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防火対象物の数え方|施行令2条・8条・9条・9条の2を整理

防火対象物を「一つとみなす」「別の防火対象物とみなす」という規定は、何の基準を適用するかによって範囲が異なります。消防法施行令第2条・第8条・第9条・第9条の2を、単純な「1棟原則」の例外として一括りにすると誤解が生じます。

最初に確認すること
防火管理について数えるのか、消防用設備等の技術基準について判定するのかを先に決めます。同じ建物でも、適用する条文が変われば「みなし」の範囲も変わります。

4つの規定は適用範囲が違う

規定 基本的な働き 適用範囲
施行令第2条 同一敷地内の複数の防火対象物を一つとみなす 消防法第8条第1項の防火管理
施行令第8条 所定の壁・床などで区画された部分を別の防火対象物とみなす 施行令第2章第3節の消防用設備等の技術基準
施行令第9条 複合用途防火対象物の部分を、用途ごとの一つの防火対象物とみなす 同じ第3節。ただし条文に列挙された規定を除く
施行令第9条の2 地下街と一体の指定地階を、地下街の部分とみなす 条文に列挙された4つの設備規定に限る

条文の「一の防火対象物とみなす」という同じ表現だけを見て、すべての消防法令へ共通する数え方だと考えないことが重要です。

施行令第2条|同一敷地・同一権原者

消防法施行令第2条は、同一敷地内に別表第一の防火対象物が二つ以上あり、それらの管理について権原を有する者が同一であるとき、一つの防火対象物とみなします。

ただし、条文は「消防法第8条第1項の規定の適用について」と限定しています。第8条第1項は、防火管理者を定め、消防計画、訓練、火気管理などの防火管理業務を行わせる規定です。

確認項目 内容
敷地 同一敷地内か
対象 施行令別表第一に掲げる防火対象物が二つ以上あるか
権原 管理について権原を有する者が同一か
効果 消防法第8条第1項の適用について一つとみなす

所有者の名義が同じかだけではなく、「管理について権原を有する者」を確認します。また、第2条を根拠に、敷地内の建物を消防用設備等の設置基準でも常に合算できるわけではありません。

施行令第8条|設備基準では区画部分を別とみなす

消防法施行令第8条は、防火対象物が所定の部分で区画されている場合、その区画された部分を、消防用設備等の技術基準を定める同令第2章第3節の適用について、それぞれ別の防火対象物とみなす規定です。

現行の第8条には、次の2類型があります。

類型 条文上の区画 注意点
第1号 開口部のない耐火構造の床または壁 開口部がないことと、建築基準法上の耐火構造であることを確認
第2号 床・壁などの建築物の部分、または防火戸のうち、総務省令で定める防火上有効な措置が講じられたもの 防火戸があるだけでは足りず、規則・告示の要件を満たす必要がある

第2号により、現在は「開口部が一つでもあれば令8条は絶対に使えない」「防火戸があれば必ず不成立」という一律の覚え方はできません。

消防法施行規則第5条の3は、第8条第2号の防火設備を防火戸とし、対象となる壁等の区分に応じた基準を定めています。さらに消防庁告示第7号は、渡り廊下、地下連絡路、洞道などについて具体的な条件を示しています。該当可否は、区画の用途、構造、開口部、防火戸、避難経路などを個別に照合します。

令8区画は自己判断しない
実際の建物で「別の防火対象物」と扱えるかは、図面と現況を基に、適用される規則・告示・運用を所轄消防機関と確認してください。

施行令第9条|複合用途を用途部分ごとにみなす

消防法施行令第9条は、別表第一(十六)項の複合用途防火対象物について、(十六)項から(二十)項までを除く各用途に該当する部分を、当該用途に供される一つの防火対象物とみなします。

たとえば、一つの複合用途建物に物品販売店舗の部分が複数あれば、令第9条が適用される設備規定では、それらを(四)項用途の一つの防火対象物として扱います。飲食店部分や事務所部分は、それぞれ対応する用途区分で判定します。

ここでいう用途は、店名やテナントの運営会社ではなく、施行令別表第一の用途区分で確認します。駐車場は(十三)項イ、事務所は(十五)項であり、同じ用途として扱うことはできません。

令第9条には適用除外がある

令第9条のかっこ書きは、次の設備に関する一部または全部の規定を、用途部分ごとに一つとみなす取扱いから除外しています。

  • スプリンクラー設備
  • 自動火災報知設備
  • ガス漏れ火災警報設備
  • 漏電火災警報器
  • 非常警報器具・非常警報設備
  • 避難器具
  • 誘導灯・誘導標識

「7設備は合算しない」とだけ覚えるのではなく、令第9条本文の用途部分ごとのみなしが適用されない規定がある、と理解します。実際の設置要否は、各設備条文の用途・階・面積・収容人員などの条件で判定します。

施行令第9条の2|地下街扱いは4規定に限定

消防法施行令第9条の2は、一定用途の防火対象物の地階で、地下街と一体を成すものとして消防長または消防署長が指定したものを、地下街の部分とみなす規定です。

対象になり得るのは、別表第一(一)項から(四)項、(五)項イ、(六)項、(九)項イまたは(十六)項イの防火対象物の地階です。地階が地下街と接続しているだけで自動的に適用されるのではなく、消防長または消防署長による指定が必要です。

みなしが適用される規定 設備
令第12条第1項第6号 スプリンクラー設備
令第21条第1項第3号の地下街に係る部分 自動火災報知設備
令第21条の2第1項第1号 ガス漏れ火災警報設備
令第24条第3項第1号の地下街に係る部分 非常警報設備

令第9条の2は、指定部分へ「地下街のすべての設備基準を丸ごと適用する」規定ではありません。上表の規定に限って地下街の部分とみなし、そのうえで各号の設置条件を確認します。

判定するときの順序

  1. 目的を確認:防火管理の判定か、消防用設備等の技術基準か。
  2. 用途を確認:施行令別表第一のどの項に該当するか。
  3. 同一敷地の複数棟:防火管理なら、令第2条の同一権原者条件を確認する。
  4. 区画:設備基準なら、令第8条第1号または第2号の条件を確認する。
  5. 複合用途:(十六)項なら、令第9条本文と適用除外を確認する。
  6. 地下街との一体性:対象地階なら、令第9条の2の指定と4規定を確認する。
  7. 個別設備:対象設備の条文・規則・告示へ進み、用途・階・面積などを判定する。

理解度チェック

以下は、条文の適用範囲を確認するためのオリジナル問題です。

問題1

施行令第2条が「一の防火対象物とみなす」対象として直接指定している規定はどれか。

  1. 消防法第8条第1項
  2. 消防法第17条第1項
  3. 施行令第8条
  4. 施行令第9条
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1.消防法第8条第1項。防火管理に関する規定の適用についての「みなし」です。

問題2

現行の施行令第8条について正しいものはどれか。

  1. 開口部が一つでもあれば常に適用できない
  2. 防火戸があれば条件なしで適用できる
  3. 開口部のない耐火構造の床・壁のほか、所定の措置を講じた壁等の類型がある
  4. 防火管理者の選任だけに適用される
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3。第1号と第2号があり、第2号は規則・告示の条件を満たす必要があります。

問題3

施行令第9条が対象とする基本的な防火対象物はどれか。

  1. 地下街だけ
  2. (十六)項の複合用途防火対象物
  3. 文化財だけ
  4. すべての同一敷地
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2.(十六)項の複合用途防火対象物。用途部分ごとのみなしと、かっこ書きの適用除外を確認します。

問題4

施行令第9条の2による指定を行う者は誰か。

  1. 建物所有者
  2. 管理会社
  3. 消防長または消防署長
  4. 設備メーカー
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3.消防長または消防署長です。

問題5

施行令第9条の2の効果として正しいものはどれか。

  1. 地下街の全規定を無条件で適用する
  2. 指定部分を4つの設備規定の適用について地下街部分とみなす
  3. 指定部分を地上階とみなす
  4. 消防用設備等を免除する
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2。スプリンクラー、自動火災報知、ガス漏れ火災警報、非常警報に関する列挙規定へ限定されています。

まとめ

  • 施行令第2条は、消防法第8条第1項の防火管理に限定した同一敷地・同一権原者のみなしです。
  • 施行令第8条は、設備基準について区画部分を別の防火対象物とみなし、第1号と第2号があります。
  • 施行令第9条は、複合用途の用途部分ごとのみなしですが、設備条文の適用除外があります。
  • 施行令第9条の2は、指定された地階を4つの設備規定に限って地下街部分とみなします。

実務では、「何個に数えるか」だけで結論を出さず、適用する制度・設備と条文の限定句まで確認してください。

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