乙種7類

漏電火災警報器の構造と動作原理|ZCT・受信機・音響装置をわかりやすく解説

漏電火災警報器とは? ── 結論から言います

漏電火災警報器(ろうでんかさいけいほうき)は、建物の電気配線から漏れた電流(漏電)を検知して、火災になる前に警報を鳴らす設備です。

構成はとてもシンプルで、たった3つの機器でできています。

漏電火災警報器の構成
変流器(ZCT)
漏電を検知する
センサー役
受信機
信号を判定する
頭脳役
音響装置
警報を鳴らす
ベル・ブザー

自動火災報知設備(自火報)が「熱や煙」で火災を見つけるのに対し、漏電火災警報器は「電流の漏れ」で火災の原因そのものを見つける設備です。火が出る前に危険を察知できるのが大きな特徴ですね。

なぜ漏電火災警報器が必要なのか

ここで「漏電ってそんなに危ないの?」と思うかもしれません。実は、漏電が特に危険な建物があります。それがラスモルタル造の建物です。

ラスモルタル造とは?

ラスモルタル造とは、壁の下地に金属製の網(メタルラス)を張り、その上にモルタルを塗って仕上げた構造のことです。古い木造建築や商店街の建物に多く見られます。

ラスモルタル造で漏電火災が起きるしくみ
壁の中に電線と金属ラスが並んでいる
経年劣化で電線の絶縁被覆が傷む
電流が金属ラスに漏れ出す(漏電)
金属ラスがジュール熱で発熱 → 周囲の木材に着火

ここで厄介なのは、漏れる電流が微小だということ。ブレーカー(配線用遮断器)は大電流の短絡には反応しますが、数百mA程度の漏電では落ちません。でもその微小な電流が金属ラスに長時間流れ続けると、ジュール熱(Q=I²Rt)で少しずつ温度が上がり、最終的に火災になります。

つまり、ブレーカーでは防げない火災を防ぐのが漏電火災警報器の役割です。

変流器(ZCT)── 漏電を見つけるセンサー

漏電火災警報器の心臓部が変流器(ZCT:零相変流器)です。「零相変流器」と聞くと難しそうですが、原理はシンプルです。

ZCTの動作原理

ZCTは、ドーナツ型(トロイダル型)の鉄心に二次コイルを巻いた構造をしています。この穴に、電源線(L線とN線)をまとめて通すのがポイントです。

正常時(漏電なし)
行きの電流(L線)= 帰りの電流(N線)

L線の磁束とN線の磁束が打ち消し合う
→ 二次コイルに電流は流れない
検出なし(正常)

漏電時
行きの電流(L線)≠ 帰りの電流(N線)

差分の磁束が鉄心に残る
電磁誘導で二次コイルに電流が発生
漏電を検出!

たとえば、L線に10A流れていて、N線に9.7A戻ってきたとします。差の0.3A(300mA)はどこへ行ったのか? ── 途中で金属ラスなどに漏れ出したわけです。ZCTはこの「行きと帰りの差」を検知します。

この原理は電磁誘導(ファラデーの法則)そのものです。甲4の電気の基礎で学んだ知識がここで活きてきますね。

変流器の種類

変流器には2つのタイプがあります。

  • 貫通型 ── ドーナツの穴に電線を通すタイプ。一般的に使われる
  • 分割型 ── ドーナツを2つに分割でき、既設の電線に後から取り付けられるタイプ

分割型は既存の建物に後付けできるメリットがありますが、合わせ面にゴミが入ると感度が落ちるため、取り付け時の注意が必要です。

受信機 ── 漏電を判定する頭脳

変流器が検知した信号を受け取り、「警報を鳴らすかどうか」を判定するのが受信機です。

受信機の主な機能

  • 漏電電流の判定 ── 設定された電流値(公称作動電流値)を超えたら作動
  • 音響装置の制御 ── 漏電検出時にベルやブザーを鳴らす
  • 電源灯の表示 ── 通電中であることを示す(赤色灯)
  • 作動表示 ── 漏電を検出したことを表示する

受信機の型式

集合型
変流器と受信機が一体構造

メリット:設置が簡単・配線不要
デメリット:設置場所が分電盤付近に限定

小規模建物向き

分離型
変流器と受信機が別々の筐体

メリット:受信機を管理しやすい場所に設置可
デメリット:変流器〜受信機間の配線が必要

中〜大規模建物向き

公称作動電流値と感度

受信機には公称作動電流値(こうしょうさどうでんりゅうち)が設定されています。これは「この電流値の漏電を検出したら作動する」という基準値です。

  • 公称作動電流値:200mA、300mA、400mA、500mA、1000mAの5段階
  • 感度電流:公称作動電流値の50%以上100%以下で確実に作動すること
  • 作動時間:公称作動電流の130%の電流0.3秒以内に作動すること

たとえば公称作動電流値が200mAの受信機なら、100mA~200mAで作動し、260mA(200mA×130%)で0.3秒以内に作動する必要があります。

音響装置 ── 警報を鳴らす

漏電を検知したことをベルまたはブザーで知らせます。

  • 音圧:1mの距離で70dB以上
  • 受信機に内蔵されている場合と、外付けの場合がある
  • 音響が停止しても、受信機の作動表示は残るので、漏電があったことはわかる

自火報の地区音響装置(90dB/92dB)に比べると小さめですが、これは漏電火災警報器が「建物全体への避難指示」ではなく、「管理者への注意喚起」を目的としているためです。

漏電ブレーカーとの違い

「漏電を検知する」という点では漏電ブレーカー(漏電遮断器)と似ていますが、目的がまったく違います。

漏電ブレーカー
目的:人体の感電防止
感度:15mA~30mA
動作:電路を遮断する
反応速度:0.1秒以内
漏電火災警報器
目的:火災の予防
感度:200mA~1000mA
動作警報を鳴らす(遮断しない)
反応速度:0.3秒以内

漏電ブレーカーは感度が高い(15~30mA)ので、人体に危険な電流にはすぐ反応して電気を止めます。一方、漏電火災警報器は感度が200mA以上と低め。なぜか?

それは、建物の電気配線には正常時でもわずかな漏れ電流(対地静電容量による漏れなど)が存在するから。ブレーカー並みの感度にすると誤報だらけになってしまいます。火災につながるレベルの漏電(数百mA)だけを確実に捉える ── それが漏電火災警報器の設計思想です。

信号の流れをまとめよう

最後に、漏電が検出されてから警報が鳴るまでの流れを整理します。

漏電検出から警報までの流れ
① 電線の絶縁劣化で漏電が発生
② 変流器(ZCT)が行きと帰りの電流差を検出
③ 受信機が信号を受け取り、しきい値と比較
④ 公称作動電流値を超えていれば「漏電あり」と判定
⑤ 音響装置(ベル・ブザー)が鳴動

自火報と比べると構成がシンプルですが、それは検知対象が「熱・煙」ではなく「電流」という1種類だけだから。構成は単純でも、ラスモルタル造の建物を漏電火災から守る重要な設備です。

まとめ問題

第1問

漏電火災警報器の構成機器として、正しい組合せはどれか。

(1)変流器・受信機・感知器
(2)変流器・受信機・音響装置
(3)変流器・中継器・音響装置
(4)検知器・受信機・音響装置

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正解:(2)変流器・受信機・音響装置
漏電火災警報器は「変流器(ZCT)」「受信機」「音響装置」の3つで構成されます。感知器は自火報の機器、検知器はガス漏れ警報設備の機器です。中継器は使いません。

第2問

漏電火災警報器の変流器(ZCT)が漏電を検知する原理として、正しいものはどれか。

(1)電線の温度上昇を感知する
(2)電路の電圧低下を検出する
(3)往復電流の差による磁束の変化を検出する
(4)接地抵抗の変化を検出する

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正解:(3)往復電流の差による磁束の変化を検出する
ZCTは電源線(L線とN線)を貫通させ、行きの電流と帰りの電流の差が生じたとき、鉄心に磁束が発生し、電磁誘導によって二次コイルに電流が流れます。これが漏電の検出信号です。

第3問

漏電火災警報器の受信機について、正しいものはどれか。

(1)公称作動電流値は15mAと30mAの2段階である
(2)漏電を検出すると自動的に電路を遮断する
(3)公称作動電流の130%の電流で0.3秒以内に作動する
(4)集合型は変流器と音響装置が一体になったものである

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正解:(3)公称作動電流の130%の電流で0.3秒以内に作動する
(1)は漏電ブレーカーの感度です。漏電火災警報器は200mA~1000mAの5段階。(2)漏電火災警報器は電路を遮断せず、警報を鳴らすだけです。(4)集合型は変流器と受信機が一体になったものです。

第4問

漏電火災警報器と漏電ブレーカーの違いについて、誤っているものはどれか。

(1)漏電ブレーカーは人体の感電防止が目的である
(2)漏電火災警報器は火災の予防が目的である
(3)漏電ブレーカーの感度電流は漏電火災警報器より高い
(4)漏電火災警報器は漏電を検知しても電路を遮断しない

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正解:(3)
逆です。漏電ブレーカーの感度(15~30mA)は漏電火災警報器(200mA~1000mA)より低い(=高感度)。感度電流が「高い」とは数値が大きいことを意味するので、漏電火災警報器の方が感度電流は高い(=低感度)です。「感度が良い」のと「感度電流が高い」のは逆の意味なので注意しましょう。

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