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附加条例とは?消防法第17条第2項をわかりやすく解説

附加条例ってなに?

消防設備士試験の法令科目で、地味にひっかけ問題が多いテーマ。それが「附加条例(ふかじょうれい)」です。

結論から言います。

附加条例とは、市町村が地域の事情に合わせて、国の基準よりも厳しい消防用設備等の基準を条例で定めることができる制度です。

ポイントは3つ。

  • 定めるのは「市町村」(都道府県でも消防庁でもない)
  • 理由は「気候又は風土の特殊性」に限定
  • 基準の「強化」が目的(緩和ではない)

この記事では、消防法第17条第2項を中心に、附加条例のしくみと試験で狙われるポイントを解説していきます。


消防法第17条のおさらい

附加条例を理解するには、まず消防法第17条第1項(基本ルール)を押さえておく必要があります。

第十七条 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない。

現代語訳:防火対象物の関係者は、国が政令で定めた技術基準に従って、消防用設備等を設置し、ちゃんと使える状態を維持しなさい。

これが全国共通の基本ルールです。でも、日本は南北に長く、地域によって気候も地形もバラバラですよね。北海道と沖縄では必要な対策が全然違います。

そこで登場するのが第2項の「附加条例」です。


消防法第17条第2項(条文)

2 市町村は、その地方の気候又は風土の特殊性により、前項の消防用設備等の技術上の基準に関する政令又はこれに基づく命令の規定のみによつては防火の目的を充分に達し難いと認めるときは、条例で、同項の消防用設備等の技術上の基準に関して、当該政令又はこれに基づく命令の規定と異なる規定を設けることができる。


条文を現代語訳すると

この条文のポイントを分解しましょう。

「市町村は、その地方の気候又は風土の特殊性によって、国の基準だけでは防火の目的を十分に達成できないと判断したときは、条例で国の基準と異なる規定を設けることができる。」

つまり、国の基準では足りない部分を、市町村が条例で補強できるというしくみです。


附加条例の3つの条件

附加条例はどんな場合でも自由に定められるわけではありません。条文から読み取れる3つの条件があります。

条件 内容
①誰が定めるか 市町村(都道府県や消防庁長官ではない)
②どんな理由で 気候又は風土の特殊性により、国の基準だけでは不十分な場合
③何を定めるか 条例で、消防用設備等の技術上の基準に関して異なる規定

①「市町村」がポイント

附加条例を定める主体は市町村です。ここが試験でよく狙われます。「都道府県知事」「消防庁長官」「総務大臣」はすべてハズレ。また、「市町村規則」も×です。あくまで「条例」です。

②「気候又は風土の特殊性」が必要

「予算がないから」「人口が多いから」「火災が多いから」では附加条例は作れません。あくまで気候(寒冷・豪雪・多雨など)や風土(地形・地質など)の特殊性が理由です。

③「異なる規定」= 基準の強化

条文では「異なる規定」と書かれていますが、立法の趣旨は「国の基準だけでは防火の目的を十分に達成できない」場合の対応です。つまり、実質的に基準を強化する方向(上乗せ)にしか使えません。

国の基準を緩和したい場合は、附加条例ではなく別の制度(消防法施行令第32条の特例など)を使うことになります。


具体例で理解する

附加条例が実際にどんな場面で使われるか、イメージしてみましょう。

ケース①:豪雪地帯の消火栓

国の基準では地下式の消火栓が一般的です。でも、豪雪地帯では冬になると地面が雪で埋まってしまい、地下式の消火栓のフタが見つけられません。

そこで市町村が附加条例で、「この地域では地上式の消火栓を設置すること」と定めます。雪が積もっても消火栓が見える状態を確保するわけです。

ケース②:寒冷地の配管

通常のスプリンクラーは配管内に水が満たされた湿式です。しかし寒冷地では配管内の水が凍結してしまい、いざというとき水が出ません。

そこで附加条例で、凍結防止の措置(配管の保温や乾式への変更など)を義務付けることがあります。

ケース③:山林の多い地域

山林火災が頻発する地域で、山小屋や林間施設に対して国の基準以上に消火器の設置を義務付けるといった附加条例も考えられます。


図解:消防法17条の全体像

17条第1項と第2項の関係を図にまとめます。

消防法第17条のしくみ
第1項:全国共通の基本ルール
政令(施行令)で定めた技術上の基準に従って
消防用設備等を設置し、維持しなさい
→ 全国どこでも同じ基準
第2項:附加条例(上乗せルール)
市町村条例で基準を強化できる
条件:気候又は風土の特殊性がある場合のみ
→ 地域ごとに基準が上乗せされる
結果
関係者が守るべき基準 =
国の基準(政令)+ 市町村の附加条例

なぜこんな制度があるの?

日本は南北約3,000kmに及ぶ島国です。北海道の厳しい寒さ、日本海側の豪雪、沖縄の亜熱帯気候――地域によって火災のリスクはまったく異なります。

国の基準(政令)は全国共通で作られています。でも、全国共通のルールだけでは地域ごとの特殊な事情に対応しきれないことがあります。

たとえば:

  • 豪雪地帯なのに地下式消火栓しか認められない → 冬は使えない
  • 寒冷地なのに湿式配管しか認められない → 凍結して水が出ない

こういった「国の基準だけでは人命を守れない」状況を解消するために、現場に一番近い市町村に基準を強化する権限を与えたのが附加条例の制度です。


試験で狙われるポイント

附加条例はひっかけ問題の宝庫です。よくあるパターンを整理します。

ひっかけパターン 正誤
都道府県知事が条例で基準を定めることができる」 × → 市町村
「市町村は規則で基準を定めることができる」 × → 条例
消防庁長官が基準を強化できる」 × → 市町村
人口が多いことを理由に附加条例を定めた」 × → 気候又は風土
「附加条例で基準を緩和した」 × → 強化のみ
「気候の特殊性により市町村が条例で基準を強化した」 ○ → 正しい

特に「誰が」「何で(条例 or 規則)」「どんな理由で」「強化 or 緩和」の4つが入れ替えられて出題されます。


まとめ問題

記事の内容を理解できたか、チェックしてみましょう!

問題1

消防法第17条第2項の規定について、正しい記述はどれか。

(1)都道府県は、条例で消防用設備等の技術上の基準について異なる規定を設けることができる。
(2)市町村は、火災件数が多いことを理由に、条例で基準を強化することができる。
(3)市町村は、その地方の気候又は風土の特殊性により、条例で基準について異なる規定を設けることができる。
(4)消防庁長官は、全国的な火災傾向を踏まえて、各地域の基準を強化することができる。

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正解:(3)
消防法第17条第2項により、附加条例を定めることができるのは「市町村」で、理由は「気候又は風土の特殊性」に限られます。(1)は都道府県なので誤り、(2)は火災件数を理由としているので誤り、(4)は消防庁長官なので誤りです。

問題2

消防法第17条第2項に基づく附加条例について、誤っている記述はどれか。

(1)附加条例は、消防用設備等の技術上の基準について定めることができる。
(2)附加条例を定める理由は、その地方の気候又は風土の特殊性による。
(3)附加条例は、国の基準を強化する方向で定められる。
(4)附加条例は、市町村規則で定めることができる。

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正解:(4)
附加条例は「市町村条例」で定めるものであり、「市町村規則」ではありません。条例は議会の議決を経て制定されるもの、規則は首長が単独で定めるものです。消防用設備等の基準のように住民の権利義務に関わる重要事項は、民主的な手続きを経た条例で定める必要があります。

問題3(応用)

豪雪地帯にある市が、消火栓に関する基準を独自に定めようとしている。消防法の規定に照らして、正しい対応はどれか。

(1)市は、豪雪という気候の特殊性を理由に、附加条例で地上式消火栓の設置を義務付けることができる。
(2)市は、附加条例により消火栓の設置基準を国の基準より緩和することができる。
(3)市は、都道府県知事の承認を得れば、附加条例を定めることができる。
(4)市は、消防庁長官の通知に基づいて基準を変更しなければならない。

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正解:(1)
豪雪は「気候の特殊性」に該当するため、消防法第17条第2項に基づいて附加条例を定める根拠があります。地下式消火栓だけでは雪に埋もれて使用できないおそれがあるため、地上式の設置を義務付けることは「防火の目的を充分に達する」ための合理的な規定です。(2)は緩和なので誤り、(3)は都道府県知事の承認は不要なので誤り、(4)は消防庁長官に附加条例を指示する権限はないので誤りです。


まとめ

  • 附加条例 = 市町村が条例で消防用設備等の基準を強化できる制度(消防法17条2項)
  • 理由:気候又は風土の特殊性(人口や火災件数ではない)
  • 主体:市町村(都道府県・消防庁長官ではない)
  • 形式:条例(規則ではない)
  • 方向:基準の強化のみ(緩和は別の制度)
  • 試験対策:「誰が・何で・なぜ・強化or緩和」の4点を正確に覚える

消防用設備等の基本的な設置維持義務(17条1項)については、こちらの記事もあわせてどうぞ。

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