結論:「いつ圧力がかかるか」ですべてが決まる
結論から言います。蓄圧式と加圧式の違いは、一言でいえば――「容器の中に、いつ圧力がかかっているか」です。
- 蓄圧式(ちくあつしき):製造時から容器内に窒素ガスが充填されていて、常に圧力がかかっている
- 加圧式(かあつしき):使用するまで容器内は無圧力。レバーを握った瞬間に内蔵ガスボンベが破封されて、一気に加圧される
たったこれだけの違いなのに、「放射の安定性」「途中停止できるか」「点検のしやすさ」「安全性」など、あらゆる性質の違いが生まれます。
乙種6類の試験では蓄圧式と加圧式の比較は超頻出テーマです。消火器の分類と全体像や粉末消火器の構造と機能でも基本的な違いに触れましたが、今回はさらに踏み込んで7つの観点で徹底比較します。
仕組みのおさらい
まずは両方式の仕組みを簡単におさらいしましょう。
蓄圧式は、容器の中に消火薬剤と加圧用ガス(窒素ガス)が一緒に入っています。常に圧力がかかっているので、指示圧力計(圧力ゲージ)が付いていて、外から圧力の状態を確認できます。レバーを握ると、もともと入っているガスの圧力で薬剤がそのまま噴射されます。
加圧式は、容器内に加圧用ガス容器(CO₂ボンベなど)が別に内蔵されています。使用前の容器内は無圧力です。レバーを握るとカッター(刃)がガスボンベに穴を開け(これを「破封(はふう)」といいます)、ガスが一気に容器内に充満して薬剤を押し出します。
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7つの違いを比較表で整理
蓄圧式と加圧式の違いを、7つの観点で一気に整理します。
| 比較項目 | 蓄圧式 | 加圧式 |
|---|---|---|
| 容器内の圧力 | 常時加圧 | 使用時のみ |
| 指示圧力計 | あり | なし |
| 操作→放射 | 即座に放射 | タイムラグあり |
| 放射圧力 | 安定 | 変動しやすい |
| 途中停止 | 容易 | 困難 |
| 腐食の発見 | ゲージで可能 | 分解が必要 |
| 現在の主流 | 主流 | 減少傾向 |
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
重要ポイントの深掘り
指示圧力計(圧力ゲージ)の有無 ― 最頻出!
蓄圧式消火器には指示圧力計(圧力ゲージ)が付いています。加圧式には付いていません。
なぜか? 理屈はシンプルです。
蓄圧式は常に容器内に圧力がかかっている。圧力が正常かどうかを確認する手段が必要ですよね。だから圧力ゲージが付いています。針が緑色の範囲内にあれば正常、外れていれば異常――と一目でわかります。
一方、加圧式は使用前に容器内が無圧力。圧力がかかっていないのにゲージを付けても、針はゼロを指すだけ。付ける意味がないのです。
試験のポイント
操作から放射までの流れ
操作手順を並べてみると、違いがはっきりします。
蓄圧式の放射までの流れ:
- 安全栓を抜く
- ホースを火元に向ける
- レバーを握る → バルブが開く → 即座に放射
加圧式の放射までの流れ:
- 安全栓を抜く
- ホースを火元に向ける
- レバーを握る → カッターがガスボンベを破封 → ガスが容器内に充満 → やや遅れて放射
加圧式ではレバー操作と放射の間に「ボンベ破封 → ガス充満」のワンステップが入ります。蓄圧式に比べてわずかなタイムラグがあるということですね。
途中停止
蓄圧式:レバーを離すとバルブが閉じて放射が止まります。再度握れば再放射。薬剤を節約しながら断続的に使えます。
加圧式:一度レバーを握ってガスボンベが破封されると、ボンベからのガス放出は止められません。容器内の圧力が残っている限り薬剤は出続けようとするため、途中停止が困難です。
火災の現場では「ちょっと止めて狙いを定め直す」「残りの薬剤で別の火点を消す」という場面があります。蓄圧式のほうが柔軟に対応できるわけです。
放射圧力の安定性
蓄圧式:容器内にあらかじめ均一に圧力がかかっているため、放射圧力が比較的安定しています。最初から最後まで安定した威力で放射できます。
加圧式:ガスボンベ破封の直後に容器内圧力が急上昇し、その後徐々に低下します。つまり放射圧力にムラが出やすい。放射の初期は勢いが強く、後半になるほど弱くなる傾向があります。
なぜ蓄圧式が主流になったのか?
現在、消火器の主流は圧倒的に蓄圧式です。では、なぜ加圧式は減っているのでしょうか?
最大の理由は安全性です。
加圧式消火器は使用前に容器内が無圧力――これは一見メリットのように思えますが、実は大きな落とし穴があります。容器が腐食しても、外から気づけないのです。
蓄圧式なら、容器に腐食や穴が生じると内部の圧力が漏れて指示圧力計の針が下がります。「この消火器、圧力が下がっている。おかしいぞ」と日常の目視点検で異常を発見できるわけです。
ところが加圧式は使用前に無圧力なので、容器が腐食していても圧力漏れは起きず、圧力ゲージも付いていません。外見だけでは劣化に気づきにくい。
そして、いざ火災で使おうとレバーを握ると――ガスボンベが破封されて容器内圧力が一気に上昇。腐食して弱くなった容器がその圧力に耐えきれず破裂する危険があります。
実際に、老朽化した加圧式消火器の破裂による事故が過去に複数発生しています。この問題を受けて蓄圧式への移行が加速し、現在では新しく製造される消火器の大半が蓄圧式となっています。
試験のポイント
試験で狙われるポイントまとめ
蓄圧式と加圧式の比較で、試験に出やすいポイントを整理します。
- 指示圧力計が付いているのは蓄圧式(常時加圧だから必要)
- 途中停止が容易なのは蓄圧式(レバーで放射を制御できる)
- 放射圧力が安定しているのは蓄圧式(均一に加圧されている)
- 操作から放射までタイムラグがあるのは加圧式(ボンベ破封の工程がある)
- 加圧用ガス容器(ボンベ)が内蔵されているのは加圧式
- 現在の主流は蓄圧式(安全性と点検のしやすさ)
丸暗記ではなく、「なぜそうなるのか」を仕組みから理解するのが一番の試験対策です。すべての違いは「常時加圧か、使用時だけ加圧か」という根本の違いから論理的に導けます。
まとめ問題
理解度チェックです。記事の内容を思い出しながら解いてみましょう。
【問題1】蓄圧式消火器に指示圧力計(圧力ゲージ)が付いている理由として、最も適切なものはどれか。
(1)消火薬剤の残量を確認するため
(2)容器内の温度を測定するため
(3)常時加圧されている容器内の圧力が正常かどうかを確認するため
(4)加圧用ガス容器(ボンベ)の状態を確認するため
【問題2】加圧式消火器の特徴として、正しいものはどれか。
(1)容器内に常時窒素ガスが充填されている
(2)指示圧力計が付いている
(3)レバーを握ると容器内のガス圧で即座に放射が始まる
(4)内蔵されたガスボンベが破封されてから放射が始まる
【問題3】老朽化した加圧式消火器の使用時に破裂事故が起きることがある。この原因として、最も適切なものはどれか。
(1)加圧式は蓄圧式より消火薬剤の充填量が多く、容器への負担が大きいため
(2)加圧式は使用前に容器内が無圧力のため腐食の進行に気づきにくく、使用時の急激な加圧に容器が耐えられないため
(3)加圧式は容器の肉厚が蓄圧式より薄く設計されているため
(4)加圧式は加圧用ガスの圧力が蓄圧式の容器内圧力より常に高いため
【問題4】ある建物に蓄圧式消火器と加圧式消火器が1本ずつ設置されている。日常の目視点検で容器内部の異常(ガス漏れ・圧力低下)を発見しやすいのはどちらか。その理由として最も適切なものを選べ。
(1)蓄圧式。指示圧力計が付いており、圧力ゲージの針が緑色の正常範囲内にあるかを目視で確認できるため
(2)加圧式。容器内が無圧力のため、異常が発生しにくいため
(3)蓄圧式。容器が透明なので内部の薬剤の状態が見えるため
(4)加圧式。ガスボンベの状態を容器の外から目視で確認できるため