甲種3類/乙種3類

ガス系消火設備の点検|機器点検・総合点検と試験用ガス

不活性ガス・ハロゲン化物・粉末消火設備の点検では、貯蔵容器だけでなく、起動装置、選択弁、警報装置、配管、噴射ヘッド、非常電源までを一つのシステムとして確認します。

点検は、外観や簡易な操作を中心とする機器点検を6か月に1回、設備を作動させて総合的な機能を確かめる総合点検を1年に1回行うのが基本です。総合点検の「放射」は、通常、消火剤そのものではなく窒素ガスや空気などの試験用ガスを用います。

この記事の要点
  • 機器点検は6か月に1回、総合点検は1年に1回
  • 機器点検では、消火剤量、容器弁、起動装置、選択弁、制御盤、配管などを個別に確認する
  • 総合点検では、非常電源へ切り替え、試験用ガスで警報・連動・通気・漏れを確認する
  • 選択弁は常時閉止、二酸化炭素設備の閉止弁は通常開放・点検時閉止であり、役割が異なる
  • 二酸化炭素設備の防護区画へ入るときは、閉止弁を閉止し、自動手動切替え装置を手動状態に維持する

機器点検と総合点検の違い

消防用設備等の点検は、消防法第17条の3の3と消防庁告示に基づいて行います。点検結果を消防長又は消防署長へ報告する周期は建物の用途などで異なりますが、設備そのものの点検周期とは別に考えます。

区分 周期 確認の考え方
機器点検 6か月に1回 適正な配置、損傷の有無、外観又は簡易な操作で判別できる機能を、機器ごとに確認
総合点検 1年に1回 設備の全部又は一部を作動・使用し、警報、連動、通気などの総合的な機能を確認

ガス系消火設備は、普段は作動しない機器が多く、誤放出時の危険もあります。したがって、「見た目に異常がない」だけでは足りません。一方で、確認のために実際の消火剤を放射するものでもありません。消防庁の設備別の点検基準と点検要領、設計図書、機器の取扱説明書に従って進めます。

点検周期と報告周期は別

機器点検6か月・総合点検1年は点検の周期です。消防署への点検結果報告は、特定防火対象物が1年に1回、その他が3年に1回という別の周期で扱います。

機器点検で確認する主な項目

不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の点検基準は別表第6から第8に分かれています。細部は設備方式によって異なりますが、共通して整理できる主な項目は次のとおりです。

系統 主な確認内容
貯蔵容器・貯蔵タンク 設置環境、固定、変形・損傷・著しい腐食、表示、消火剤量、指示圧力
容器弁・安全装置 外形、容器弁開放装置、所定期間内の安全性点検
起動系統 起動用ガス容器、操作管、手動式起動装置、自動式起動装置、制御盤
放出系統 選択弁、放出弁、配管、集合管、噴射ヘッド、放出表示灯
防護区画 開口部の自動閉鎖装置、換気装置との連動、警報装置、標識
電源・構造 常用電源、非常電源、配線、耐震措置、アンカーボルト、可とう管継手
移動式 格納箱、ホース、ホースリール、ノズル、ノズル開閉弁、表示灯・標識

判定は、設備の種類や方式に応じた点検票で行います。不活性ガス用の点検票を、そのまま粉末消火設備へ流用することはできません。

周囲温度をすべて「40℃以下」としない

貯蔵容器の設置環境は、設備方式ごとの点検要領で確認します。たとえば、高圧式の不活性ガス貯蔵容器は、周囲の温度・湿度等が著しく高くなく、直射日光や雨水等の影響を受けないことを確認します。一方、低圧式の貯蔵タンクや加圧式粉末の貯蔵タンクなどには、周囲温度40℃以下という判定項目があります。

したがって、「ガス系の容器室はすべて40℃以下」と一律に判定するのではなく、設備方式と該当する点検要領を照合します。

消火剤量の確認方法

消火剤量は、薬剤名だけでなく貯蔵方式と容器の構造に応じて確認します。「高圧式は重量、低圧式は液面、IG系は圧力」と三つに固定する覚え方は不正確です。

高圧式不活性ガスは3つの確認方法がある

消防庁の点検要領は、高圧式で常温貯蔵する不活性ガスの消火剤量について、次の方法を示しています。

  1. 秤による方法:総質量から容器・容器弁などの質量を差し引く
  2. 液面計による方法:測定した液面高さを専用換算表で消火剤量へ換算する
  3. 容器内圧力による方法:容器温度と圧力を測定し、温度換算表などで内容量を確認する

測定結果は設計図書と照合し、その差が充てん量の10%以内であることを判定します。これは「すべてのガス系設備は残量90%以上ならよい」という一律の規則ではありません。何との比較か、どの測定方法かまでセットで読みます。

低圧式二酸化炭素は液面と圧力を確認

低圧式二酸化炭素消火設備は、液面計で消火剤量を確認するほか、圧力警報装置、液面計、圧力計、自動冷凍機などを点検します。低温で貯蔵する方式なので、冷却機能や圧力管理も重要な点検項目です。

粉末は量だけでなく性状も確認

蓄圧式粉末消火設備では、容器を秤に載せ、測定値から容器弁・サイホン管・容器の質量を差し引いて消火剤量を求めます。規定量以上であることに加え、異物の混入、変質、固化などがないことを確認します。

点検要領には、手で握ってケーキングした粉末が床上50cmの高さから落としたときに砕けること、温度40℃以上又は湿度60%を超える場合はこの点検を見合わせることが示されています。固化の有無だけで「全量交換」と即断せず、判定結果に応じて原因を確認し、必要な整備を行います。

容器弁の25年・30年は「容器交換周期」ではない

容器弁と容器弁に設けられた安全装置には、外形確認とは別に安全性の点検があります。外形に異常が認められたものは速やかに実施し、その他は次の期間内に実施します。

設備・消火剤 安全性点検までの期間
二酸化炭素を消火剤とする不活性ガス消火設備 設置後又は前回の安全性点検後25年を経過するまで
その他の不活性ガス、ハロゲン化物、粉末消火設備 設置後又は前回の安全性点検後30年を経過するまで

この25年・30年は、容器弁等の安全性を点検する期限です。「二酸化炭素容器は25年で交換」「すべてのボンベは30年で更新」という意味ではありません。容器本体に適用される高圧ガス関係法令の容器検査・容器再検査とも区別します。

安全性点検では、容器本体から取り外した容器弁について、外観、構造・形状・寸法、耐圧性能、気密性能、表示などを確認します。安全装置では、これらに加えて所定の作動性能を確認します。

選択弁と閉止弁を区別する

名称が似ていますが、選択弁と閉止弁では役割も通常の状態も異なります。

役割 通常の状態
選択弁 複数の放射区画がある設備で、消火剤を放射する区画を選択する 常時閉止。起動時に電気式・ガス圧式などの開放装置で開放
閉止弁 二酸化炭素の誤放出を防ぐため、貯蔵容器と選択弁の間の管などを遮断する 通常は開放。点検・工事などで防護区画へ人が入るときに閉止

機器点検では、選択弁の変形・損傷、接続部の緩み、開放装置の作動などを確認します。点検終了後にバルブ類を操作した場合は、設計図書と表示を照合して元の開閉状態へ確実に復元します。

総合点検は試験用ガスで連動と通気を確認する

全域放出方式と局所放出方式の総合点検は、非常電源に切り替えた状態で起動させます。不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の3設備に共通する確認の骨格は次のとおりです。

方式 総合点検の主な確認事項
全域放出方式 警報装置、遅延装置、開口部の自動閉鎖と換気停止、起動装置・選択弁、試験用ガスの放射、配管の漏れ、放出表示灯
局所放出方式 警報装置、起動装置・選択弁、試験用ガスの放射、配管の漏れ
移動式 手動式起動操作部を操作し、ノズル開閉弁から試験用ガスが放射されること、ホース・接続部に漏れがないこと

ここで重要なのは、総合点検の基準が「試験用ガスが放射されること」と定めている点です。不活性ガス・ハロゲン化物では窒素又は空気を用い、粉末では方式に応じて加圧用ガス又はクリーニング用ガスを用います。実際の消火剤を防護区画へ放射して確認する試験ではありません。

「固定の連動順序」だけで判定しない

全域放出方式では、警報、遅延、開口部閉鎖、換気停止、起動、選択弁開放、放出表示などが連動します。ただし、起動方式、消火剤、制御盤、感知器回路、設備構成により確認手順は異なります。

「感知器作動→20秒待つ→選択弁→容器弁」という一つの暗記シーケンスを、すべての設備に当てはめるのは危険です。消防庁の点検要領、設計図書、メーカーの取扱要領に基づいて、対象設備の信号と作動を確認します。

試験前の切離しと試験後の復元が重要

点検要領では、制御盤の電源を一時的に遮断し、実消火剤の貯蔵容器に取り付けられた容器弁開放装置や操作管を外して密栓するなど、誤放出を防ぐための準備を定めています。使用する試験用ガスの量や代替容器の準備も、設備方式ごとに規定されています。

点検終了後は、使用した試験用ガス容器の再充てん、外した機器や操作管の接続、バルブの開閉位置、制御盤の状態まで確実に復元します。試験が正常でも、復元漏れがあれば設備は火災時に機能しません。

実務上の注意

総合点検は、誤放出や酸欠・中毒の危険を伴う作業です。この記事だけを手順書として操作せず、有資格者が現場の設計図書、点検要領、取扱説明書、安全管理体制を確認して実施してください。

二酸化炭素消火設備の点検・工事時の安全対策

二酸化炭素は人体に影響を与え、短時間で防護区画に充満します。消防庁は、工事、点検、整備などで防護区画内に人が立ち入る場合、次の状態を維持するよう示しています。

  1. 閉止弁を閉止状態にする
  2. 自動手動切替え装置を手動状態にする
  3. 消火剤が放射された場合は、十分に排出されるまで防護区画へ人が立ち入らない
  4. 制御盤付近に、構造・機能、工事時の措置、点検要領などを定めた図書を備える

「2023年から退避時間が一律30秒になった」という基準ではありません。令和4年9月の政省令等の改正では、既存設備を含む閉止弁の設置などが強化され、令和5年4月1日から段階的に施行されました。消防庁の安全対策ページと現行の消防法施行規則第19条の2で確認します。

閉止弁を閉めただけで作業開始とせず、手動状態、表示・信号、立入管理、作業員間の連絡、復元時の相互確認まで含めて管理します。点検後は、人が防護区画から退出したことを確認してから、閉止弁を通常の開放状態へ戻します。

設備別に追加で見るポイント

不活性ガス消火設備

  • 高圧式と低圧式で、消火剤量の測定方法や貯蔵部の点検項目が異なる
  • 低圧式では自動冷凍機、圧力警報装置、液面計なども確認する
  • 二酸化炭素を放射する全域放出方式では、閉止弁と維持管理上の安全措置を確認する
  • 窒素・IG-55・IG-541では、容器温度と圧力の関係を用いる確認方法がある

不活性ガスの種類、放出方式、設置できる場所については「不活性ガス消火設備|CO₂・窒素・IG-55・IG-541の違い」も参照してください。

ハロゲン化物消火設備

  • 消火剤の種類と貯蔵方式に応じて、秤、液面計、容器内圧力などで量を確認する
  • 指示圧力計があるものは、変形・損傷と指示値を確認する
  • 容器弁、安全装置、容器弁開放装置、起動用ガス容器を確認する
  • 総合点検は試験用ガスで、警報・連動・通気・漏れを確認する

粉末消火設備

  • 蓄圧式と加圧式で、貯蔵部と起動・放出機構が異なる
  • 加圧式では、加圧用ガス容器、圧力調整器、定圧作動装置、放出弁を確認する
  • 蓄圧式では消火剤量と粉末の性状を確認する
  • 総合点検では加圧用ガス又はクリーニング用ガスを用い、試験後の代替容器・再充てん・復元まで確認する

粉末の薬剤4種と定圧作動装置については「粉末消火設備|4種の薬剤・放出方式・定圧作動装置を整理」で整理しています。

点検記録に残す内容

点検結果は、設備別の点検票へ記録します。異常の有無だけでなく、後から測定根拠と復元状態を追えるようにすることが重要です。

  • 容器番号、充てん量、測定値、測定方法、測定時の温度
  • 指示圧力、液面、設計図書との照合結果
  • 容器弁・安全装置の設置年又は前回安全性点検年
  • 起動装置、選択弁、警報、閉鎖装置、換気停止、表示灯の作動結果
  • 使用した試験用ガスと使用量、対象とした放射区画
  • 配管・接続部の漏れの有無
  • 不良内容、整備内容、交換部品、再点検結果
  • 試験後の容器、操作管、バルブ、電源、制御盤の復元確認

複数の放射区画がある設備では、点検のたびに同じ区画だけを選ばず、順次区画を変えて確認することも点検要領に示されています。

甲種3類・乙種3類で混同しやすいポイント

誤りやすい覚え方 正しい整理
選択弁は通常開いている 選択弁は常時閉止し、対象区画へ放射するときに開放する
閉止弁は通常閉じている 二酸化炭素設備の閉止弁は通常開放し、点検・工事時に閉止する
総合点検では実際の消火剤を放射する 試験用ガスを放射し、作動、通気、漏れを確認する
高圧式は必ず秤で測る 高圧式不活性ガスには、秤、液面計、容器内圧力による方法がある
25年又は30年で容器を交換する 25年・30年は容器弁等の安全性点検までの期間
連動はすべて20秒の固定順序 点検基準の確認項目は共通しても、起動方式と設備構成に応じて手順を確認する

理解度チェック

次の問題は、現行基準の理解確認のために当サイトが作成したものです。公式試験問題の転載ではありません。

問題1:ガス系消火設備の総合点検は、原則として実消火剤を放射して行う。○か×か。

答え:×

窒素や空気、加圧用ガス、クリーニング用ガスなどの試験用ガスを用い、作動、通気、漏れを確認します。

問題2:選択弁は、通常時に開放しておく。○か×か。

答え:×

選択弁は常時閉止状態で、対象となる放射区画へ消火剤を導くときに開放します。

問題3:高圧式不活性ガスの消火剤量は、秤による方法だけで確認する。○か×か。

答え:×

秤のほか、液面計又は容器内圧力と温度換算表による方法があります。

問題4:二酸化炭素消火設備の防護区画へ点検のため立ち入るときは、閉止弁を閉止し、自動手動切替え装置を手動状態に維持する。○か×か。

答え:○

二酸化炭素の誤放出を防ぐための重要な維持基準です。

問題5:二酸化炭素設備の25年という期間は、貯蔵容器そのものの一律交換期限である。○か×か。

答え:×

点検基準が定める25年は、二酸化炭素設備の容器弁・安全装置の安全性点検までの期間です。

まとめ

  • 機器点検は6か月に1回、総合点検は1年に1回行う
  • 消火剤量は、貯蔵方式と設備構造に応じた方法で測定し、設計図書と照合する
  • 粉末は規定量に加え、異物、変質、固化などの性状も確認する
  • 容器弁等の25年・30年は、安全性点検までの期間であり、容器の一律交換周期ではない
  • 選択弁は常時閉止、二酸化炭素設備の閉止弁は通常開放・点検時閉止
  • 総合点検は非常電源へ切り替え、試験用ガスで警報、連動、通気、漏れを確認する
  • 二酸化炭素設備へ人が立ち入る場合は、閉止弁の閉止と手動状態の維持が必要

設置義務と設備選択から確認したい場合は「ガス系消火設備の設置義務|施行令13条の対象と選べる設備」も参照してください。

参考資料

※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。図や画像だけで機器を判断せず、製品表示・取扱説明書・公式資料を確認してください。

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