漏電火災警報器とは? ── 結論から言います
漏電火災警報器(ろうでんかさいけいほうき)は、建物の電気配線から漏れた電流(漏電)を検知して、火災になる前に警報を鳴らす設備です。
構成はとてもシンプルで、たった3つの機器でできています。
自動火災報知設備(自火報)が「熱や煙」で火災を見つけるのに対し、漏電火災警報器は「電流の漏れ」で火災の原因そのものを見つける設備です。火が出る前に危険を察知できるのが大きな特徴ですね。
なぜ漏電火災警報器が必要なのか
ここで「漏電ってそんなに危ないの?」と思うかもしれません。実は、漏電が特に危険な建物があります。それがラスモルタル造の建物です。
ラスモルタル造とは?
ラスモルタル造とは、壁の下地に金属製の網(メタルラス)を張り、その上にモルタルを塗って仕上げた構造のことです。古い木造建築や商店街の建物に多く見られます。
ここで厄介なのは、漏れる電流が微小だということ。ブレーカー(配線用遮断器)は大電流の短絡には反応しますが、数百mA程度の漏電では落ちません。でもその微小な電流が金属ラスに長時間流れ続けると、ジュール熱(Q=I²Rt)で少しずつ温度が上がり、最終的に火災になります。
つまり、ブレーカーでは防げない火災を防ぐのが漏電火災警報器の役割です。
変流器(ZCT)── 漏電を見つけるセンサー
漏電火災警報器の心臓部が変流器(ZCT:零相変流器)です。「零相変流器」と聞くと難しそうですが、原理はシンプルです。
ZCTの動作原理
ZCTは、ドーナツ型(トロイダル型)の鉄心に二次コイルを巻いた構造をしています。この穴に、電源線(L線とN線)をまとめて通すのがポイントです。
たとえば、L線に10A流れていて、N線に9.7A戻ってきたとします。差の0.3A(300mA)はどこへ行ったのか? ── 途中で金属ラスなどに漏れ出したわけです。ZCTはこの「行きと帰りの差」を検知します。
この原理は電磁誘導(ファラデーの法則)そのものです。甲4の電気の基礎で学んだ知識がここで活きてきますね。
変流器の種類
変流器には2つのタイプがあります。
- 貫通型 ── ドーナツの穴に電線を通すタイプ。一般的に使われる
- 分割型 ── ドーナツを2つに分割でき、既設の電線に後から取り付けられるタイプ
分割型は既存の建物に後付けできるメリットがありますが、合わせ面にゴミが入ると感度が落ちるため、取り付け時の注意が必要です。
受信機 ── 漏電を判定する頭脳
変流器が検知した信号を受け取り、「警報を鳴らすかどうか」を判定するのが受信機です。
受信機の主な機能
- 漏電電流の判定 ── 設定された電流値(公称作動電流値)を超えたら作動
- 音響装置の制御 ── 漏電検出時にベルやブザーを鳴らす
- 電源灯の表示 ── 通電中であることを示す(赤色灯)
- 作動表示 ── 漏電を検出したことを表示する
受信機の型式
公称作動電流値と感度
受信機には公称作動電流値(こうしょうさどうでんりゅうち)が設定されています。これは「この電流値の漏電を検出したら作動する」という基準値です。
- 公称作動電流値:200mA、300mA、400mA、500mA、1000mAの5段階
- 感度電流:公称作動電流値の50%以上100%以下で確実に作動すること
- 作動時間:公称作動電流の130%の電流で0.3秒以内に作動すること
たとえば公称作動電流値が200mAの受信機なら、100mA~200mAで作動し、260mA(200mA×130%)で0.3秒以内に作動する必要があります。
音響装置 ── 警報を鳴らす
漏電を検知したことをベルまたはブザーで知らせます。
- 音圧:1mの距離で70dB以上
- 受信機に内蔵されている場合と、外付けの場合がある
- 音響が停止しても、受信機の作動表示は残るので、漏電があったことはわかる
自火報の地区音響装置(90dB/92dB)に比べると小さめですが、これは漏電火災警報器が「建物全体への避難指示」ではなく、「管理者への注意喚起」を目的としているためです。
漏電ブレーカーとの違い
「漏電を検知する」という点では漏電ブレーカー(漏電遮断器)と似ていますが、目的がまったく違います。
漏電ブレーカーは感度が高い(15~30mA)ので、人体に危険な電流にはすぐ反応して電気を止めます。一方、漏電火災警報器は感度が200mA以上と低め。なぜか?
それは、建物の電気配線には正常時でもわずかな漏れ電流(対地静電容量による漏れなど)が存在するから。ブレーカー並みの感度にすると誤報だらけになってしまいます。火災につながるレベルの漏電(数百mA)だけを確実に捉える ── それが漏電火災警報器の設計思想です。
信号の流れをまとめよう
最後に、漏電が検出されてから警報が鳴るまでの流れを整理します。
自火報と比べると構成がシンプルですが、それは検知対象が「熱・煙」ではなく「電流」という1種類だけだから。構成は単純でも、ラスモルタル造の建物を漏電火災から守る重要な設備です。
まとめ問題
第1問
漏電火災警報器の構成機器として、正しい組合せはどれか。
(1)変流器・受信機・感知器
(2)変流器・受信機・音響装置
(3)変流器・中継器・音響装置
(4)検知器・受信機・音響装置
第2問
漏電火災警報器の変流器(ZCT)が漏電を検知する原理として、正しいものはどれか。
(1)電線の温度上昇を感知する
(2)電路の電圧低下を検出する
(3)往復電流の差による磁束の変化を検出する
(4)接地抵抗の変化を検出する
第3問
漏電火災警報器の受信機について、正しいものはどれか。
(1)公称作動電流値は15mAと30mAの2段階である
(2)漏電を検出すると自動的に電路を遮断する
(3)公称作動電流の130%の電流で0.3秒以内に作動する
(4)集合型は変流器と音響装置が一体になったものである
第4問
漏電火災警報器と漏電ブレーカーの違いについて、誤っているものはどれか。
(1)漏電ブレーカーは人体の感電防止が目的である
(2)漏電火災警報器は火災の予防が目的である
(3)漏電ブレーカーの感度電流は漏電火災警報器より高い
(4)漏電火災警報器は漏電を検知しても電路を遮断しない