結論:ガス漏れ火災警報設備の設置義務は「地下」と「温泉」がキーワード
ガス漏れ火災警報設備をどの建物に設置しなければならないかは、施行令第21条の2で定められています。自火報の設置義務が幅広い建物に及ぶのに対し、ガス漏れ火災警報設備は設置対象がかなり限定的です。
ポイントは2つ ―― 地下と温泉です。
なぜこの2つなのか? それは、可燃性ガスが溜まりやすく、爆発の危険が高い場所だからです。順番に見ていきましょう。
設置義務の対象 ― 施行令第21条の2
ガス漏れ火災警報設備の設置が義務づけられる防火対象物は、大きく3つのカテゴリに分かれます。
① 地下街
別表第一(16の2)項に掲げる防火対象物
面積に関係なくすべて設置が必要
② 特定用途の地階が1,000㎡以上
地下街以外の防火対象物で、特定用途に供される地階の床面積合計が1,000㎡以上のもの
→ 劇場・飲食店・百貨店・ホテル・病院などが地階にある大規模建物
③ 温泉採取施設がある建物
温泉の採取のための設備が設置されている防火対象物
→ 可燃性天然ガス(メタン等)の噴出リスクがある
①と②に共通するのは「地下」です。地上の建物には、原則としてガス漏れ火災警報設備の設置義務はありません。
なぜ「地下」に限定されるのか ― ガスの滞留リスク
ガスが漏れたとき、地上の建物では窓やドアから自然に換気され、ガスが外に逃げやすい構造です。しかし地下空間では事情が大きく異なります。
- 換気が悪い ― 窓がなく、自然換気がほとんどできない
- ガスが滞留する ― 漏れたガスが天井(都市ガス)や床(LPガス)に溜まり続ける
- 爆発の危険が高い ― 密閉空間でガス濃度が上がりやすく、小さな火花でも引火する
- 避難が困難 ― 地下では避難経路が限られ、ガスが充満すると逃げ場がない
地下街の飲食店街を想像してください。多数の店舗でガスコンロが使われており、もしガスが漏れても地上のように風で流れていきません。そのままガスが溜まれば大規模な爆発事故につながりかねない ―― だから地下にはガス漏れ検知の設備が必要なのです。
地下街 ― 面積に関係なく設置が必要
地下街((16の2)項)は、面積の大小に関係なくガス漏れ火災警報設備の設置が義務づけられています。
地下街は、地下に商店街や飲食店が密集した施設です。多くの店舗でガスを使い、不特定多数の人が行き来する ―― ガス漏れリスクと人的被害のリスクが最も高い空間です。
自火報の設置義務でも地下街は「面積不問」でしたが、ガス漏れ火災警報設備でも同様に無条件で設置が必要です。
特定用途の地階が1,000㎡以上の建物
地下街以外の建物でも、地階に特定用途の部分がある大規模な建物には設置義務があります。
ここでいう「特定用途」とは、特定防火対象物に該当する用途のことです。具体的には次のような用途です。
- 劇場・映画館・集会場((1)項)
- キャバレー・遊技場・カラオケ((2)項)
- 料理店・飲食店((3)項)
- 百貨店・マーケット((4)項)
- 旅館・ホテル((5)項イ)
- 病院・福祉施設((6)項)
- 蒸気浴場(サウナ等)((9)項イ)
これらの用途が地階にあり、その床面積の合計が1,000㎡以上の場合に設置義務が発生します。
なぜ1,000㎡なのか?
地下空間でも、面積が小さければ換気設備で対応でき、ガスが危険濃度に達する可能性は低くなります。しかし1,000㎡(テニスコート約4面分)を超えると空間が大きく、ガスの拡散範囲も広がるため、検知設備による監視が不可欠になります。
注意:地上階は対象外
同じ特定用途の建物でも、地上階だけの建物にはガス漏れ火災警報設備の設置義務はありません。あくまで地階に特定用途がある場合だけです。
温泉採取施設 ― 天然ガスの噴出リスク
温泉の採取のための設備が設置されている防火対象物にも、ガス漏れ火災警報設備の設置が義務づけられています。
なぜ温泉施設が対象なのか?
温泉を掘削する際、地中から可燃性の天然ガス(メタン・硫化水素など)が一緒に噴出することがあります。これは都市ガスやLPガスのように管理された供給ではなく、自然に湧き出すガスなので、いつどれだけ出るか予測が難しいのが特徴です。
2007年には東京都渋谷区の温泉施設で、天然ガスが溜まって爆発事故が発生しました。この事故をきっかけに温泉採取施設への設置義務が強化されました。
自火報との設置基準の比較
自火報の設置義務とガス漏れ火災警報設備の設置義務は、対象の範囲が大きく異なります。
| 比較項目 | 自火報 | ガス漏れ火災警報 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 施行令第21条 | 施行令第21条の2 |
| 対象の広さ | 非常に広い | 限定的 |
| 検知対象 | 熱・煙・炎 | 可燃性ガス |
| 地上階 | 多くの建物で必要 | 原則不要 |
| 地下街 | 面積不問で必要 | 面積不問で必要 |
自火報はほぼすべての建物に関わる設備ですが、ガス漏れ火災警報設備は「地下」と「温泉」に限られるのが大きな違いです。試験では「次のうちガス漏れ火災警報設備の設置義務があるものはどれか」という問題で、この違いが問われます。
検知器の設置位置 ― おさらい
設置義務のある建物が決まったら、検知器の設置位置を確認します。ここでは試験でよく出る数値だけ再確認しておきましょう。
→ 天井面の下方0.3m以内、燃焼機器から水平距離8m以内LPガス(空気より重い)
→ 床面の上方0.3m以内、燃焼機器から水平距離4m以内
検知区域:600㎡以下、2以上の階にわたらない
詳しくはガス漏れ火災警報設備の構造と機能の記事を参照してください。
まとめ問題
理解度をチェックしましょう。
【第1問】
ガス漏れ火災警報設備の設置義務に関する記述として、正しいものはどれか。
(1)すべての特定防火対象物に設置が必要である
(2)地下街には面積に関係なく設置が必要である
(3)延べ面積500㎡以上の建物に設置が必要である
(4)地上5階建て以上の建物に設置が必要である
【第2問】
ガス漏れ火災警報設備の設置が義務づけられている理由として、最も適切なものはどれか。
(1)地上の建物では火災の検知が難しいから
(2)地下空間はガスが滞留しやすく、爆発の危険が高いから
(3)すべての建物でガス器具が使用されているから
(4)自火報では可燃性ガスを検知できないから
【第3問】
次の建物のうち、ガス漏れ火災警報設備の設置義務があるものはどれか。
(1)延べ面積2,000㎡の地上3階建てオフィスビル
(2)延べ面積500㎡の地上2階建て飲食店
(3)地階の飲食店部分が1,200㎡ある地上10階建てビル
(4)延べ面積3,000㎡の地上5階建て百貨店(地階なし)
【第4問】
温泉の採取のための設備がある防火対象物にガス漏れ火災警報設備の設置が義務づけられている理由として、正しいものはどれか。
(1)温泉施設は不特定多数が利用するから
(2)温泉水が配管から漏れると火災の原因になるから
(3)温泉掘削時に可燃性の天然ガスが噴出する危険があるから
(4)温泉施設は地下に建設されることが多いから
【第5問】
ガス漏れ火災警報設備と自火報の設置義務に関する記述として、誤っているものはどれか。
(1)自火報の設置義務は多くの用途・面積に及ぶが、ガス漏れ火災警報設備は限定的である
(2)地下街には自火報もガス漏れ火災警報設備も両方の設置が必要である
(3)地上階のみの建物でも、特定防火対象物であればガス漏れ火災警報設備の設置が必要である
(4)ガス漏れ火災警報設備の設置義務は、主に地下空間のガス滞留リスクに基づいている