甲種1類

水系消火設備の点検と試験|ポンプ性能試験・放水試験・配管耐圧試験をわかりやすく解説

結論から言います。

水系消火設備は「設置して終わり」ではありません。定期的な点検と試験を行い、いつでも正常に作動する状態を維持する義務があります。甲種1類の試験では、ポンプ性能試験・放水試験・配管耐圧試験の手順と判定基準が出題されます。

点検報告制度とは?消防法第17条の3の3をわかりやすく解説」で解説した法令上の枠組みを思い出してください。消防用設備等は機器点検(6か月ごと)総合点検(1年ごと)が義務付けられています。今回はその具体的な試験内容――水系消火設備で「何を」「どうやって」「どの基準で」確認するかを解説します。

水系消火設備の主な試験
ポンプ性能試験
ポンプが規定の性能を
発揮できるか確認
→ 吐出量・全揚程・電流値
放水試験
実際に放水して
性能を確認
→ 放水量・放水圧力
配管耐圧試験
配管の漏れや
劣化がないか確認
→ 加圧保持・漏水有無

点検の種類と周期

水系消火設備の点検は、大きく外観点検機能点検総合点検の3段階で行います。

点検の種類 周期 内容
外観点検 6か月ごと 目視で損傷・変形・腐食・漏れを確認
機能点検 6か月ごと 操作して正常に作動するか確認
総合点検 1年ごと 実際に放水して総合的な性能を確認

外観点検と機能点検は機器点検としてセットで6か月ごとに実施します。総合点検では実際にポンプを起動して放水するため、より手間がかかりますが、設備全体が連動して正常に動くかを確認する最も重要な点検です。

外観点検のポイント

外観点検は目視と簡単な操作で行います。チェック項目が多いため、主要なものを設備ごとに整理します。

ポンプ周り

  • ポンプ本体 ── 漏水・異音・振動がないか。グランドパッキンからの滴下量は適正か
  • 圧力計・連成計 ── 指針がゼロ点にあるか。ガラスの破損がないか
  • 呼水槽 ── 水位が規定量以上あるか。減水警報装置が正常か
  • 制御盤 ── 表示灯が正常に点灯するか。スイッチ類の位置は適正か

配管・バルブ

  • 配管 ── 腐食・変形・漏水がないか。支持金具の緩みがないか
  • バルブ ── 開閉位置が正常か(常時開のバルブが閉まっていないか)。ハンドルの欠損がないか
  • 制御弁 ── 「開」の状態にあるか。バルブの表示が見やすいか

消火栓・ヘッド

  • 消火栓箱 ── 変形・損傷がないか。扉の開閉がスムーズか
  • ホース ── 劣化・硬化・漏れがないか
  • スプリンクラーヘッド ── 変形・腐食・塗装による閉塞がないか。散水の障害物がないか
  • 表示灯 ── 赤色灯が正常に点灯しているか

ポンプ性能試験

ポンプ性能試験は、加圧送水装置が設計どおりの性能を発揮できるか確認する試験です。「ポンプの種類と性能」で解説した性能曲線(Q-H曲線)の知識がここで活きます。

試験の種類

試験名 内容 確認事項
締切運転 吐出側バルブを全閉でポンプ運転 締切圧力(最大揚程)
定格運転 定格吐出量でポンプ運転 定格圧力(全揚程)・電流値
150%運転 定格の150%の吐出量で運転 揚程が定格の65%以上あるか

締切運転

吐出側のバルブを全閉にした状態でポンプを運転し、圧力計で締切圧力を読み取ります。水が流れないため、ポンプが発生する圧力は最大値になります。

判定基準
締切圧力が定格圧力の140%以下であること。

140%を超えると、配管やバルブに過大な圧力がかかり、損傷の原因になります。逆に低すぎる場合は、ポンプの性能が劣化している可能性があります。

定格運転

性能試験配管の試験用バルブを開いて、定格吐出量の水を流した状態でポンプを運転します。このとき確認するのは次の3点です。

  • 吐出圧力 ── 定格圧力以上あるか
  • 吐出量 ── 定格吐出量以上あるか(流量計で確認)
  • 電動機の電流値 ── 定格電流値以下であるか(過負荷になっていないか)

150%運転(ランナウト点の確認)

定格吐出量の150%の水を流した状態での運転です。これはポンプが最大負荷をかけられたときでも、最低限の揚程を維持できるか確認する試験です。

判定基準
150%吐出量時の全揚程が定格全揚程の65%以上であること。

実際の火災では複数の消火栓やヘッドが同時に開放され、定格を超える流量が求められることがあります。そのときでも、ある程度の揚程(圧力)を維持できなければ、水が上階まで届かなくなります。

性能試験の配管

ポンプ性能試験は、専用の性能試験配管を使って行います。この配管はポンプの吐出側から分岐し、流量調整弁と流量計を経由して水槽に戻るループ状の配管です。

建物内で実際に放水しなくても、この試験配管を使えばポンプの性能を確認できます。6か月ごとの機能点検で毎回放水するのは現実的ではないため、性能試験配管が重要な役割を果たします。

性能試験配管の流れ
ポンプ
試験用バルブ
(流量調整)
流量計
(吐出量測定)
水槽へ戻る

放水試験

放水試験は、設備全体を実際に作動させて消火栓やスプリンクラーヘッドから放水し、規定の放水量・放水圧力が得られるか確認する試験です。総合点検(1年ごと)で実施します。

屋内消火栓の放水試験

最も条件の厳しい消火栓(最遠の消火栓など)で放水し、次の基準を確認します。

消火栓の種類 放水量 放水圧力
1号消火栓 130 L/min以上 0.17 MPa以上
易操作性1号 130 L/min以上 0.17 MPa以上
2号消火栓 60 L/min以上 0.25 MPa以上
広範囲型2号 80 L/min以上 0.17 MPa以上

これらの数値は「屋内消火栓設備の設置義務と技術基準」で解説した技術基準と同じです。設置時の基準値が、そのまま点検時の合否判定基準になります。

屋外消火栓の放水試験

屋外消火栓も同様に放水試験を行います。判定基準は次のとおりです。

  • 放水量:350 L/min以上
  • 放水圧力:0.25 MPa以上

スプリンクラー設備の末端試験弁

スプリンクラー設備では、実際にヘッドを開放して放水するのは建物にダメージを与えるため、通常は末端試験弁を使って試験します。

末端試験弁は、配管の最も遠い末端に設置された試験用のバルブです。「スプリンクラー設備の技術基準」で解説したとおり、ヘッド1個分の放水量に相当するオリフィス(絞り)が組み込まれており、このバルブを開くと次のことを確認できます。

  • 流水検知装置が作動するか(アラーム弁の圧力スイッチが反応するか)
  • 受信機に信号が届くか
  • 放水圧力が規定値以上あるか(圧力計で確認)
末端試験弁の試験フロー
1
末端試験弁を開放する
2
流水検知装置が作動 → 圧力スイッチが信号送出
3
ポンプ自動起動 → 制御盤で確認
4
放水圧力を確認 → 圧力計で0.1 MPa以上
5
末端試験弁を閉鎖 → ポンプ停止を確認

配管耐圧試験

なぜ配管耐圧試験が必要か

配管は年月とともに腐食が進みます。特に湿式のスプリンクラー配管は常時水が充填されているため、配管の内面が錆びて肉厚が薄くなっていきます。配管に穴が開けば水漏れが起き、火災時に十分な水量を確保できません。

配管耐圧試験は、設置から一定年数が経過した配管について、設計圧力に耐えられるかを確認する試験です。

対象となる設備と時期

対象設備 実施時期
屋内消火栓設備 設置後10年を経過したもの(以後3年ごと)
スプリンクラー設備 設置後10年を経過したもの(以後3年ごと)
屋外消火栓設備 設置後10年を経過したもの(以後3年ごと)

試験の手順

配管耐圧試験の手順
1
配管内の空気を完全に抜く(エア抜き)
2
配管に水を満たし、設計送水圧力まで加圧する
3
加圧状態を2時間保持する
4
圧力低下と漏水の有無を確認する

判定基準

  • 2時間の加圧保持中に圧力の著しい低下がないこと
  • 配管の接合部やバルブ部分から漏水がないこと
  • 配管に変形や損傷がないこと

不合格の場合は、漏水箇所の修理や配管の交換が必要です。

なぜエア抜きが重要か

空気が配管内に残っていると、加圧時に空気が圧縮されてしまい、正確な圧力測定ができません。空気は水と違って圧縮性があるため、配管に微小な漏れがあっても空気のクッションで圧力低下が吸収されてしまうのです。正確な試験のために、空気を完全に排出することが不可欠です。

その他の重要な点検項目

呼水装置の点検

加圧送水装置と附属装置」で解説した呼水槽の点検も重要です。

  • 水量の確認 ── 呼水槽の水位が規定量以上あるか
  • 減水警報装置 ── 水位が低下したときに警報が鳴るか
  • 自動給水装置 ── 水位低下時に自動で補水されるか

呼水槽の水がなくなるとポンプが空転し、火災時に水を送れなくなります。日常的な水量管理が重要です。

流水検知装置の作動試験

流水検知装置と一斉開放弁」で解説したアラーム弁の作動を確認します。

  • 圧力スイッチの作動 ── 規定の流水量で確実に作動するか
  • リターディングチャンバー ── 水撃による誤作動が防止されているか
  • 警報の発報 ── 受信機に信号が正常に届くか

予備電源の試験

停電時にもポンプが運転できるよう、非常電源(自家発電設備または蓄電池設備)の試験も行います。

  • 切替試験 ── 常用電源を遮断して、非常電源に自動で切り替わるか
  • 運転時間 ── 非常電源でポンプを規定時間運転できるか

まとめ問題

記事の内容を理解できたか、4問のクイズで確認しましょう。

【問題1】ポンプの締切運転について、正しいものはどれか。

(1)定格吐出量の50%の水を流した状態で運転する
(2)吐出側のバルブを全閉にした状態で運転する
(3)締切圧力は定格圧力の200%以下であればよい
(4)締切運転は総合点検でのみ実施する

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正解:(2)
締切運転は吐出側のバルブを全閉にした状態でポンプを運転し、締切圧力(最大揚程)を確認する試験です。(1)は定格運転や150%運転の話です。(3)の締切圧力の上限は定格圧力の140%以下です。(4)は誤りで、機能点検でも実施します。

【問題2】ポンプの150%運転における判定基準として、正しいものはどれか。

(1)全揚程が定格全揚程の50%以上
(2)全揚程が定格全揚程の65%以上
(3)全揚程が定格全揚程の80%以上
(4)全揚程が定格全揚程の100%以上

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正解:(2)
定格吐出量の150%で運転したとき、全揚程が定格全揚程の65%以上あれば合格です。ポンプは吐出量が増えるほど揚程が下がる特性がありますが、150%でも65%以上の揚程を維持できれば、複数の消火栓が同時使用されても最低限の放水圧力を確保できます。

【問題3】スプリンクラー設備の末端試験弁について、正しいものはどれか。

(1)末端試験弁は配管の途中に設置する
(2)末端試験弁を開放するとスプリンクラーヘッドが作動する
(3)末端試験弁の開放で流水検知装置の作動を確認できる
(4)末端試験弁の試験は年1回の総合点検でのみ行う

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正解:(3)
末端試験弁は配管の最も遠い末端に設置されます(途中ではない)。末端試験弁を開放すると、ヘッド1個分に相当する水が流れ、流水検知装置(アラーム弁)の圧力スイッチが作動するかを確認できます。ヘッド自体は作動しません。

【問題4】配管耐圧試験について、誤っているものはどれか。

(1)設置後10年を経過した配管について実施する
(2)配管内の空気を完全に抜いてから加圧する
(3)設計送水圧力まで加圧して2時間保持する
(4)試験には空気を使用し、水は使わない

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正解:(4)
配管耐圧試験はを使用します(水圧試験)。空気は圧縮性があるため、漏れの検出精度が低く、万が一配管が破裂した場合の危険性も高くなります。水は非圧縮性で、微小な漏れも圧力低下として確実に検出できます。

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