ポンプは、水源の水を必要な量と圧力で送る装置
消防用ポンプは、水源にある水を屋内消火栓、スプリンクラーヘッド、屋外消火栓などへ送り出すための装置です。水系消火設備では、ポンプ単体だけでなく、水源、吸水管、吐出配管、弁類、計器、非常電源、起動停止の仕組みを一体で確認します。
確認メモ:このページは消防設備士試験向けの学習整理です。実務では、設備種別、用途、階数、放水性能、条例、所轄消防の指導、機器仕様を合わせて確認します。
このページでは、消防法施行規則第12条のポンプ方式を中心に、法令上確認できる事項と、ポンプの基礎的な物理現象に絞って整理します。試験向けの暗記だけでなく、吐出量、全揚程、計器、配管、トラブル現象がどのようにつながるかを確認します。
法令上は、加圧送水装置の一部として見る
消防法施行令第7条は、消火設備として屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、屋外消火栓設備、動力消防ポンプ設備などを列挙しています。
その中で、屋内消火栓設備の細目を定める消防法施行規則第12条では、加圧送水装置として高架水槽、圧力水槽、ポンプを用いる方式が整理されています。ポンプの種類と性能を学ぶときも、まず「加圧送水装置のポンプ方式」を土台にすると、条文とつなげやすくなります。
| 方式 | 圧力の作り方 | ポンプとの関係 |
|---|---|---|
| 高架水槽 | 水槽の高さによる落差を使う | ポンプを運転しなくても、高さで圧力を得る考え方。 |
| 圧力水槽 | 水槽内の圧力で水を押し出す | 圧力水槽の圧力と水量を確認する。 |
| ポンプ | 電動機でポンプを回して水を送る | 吐出量、全揚程、計器、性能試験配管、逃し配管などを確認する。 |
ポンプ方式で確認する項目
消防法施行規則第12条1項7号ハでは、ポンプを用いる加圧送水装置について、次のような事項が出てきます。細かい数値だけを先に覚えるより、どの項目を確認しているのかを整理すると読みやすくなります。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 吐出量 | 屋内消火栓の設置個数が最も多い階の個数をもとに、必要な水量を確認する。 |
| 全揚程 | 消防用ホースの摩擦損失水頭、配管の摩擦損失水頭、落差、放水性能に対応する項を合計する。 |
| 流量変化時の性能 | 定格吐出量の150%で運転した場合の全揚程が、定格全揚程の65%以上であることを確認する。 |
| 専用の考え方 | ポンプは専用が原則。ただし、他の消火設備と併用又は兼用しても性能に支障がない場合は例外がある。 |
| 計器 | 吐出側に圧力計、吸込側に連成計を設ける。 |
| 性能試験配管 | 定格負荷運転時のポンプ性能を試験するための配管設備を設ける。 |
| 逃し配管 | 締切運転時の水温上昇を防ぐために設ける。 |
| 原動機 | 原動機は電動機によるものとする。 |
ポンプの大きな分類
ポンプは、学習上は「ターボポンプ」と「容積ポンプ」に分けると整理しやすくなります。消防設備士の水系設備では、加圧送水装置のポンプ方式と、渦巻ポンプの基本を中心に確認します。
| 分類 | 仕組み | 代表例 |
|---|---|---|
| ターボポンプ | 羽根車の回転により、水に速度と圧力を与える。 | 渦巻ポンプ、軸流ポンプ、斜流ポンプなど。 |
| 容積ポンプ | 一定の容積を閉じ込め、押し出すように送る。 | 往復ポンプ、歯車ポンプ、ねじポンプなど。 |
渦巻ポンプはターボポンプの代表例です。羽根車を回転させると、水は中心付近から入り、外周側へ押し出されます。その流れをケーシングで受け、速度エネルギーを圧力に変えて吐出側へ送ります。
渦巻ポンプの基本構造
渦巻ポンプの主要部分は、羽根車、ケーシング、主軸、軸封部、軸受、電動機です。名称を丸暗記するより、水がどこから入り、どこで圧力に変わり、どこから出るのかを追うと理解しやすくなります。
| 部分 | 役割 |
|---|---|
| 羽根車 | 回転して水に速度を与える。 |
| ケーシング | 水の流れを集め、圧力として吐出側へ導く。 |
| 主軸 | 電動機の回転を羽根車へ伝える。 |
| 軸封部 | 軸の周囲から水が漏れにくいようにする。 |
| 軸受 | 主軸を支え、回転を安定させる。 |
| 電動機 | ポンプを回す動力源。 |
水の流れ:吸込口から入る → 羽根車の中心へ進む → 回転で外周へ移動する → ケーシングを通って圧力が高まる → 吐出口から送り出される。
吐出量と全揚程
ポンプ性能を見る基本は、吐出量と全揚程です。吐出量は、一定時間に送り出す水の量です。全揚程は、ポンプが水を送り出すために必要な高さ換算の合計です。
| 用語 | 意味 | 見方 |
|---|---|---|
| 吐出量 Q | ポンプが送り出す水量。 | 消防法施行規則では、設備や区分ごとに必要量の考え方が定められている。 |
| 全揚程 H | 摩擦損失、落差、放水性能に対応する項を合わせた値。 | どの設備の式かを先に確認する。 |
屋内消火栓設備のポンプ方式では、消防法施行規則第12条1項7号ハに、次の形の式が出てきます。
H = h1 + h2 + h3 + 17m
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| H | ポンプの全揚程 |
| h1 | 消防用ホースの摩擦損失水頭 |
| h2 | 配管の摩擦損失水頭 |
| h3 | 落差 |
| 17m | 屋内消火栓設備の放水性能に対応する項 |
屋内消火栓設備だけでも、別の区分では70L/min、90L/min、25mを用いる整理が出てきます。スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、屋外消火栓設備では、設備ごとに吐出量や全揚程の見方が変わります。したがって、全揚程を一つの式で固定せず、対象設備を先に見ることが大切です。
性能曲線と締切運転
ポンプでは、吐出量が増えると全揚程は下がる傾向があります。この関係をグラフで表したものが性能曲線です。設計や点検では詳細な曲線を見ますが、学習では「吐出量と全揚程は同時に確認する」と押さえます。
締切運転は、吐出側を閉じた状態でポンプを運転することです。水が流れない状態が続くと、ポンプ内部の水温が上がり、機器に悪影響を与えるおそれがあります。そのため、消防法施行規則第12条では、締切運転時の水温上昇防止のために逃し配管を設けることが定められています。
混同注意:条文上の確認点は「定格吐出量の150%である場合の全揚程が、定格全揚程の65%以上」と「締切運転時の水温上昇防止のための逃し配管」です。未確認の固定百分率を追加して覚えないようにします。
計器と試験用の配管
ポンプ方式では、計器の位置も重要です。吐出側には圧力計、吸込側には連成計を設けます。吐出側は送り出す圧力を見る場所、吸込側は吸い込み側の圧力状態を確認する場所です。
| 設備 | 役割 |
|---|---|
| 圧力計 | 吐出側に設け、送り出す側の圧力を確認する。 |
| 連成計 | 吸込側に設け、吸込側の圧力状態を確認する。 |
| 性能試験配管 | 定格負荷運転時のポンプ性能を確認するために使う。 |
| 逃し配管 | 締切運転時の水温上昇を防ぐために使う。 |
吸水側で見る呼水装置とフート弁
水源の水位がポンプより低い位置にある加圧送水装置では、呼水装置を設けます。消防法施行規則第12条1項3号の2では、専用の呼水槽、加圧送水装置を有効に作動できる容量、減水警報装置、自動補給装置が整理されています。
また、ポンプを用いる加圧送水装置の吸水管では、ろ過装置を設けます。水源の水位がポンプより低い位置にあるものはフート弁、その他のものは止水弁を設ける整理です。フート弁は、吸水管内の水が戻りにくくなるように働く弁で、呼水装置とあわせて吸込側の理解に関わります。
キャビテーション
キャビテーションは、ポンプ吸込側の圧力低下により水中に気泡が発生し、その気泡が圧力の高いところでつぶれる現象です。気泡の発生と崩壊により、振動、騒音、性能低下、羽根車やケーシングの損傷につながることがあります。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 発生しやすい場所 | ポンプの吸込側。 |
| 主な原因 | 吸込側の圧力低下、吸込管の損失過大、水源との高さ関係、空気混入など。 |
| 症状 | 振動、異音、吐出量低下、揚程低下、金属表面の損傷。 |
| 対策の方向 | 吸込損失を小さくする、水源との高さ関係を見直す、吸込管の曲がりや閉塞を減らす、空気混入を避ける。 |
キャビテーションは「水が足りない」だけでなく、「吸込側で十分な圧力を保てない」ときに起きる現象として理解します。
ウォーターハンマー
ウォーターハンマーは、水の流れが急に止められたとき、配管内に圧力変動が生じる現象です。水撃現象とも呼ばれます。バルブの急閉、ポンプの急停止、逆流の急停止などがきっかけになります。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 発生する場所 | 配管内。 |
| 主な原因 | 弁の急閉、ポンプの急停止、逆流の急停止。 |
| 症状 | 衝撃音、配管や弁への負担、圧力の急変。 |
| 対策の方向 | 急閉を避ける、逆止弁や緩閉止機構を検討する、設計段階で圧力変動を抑える。 |
キャビテーションは主に吸込側の圧力低下、ウォーターハンマーは流れの急変による配管内の圧力変動です。両者は原因も発生場所も違います。
サージング
サージングは、ポンプの運転状態が安定せず、吐出量や圧力が周期的に変動する現象です。ポンプの性能曲線、配管抵抗、運転点の関係が不安定なときに問題になります。
消防設備士の学習では、キャビテーション、ウォーターハンマー、サージングを一つの表で区別しておくと確認しやすくなります。
| 現象 | 主な発生場所 | 中心になる原因 |
|---|---|---|
| キャビテーション | ポンプ吸込側 | 吸込側の圧力低下による気泡発生。 |
| ウォーターハンマー | 配管内 | 水の流れが急に変化することによる圧力変動。 |
| サージング | ポンプと配管系 | 運転点が安定しないことによる周期的な変動。 |
起動と停止もセットで見る
屋内消火栓設備では、起動装置は直接操作でき、屋内消火栓箱の内部又は直近の操作部から遠隔操作できることが基本です。また、加圧送水装置は直接操作によってのみ停止されるものとされています。
ポンプの種類や性能を学ぶときは、運転中の性能だけでなく、どう起動し、どう停止し、締切運転時の水温上昇をどう防ぐかまで一続きで確認します。
確認問題
問題1
ポンプを用いる加圧送水装置で、計器の組み合わせとして適切なものはどれか。
(1)吐出側に圧力計、吸込側に連成計 (2)吐出側に照度計、吸込側に風速計 (3)吐出側に温度計だけ (4)吸込側に発信機だけ
問題2
屋内消火栓設備のポンプ方式で、全揚程 H = h1 + h2 + h3 + 17m と整理される場合、h2として適切なものはどれか。
(1)配管の摩擦損失水頭 (2)消防用ホースの長さそのもの (3)呼水槽の容量 (4)電動機の出力
問題3
消防法施行規則第12条1項7号ハで、定格吐出量の150%である場合の全揚程について適切なものはどれか。
(1)定格全揚程の65%以上 (2)定格全揚程の10%未満 (3)常に0m (4)確認しない
問題4
キャビテーションの説明として適切なものはどれか。
(1)吸込側の圧力低下で気泡が発生する現象 (2)配管内の水が急停止して起きる水撃現象 (3)火災信号を受信する装置 (4)避難器具の降下速度
問題5
屋内消火栓設備の加圧送水装置の停止について、適切なものはどれか。
(1)直接操作によってのみ停止される (2)流量が増えると必ず自動停止する (3)流水検知装置が作動すると停止する (4)停止方法は本文で扱わない
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