結論から言います
防火管理者とは、建物の火災を防ぐために置かなければならない「火災予防のリーダー」です。
- 誰が選ぶの? → 建物の管理権原者(オーナーや管理会社)が選任する
- どんな建物に必要? → 一定以上の人が出入りする建物すべて(特定:30人以上、非特定:50人以上)
- 何をする人? → 消防計画を作り、避難訓練を実施し、消防設備を点検管理する
- 資格は? → 甲種と乙種の2種類。建物の規模で必要な種類が変わる
「消防設備士」の試験では、この防火管理者制度がよく出ます。ポイントは 「誰が」「どんな建物で」「何をするのか」 の3点です。
では、法律の条文から詳しく見ていきましょう。
消防法第8条 ― 防火管理者の選任義務
条文(消防法第8条第1項)
消防法第8条第1項
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(中略)、複合用途防火対象物その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
現代語訳 ― ざっくり言うと?
この条文、長いですよね。でも言っていることはシンプルです。
かみ砕くと…
「たくさんの人が使う建物のオーナーさん、あなたの建物に火災予防のリーダー(=防火管理者)を1人決めてください。そのリーダーには、次のことをやらせてくださいね。」
- ① 消防計画を作る(火災が起きたらどう動くかの台本)
- ② 避難訓練を定期的にやる
- ③ 消防設備の点検・管理をする
- ④ 火気の監督をする(厨房やボイラーの管理など)
- ⑤ 避難経路や防火設備の維持管理をする
- ⑥ 収容人員の管理をする(定員オーバーさせない)
つまり防火管理者は「消防計画を作って、訓練して、設備を管理して、火の元を見張る」――建物の防火に関するすべてを取り仕切る人ということですね!
防火管理者が必要な建物 ― 収容人員の基準
すべての建物に防火管理者が必要なわけではありません。「収容人員」が一定以上の建物だけに選任義務があります。
| 建物の種類 | 必要な収容人員 | なぜこの人数? |
|---|---|---|
| 特定防火対象物 (飲食店・病院・ホテル等) |
30人以上 | 不特定多数が来るので、少ない人数でも管理が必要 |
| 非特定防火対象物 (学校・オフィス・工場等) |
50人以上 | 利用者が建物を熟知しているため、少し余裕がある |
特定と非特定で基準が違う理由は、特定防火対象物と非特定防火対象物の違いで解説した通り、火災時の危険度が違うからです。初めて来た人ばかりの建物(特定)では、より早い段階から管理体制が必要になるわけですね。
「管理権原者」と「防火管理者」の違い
ここ、試験で引っかかりやすいポイントです。
= 選ぶ側
防火管理者を「選任する義務」がある
最終的な責任を負う人
= 実行する側
消防計画を作り、訓練・点検を行う
管理権原者が兼任してもOK
たとえば、ビルのオーナー(管理権原者)が自分で防火管理者になることもできますし、テナントの店長を防火管理者に選任することもできます。大事なのは「選ぶ義務」があるのは管理権原者だということ。防火管理者を選ばなかったら、罰せられるのは管理権原者です。
甲種と乙種 ― 防火管理者の2つの区分
防火管理者には甲種と乙種の2つの区分があります(消防法施行令第3条)。
| 甲種防火管理者 | 乙種防火管理者 | |
|---|---|---|
| 対象の建物 | 大規模 or 特定用途で 延べ面積300㎡以上 |
それ以外の 比較的小さい建物 |
| 講習時間 | 約10時間(2日間) | 約5時間(1日間) |
| できること | すべての防火対象物で 防火管理者になれる |
小規模な建物のみ |
ポイントは「甲種は全部OK、乙種は小さい建物だけ」ということ。迷ったら甲種を取っておけば間違いありません。
ちなみに、防火管理者になるための資格要件(施行令第3条第1項)は主に以下の通りです:
- 防火管理講習(甲種 or 乙種)の課程を修了した者
- 学識経験等で同等以上の知識があると認められる者(大学で防災を専攻した人など)
実務上は消防署が実施する防火管理講習を受けるのが一般的です。
消防計画とは? ― 防火管理者の最重要業務
防火管理者の仕事の中で一番大事なのが消防計画の作成です。
消防計画に書くこと
- 自衛消防の組織 ― 火災時に誰が何をするか(通報係・初期消火係・避難誘導係…)
- 避難経路・避難方法 ― どこからどう逃げるか
- 消防設備の点検・整備計画 ― いつ・誰が点検するか
- 訓練の計画 ― 避難訓練・消火訓練の日程
- 火気の管理方法 ― 厨房・ボイラー室などの取り扱い
- 収容人員の管理 ― 定員を超えさせない運用
消防計画は作って終わりではなく、所轄の消防署に届け出なければなりません(消防法第8条第2項)。届出をしないと消防法違反になります。
防火管理者の届出 ― 選任・解任の手続き
防火管理者を選任したり、変更(解任)したりしたときは、遅滞なく所轄消防長又は消防署長に届け出る必要があります(消防法第8条第2項)。
「遅滞なく」とは「正当な理由がない限り、すぐに」という意味です。届出が必要なタイミングは:
- 防火管理者を新しく選任したとき
- 防火管理者を変更したとき(退職などで交代する場合)
- 消防計画を作成・変更したとき
なぜ防火管理者制度があるの?
ここが試験でも実務でも大事な部分です。
消防署の職員は、すべての建物を24時間見張ることはできません。日本中にある膨大な数の建物の防火を、消防署だけで管理するのは物理的に不可能です。
だから、「建物のことを一番よく知っている人(管理権原者側)に、自分の建物は自分で守ってもらう」――これが防火管理者制度の本質です。
たとえ話
学校のクラスに「学級委員」がいるのと同じです。先生(=消防署)がすべてのクラスの細かいところまで見きれないから、クラスごとに学級委員(=防火管理者)を決めて、日常の管理を任せる。でも最終責任は先生(=消防署)にある。そんなイメージです。
これを法律用語で言うと「自主防火管理体制の確立」です。消防署が外からチェックする仕組みと、建物内部から管理する仕組みの両方で火災を防ぐのが日本の消防制度の考え方なんですね。
試験で狙われるポイントまとめ
非特定 → 50人以上
甲種 → 300㎡以上
甲種講習 → 2日間
乙種講習 → 1日間
実行する人 → 防火管理者
届出先 → 消防長 or 消防署長
届出 → 遅滞なく
罰則 → 管理権原者が対象
理解度チェック問題
ここまでの内容を問題で確認しましょう!
問1
防火管理者を選任する義務があるのは、次のうち誰か。
- 建物のテナントの従業員
- 所轄消防署の署長
- 管理権原者
- 防火管理講習の講師
問2
防火管理者の業務として、消防法第8条に規定されていないものはどれか。
- 消防計画の作成
- 消火・通報・避難の訓練の実施
- 消防用設備等の設計・施工
- 火気の使用又は取扱いに関する監督
問3
非特定防火対象物であるオフィスビルにおいて、防火管理者の選任が必要となる収容人員の基準は次のうちどれか。
- 10人以上
- 30人以上
- 50人以上
- 100人以上
問4
甲種防火管理者と乙種防火管理者について、正しいものはどれか。
- 甲種防火管理者は特定防火対象物のみ、乙種防火管理者は非特定防火対象物のみ担当できる
- 甲種防火管理者はすべての防火対象物で防火管理者になれるが、乙種防火管理者は小規模な建物のみ担当できる
- 甲種と乙種の違いは講習時間だけであり、担当できる建物に差はない
- 乙種防火管理者の方が上位資格であり、甲種より多くの建物を担当できる
問5(応用)
消防署は火災予防のための立入検査や措置命令を行う権限を持っている。それにもかかわらず、建物ごとに防火管理者を選任させる制度が設けられている理由として、最も適切なものはどれか。
- 消防署の人手不足を補うための臨時的な制度だから
- 消防署だけでは全建物を常時監視できないため、建物内部から日常的に防火管理を行う体制が必要だから
- 防火管理者に消防署と同じ権限を持たせるためだから
- 建物のオーナーに対する罰則を科すための根拠規定だから