結論:定温式感知器は「一定の温度」で火災を判断する
結論から言います。
定温式感知器とは、周囲の温度があらかじめ決められた温度(公称作動温度)に達したときに作動する熱感知器です。
前回の差動式感知器は温度の「変化の速さ」で判断しましたが、定温式は温度の「絶対値」で判断します。だから厨房やボイラー室のように日常的に温度が急変する場所でも、火災でない限り作動しません。
定温式にはスポット型と感知線型の2つの形式があります。
甲種4類の試験では、公称作動温度の選び方、種別ごとの取付面の高さ、差動式との使い分けが頻出です。
差動式 vs 定温式 ― 根本的な違い
差動式と定温式は、どちらも「熱」で火災を検出する感知器ですが、判断基準がまったく違います。
差動式は「急に温度が上がった」ことで火災と判断するため、暖房の起動程度では作動しません。しかし、厨房のように日常的に温度が急変する場所だと、料理をしているだけで作動してしまいます。
定温式は「何℃に達したか」だけで判断します。厨房で多少温度が上がっても、公称作動温度(たとえば75℃)に達しなければ作動しません。だから温度変動が大きい場所には定温式が使われるのです。
定温式スポット型感知器の構造
定温式スポット型で最も一般的なのがバイメタル式です。
バイメタルとは?
バイメタルとは、膨張率が異なる2種類の金属を貼り合わせたものです。温度が上がると、膨張率が大きい金属のほうがより伸びるため、バイメタル全体が反る(曲がる)という性質があります。
材料の性質の記事で学んだ「熱膨張」が、まさにここで活きてきます。
内部構造
膨張率の異なる2種類の金属を貼り合わせた板。温度で変形する
② 接点
バイメタルが変形して接触すると、回路が閉じて火災信号を送る
③ 受熱板(集熱板)
周囲の熱を効率よく集めてバイメタルに伝える金属板
差動式のような「空気室」や「リーク孔」はありません。構造がシンプルなのが定温式の特徴です。
動作原理
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② 受熱板が熱を集めてバイメタルに伝達
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③ バイメタルが変形(反る)
→ 公称作動温度に達すると十分に変形する
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④ 接点が接触 → 回路が閉じて火災信号を発信
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② バイメタルが元の形に戻る
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③ 接点が離れる → 回路が開いて復旧する
バイメタル式は温度が下がれば元に戻るため、繰り返し使える(自己復旧型)のが利点です。これは後で説明する感知線型との大きな違いになります。
公称作動温度と種別
定温式を正しく理解するには、公称作動温度と種別の2つを押さえる必要があります。試験でも非常によく出るポイントです。
公称作動温度とは
公称作動温度とは、感知器が作動する設計上の温度のことです。たとえば公称作動温度75℃の感知器は、周囲の温度が75℃付近に達したときに作動します。
定温式の公称作動温度は60℃〜150℃の範囲で、複数の段階が用意されています。
| 公称作動温度 | 主な用途 |
|---|---|
| 60℃〜75℃ | 一般的な室内(居室・廊下・オフィス) |
| 80℃〜120℃ | 厨房・乾燥室・ボイラー室の近く |
| 120℃〜150℃ | 高温になる特殊な場所 |
公称作動温度の選び方(超重要!)
公称作動温度の選び方には明確なルールがあります。
たとえば、厨房の最高周囲温度が50℃の場合、50+20=70℃以上の公称作動温度を持つ感知器が必要です。
なぜ20℃以上の余裕が必要なのか?
日常の最高温度ギリギリの公称作動温度を選んでしまうと、火災でなくても猛暑日や暖房のフル稼働で作動してしまいます。20℃のマージンを取ることで、日常的な温度変化では作動せず、火災の熱だけに反応する設計になるわけです。
種別(特種・1種・2種)
定温式感知器には特種・1種・2種の3つの種別があります。これは同じ公称作動温度でも作動の速さ(感度)が異なることを示しています。
1種:中間の感度
2種:最も感度が低い(作動が遅い)
ここで試験的に超重要なのが、取付面の高さとの関係です。
| 種別 | 感度 | 取付面の高さ |
|---|---|---|
| 特種 | 最も高い | 8m未満 |
| 1種 | 中間 | 8m未満 |
| 2種 | 最も低い | 4m未満 |
2種は感度が低いため、天井が高い場所(4m以上)では火災の熱が到達しにくく、作動が遅れる危険があります。だから2種は4m未満の低い天井にしか設置できません。
試験の頻出ポイント
定温式感知線型の構造
定温式感知線型は、電線(感知線)を天井に張り巡らせて、広い範囲の温度を監視する感知器です。見た目は差動式分布型の空気管に似ていますが、検出原理が異なります。
構造と動作原理
感知線の中に2本の導線が入っている
② 可溶性絶縁物
2本の導体の間を隔てる、熱で溶ける絶縁材料
③ 外装(被覆)
感知線を保護する外側の被覆
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② 可溶性絶縁物が溶ける
→ 2本の導体の間を隔てるものがなくなる
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③ 2本の導体が接触(短絡)
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④ 回路が閉じて火災信号を発信
感知線型の重要な特徴
スポット型(バイメタル式)との最大の違いはここです。バイメタル式は温度が下がれば元に戻る「自己復旧型」ですが、感知線型は絶縁物が物理的に溶けてしまうため復旧できません。
試験のポイント
定温式が適している場所・不向きな場所
定温式感知器の強みと弱みを理解すれば、「どこに設置すべきか」がわかります。
■ ボイラー室 → 日常的に高温だが、設定温度に達しなければ作動しない
■ 乾燥室・サウナ → 常に高温の環境
■ 駐車場 → 排気ガスの熱が温度変化を起こす環境
共通点は「日常的に温度が高い、または温度変動が大きい場所」です。こうした場所に差動式を置くと、火災でなくても温度の急変で作動してしまいます。定温式は絶対値で判断するため、日常の温度変動に左右されません。
定温式の弱点
ただし定温式にも弱点があります。
→ 差動式より火災検知が遅れる可能性があるたとえば公称作動温度75℃の感知器なら、
室温25℃から75℃まで温度が上がるのを
ただ待つしかない
差動式なら温度が急上昇した時点ですぐ反応できますが、定温式は設定温度に届くまで反応しません。だから一般的なオフィスや居室のような温度が安定した場所では、差動式のほうが早く火災を検知できます。
この弱点を補うために生まれたのが補償式感知器(差動式+定温式)です。急激な温度上昇は差動式の機能で、緩やかな温度上昇は定温式の機能で検出する――両方の良いところを組み合わせた感知器です。
スポット型 vs 感知線型 ― まとめ比較
| 項目 | スポット型 | 感知線型 |
|---|---|---|
| 検出方式 | バイメタルの変形 | 絶縁物の溶融 |
| 監視範囲 | 1点(個別の部屋) | 広範囲(面的監視) |
| 復旧 | 自己復旧可能 | 不可(交換必要) |
| 取付面の高さ | 特種・1種:8m未満 2種:4m未満 |
8m未満 |
全体のまとめ
差動式との違い:変化速度ではなく温度そのもので判断
スポット型:バイメタル式が主流。自己復旧可能
感知線型:可溶性絶縁物が溶融して短絡。復旧不可(交換必要)
公称作動温度:60℃〜150℃、設置場所の最高周囲温度+20℃以上を選ぶ
種別:特種・1種は8m未満、2種は4m未満
適した場所:厨房・ボイラー室・乾燥室(温度変動が大きい場所)
弱点:公称作動温度まで作動しないため、火災検知がやや遅い
まとめ問題
問題1:定温式感知器の動作原理に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)周囲の温度が急激に上昇したときに作動する
(2)周囲の温度が一定の温度以上に達したときに作動する
(3)煙の濃度が一定以上になったときに作動する
(4)炎から放射される赤外線を検出して作動する
問題2:定温式スポット型感知器の公称作動温度の選定に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)設置場所の最高周囲温度と同じ公称作動温度のものを選ぶ
(2)設置場所の最高周囲温度より10℃以上高い公称作動温度のものを選ぶ
(3)設置場所の最高周囲温度より20℃以上高い公称作動温度のものを選ぶ
(4)公称作動温度は60℃の固定値であり、設置場所に関係なく同じものを使う
問題3:定温式スポット型感知器の種別と取付面の高さに関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)特種は4m未満、1種は8m未満、2種は15m未満に設置できる
(2)特種・1種は8m未満、2種は4m未満に設置できる
(3)すべての種別で8m未満に設置できる
(4)すべての種別で4m未満にしか設置できない
問題4:定温式感知線型に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)2本の導体の間を可溶性の絶縁物で隔てた構造である
(2)公称作動温度に達すると絶縁物が溶融し、導体が短絡して作動する
(3)一度作動すると元に戻せないため、作動後は感知線の交換が必要である
(4)温度が下がればバイメタルが元に戻り、自動的に復旧する
問題5(応用):次の場所のうち、定温式感知器を設置するのが最も適切な場所はどれか。
(1)一般事務室(最高周囲温度30℃)
(2)ホテルの客室(最高周囲温度28℃)
(3)厨房(最高周囲温度50℃、温度が急変する)
(4)廊下(最高周囲温度25℃)