結論:イオン化式感知器は「イオン電流の変化」で煙を検出する
結論から言います。
イオン化式感知器とは、放射性物質(アメリシウム241)で空気をイオン化し、煙が入るとイオン電流が変化することで火災を検出する煙感知器です。
光電式感知器が「光と煙の反応」で検出するのに対し、イオン化式は「電流と煙の反応」で検出します。光電式とは得意な煙のタイプが違い、目に見えにくい炎の煙(黒煙)の検出に優れています。
そして、イオン化式と光電式を1つの感知器に組み合わせたのが煙複合式感知器です。
甲種4類の試験では、イオン化式の動作原理、光電式との検出特性の違い、現在使われなくなった理由が頻出です。
イオン化式感知器の動作原理 ― 放射線で空気をイオン化する
イオン化式の最大の特徴は、放射性物質を使うという点です。感知器の内部に微量のアメリシウム241(Am-241)が組み込まれています。
動作の流れを見てみましょう。
→ 空気中の分子が電離(イオン化)される
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② イオン電流が流れる
→ 電極間に微弱な電流が安定して流れる(通常状態)
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③ 煙が侵入する
→ 煙の粒子がイオンにくっつき、イオンの動きが鈍くなる
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④ イオン電流が減少する
→ 電流の変化を回路が検出 → 火災信号を発報!
ポイントは、煙の粒子がイオンに付着して電流が減るということです。光電式が「光の変化」を見るのに対し、イオン化式は「電流の変化」を見ています。
外イオン室と内イオン室 ― 二重構造のしくみ
イオン化式感知器の内部には、2つのイオン室があります。
この2つの部屋には、それぞれAm-241が配置されていて、どちらにもイオン電流が流れています。
通常時は両方の電流がつり合った状態です。しかし煙が入ると、外イオン室だけ電流が減少し、2つの部屋の電流バランスが崩れます。この「バランスの崩れ」を回路が検知して火災信号を出すのです。
なぜ二重構造にするのかというと、温度や湿度の変化による誤報を防ぐためです。温度が変われば電流も多少変化しますが、両方の部屋が同じように変化するので、差は出ません。煙だけが外イオン室に入って「差」を生むので、煙だけを正確に検出できるわけです。
これは差動式感知器の「基準室と検出室」の考え方に似ていますね。
光電式との検出特性の違い ― 炎の煙 vs くすぶりの煙
イオン化式と光電式は、どちらも煙感知器ですが、得意な煙のタイプが正反対です。
| 比較項目 | イオン化式 | 光電式 |
|---|---|---|
| 検出方式 | イオン電流の変化 | 光の散乱・減光 |
| 得意な煙 | 小さい粒子の煙 | 大きい粒子の煙 |
| 得意な火災 | 炎を出して燃える火災 | くすぶり火災 |
| 煙の色 | 黒煙・薄い煙 | 白煙・濃い煙 |
なぜ得意な煙が違うのか?
炎を出して燃える火災(フラッシュ燃焼)では、煙の粒子が非常に小さくなります。小さい粒子はイオンにくっつきやすいので、イオン化式が素早く反応します。一方、光は小さい粒子では散乱しにくいため、光電式の反応は遅くなります。
逆に、くすぶり火災(燻焼)では、煙の粒子が大きくなります。大きい粒子は光を散乱させやすいため、光電式が素早く反応します。イオン化式は大きい粒子に対しては反応が遅くなります。
→ イオンに付着しやすい → イオン化式が得意
→ 光を散乱しにくい → 光電式は遅れる
大きい粒子(くすぶりの煙)
→ 光を散乱させやすい → 光電式が得意
→ イオンへの影響が小さい → イオン化式は遅れる
実際の火災がどちらのタイプになるかは、燃えるものや換気状況によって変わります。だから試験では「イオン化式は炎を出す火災に強い」「光電式はくすぶり火災に強い」という区別をしっかり覚えておきましょう。
なぜ現在はほとんど使われないのか ― 放射性物質の管理問題
イオン化式感知器には放射性物質(Am-241)が使われています。微量とはいえ、これが大きな問題になりました。
放射性同位元素等の規制に関する法律(放射線障害防止法)により、イオン化式感知器は次のような厳しい規制を受けます。
- 廃棄時に専門業者への委託が必要(一般ゴミとして捨てられない)
- 保管・管理の記録が義務付けられる
- 製造・販売にも放射線管理の手続きが必要
感知器1つ1つの放射線量はごくわずかですが、ビル全体に何百個も設置されていれば、交換や廃棄のたびに専門業者の手配が必要になります。これはコストも手間もかかります。
一方、光電式感知器は放射性物質を使わないため、こうした規制は一切ありません。技術の進歩で光電式の精度も向上したため、現在の新規設置ではイオン化式はほぼ使われていません。
ただし、古い建物にはまだイオン化式が残っている場合があります。また、試験では動作原理や光電式との違いが出題されるので、知識としてはしっかり押さえておく必要があります。
煙複合式感知器 ― イオン化式+光電式を1つにまとめた感知器
煙複合式感知器とは、イオン化式と光電式の両方の検出機構を1つの感知器に組み込んだものです。
イオン化式だけでは「くすぶり煙」が苦手、光電式だけでは「炎の煙」が苦手 ―― この弱点を補うために、両方を搭載して幅広い火災に対応しようという発想です。
煙複合式には2つの作動方式があります。
この考え方は、補償式・熱複合式感知器(差動式+定温式の組み合わせ)と同じ発想です。
- OR型 = 補償式(差動式 or 定温式で作動)に対応
- AND型 = 熱複合式(差動式 and 定温式で作動)に対応
「速さ優先ならOR型、確実性優先ならAND型」と覚えましょう。
種別と取付面の高さ
イオン化式感知器も光電式感知器と同じく、種別(1種・2種・3種)があり、種別によって設置できる天井の高さが決まっています。
| 種別 | 取付面の高さ | 感度 |
|---|---|---|
| 1種 | 20m未満 | 最も高感度 |
| 2種 | 15m未満 | 中程度 |
| 3種 | 4m未満 | 低感度 |
この数値は光電式スポット型と同じです。煙感知器は種類が違っても、種別ごとの取付面の高さは共通と覚えると楽です。
1種の方が感度が高いため、高い天井(煙が薄まる場所)にも設置できます。3種は感度が低いため、4m未満の低い天井にしか使えません。
全体のまとめ
二重構造:外イオン室(煙が入る)と内イオン室(密閉・基準)の電流差で検出
得意な煙:小さい粒子の煙(炎を出す火災=フラッシュ燃焼)
光電式との違い:光電式はくすぶり煙(大きい粒子)が得意
現在の状況:放射性物質の管理が大変 → 新規設置ではほぼ使われない
煙複合式:イオン化式+光電式を1台に搭載(OR型:速い / AND型:確実)
取付面の高さ:1種:20m未満 / 2種:15m未満 / 3種:4m未満(光電式と同じ)
まとめ問題
問題1:イオン化式スポット型感知器の動作原理に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)暗箱内に煙が侵入し、煙の粒子が光を散乱させることで火災を検出する
(2)煙の粒子がイオン電流を減少させ、その電流変化で火災を検出する
(3)煙の粒子が赤外線を吸収し、温度変化で火災を検出する
(4)煙の粒子が電極に付着し、電極間の抵抗値の変化で火災を検出する
問題2:イオン化式感知器の内部構造に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)外イオン室は密閉されており、内イオン室は外気に開放されている
(2)外イオン室と内イオン室があり、煙は外イオン室にのみ侵入する
(3)イオン室は1つだけで、煙の侵入量を直接測定する
(4)外イオン室には放射性物質があるが、内イオン室にはない
問題3:イオン化式感知器と光電式感知器の検出特性に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)イオン化式はくすぶり火災(大きい煙粒子)の検出に優れている
(2)光電式は炎を出す火災(小さい煙粒子)の検出に優れている
(3)イオン化式は炎を出す火災(小さい煙粒子)の検出に優れている
(4)両者の検出特性に差はなく、同じ種類の煙を同じ速度で検出する
問題4:イオン化式感知器が現在ほとんど新規設置されない理由として、最も適切なものはどれか。
(1)光電式に比べて火災の検出精度が著しく低いため
(2)製造コストが光電式の10倍以上かかるため
(3)放射性物質を使用しており、管理・廃棄に関する規制が厳しいため
(4)電源が必要なため、停電時に作動しないことが問題になったため
問題5(応用):煙複合式感知器のOR型とAND型に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)OR型はイオン化式と光電式の両方が検出したときに作動し、非火災報を防ぐ
(2)AND型はイオン化式または光電式のどちらかが検出したときに作動し、迅速に対応する
(3)OR型はどちらか一方の検出で作動するため反応が速いが、非火災報の可能性がある
(4)AND型とOR型の動作に違いはなく、名称が異なるだけである