結論:消防機関へ通報する火災報知設備は、119番に自動で通報する設備
結論から言います。
消防機関へ通報する火災報知設備とは、火災が発生したときに119番(消防機関)に自動的に通報する設備です。
自火報は「建物の中の人」に火災を知らせる設備ですが、こちらは「建物の外の消防機関」に火災を知らせる設備です。ボタンひとつで119番に電話がかかり、あらかじめ録音された音声メッセージ(建物名・住所など)が自動再生されます。
甲種4類の試験では、火災通報装置の構造と通報の流れ、自火報との連動、手動起動と自動起動の違いが出題されます。
なぜ自動通報が必要なのか?
「火事のときは自分で119番に電話すればいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、実際の火災現場を想像してみてください。
- パニックでうまく話せない
- 煙で視界が悪く住所が思い出せない
- そもそも電話する余裕がない(避難が最優先)
- 深夜の火災ですぐに人が対応できない
こうした状況でも、ボタンを1つ押すだけで正確な情報が消防機関に伝わる――これがこの設備の存在意義です。
火災通報装置の構成
設備全体は、大きく3つの要素で構成されています。
火災通報装置の本体
火災通報装置は、次の機能を持つ装置です。
→ 起動すると自動的に119番をダイヤルする
② 蓄積音声送出機能
→ あらかじめ録音されたメッセージを自動再生する
→ 内容:建物名・所在地・電話番号・「火災が発生しました」
③ 通話機能
→ 音声メッセージ送出後、送受話器で消防機関と直接通話できる
④ 逆信(折り返し着信)対応
→ 消防機関から折り返し電話がかかってきた場合に自動応答する
蓄積音声とは?
火災通報装置には、あらかじめ建物の情報を録音しておきます。通報が起動されると、この録音メッセージが消防機関に向けて自動的に再生されます。
たとえば、こんなメッセージです。
「こちらは火災通報装置です。○○ビル、所在地は○○市○○町1丁目2番3号、電話番号は○○-○○○○-○○○○です。火災が発生しました。」
パニック状態でも、正確な建物名・住所・電話番号が消防機関に伝わるのが最大のメリットです。
起動装置(押しボタン)
起動装置は、火災通報装置を作動させるための赤い押しボタンです。
- 通常、火災通報装置の本体に設けられている
- ボタンを押すと、自動ダイヤル→音声メッセージ送出が始まる
- 保護カバー(持ち上げ式)が付いており、誤操作を防止している
自火報の発信機は「建物内の受信機に火災信号を送る」ボタンですが、こちらは「消防機関の119番に電話をかける」ボタンという違いがあります。
手動起動と自動起動(自火報連動)
火災通報装置の起動方法には2つの方式があります。この違いは試験で必ず出ます。
自火報連動のポイント:
自火報と連動させた場合、感知器が火災を感知すると人の操作なしに自動で119番通報が行われます。深夜や休日で無人の建物でも、火災が発生すれば自動的に消防隊が出動できるのです。
ただし、自動起動できる場合でも手動起動の機能は必ず残しておく必要があります。感知器が作動する前に人が火災を発見した場合や、装置の自動起動が何らかの理由で動作しなかった場合のバックアップとして重要です。
自火報連動時の注意点
自火報と連動させる場合、誤報への対策が課題になります。感知器が誤作動するたびに119番通報されてしまうと、消防機関の業務に支障をきたします。
そのため、連動する場合は受信機の蓄積機能(信号を一定時間保持して本当の火災か確認する機能)を活用するなど、誤報による不要な通報を減らす工夫がされています。
通報の流れ ― ボタンを押してから消防隊出動まで
→ 火災通報装置の起動ボタンを押す
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② 自動ダイヤル
→ 装置が自動的に119番をダイヤルする
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③ 蓄積音声の送出
→ 「○○ビル、○○町1-2-3、火災が発生しました」
→ 録音メッセージが自動再生される
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④ 通話に切り替え
→ 送受話器を取ると消防機関と直接通話できる
→ 「5階から煙が出ています」等の詳細情報を伝達
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⑤ 消防隊出動
→ 消防機関が所在地を把握 → 消防車が出動!
音声メッセージだけで終わりではないという点が重要です。メッセージ送出後は通話モードに切り替わり、通報者が送受話器を取れば消防機関と直接会話できます。
「自動メッセージだけでは伝わらない詳細」を補足できるため、消防隊はより正確な情報をもとに出動できるのです。
電話回線との関係
火災通報装置は、消防機関への通報に一般加入電話回線を使用します。専用の通報回線が必要なわけではありません。
通報中は一般電話が使えなくなる?
火災通報装置が起動すると、接続された電話回線は119番通報に占有されます。つまり、通報中はその回線で一般の電話をかけたり受けたりはできません。
ただし、消防機関からの逆信(折り返し電話)には自動応答する機能があります。消防機関が追加情報を確認したいときに、確実に連絡がつくようになっています。
停電時の対応
火災通報装置には予備電源(蓄電池)が内蔵されています。停電が発生しても、蓄電池の電力で通報機能を維持できます。
火災で停電するケースは珍しくありません。停電したから通報できないのでは、設備の意味がなくなってしまいます。
自火報・発信機との違いを整理
「発信機」「火災通報装置」「自火報」はいずれも「火災を知らせる」設備ですが、誰に知らせるかが全く違います。混同しやすいので整理しましょう。
| 設備 | 誰に知らせる? | どうやって? |
|---|---|---|
| 自火報(感知器) | 受信機(防災センター) | 火災信号を自動送信 |
| 発信機 | 受信機(防災センター) | 人が手動でボタンを押す |
| 地区音響装置 | 建物内の在館者全員 | ベル・サイレン・音声 |
| 火災通報装置 | 消防機関(119番) | 自動ダイヤル+音声 |
つまり、自火報が「建物の中」を守る設備なら、火災通報装置は「建物の外(消防機関)」との通信を担う設備です。建物内の通報と建物外への通報、両方が揃って初めて万全な体制になるのです。
全体のまとめ
構成:火災通報装置(本体)+起動装置(押しボタン)+電話回線
蓄積音声:建物名・所在地・電話番号を録音→通報時に自動再生
手動起動:人がボタンを押して通報を開始する
自動起動:自火報と連動して感知器作動で自動通報される
通話機能:音声メッセージ後、送受話器で消防機関と直接通話可能
逆信対応:消防機関からの折り返し電話に自動応答
電話回線:一般加入電話回線を使用(専用回線は不要)
予備電源:蓄電池内蔵で停電時も通報可能
自動起動でも手動起動機能を併設すること
まとめ問題
問題1:消防機関へ通報する火災報知設備に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)火災通報装置は、建物内の人に火災を知らせるための設備である
(2)火災通報装置は、119番に自動ダイヤルし、蓄積音声で建物名・所在地等を通報する
(3)火災通報装置は、消防機関専用の通報回線が必要である
(4)火災通報装置は、音声メッセージの送出のみで通話機能はない
問題2:火災通報装置の起動方式に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)自火報と連動する自動起動式の場合、手動起動機能は不要である
(2)手動起動式は、起動ボタンを押すと自動的に119番にダイヤルされる
(3)自火報と連動する場合、発信機のボタンを押すと直接119番に通報される
(4)手動起動式は、通報者が自分で119番をダイヤルしなければならない
問題3:火災通報装置の蓄積音声に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)あらかじめ建物名や所在地を録音しておく
(2)通報時にこの録音メッセージが自動的に再生される
(3)蓄積音声の内容は通報のたびに通報者が録音し直す必要がある
(4)パニック状態でも正確な建物情報が消防機関に伝わる
問題4:火災通報装置の電源と通信に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)停電時には通報できなくなるため、自家発電設備が必要である
(2)予備電源(蓄電池)が内蔵されており、停電時にも通報できる
(3)通報中でも一般電話として同時に使用できる
(4)消防機関からの折り返し電話には対応できない
問題5(応用):次の記述のうち、消防機関へ通報する火災報知設備と自動火災報知設備の関係として最も適切なものはどれか。
(1)火災通報装置は自火報の一部であり、自火報を設置すれば火災通報装置は不要である
(2)火災通報装置と自火報は全く別の設備であり、連動させることはできない
(3)自火報は建物内の人への通報、火災通報装置は消防機関への通報を担い、連動させることで人がいなくても自動通報が可能になる
(4)自火報を連動させた火災通報装置は、手動起動機能を省略できる