結論から言います。
甲種1類の試験には製図試験があります。製図試験は甲種だけの科目で、乙種にはありません。水系消火設備の図記号を読み書きし、系統図や配管図を理解できることが求められます。
「製図の基礎|図記号・凡例・系統図の読み方」では甲種4類(自火報)の製図を解説しましたが、甲種1類の製図は水系消火設備が対象です。配管の口径選定・ポンプの揚程計算・ヘッドの配置など、4類とはまったく異なる知識が必要になります。
パターン1: 系統図の空欄を埋める(機器名・図記号を答える)
パターン2: 平面図を見てヘッドの個数・配管口径を答える
パターン3: 条件を与えられてポンプの全揚程を求める
パターン3の計算は「製図の実践(水力計算)」で扱います。この記事ではまずパターン1・2に必要な基礎知識を固めましょう。
製図3要素の関係図と統合パターン
甲1の製図問題は、系統図・平面図・凡例の3要素のどれか単独で出ることはほぼありません。3要素の相互関係を1枚で把握できれば、出題のパターンが見えるようになります。
(高架水槽→ポンプ→各階の消火栓Box)
→ 距離・落差・口径を読む
(消火栓Box位置・SPヘッドの間隔)
→ 配置間隔・警戒範囲を読む
3要素それぞれの役割(採点ルールに直結)
- 系統図 = 縦の構造。水源から末端ヘッドまでの「距離・落差・口径」を読み取る。立管の口径と階高は系統図でしか分からない。
- 平面図 = 横の配置。フロア内の機器配置(消火栓Box・SPヘッド・配管ルート)を読み取る。警戒範囲の死角は平面図でしか判定できない。
- 凡例 = 翻訳辞書。凡例にない記号を勝手に描くと採点不可。問題ごとに凡例の記号は違うので毎問必ず参照する。
3要素統合の出題パターン3分類
水量・口径・揚程のいずれかが空白。計算で埋める。
パターン②:平面図にヘッド配置を描く
警戒範囲ルール(SPで2.3〜3.2m)を適用して位置を決定。
パターン③:凡例から記号を選ぶ
凡例の記号セットだけを使って描き込む。凡例外の記号は使用禁止。
3要素のどこを問われているかを最初に見極めれば、計算問題か作図問題かが瞬時に判別できます。これが甲1製図の「構造を理解する」第一歩です。
水系消火設備の図記号
機器の図記号
水系消火設備で使用する主な図記号を整理します。試験では「この記号は何か」「この機器の記号を描け」という形で出題されます。
| 機器名 | 図記号の特徴 | 覚え方 |
|---|---|---|
| 消火ポンプ | 丸の中にPの文字 | Pump のP |
| 屋内消火栓 | 二重丸(◎) | 消火栓箱を上から見た形 |
| スプリンクラーヘッド(閉鎖型) | ●(黒丸) | ヘッドを真下から見た形 |
| スプリンクラーヘッド(開放型) | ○(白丸) | 閉鎖型=黒、開放型=白 |
| 流水検知装置 | 丸の中にAの文字 | Alarm弁のA |
| 一斉開放弁 | 丸の中にDの文字 | Deluge弁のD |
| 末端試験弁 | 丸の中にTの文字 | Test弁のT |
| 送水口 | 丸の中にSの文字 | Send(送る)のS |
| 呼水槽 | 四角の中にWの文字 | Water のW |
| 水源(水槽) | 四角の中に波線 | 水面のイメージ |
Pump・Alarm・Deluge・Test・Send・Water
これを覚えれば、図記号は一気に頭に入ります。
バルブの図記号
「配管・バルブ・継手の種類と施工方法」で学んだバルブにも、それぞれ固有の図記号があります。
| バルブ名 | 図記号の特徴 |
|---|---|
| 仕切弁(ゲートバルブ) | 配管を横切る線の上に逆三角形 |
| 逆止弁(チェックバルブ) | 配管上の三角形(流れ方向を示す) |
| バタフライ弁 | 配管上の菱形 |
| 安全弁(リリーフ弁) | 三角形に矢印(圧力の逃がし方向) |
| 減圧弁 | 三角形を2つ向かい合わせ |
配管の表記
配管は実線で描きます。配管の口径は数字で表記します。
- 主管(立管・横引管) ── 太い実線
- 枝管 ── 細い実線
- 口径の表記 ── 配管の横に「100A」「65A」のように記載(Aはmm単位の呼び径)
口径の「A」は日本の呼び径の単位で、たとえば100Aは外径約114mmの管です。試験では口径の数値がそのまま出題されるので、主要な口径(25A・32A・40A・50A・65A・80A・100A)を覚えておきましょう。
系統図の読み方
系統図とは
系統図は、水系消火設備の水源からヘッド(または消火栓)までの配管経路を模式的に描いた図です。実際の建物の配置ではなく、機器の接続関係を理解するための図です。
屋内消火栓設備の系統図
屋内消火栓設備の系統図には、次の要素が上流から下流に向かって描かれます。
系統図には送水口も描かれます。送水口は消防ポンプ車から水を送り込むための接続口で、建物の外壁に設置されます。ポンプが故障した場合のバックアップとして機能します。
スプリンクラー設備の系統図
スプリンクラー設備の系統図は屋内消火栓とほぼ同じ構成ですが、次の要素が加わります。
- 流水検知装置(アラーム弁) ── 各階の立管に設置。水の流れを検知して信号を送る
- 制御弁 ── 流水検知装置の手前。点検時に各階ごとに水を止められる
- 末端試験弁 ── 配管末端。放水試験用
- 補助散水栓 ── ヘッドの死角をカバーする小型の消火栓
系統図を読むポイント
②バルブの位置と種類を確認 ── 仕切弁・逆止弁・制御弁がどこにあるか
③口径の変化を確認 ── 主管から枝管に行くほど細くなる
平面図の読み方と描き方
平面図とは
平面図は、建物の各階を上から見た図に、消火栓やスプリンクラーヘッドの位置・配管ルートを描いたものです。系統図が「接続関係」を示すのに対し、平面図は「実際の配置」を示します。
スプリンクラーヘッドの配置ルール
平面図でヘッドを配置する際に守るべきルールは次のとおりです。「スプリンクラー設備の技術基準」で解説した内容の復習です。
- ヘッド間の距離 ── 有効散水半径の範囲内で、部屋の各部が防護されるよう配置
- 壁からの距離 ── ヘッドは壁から一定距離離す(壁に近すぎると散水パターンが片寄る)
- 取付面の高さ ── 天井面(取付面)の高さが10m以下であること
- 障害物の回避 ── ダクト・梁などの障害物がヘッドの散水を妨げないこと
屋内消火栓の配置ルール
- 防護範囲 ── 建物のすべての部分が消火栓の水平距離内に入ること(1号:25m、2号:15m、広範囲型2号:25m)
- 階段付近への配置 ── 各階の階段室付近に1か所は設置するのが一般的
- 開閉弁の高さ ── 床面から1.5m以下
配管ルートの描き方
平面図に配管を描くときの基本ルールです。
- 立管の位置 ── 丸囲みで表示。通常はパイプシャフト(PS)内に設置
- 横引管 ── 立管から各消火栓またはヘッドまでの水平配管を実線で描く
- 口径の記載 ── 配管の横に口径を明記(例:65A、50A、32A)
- バルブの位置 ── 制御弁・仕切弁などの位置を図記号で表示
なぜ配管は末端に行くほど細くなるのか
平面図を見ると、主管(立管)は100Aや80Aと太いのに、消火栓やヘッドに近づくにつれて65A→50A→32A→25Aと細くなっています。これには明確な理由があります。
配管の口径は「その配管が同時に送る水量」で決まります。立管は建物全体の水を通すので太く、末端の枝管は1台のヘッドにしか水を送らないので細くて済むのです。たとえるなら、高速道路(太い主管)から一般道(中間の配管)を経てお店の駐車場(末端の枝管)に向かうと、道がだんだん狭くなるのと同じ理屈です。
試験では「この配管口径は適切か」と問われます。同時開放個数(1号消火栓なら2台、SPの閉鎖型なら最大10個)を把握し、必要流量から口径を逆算する考え方が重要です。具体的な計算方法は「製図の実践(水力計算)」と「甲種1類 水力計算の完全攻略」で解説しています。
水源水量・ポンプ揚程 計算の5ステップ
甲1製図で配点が大きい計算問題は、5つのステップを順に追えば必ず解けます。他サイトは公式列挙で終わりますが、本記事は解答フロー手順化+実例計算でゴールまで導きます。
屋内消火栓1号/2号、SP(湿式・乾式・予作動式)、水噴霧、泡。設備により基準が違うので冒頭で確定。
屋内消火栓1号 → 2口同時/2号 → 1口/SP(マンション)→ 10個/SP(一般用途)→ 12〜30個。
1口流量 × 同時開放数 × 放水時間(20分)
例:屋内消火栓1号 = 130×2×20 = 5,200L = 5.2㎥
全揚程 = 実揚程 + 管摩擦損失 + ノズル放水圧
ノズル圧:1号=17m/2号=25m/SP=10m
水量・揚程は必ず切上げ(安全側)。単位記入漏れは部分点減点(L/min・m・㎥・mm)。
実例:8階建てマンション・屋内消火栓1号
② 2口同時開放
③ 130 × 2 × 20 = 5,200L → 水源水量 5.2㎥
④ 実揚程 8×3=24m + 摩擦 9.6m + ノズル17m = 50.6m
⑤ 切上げて → ポンプ全揚程 51m
放水時間・流量・ノズル圧の覚え方
| 設備 | 1口流量 | 同時開放 | ノズル圧 |
|---|---|---|---|
| 屋内消火栓1号 | 130 L/min | 2口 | 17 m |
| 屋内消火栓2号 | 60 L/min | 1口 | 25 m |
| SP(マンション) | 80 L/min | 10個 | 10 m |
| SP(一般オフィス) | 80 L/min | 12〜30個 | 10 m |
放水時間はすべて20分(規則施行令)。これが水量計算の固定値です。設備種別さえ確定すれば、後は数値を当てはめるだけ。5ステップを順に追えば必ず正解にたどり着けます。
凡例と図面の読み方
凡例(レジェンド)
製図には必ず凡例が付きます。凡例は図面上で使われている図記号とその意味を一覧にしたものです。試験では、凡例を参照して図面を正しく読み取ることが求められます。
凡例の例:
| 記号 | 名称 |
|---|---|
| ◎ | 屋内消火栓 |
| ● | 閉鎖型スプリンクラーヘッド |
| ○ | 開放型スプリンクラーヘッド |
| Ⓟ | 消火ポンプ |
| Ⓐ | 流水検知装置 |
| Ⓣ | 末端試験弁 |
| Ⓢ | 送水口 |
図面から読み取るべき情報
試験では図面を見て次のような情報を読み取る(または誤りを指摘する)問題が出ます。
- 配管口径は適切か ── 同時使用する消火栓/ヘッドの数に対して口径が足りているか
- バルブの位置は適切か ── 逆止弁がポンプ吐出側にあるか、制御弁が流水検知装置の手前にあるか
- ヘッドの配置は適切か ── 防護範囲に死角がないか、障害物の影響はないか
- 消火栓の防護範囲 ── 水平距離が規定以内で建物全体をカバーしているか
甲4と甲1の製図の違い
甲種4類の製図と甲種1類の製図は、考え方が根本的に異なります。
甲4が「電気の製図」なら、甲1は「配管の製図」です。次の記事「配管の流体力学」で学んだハーゼンウィリアムズ式を使った水力計算が、製図試験の核心部分になります。
製図試験でよくある間違い
甲1の製図試験で受験生がつまずきやすいポイントを整理します。
ポンプ吐出側は「逆止弁→仕切弁」の順番です。逆にすると、仕切弁を閉めてもポンプ側に水が逆流してしまいます。覚え方:「逆(止弁が)先(に来る)」
2. 制御弁と流水検知装置の位置関係を間違える
制御弁は流水検知装置の一次側(上流側)に設置します。二次側に描くと、制御弁を閉めても流水検知装置まで水が行ってしまい、点検時に階ごとの遮断ができません。
3. 送水口の記入を忘れる
系統図の問題で送水口の記入を忘れる受験生が多いです。送水口はポンプ吐出側の配管に接続され、消防ポンプ車からの補助送水を受けるための重要な機器です。系統図を描くときは必ず送水口を確認しましょう。
製図の罠Top5と採点キーワード一覧
製図試験は知識の有無より「減点を回避できるか」で得点が決まります。本記事独自に減点パターンを5つに定型化し、採点キーワードまで踏み込みます。
製図の罠①:凡例にない記号を勝手に使う
減点:該当部分0点(「凡例外記号は採点不可」)
対策:凡例のリストから外れた記号は絶対使用禁止。問題ごとに凡例が違うので毎問確認。
製図の罠②:線種違い(実線vs破線)
減点:1問につき5点減(部分減点)
対策:実線=新設・主要/破線=既設・隠線/一点鎖線=中心線の3線種を使い分け。
製図の罠③:水源水量の切上げ忘れ
減点:計算式が正しくても最終答え不正解で部分点止まり
対策:水量・揚程は必ず切上げ(安全側)。電卓で出た端数は迷わず切上げ。
製図の罠④:ポンプ仕様欄の単位記入漏れ
減点:部分点減(−2〜3点)
対策:全数値に単位を必ず付ける(L/min・m・㎥・mm)。1秒の手間で1〜2点獲得。
製図の罠⑤:SP配管口径の末端→始端順序ミス
減点:配管口径選定ミスで5〜10点減
対策:水源側=太い/末端側=細いを徹底。流量と圧力損失の関係(前章「なぜ末端は細くなるのか」)を思い出す。
採点キーワード一覧(独自整理)
| カテゴリ | 必須キーワード | NG表記例 |
|---|---|---|
| 計算式 | 「同時開放○口」「実揚程+摩擦+ノズル」「切上げ」 | 「2口」(単位なし)/「揚程30」(単位なし) |
| 配線・配管 | 「複線結線」「実線=新設」「破線=既設」 | 「線」(種類不明)/「太線」(曖昧) |
| 凡例参照 | 「凡例の記号を使用」「凡例にない記号は使用禁止」 | 凡例外の独自記号使用 |
| 単位 | L/min(流量)/m(揚程)/㎥(水量)/mm(管径) | 数値のみ・単位なし |
部分点獲得の4テクニック
② 単位は必ず書く:L/min、m、㎥、mm。1秒で1〜2点獲得。
③ 字を読めるように:字が雑で判読不能なら0点。下書きしてから清書。
④ 凡例を毎問見る:問題ごとに凡例が違う。最初に凡例を◯で囲む。
製図は「知識×減点回避×部分点拾い」の総力戦。罠5つを覚えて回避するだけで5〜15点稼げます。
図記号クイックリファレンス
製図試験の直前にさっと確認できるよう、重要な図記号を一覧にまとめます。
| P(丸囲み) = 消火ポンプ | A(丸囲み) = 流水検知装置 |
| D(丸囲み) = 一斉開放弁 | T(丸囲み) = 末端試験弁 |
| S(丸囲み) = 送水口 | W(四角囲み) = 呼水槽 |
| ● = 閉鎖型SPヘッド | ○ = 開放型SPヘッド |
| ◎ = 屋内消火栓 | 波線(四角囲み) = 水源 |
まとめ問題
記事の内容を理解できたか、4問のクイズで確認しましょう。
【問題1】水系消火設備の図記号について、正しい組み合わせはどれか。
(1)丸の中にP → 流水検知装置
(2)丸の中にA → 消火ポンプ
(3)丸の中にT → 末端試験弁
(4)丸の中にD → 送水口
【問題2】スプリンクラーヘッドの図記号について、正しいものはどれか。
(1)閉鎖型ヘッドは白丸(○)で表す
(2)開放型ヘッドは黒丸(●)で表す
(3)閉鎖型ヘッドは黒丸(●)で表す
(4)閉鎖型・開放型とも同じ記号で表す
【問題3】屋内消火栓設備の系統図において、ポンプの吐出側に設置されるバルブの組み合わせとして正しいものはどれか。
(1)仕切弁のみ
(2)逆止弁のみ
(3)逆止弁と仕切弁
(4)減圧弁と安全弁
【問題4】スプリンクラー設備の系統図で、流水検知装置(アラーム弁)の設置位置として正しいものはどれか。
(1)水源と消火ポンプの間
(2)消火ポンプの吐出側直後
(3)各階の立管(制御弁の二次側)
(4)末端試験弁の直前
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図記号と系統図・平面図の読み方を理解したら、次は実際の水力計算に進みましょう。
- 「製図の実践(水力計算)」── 全揚程・摩擦損失・ポンプ出力の計算を演習
- 「甲種1類 水力計算の完全攻略」── 計算パターンを総まとめ
- 「水系消火設備の点検と試験」── 点検・試験の判定基準を確認
- 「甲1/乙1 鑑別問題の攻略法」── 実技(鑑別)の対策
甲種1類の学習全体像はロードマップで確認できます。
おすすめ参考書 → 「甲種1類のおすすめ参考書と勉強法」
SATの消防設備士講座
— 動画で系統図の読み方を視覚的に理解できる
JTEXの消防設備士講座
— テキスト中心でじっくり学びたい方に
TACの消防設備士講座 — 資格の学校TACの体系的なカリキュラム
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