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特定防火対象物と非特定防火対象物の違いをわかりやすく解説

「特定防火対象物」と「非特定防火対象物」って何?

消防法の勉強をしていると、「特定防火対象物」という言葉がやたらと出てきます。これ、試験でもめちゃくちゃ聞かれるポイントです。

結論から言います。

  • 特定防火対象物 = デパート・飲食店・ホテル・病院など、「誰でも自由に出入りする建物」や「自力で逃げにくい人がいる建物」
  • 非特定防火対象物 = 学校・事務所・工場・共同住宅など、「いつも決まった人が使う建物」

この違いで何が変わるかというと、特定防火対象物の方が消防設備の基準が厳しくなります。点検報告の頻度も、防火管理者の選任基準も、全部厳しくなる。「誰が来るかわからない」「自分で逃げられない人がいる」なら、当然しっかり守らなきゃいけないよね、という考え方です。

では、具体的にどの建物が特定で、どの建物が非特定なのか。法律の根拠と一緒に見ていきましょう。

特定防火対象物 と 非特定防火対象物
判断の考え方
その建物、誰が使う?
特定防火対象物

誰でも自由に出入りする
or 自力で逃げにくい人がいる


🎬 劇場・映画館・集会場 (一)

🎵 カラオケ・ゲームセンター (二)

🍔 飲食店・料理店 (三)

🛍 デパート・モール (四)

🏨 ホテル・旅館 (五)イ

🏥 病院・老人ホーム・保育所 (六)

♨ サウナ (九)イ / 地下街

基準が厳しい
点検1年に1回 / 防火管理者30人〜
非特定防火対象物

いつも決まった人が使う
(建物に慣れている人が中心)


🏫 学校(小中高大) (七)

📚 図書館・博物館 (八)

🏭 工場・作業場 (十二)

🏢 事務所・オフィス (十五)

🏠 共同住宅・寄宿舎 (五)ロ

⛪ 神社・寺院・教会 (十一)

🛗 倉庫 (十四) / 駐車場 (十三)

基準がゆるめ
点検3年に1回 / 防火管理者50人〜

法律上の根拠

消防法第17条の2の5 第2項第1号

別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物

現代語にすると?

この条文は、ざっくり言うとこういうことです。

「以下の建物は”特定防火対象物”ですよ」

  • (一)〜(四) → 劇場・キャバレー・飲食店・デパートなど、お客さんが自由に出入りする商業施設
  • (五)イ → ホテル・旅館など、初めて来る人が泊まる場所
  • (六) → 病院・老人ホーム・保育所・幼稚園など、自力で逃げにくい人がいる施設
  • (九)イ → サウナなど、高温で判断力が下がりやすい場所
  • (十六)イ → 上記の用途が入った複合ビル
  • (十六の二)(十六の三) → 地下街・準地下街(煙が逃げにくく避難が難しい)

これに当てはまらない建物が「非特定防火対象物」です。法律に「非特定防火対象物」という用語は直接出てきませんが、特定防火対象物ではない防火対象物を指す言葉として定着しています。


特定防火対象物を一覧で確認

施行令別表第一の中から、特定防火対象物に該当するものを赤色で示します。

用途 特定?
(一)イ・ロ 劇場・映画館・公会堂・集会場 ⭕ 特定
(二)イ〜ニ キャバレー・遊技場・カラオケボックスなど ⭕ 特定
(三)イ・ロ 料理店・飲食店 ⭕ 特定
(四) 百貨店・物品販売店舗 ⭕ 特定
(五)イ 旅館・ホテル ⭕ 特定
(五)ロ 共同住宅・寄宿舎 ❌ 非特定
(六)イ〜ニ 病院・老人ホーム・保育所・幼稚園 ⭕ 特定
(七) 学校(小中高大) ❌ 非特定
(八) 図書館・博物館 ❌ 非特定
(九)イ サウナ・蒸気浴場 ⭕ 特定
(九)ロ 一般の銭湯 ❌ 非特定
(十) 駅・空港ターミナル ❌ 非特定
(十一) 神社・寺院・教会 ❌ 非特定
(十二)イ・ロ 工場・スタジオ ❌ 非特定
(十三)イ・ロ 駐車場・格納庫 ❌ 非特定
(十四) 倉庫 ❌ 非特定
(十五) 事務所など ❌ 非特定
(十六)イ 特定用途を含む複合用途ビル ⭕ 特定
(十六)ロ 非特定のみの複合用途ビル ❌ 非特定
(十六の二) 地下街 ⭕ 特定
(十六の三) 準地下街 ⭕ 特定

特定か非特定か、判断のポイント

共通点は「不特定多数の人が利用する」「自力避難が難しい人がいる」の2つです。

判断基準 具体例
不特定多数が出入りする デパート・飲食店・ホテル・映画館など。誰でも自由に入れる場所
自力避難が難しい人がいる 病院の入院患者・老人ホームの入居者・保育園の園児・幼稚園の園児

間違えやすいポイント

以下は試験で引っかけに使われやすい「非特定」の建物です。

建物 非特定の理由
学校(小中高大) 不特定多数ではなく「決まった生徒・教職員」が通う場所
図書館・博物館 利用者は目的をもって来館し、館内構造も把握しやすい
共同住宅 住んでいる人は「特定の住民」であって不特定多数ではない
駅・空港 案内表示・出入口が多く、利用者も移動に慣れている
一般の銭湯 サウナ(九)イは高温で意識がもうろうとするリスクがあるから特定。普通の銭湯(九)ロはそこまでの危険がないので非特定

なぜ「特定」と「非特定」を分けるの?

ひと言でいうと、火災が起きたときの危険度が全然違うからです。

初めて来た場所で火事に遭うのと、毎日通っている職場で火事に遭うの、どっちが怖いですか? 当然、勝手がわからない場所の方が危険ですよね。だから危険度が高い建物には、より厳しい基準を設けて守りを固めるわけです。

具体的には、こんな理由があります。

① 建物の構造を知らない人が多い

デパートやホテルに来る人は、非常口の場所を知りません。火事が起きたらパニックになりやすい。だから消防設備を手厚くして、知らない人でも安全に逃げられるようにします。

② 自力で逃げられない人がいる

病院の入院患者、老人ホームのお年寄り、保育園の子ども。自分で判断して素早く逃げることが難しい人たちがいる建物は、より高い安全基準が必要です。

③ 過去の火災事故の教訓

デパート火災やホテル火災など、不特定多数が集まる場所での大規模火災が過去に何度も起きています。その教訓から、こうした建物には特に厳しい基準を設けるようになりました。


具体的に何が厳しくなるの?

項目 特定防火対象物 非特定防火対象物
消防用設備等の設置基準 小さい面積でも設置義務あり 基準がゆるめ
点検報告の頻度 1年に1回消防署へ報告 3年に1回消防署へ報告
防火管理者の選任 収容人員30人以上で必要 収容人員50人以上で必要
消防法令の遡及適用 新基準が遡って適用されやすい 旧基準のままでOKな場合が多い

たとえば、スプリンクラー設備。特定防火対象物なら比較的小さな面積でも設置義務が生じますが、非特定なら同じ面積でも不要というケースがあります。


覚え方のコツ

特定防火対象物を丸暗記するのは大変なので、「非特定」を先に覚えるのがコツです。

非特定防火対象物は「いつも同じ人が使う場所」と覚えましょう。

  • 学校 → いつも同じ生徒が通う
  • 共同住宅 → いつも同じ住民が住む
  • 工場 → いつも同じ従業員が働く
  • 事務所 → いつも同じ社員が出勤する
  • 倉庫 → いつも同じ業者が出入りする

これに当てはまらない=「誰が来るか分からない場所」=特定防火対象物です。

あとは例外として、避難が難しい人がいる施設(病院・老人ホーム・保育所・幼稚園)は問答無用で特定と覚えておけばOKです。


まとめ

ポイント 内容
特定防火対象物とは 不特定多数が利用する、または自力避難が難しい人がいる建物
非特定防火対象物とは いつも決まった人が利用する建物
特定の方が厳しい 設置基準・点検頻度・防火管理者の基準すべてが厳しくなる
覚え方 「非特定=いつも同じ人が使う場所」を先に覚える

理解度チェック問題

以下の問題で理解を確認しましょう。すべてオリジナル問題です。

問1

次のうち、特定防火対象物に該当しないものはどれか。

  1. カラオケボックス
  2. 共同住宅
  3. 飲食店
  4. 旅館
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正解:2(共同住宅)
共同住宅は(五)ロに該当し、非特定防火対象物です。住んでいるのは特定の住民だからです。カラオケボックス(二)ニ、飲食店(三)ロ、旅館(五)イはいずれも特定防火対象物です。

問2

特定防火対象物における消防用設備等の点検結果の報告頻度は、次のうちどれか。

  1. 6か月に1回
  2. 1年に1回
  3. 2年に1回
  4. 3年に1回
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正解:2(1年に1回)
特定防火対象物は1年に1回、非特定防火対象物は3年に1回、消防署へ点検結果を報告する義務があります。

問3

次のうち、特定防火対象物に該当するものはどれか。

  1. 中学校
  2. 市立図書館
  3. 認可保育所
  4. オフィスビル
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正解:3(認可保育所)
保育所は(六)ハに該当し、自力避難が難しい園児がいるため特定防火対象物です。中学校(七)、図書館(八)、オフィスビル(十五)はいずれも非特定防火対象物です。

問4

公衆浴場のうち特定防火対象物に該当するのは、次のうちどれか。

  1. 一般的な銭湯
  2. 蒸気浴場(サウナ)
  3. 足湯施設
  4. 露天風呂専門店
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正解:2(蒸気浴場(サウナ))
蒸気浴場・熱気浴場は(九)イに該当し、特定防火対象物です。高温環境で利用者の判断力が低下するリスクがあるためです。一般的な銭湯は(九)ロで非特定防火対象物になります。

問5

特定防火対象物において、防火管理者の選任が必要となる収容人員の基準は次のうちどれか。

  1. 10人以上
  2. 30人以上
  3. 50人以上
  4. 100人以上
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正解:2(30人以上)
特定防火対象物では収容人員30人以上で防火管理者の選任が必要です。非特定防火対象物では50人以上が基準になります。

問6(応用)

図書館には不特定多数の人が出入りするが、非特定防火対象物に分類されている。一方、飲食店も不特定多数の人が出入りするが、こちらは特定防火対象物である。この違いが生まれる理由として、最も適切なものはどれか。

  1. 図書館は公共施設であり、飲食店は民間施設だから
  2. 図書館は営業時間が短く、飲食店は営業時間が長いから
  3. 図書館の利用者は建物構造を把握しやすく避難が容易だが、飲食店は火気使用があり初来店客も多く危険度が高いから
  4. 図書館は入館料が無料だが、飲食店は有料だから
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正解:3
特定・非特定の区別は「公共か民間か」「営業時間」「料金」ではありません。ポイントは火災時の危険度です。飲食店は厨房で火を使い、初めて来る客が多く建物構造を把握していないため、火災時のリスクが高くなります。一方、図書館は火気の使用が少なく、利用者も比較的落ち着いて行動でき、館内構造も把握しやすいため非特定とされています。

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