式
開口部補正の公式
Wtotal = W + W開口部
W:基本薬剤量 [kg]
W開口部 = 開口部面積 × 開口部補正量 [kg]
開口部補正量:1m²あたりの追加薬剤量 [kg/m²]
なぜ開口部補正が必要なのか
ガス消火設備は部屋を密閉してガスを充満させますが、防護区画に窓やダクト開口があると、そこからガスが漏れてしまいます。漏れた分を補うために、開口部の面積に応じて薬剤を追加するのが開口部補正です。
ただし、ガス放出と同時に自動的に閉鎖する開口部(ダンパーや防火シャッター等)は、補正の対象外となります。「閉じないまま残る開口部」だけが対象です。
練習問題③
【問題】練習問題②のサーバールーム(基本薬剤量336kg)に、自動閉鎖しない開口部が1.5m²ある。開口部補正量が10 kg/m²のとき、必要薬剤量の合計は何kgか。
Step 4:貯蔵容器の本数を求める
使う公式
貯蔵容器本数の公式
本数 = Wtotal ÷ 1本あたりの充填量 (端数切り上げ)
Wtotal:必要薬剤量の合計 [kg]
充填量:貯蔵容器1本に入っている消火剤の量 [kg/本]
端数が出たら必ず切り上げ(薬剤が足りないと消火できない)
現場でのイメージ
ガス消火設備の貯蔵容器は、ボンベ置き場(貯蔵容器室)に整然と並んでいます。CO₂の高圧式なら1本あたり約45kgの液化炭酸ガスが入っています。必要量が351kgなら何本必要か――これが最終ステップの計算です。
ポイントは端数の切り上げ。7.8本必要なら8本。薬剤が0.2本分足りないだけで消火に失敗するかもしれないので、必ず切り上げます。
練習問題④
【問題】必要薬剤量が351kgである。CO₂貯蔵容器の1本あたりの充填量が45kgのとき、必要な容器数は何本か。
総合問題 ― 4ステップ通しで解く
実際の試験では、4ステップを一気に問う問題が出ることがあります。
練習問題⑤
【問題】以下の条件で、必要な二酸化炭素貯蔵容器の本数を求めよ。
- 防護区画:幅6m × 奥行8m × 天井高4m
- 薬剤量原単位:1.0 kg/m³
- 自動閉鎖しない開口部面積:2.0m²
- 開口部補正量:10 kg/m²
- 貯蔵容器1本あたりの充填量:45 kg
粉末消火設備の薬剤量計算
粉末消火設備の全域放出方式でも、計算の流れは同じ4ステップです。違うのは薬剤量原単位の値だけです。粉末はガスではなく粉を撒くので、必要量の求め方が異なります。
練習問題⑥
【問題】以下の条件で、必要な粉末消火剤の量を求めよ。
- 防護区画:幅5m × 奥行6m × 天井高3m
- 薬剤量原単位:0.6 kg/m³
- 開口部補正は不要とする
公式クイックリファレンス(早見表)
| ステップ | 公式 |
|---|---|
| ① 体積 | V = 長さ × 幅 × 高さ |
| ② 基本薬剤量 | W = V × 薬剤量原単位 |
| ③ 開口部補正 | Wtotal = W + 開口部面積 × 補正量 |
| ④ 容器本数 | 本数 = Wtotal ÷ 充填量(切り上げ) |
理解度チェック
Q1. 体積
幅10m × 奥行12m × 天井高3mの防護区画の体積はどれか。
(1)300 m³ (2)330 m³ (3)360 m³ (4)396 m³
Q2. 薬剤量
体積200m³の防護区画に、薬剤量原単位1.5 kg/m³でガス消火設備を設置する。基本薬剤量はどれか。
(1)200 kg (2)250 kg (3)300 kg (4)350 kg
Q3. 開口部補正
基本薬剤量240kgの防護区画に、自動閉鎖しない開口部が3m²ある。開口部補正量が10 kg/m²のとき、必要薬剤量の合計はどれか。
(1)243 kg (2)250 kg (3)270 kg (4)340 kg
Q4. 容器本数
必要薬剤量が270kg、貯蔵容器1本あたりの充填量が45kgのとき、必要な容器数はどれか。
(1)5本 (2)6本 (3)7本 (4)8本
まとめ
甲種3類のガス量・薬剤量計算は、次の4ステップに集約できます。
- Step 1 体積:長さ × 幅 × 高さで防護区画の体積を求める
- Step 2 基本薬剤量:体積 × 薬剤量原単位(問題文で指定される)
- Step 3 開口部補正:自動閉鎖しない開口部の面積 × 補正量を加算
- Step 4 容器本数:合計薬剤量 ÷ 1本の充填量(端数切り上げ)
計算自体はかけ算とわり算だけなので、ステップを飛ばさず順番に処理することが最大のコツです。開口部補正の加算忘れ、容器本数の切り上げ忘れが典型的なミスなので、特に注意しましょう。
ガス系消火設備の理論や設備の詳細は、以下の記事もあわせてどうぞ。