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補償式・熱アナログ式感知器|差動式+定温式の二刀流と温度データ送信をわかりやすく解説

結論:補償式は「差動式+定温式」の二刀流、熱アナログ式は「温度を数値で報告」する感知器

結論から言います。

補償式感知器は、差動式定温式の両方の機能を1つの感知器に組み合わせたものです。急激な温度上昇にも、緩やかな温度上昇にも対応できる――差動式と定温式それぞれの弱点を互いに補う(=補償する)から「補償式」と呼ばれます。

熱アナログ式感知器は、周囲の温度を連続的に数値データとして受信機に送る感知器です。従来の感知器が「火災かどうか」のON/OFF信号しか出さなかったのに対し、熱アナログ式は「今○℃です」と温度そのものを報告します。

補償式感知器
差動式+定温式の二刀流
急激な温度上昇 → 差動式で検出
緩慢な温度上昇 → 定温式で検出
スポット型のみ
熱アナログ式感知器
温度を数値データで送る
受信機側で火災判断
火災の前兆を早期検出
R型受信機と組み合わせる

補償式感知器とは?

差動式感知器の記事で「差動式の弱点」として2つ挙げました。

差動式の弱点(おさらい)
弱点1:緩慢な温度上昇に弱い
→ ゆっくり温度が上がる火災ではリーク孔から空気が逃げてしまい、作動しない

弱点2:温度変動が大きい場所に不向き
→ 厨房やボイラー室では非火災報(誤報)の原因になる

弱点2は定温式感知器で対応できます。では弱点1はどうするか? ――ここで登場するのが補償式感知器です。

補償式の動作原理

補償式感知器の内部には、差動式の機構定温式の機構が両方入っています。

補償式感知器の構造
差動式の部分:
 空気室+ダイヤフラム+リーク孔(急激な温度上昇を検出)

定温式の部分:
 バイメタル(一定の温度に達したことを検出)

どちらかが作動すれば火災信号を発信

2つのシナリオで理解する

シナリオ1:急激な温度上昇
火が一気に燃え広がるケース

差動式の機能が反応
空気室の空気が急膨張
→ ダイヤフラムが接点を押す
火災信号!

シナリオ2:緩慢な温度上昇
くすぶり火災などのケース

定温式の機能が反応
ゆっくりでも公称作動温度に到達
→ バイメタルが変形
火災信号!

差動式だけだと、シナリオ2のようにゆっくり温度が上がる火災を見逃す可能性がありました。補償式なら、差動式が反応しなくても定温式が「一定温度に達した」ことで確実にキャッチします。

だから「補償」式なのです。 差動式の弱点を定温式が補い、定温式の弱点(検知が遅い)を差動式が補う。互いの弱点を補償し合う関係です。

補償式の基本スペック

項目 内容
形式 スポット型のみ
取付面の高さ 8m未満(1種)/ 15m未満(特種)
公称作動温度 定温式部分の温度設定あり
種別 特種・1種

試験のポイント

補償式は「差動式+定温式」の機能を兼ね備えた感知器。形式はスポット型のみ。分布型は存在しません。

熱アナログ式感知器とは?

従来の熱感知器(差動式・定温式・補償式)は、火災か否かの「ON/OFF」信号しか出しません。感知器が作動したら「火災です」という1ビットの情報だけを受信機に送ります。

熱アナログ式はまったく違います。周囲の温度を連続的な数値データ(アナログ値)として受信機に送り続けます。

従来の感知器
送る情報:ON / OFF
「火災です」or「異常なし」

火災判断:感知器側が判断
受信機は信号を受け取るだけ

熱アナログ式
送る情報:温度の数値
「今35℃です」「今50℃です」

火災判断:受信機側が判断
温度データを分析して判定

なぜ温度の数値を送るのか?

最大のメリットは「火災の前兆」を早期に検出できることです。

従来の感知器は、設定温度に達するか急激な温度上昇が起きるまで何も知らせてくれません。しかし熱アナログ式なら、「普段25℃の場所が35℃に上がってきている」という異常の兆候を受信機側でキャッチできます。

熱アナログ式のメリット
① 火災の前兆を早期検出
 温度が徐々に上昇している段階で「注意」を出せる
② 受信機側で柔軟に判断
 場所ごとに異なる閾値を設定できる
③ 非火災報の低減
 温度の推移を分析するため、一時的な変動と火災を区別しやすい

R型受信機との組み合わせ

熱アナログ式は温度データを受信機に送るため、データを処理できるR型受信機(またはアナログ式受信機)と組み合わせて使います。

受信機の記事で学んだとおり、R型受信機は固有のアドレス信号を使って各感知器を個別に識別できます。熱アナログ式感知器から送られてくる温度データを、受信機側のソフトウェアで分析し、火災かどうかを判断します。

熱アナログ式の信号の流れ
① 感知器が周囲の温度を測定
 ▼
② 温度データをR型受信機に送信
 ▼
③ 受信機がデータを分析
 → 設定した閾値と比較して火災判断
 ▼
④ 火災と判断 → 警報を発する

熱アナログ式の基本スペック

項目 内容
検出方式 温度をアナログ値(数値データ)で送信
火災判断 受信機側で判断(感知器側ではない)
対応受信機 R型受信機(アナログ式)
取付面の高さ 8m未満
形式 スポット型

試験の頻出ポイント

熱アナログ式で火災を判断するのは感知器ではなく受信機です。従来の感知器は「感知器自身」が火災と判断しますが、アナログ式は温度データを送るだけ。判断は受信機側のソフトウェアが行います。ここは引っかけ問題の定番です!

熱感知器の全体像 ― 5種類を整理

ここまでの記事で学んだ熱感知器を一気に整理しましょう。

熱感知器 5種類の比較
種類 動作原理 特徴
差動式 温度の急上昇で作動 温度安定場所向け
定温式 一定温度で作動 厨房等の高温場所向け
補償式 差動式+定温式 両方の弱点を補う
熱アナログ式 温度を数値で送信 受信機側で判断
熱複合式 差動+定温の AND 両方満たして作動

補償式と熱複合式の違い ― ORとAND

補償式と似た名前で熱複合式という感知器もあります。混同しやすいので整理しておきましょう。

補償式(OR型)
差動式または定温式
どちらかが作動すれば火災信号

目的:検知漏れを防ぐ
(感度を上げる方向)

熱複合式(AND型)
差動式かつ定温式
両方が作動して初めて火災信号

目的:誤報を防ぐ
(確実性を上げる方向)

補償式は「どちらか一方でも反応すれば火災信号」、熱複合式は「両方とも反応して初めて火災信号」です。

補償式は感度重視(取りこぼしたくない)、熱複合式は確実性重視(誤報を出したくない)という設計思想の違いがあります。

試験のポイント

補償式は差動式と定温式のOR(どちらか)で作動。熱複合式はAND(両方)で作動。この違いは試験で問われます。

全体のまとめ

補償式・熱アナログ式 チェックリスト
【補償式】
差動式+定温式の両機能を持つ感知器
どちらかが作動すれば火災信号(OR型)
スポット型のみ。分布型は存在しない
緩慢な温度上昇にも対応できるのが強み

【熱アナログ式】
温度を連続的な数値データとして受信機に送る
火災判断は受信機側(感知器側ではない)
R型受信機と組み合わせて使用
火災の前兆を早期に検出できるのが強み

【熱複合式との違い】
補償式 = OR(どちらかで作動)= 感度重視
熱複合式 = AND(両方で作動)= 確実性重視

まとめ問題

問題1:補償式スポット型感知器に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)差動式と煙感知器の機能を組み合わせた感知器である
(2)差動式と定温式の機能を組み合わせた感知器である
(3)定温式と炎感知器の機能を組み合わせた感知器である
(4)2種類の煙感知方式を組み合わせた感知器である

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正解:(2)
補償式は差動式と定温式の両方の機能を1つにまとめた感知器です。差動式の「急激な温度上昇の検出」と定温式の「一定温度での作動」を兼ね備えることで、互いの弱点を補償します。

問題2:補償式感知器の動作に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)差動式と定温式の両方が作動した場合にのみ火災信号を発する
(2)差動式または定温式のいずれかが作動すれば火災信号を発する
(3)差動式が先に作動し、一定時間後に定温式が作動して初めて火災信号を発する
(4)定温式のみが作動して火災信号を発し、差動式はバックアップ機能である

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正解:(2)
補償式はOR型で動作します。差動式と定温式のどちらか一方でも作動条件を満たせば火災信号を発します。(1)は熱複合式(AND型)の説明です。補償式は「検知漏れを防ぐ」ことが目的なので、片方だけでも反応すれば火災と判断します。

問題3:熱アナログ式感知器に関する記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)周囲の温度を連続的な数値データとして受信機に送る
(2)火災かどうかの判断は感知器自身が行う
(3)R型受信機と組み合わせて使用する
(4)火災の前兆を早期に検出できるメリットがある

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正解:(2)
熱アナログ式で火災の判断を行うのは感知器ではなく受信機です。感知器は温度データを送るだけで、受信機側のソフトウェアが閾値と比較して火災かどうかを判定します。従来の感知器(差動式・定温式)は感知器自身がON/OFF判断しますが、アナログ式は仕組みが異なります。

問題4:次の熱感知器のうち、緩慢な温度上昇による火災と急激な温度上昇による火災の両方に対応できるものはどれか。

(1)差動式スポット型感知器
(2)定温式スポット型感知器
(3)補償式スポット型感知器
(4)差動式分布型感知器

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正解:(3)
補償式は差動式(急激な温度上昇を検出)と定温式(公称作動温度に達したことを検出)の両方の機能を持つため、どちらのタイプの火災にも対応できます。(1)の差動式は緩慢な温度上昇に弱く、(2)の定温式は火災検知が遅れる弱点があります。(4)の差動式分布型も急激な温度上昇にのみ反応します。

問題5(応用):ある建物に感知器を設置する際、非火災報(誤報)を特に低減したい場所がある。この場所に設置する感知器として最も適切なものはどれか。

(1)差動式スポット型感知器(感度を上げて早期検出する)
(2)補償式スポット型感知器(差動式と定温式の両方で判断する)
(3)熱複合式スポット型感知器(差動式と定温式の両方が作動して初めて火災と判断する)
(4)定温式スポット型感知器(公称作動温度を低く設定する)

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正解:(3)
非火災報を低減したいなら熱複合式(AND型)が最適です。差動式と定温式の両方の条件を満たして初めて作動するため、一方だけの偶発的な反応では火災信号を出しません。(2)の補償式はOR型(どちらかで作動)なので誤報低減の効果は熱複合式より低いです。(4)で公称作動温度を低く設定すると、むしろ誤報が増えます。

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