結論から言います。
甲種1類の製図試験では、図面を読み取るだけでなく、水力計算を行って配管の口径やポンプの全揚程を求める問題が出題されます。「水系消火設備の製図の基礎」で学んだ図記号や系統図の知識を土台に、この記事では実際に手を動かして計算する方法を解説します。
「配管の流体力学」で学んだハーゼンウィリアムズ式や全揚程の公式を、ここでは製図試験の問題としてどう使うかに集中します。
製図試験の出題パターン
製図試験では、大きく分けて2つのパターンで出題されます。
パターン1:系統図を完成させる問題
系統図の一部が空欄になっていて、足りない機器・バルブ・配管口径を記入する問題です。図記号の知識に加え、口径の選定が問われます。
パターン2:計算問題
配管の摩擦損失やポンプの全揚程を計算で求める問題です。与えられた条件(配管長、流量、口径、高さなど)から数値を算出します。
どちらのパターンでも、水力計算の考え方が共通の基盤になります。順を追って解説していきましょう。
配管口径の選定方法
口径選定の基本的な考え方
配管の口径は「その配管を流れる水の量」で決まります。水の量が多いほど太い管が必要です。
口径選定の手順は次の3ステップです。
流速の基準
消防用配管の流速は、一般的に次の範囲を目安とします。
| 配管の種類 | 流速の目安 |
|---|---|
| 吸込管(ポンプ手前) | 2 m/s以下 |
| 吐出管(ポンプ後) | 4 m/s以下 |
吸込管の流速が速すぎるとキャビテーション(配管内で気泡が発生してポンプを傷める現象)が起きやすくなります。「ポンプの種類と性能」の記事で解説した内容ですね。
流量から口径を求める計算
流量Q(m³/s)と流速v(m/s)から必要な配管の断面積A(m²)を求めます。
断面積がわかれば、円管の直径dを逆算できます。
計算で求めた内径以上の呼び径を持つ配管を選べばOKです。
計算例 ─ 口径を求める
条件:2号消火栓の放水量=60 L/min(1台あたり)、吐出管の許容流速=4 m/s
Step 1:総流量を求める
2台同時なので Q = 60 × 2 = 120 L/min
単位を変換します。
120 L/min = 120 ÷ 1000 ÷ 60 = 0.002 m³/s
Step 2:必要断面積を求める
A = Q ÷ v = 0.002 ÷ 4 = 0.0005 m²
Step 3:内径を求める
d = √(4 × 0.0005 ÷ 3.14)= √(0.000637)≒ 0.0252 m ≒ 25.2 mm
Step 4:口径を選定する
計算結果の25.2mm以上の呼び径を選びます。32Aの内径は約27.6mmなので、32Aを選定します。
主な配管の呼び径と内径
試験で使う代表的な呼び径と内径の関係です。
| 呼び径 | 内径(mm) |
|---|---|
| 25A | 27.2 |
| 32A | 35.7 |
| 40A | 41.6 |
| 50A | 52.9 |
| 65A | 67.9 |
| 80A | 80.7 |
| 100A | 105.3 |
摩擦損失の計算 ─ ハーゼンウィリアムズ式の実践
製図試験での摩擦損失計算
「配管の流体力学」で学んだハーゼンウィリアムズ式を、実際の試験問題で使う方法を解説します。
試験では多くの場合、摩擦損失水頭が表として与えられるか、または簡略化された条件で出題されます。公式そのものを手計算で解くのではなく、公式の意味を理解して使いこなすことが重要です。
等価管長を加算する
実際の配管にはバルブや継手(エルボ、ティーなど)が含まれます。これらの抵抗を直管の長さに換算したものが等価管長です。
計算例 ─ 摩擦損失を求める
・配管:65A(内径67.9mm)、直管長さ30m
・継手・バルブの等価管長:合計10m
・流量:260 L/min
・1mあたりの摩擦損失水頭:0.058 m/m(表から読み取り)
Step 1:総配管長を求める
Ltotal = 30 + 10 = 40 m
Step 2:摩擦損失水頭を求める
Hf = 0.058 × 40 = 2.32 m
この2.32mが「配管を流れることで水が失うエネルギー」です。ポンプはこの分も含めて水を押し上げる必要があります。
配管区間ごとに計算する
製図試験では、配管が複数の区間に分かれていることがほとんどです。それぞれの区間で口径と流量が異なるため、区間ごとに摩擦損失を計算して、最後に合計します。
計算例 ─ 複数区間の摩擦損失
| 区間 | 総配管長 | 損失水頭 |
|---|---|---|
| ポンプ→立管(100A) | 15 m | 0.045×15=0.68 m |
| 立管→横引管(65A) | 25 m | 0.058×25=1.45 m |
| 横引管→最遠ヘッド(32A) | 12 m | 0.12×12=1.44 m |
合計摩擦損失水頭 = 0.68 + 1.45 + 1.44 = 3.57 m
口径が細くなるほど1mあたりの損失が大きくなっているのがわかりますね。枝管の32Aは主管の100Aに比べて、同じ距離でもはるかに多くのエネルギーを失います。
全揚程の計算 ─ ポンプに必要な力を求める
全揚程の公式
全揚程は、ポンプが水を送り届けるために必要な総エネルギーです。
h2:配管摩擦損失水頭の合計
h3:放水に必要な圧力の水頭換算
3つの要素を一つずつ確認しましょう。
h1:実揚程(高低差)
ポンプの中心から最も高い位置にあるヘッドまたは消火栓までの垂直距離です。
たとえばポンプが地下1階(GL-3m)、最上階のヘッドが5階(GL+15m)なら:
h1 = 15 −(-3)= 18 m
h2:配管摩擦損失水頭
ここまでで計算した摩擦損失の合計値をそのまま使います。先ほどの例では 3.57 m でした。
h3:放水圧力の水頭換算
消火栓やヘッドの先端で必要な放水圧力を水頭(m)に換算します。
各設備で求められる放水圧力は次のとおりです。
| 設備 | 放水圧力 | 水頭換算 |
|---|---|---|
| 1号消火栓 | 0.17 MPa | 17 m |
| 易操作性1号 | 0.17 MPa | 17 m |
| 2号消火栓 | 0.25 MPa | 25 m |
| 広範囲型2号 | 0.17 MPa | 17 m |
| スプリンクラーヘッド | 0.1 MPa | 10 m |
計算例 ─ 全揚程を求める
・ポンプの位置:地下1階(GL-4m)
・最上階の消火栓:6階(GL+20m)
・配管摩擦損失水頭の合計:5.8 m
・1号消火栓の放水圧力:0.17 MPa
h1(実揚程)= 20 −(-4)= 24 m
h2(摩擦損失)= 5.8 m
h3(放水圧力)= 0.17 MPa × 100 = 17 m
全揚程 H = 24 + 5.8 + 17 = 46.8 m
ポンプは46.8m以上の全揚程を持つ製品を選定する必要があります。
ポンプの吐出量の算定
吐出量の求め方
ポンプの吐出量は、同時に使用する消火栓やヘッドの数 × 各放水量で決まります。
| 設備 | 同時開放数 | 必要吐出量 |
|---|---|---|
| 1号消火栓 | 最大2台 | 130×2=260 L/min |
| 易操作性1号 | 最大2台 | 130×2=260 L/min |
| 2号消火栓 | 最大2台 | 60×2=120 L/min |
| 広範囲型2号 | 最大2台 | 80×2=160 L/min |
| スプリンクラー(標準型) | 最大10個 | 80×10=800 L/min |
試験では「ポンプの定格吐出量はいくら必要か」という形で出題されます。設備の種類と同時開放数をセットで覚えておきましょう。
ヘッド配置の実践 ─ 平面図での描き方
スプリンクラーヘッドの配置手順
平面図にヘッドを配置するとき、次の手順で行います。
ヘッド1個あたりの防護面積
「スプリンクラー設備の技術基準」で解説した内容の復習です。
| ヘッドの種類 | 有効散水半径 | 最大防護面積 |
|---|---|---|
| 標準型 | 2.3 m | 約13 m² |
| 高感度型 | 2.6 m | 約13 m² |
| 小区画型 | 2.6 m | 約13 m² |
計算例 ─ ヘッドの必要個数
72 ÷ 13 = 5.53... → 端数切り上げ → 6個
6個を均等に配置します。たとえば3列×2行のグリッド状に並べると、部屋全体をムラなくカバーできます。
屋内消火栓の配置と防護範囲の確認
屋内消火栓の場合は、建物の各部分が消火栓の水平距離の範囲内に収まるように配置します。
| 消火栓の種類 | 水平距離 |
|---|---|
| 1号消火栓 | 25 m以内 |
| 易操作性1号 | 25 m以内 |
| 2号消火栓 | 15 m以内 |
| 広範囲型2号 | 25 m以内 |
「建物のすべての部分が、いずれかの消火栓から水平距離以内にある」ことが条件です。平面図上で、消火栓を中心に半径25m(または15m)の円を描いたとき、建物のすべての部分がどれかの円に入っていればOKです。
水源水量の計算
水源水量の公式
水源に必要な水量は、同時使用台数 × 1台あたりの放水量 × 放水時間で求めます。
| 設備 | 計算式 | 水源水量 |
|---|---|---|
| 1号消火栓 | 2.6m³×2台 | 5.2 m³ |
| 易操作性1号 | 1.6m³×2台 | 3.2 m³ |
| 2号消火栓 | 1.2m³×2台 | 2.4 m³ |
| 広範囲型2号 | 1.6m³×2台 | 3.2 m³ |
| スプリンクラー(標準型) | 1.6m³×10個 | 16 m³ |
試験ではこの水源水量の値を直接聞かれることもあれば、全揚程の計算問題と組み合わせて出題されることもあります。
製図試験の総合演習
ここまで学んだ知識を使って、試験形式の総合問題を解いてみましょう。
条件
・ポンプの位置:地下(GL-3m)
・最上階消火栓の高さ:GL+20m(5階天井付近)
・配管の直管長さ:ポンプ→立管 8m(100A)、立管の高さ 23m(80A)、横引管 15m(50A)
・継手等の等価管長:各区間の直管長の20%
・1mあたりの摩擦損失水頭:100A→0.016m/m、80A→0.033m/m、50A→0.092m/m
・1号消火栓の放水圧力:0.17 MPa
Step 1:実揚程(h1)を求める
h1 = 20 −(-3)= 23 m
Step 2:各区間の摩擦損失を計算する
まず総配管長を求めます(直管長 × 1.2で等価管長を含めます)。
区間1(100A):8 × 1.2 = 9.6 m → 0.016 × 9.6 = 0.15 m
区間2(80A):23 × 1.2 = 27.6 m → 0.033 × 27.6 = 0.91 m
区間3(50A):15 × 1.2 = 18 m → 0.092 × 18 = 1.66 m
h2 = 0.15 + 0.91 + 1.66 = 2.72 m
Step 3:放水圧力(h3)を水頭に換算する
h3 = 0.17 × 100 = 17 m
全揚程 H = 23 + 2.72 + 17 = 42.72 m
したがって、ポンプは全揚程43m以上の製品を選定します。
① 実揚程 → 高低差を求める(マイナスの引き算に注意)
② 摩擦損失 → 区間ごとに計算して合計
③ 放水圧力 → MPa × 100 で水頭に換算
焦らず1ステップずつ計算すれば確実に解けます。
製図試験で間違えやすいポイント
| ミスのパターン | 対策 |
|---|---|
| 実揚程でマイナスの計算ミス | 数直線を書いて高低差を視覚化 |
| 等価管長の加算忘れ | 直管長だけで計算しない。必ず継手分を足す |
| 単位の混同(L/minとm³/s) | 計算前に単位を統一する癖をつける |
| 配管区間の見落とし | 最遠の経路をたどって全区間を漏れなく拾う |
| 消火栓とSPで数値を取り違え | 設備名を最初に確認してから表を参照する |
まとめ問題
記事の内容を理解できたか、4問のクイズで確認しましょう。
【問題1】1号消火栓2台を同時開放する場合、ポンプの必要吐出量として正しいものはどれか。
(1)60 L/min
(2)130 L/min
(3)260 L/min
(4)520 L/min
【問題2】全揚程の計算について、正しい式はどれか。
(1)全揚程 = 実揚程 + 摩擦損失水頭
(2)全揚程 = 実揚程 + 放水圧力水頭
(3)全揚程 = 実揚程 + 摩擦損失水頭 + 放水圧力水頭
(4)全揚程 = 実揚程 × 摩擦損失水頭 × 放水圧力水頭
【問題3】ポンプが地下2階(GL-6m)、最上階の消火栓がGL+18mにある場合、実揚程はいくらか。
(1)12 m
(2)18 m
(3)24 m
(4)30 m
【問題4】配管の口径選定について、誤っているものはどれか。
(1)口径は配管を流れる流量が多いほど太くする必要がある
(2)吸込管の流速は吐出管の流速より遅くするのが原則である
(3)計算結果が呼び径の境目のとき、一つ下の口径を選ぶ
(4)口径が細すぎると摩擦損失が増大し全揚程が不足する