甲種3類

ガス系消火設備の製図|系統図・図記号・必要量計算をわかりやすく解説

結論から言います。

甲種3類の製図試験は、「ポンプがない代わりに、貯蔵容器・選択弁・起動装置の配置と消火剤必要量の計算」が中心です。甲1(水系)や甲2(泡)の製図とは大きく異なり、水力計算は不要。代わりに防護区画の体積 × 消火濃度から必要量を求める計算が出題されます。

甲3製図の3つの柱
図記号
ガス系固有の記号
甲1甲2との違い
凡例の書き方
系統図
容器→配管→ヘッドの流れ
選択弁の分岐
安全装置の配置
必要量計算
体積×消火濃度
容器本数の算出
放出時間の確認

甲1・甲2の製図との違い

まず、甲3製図が甲1・甲2と何が違うのかを整理しましょう。ここを理解すれば、甲3製図の特徴がはっきり見えます。

項目 甲1(水系)/ 甲2(泡) 甲3(ガス系)
加圧方式 ポンプで加圧送水 ボンベの圧力で放出
水力計算 必要(摩擦損失・全揚程) 不要
必要量計算 水源水量(流量×時間) 体積×消火濃度
配管口径選定 流量から口径を算出 出題されにくい
固有の機器 ポンプ・アラーム弁 選択弁・起動装置・遅延装置

甲1・甲2では「水力計算」がメインでしたが、甲3ではポンプがないため水力計算は出ません。代わりに消火剤の必要量を体積から計算する問題系統図の読み書きが中心になります。

甲3製図の特徴
甲3の製図は計算量が甲1ほど多くありません。その代わり、系統図に登場する機器の配置と接続関係を正確に描く力が問われます。特に選択弁・起動装置・遅延装置・安全装置が甲1にはない機器なので、これらの位置と役割を理解していることが大前提です。

ガス系消火設備の図記号

甲3で使う図記号を整理します。「水系消火設備の製図の基礎」で学んだ図記号と共通するもの、ガス系固有のものに分けて覚えましょう。

ガス系固有の図記号

機器名 図記号 補足
貯蔵容器 ボンベ形(円筒+半球) 複数本を集合管で接続
選択弁 弁記号にS(Select) 防護区画ごとに設置
起動装置 起動用ガス容器の記号 電気式・ガス圧式
噴射ヘッド ○(開放型) 閉鎖型はないため●は不使用
手動起動装置 押しボタン記号 防護区画の出入口付近
音響警報装置 ベル記号 防護区画内+出入口付近
放出表示灯 ランプ記号 出入口上部に設置
制御盤 □にG(Gas) 受信機と連動

甲1との図記号比較

甲1(水系) 甲3(ガス系)
○にP → ポンプ ボンベ形 → 貯蔵容器
○にA → アラーム弁 弁にS → 選択弁
●(閉鎖型ヘッド) ○(開放型ヘッド)
○にT → 末端試験弁 なし(末端試験弁は不要)
噴射ヘッドは開放型のみ
甲1のスプリンクラーでは「閉鎖型ヘッド(●)」と「開放型ヘッド(○)」の2種類がありましたが、ガス系消火設備の噴射ヘッドはすべて開放型です。感熱体で個別に開くのではなく、選択弁と容器弁が開放されるとすべてのヘッドから一斉に消火剤が放出されます。このため図記号は○(白丸)を使います。

系統図の構成

ガス系消火設備の系統図は、消火剤が貯蔵容器から噴射ヘッドに至るまでの配管経路と機器の接続関係を示す図です。

基本的な流れ

不活性ガス・ハロゲン化物の系統図フロー
1
貯蔵容器(ボンベ群+集合管)
2
容器弁(各ボンベに付属)
3
選択弁(防護区画ごとに分岐)
4
配管(主管→分岐管)
5
噴射ヘッド(防護区画内に配置)

甲1の系統図では「水源→ポンプ→立管→ヘッド」でしたが、甲3では「貯蔵容器→容器弁→選択弁→配管→ヘッド」という流れになります。ポンプの代わりに貯蔵容器アラーム弁の代わりに選択弁と覚えると整理しやすいです。

選択弁と複数防護区画

ガス系消火設備は、1つの容器群で複数の防護区画を守るのが一般的です。どの防護区画に消火剤を送るかを切り替えるのが選択弁です。

選択弁による防護区画の切り替え
貯蔵容器群(共用)
▼ 主管 ▼
選択弁A

防護区画A
(電気室)
選択弁B

防護区画B
(サーバー室)
選択弁C

防護区画C
(通信機器室)

製図試験では、複数の防護区画がある系統図で「どの選択弁がどの区画に対応するか」を正しく読み取る力が問われます。

安全装置の系統

ガス系消火設備には、配管系統とは別に安全装置の制御系統があります。系統図では配管(消火剤の流れ)と制御配線(電気信号の流れ)の両方を描きます。

安全装置 系統図での位置
感知器 防護区画内(自火報と兼用可)
制御盤 常時監視できる場所(管理室等)
遅延装置 制御盤内または制御盤と起動装置の間
音響警報装置 防護区画内+出入口付近
手動起動装置 防護区画の出入口付近
放出表示灯 防護区画の出入口上部
閉止弁 集合管と選択弁の間

ガス系消火設備の点検・整備と試験方法」で学んだ連動シーケンス(感知器→警報→遅延→閉鎖→選択弁→起動)を系統図上で追えるようにしておくことが重要です。

粉末消火設備の系統図の違い

粉末消火設備は、不活性ガス・ハロゲン化物と系統図の構成が少し異なります。

項目 不活性ガス/ハロゲン化物 粉末
貯蔵方式 消火剤を直接加圧貯蔵 粉末+加圧用ガス容器が別
系統図の特徴 ボンベ→選択弁→ヘッド 加圧用ガス→粉末タンク→ヘッド
固有の機器 なし 定圧作動装置・クリーニング装置

粉末消火設備の構造と機能」で学んだ通り、粉末消火設備は加圧用ガス容器で粉末貯蔵タンクを加圧して粉末を送り出します。系統図では「加圧用ガス容器→粉末貯蔵容器→定圧作動装置→選択弁→配管→噴射ヘッド」の流れになり、さらにクリーニング装置が配管の末端側に描かれます。

防護区画の平面図

製図試験では、防護区画の平面図を読み取って、噴射ヘッドの配置を考えたり、必要量を計算したりする問題が出ます。

平面図で確認するポイント

  • 区画の寸法(縦×横×高さ)→ 体積の計算に使う
  • 開口部の位置と面積 → 開口部補正に影響
  • 噴射ヘッドの配置 → 区画全体に均一に放出できるか
  • 出入口の位置 → 手動起動装置・音響警報装置・放出表示灯の設置場所
  • 隣接する区画 → 選択弁の系統が正しいか

噴射ヘッドの配置ルール

噴射ヘッドは、防護区画内に消火剤を均一に放出するために配置します。

  • 全域放出方式 ── 防護区画の天井面に均一に配置。区画全体にガスが行き渡るようにする
  • 局所放出方式 ── 防護対象物の直上に配置。消火剤を集中的に放出する
全域放出と局所放出の配置の違い
全域放出方式では、天井面に等間隔でヘッドを配置し、区画全体を消火剤で満たします。一方、局所放出方式では、対象物の周囲に集中配置し、消火剤をピンポイントで放射します。平面図を読む際は、どちらの方式かを最初に判断しましょう。

消火剤必要量の計算

甲3製図の計算問題は、防護区画に必要な消火剤の量を求める問題が中心です。

全域放出方式の必要量

全域放出方式では、防護区画全体を消火剤で満たすため、区画の体積消火濃度から必要量を計算します。

不活性ガス消火設備(CO₂)の必要量

ガス系消火設備の設置義務と技術基準」で学んだ基準値を使います。

消火対象 消火濃度
表面火災(電気室・通信機器室等) 体積1m³あたり 0.8kg
深部火災(木材・繊維・紙等) 体積1m³あたり 1.6kg
計算例:CO₂消火設備の必要量
条件:電気室(表面火災)、縦10m × 横8m × 高さ3m
STEP1:防護区画の体積を求める
 体積 = 10m × 8m × 3m = 240m³
STEP2:必要量を計算
 必要量 = 240m³ × 0.8kg/m³ = 192kg
STEP3:容器本数を求める
 高圧式CO₂容器1本の充てん量は通常約45kg
 192kg ÷ 45kg = 4.27 → 切り上げて 5本

開口部補正

防護区画に自動閉鎖装置で閉じられない開口部がある場合、そこからガスが漏れるため、追加量が必要です。

開口部補正の考え方
CO₂消火設備の場合、閉じることができない開口部の面積1m²あたり5kgを加算します。

例:上の電気室に0.5m²の閉鎖できない開口部があった場合
補正量 = 0.5m² × 5kg/m² = 2.5kg
合計 = 192kg + 2.5kg = 194.5kg
194.5kg ÷ 45kg = 4.32 → 切り上げて 5本(結果は同じ)

ハロゲン化物消火設備の必要量

ハロゲン化物は消火剤ごとに消火濃度が異なるため、どの消火剤を使うかで計算が変わります。

消火剤 消火濃度(体積%)
HFC-23 約15.6%
HFC-227ea 約7.9%
FK-5-1-12 約5.3%

ハロゲン化物の必要量の計算は、防護区画の体積に消火濃度を乗じて、そこからガスの密度を使って重量に変換する方式です。試験では消火濃度や換算係数が問題文中に与えられることが多いため、与えられた数値を正確に式に代入する力が求められます。

粉末消火設備の必要量

粉末消火設備は、全域放出方式の場合に防護区画の体積1m³あたりの薬剤量が定められています。

粉末の種類 全域放出の必要量
第1種(炭酸水素ナトリウム) 体積1m³あたり 0.60kg
第2種(炭酸水素カリウム) 体積1m³あたり 0.36kg
第3種(りん酸アンモニウム) 体積1m³あたり 0.36kg
第4種(炭酸水素カリウムと尿素の反応生成物) 体積1m³あたり 0.24kg

粉末消火設備は放出時間が30秒以内と短いため、必要量の薬剤をすべて30秒以内に放出できるだけの加圧用ガスが確保されていることも確認します。

局所放出方式の必要量

局所放出方式は、防護区画全体ではなく防護対象物の周囲だけに消火剤を放出します。必要量の計算は全域放出とは異なります。

  • 防護空間(防護対象物を取り囲む最小空間)の体積を算出
  • 防護対象物の各面から0.6m以上離した空間を防護空間とする
  • 防護空間の体積に対して、設備ごとに定められた単位体積あたりの必要量を乗じる
局所放出のポイント
局所放出方式の必要量計算で間違えやすいのは、防護対象物の寸法をそのまま使ってしまうことです。正しくは、防護対象物の各面から0.6m以上の余裕を見た「防護空間」の体積を使います。

例:対象物が 2m × 1m × 1m なら
防護空間 = (2+0.6×2) × (1+0.6×2) × (1+0.6) = 3.2 × 2.2 × 1.6 = 11.26m³
※高さ方向は上面のみ0.6m加算(床面側は不要)

放出時間の確認

消火剤の必要量だけでなく、所定の時間内に放出しなければならないという基準があります。

設備 放出時間
ハロゲン化物 10秒以内
粉末 30秒以内
CO₂(表面火災) 1分以内
CO₂(深部火災) 7分以内
IG系(表面火災) 60秒以内
IG系(深部火災) 210秒以内

製図試験では「必要量が○kgのとき、放出時間の基準を満たすには配管径がどう影響するか」といった形で出題されることもあります。

製図試験で間違えやすいポイント

1. 選択弁を描き忘れる

複数の防護区画がある場合、貯蔵容器から各区画への分岐点に選択弁を必ず描く必要があります。単なる分岐管ではなく、選択弁を経由することで「正しい区画にだけ放出される」ことを示します。

2. 安全装置の配置忘れ

ガス系消火設備は人命に関わる安全装置が多いです。以下を漏らさず描きましょう。

  • 音響警報装置 ── 防護区画内+出入口付近
  • 放出表示灯 ── 出入口上部
  • 手動起動装置 ── 出入口付近
  • 遅延装置 ── 制御盤内or制御盤〜起動装置間
  • 閉止弁 ── 集合管と選択弁の間

3. 開口部補正を忘れる

問題文に「閉鎖できない開口部がある」と書かれていたら、開口部補正の加算を忘れないようにしましょう。体積だけで計算してしまうと不足量になります。

4. 全域と局所の防護空間を間違える

  • 全域放出 → 防護区画の体積(壁・床・天井で囲まれた空間全体)
  • 局所放出 → 防護空間の体積(対象物+0.6mの余裕空間)

「区画」と「空間」を混同すると、計算結果が大きくずれます。

5. 粉末のクリーニング装置を忘れる

粉末消火設備の系統図では、放出後に配管内の残留粉末を除去するためのクリーニング装置を描く必要があります。他のガス系設備にはない固有の機器なので、忘れやすいポイントです。

甲3製図のチェックリスト
系統図:
□ 貯蔵容器群と集合管を描いたか
□ 選択弁を各防護区画への分岐点に描いたか
□ 閉止弁を描いたか
□ 起動装置(電気式/ガス圧式)を描いたか
□ 噴射ヘッドを○で描いたか(●にしていないか)
□ 粉末の場合、加圧用ガス容器・定圧作動装置・クリーニング装置を描いたか

安全装置:
□ 音響警報装置を配置したか
□ 放出表示灯を出入口上部に配置したか
□ 手動起動装置を出入口付近に配置したか
□ 遅延装置を系統に入れたか

計算:
□ 防護区画の体積を正しく求めたか
□ 開口部補正を加えたか
□ 容器本数は切り上げたか
□ 放出時間の基準を確認したか

まとめ

  • 甲3製図は水力計算が不要。代わりに消火剤必要量の計算と系統図の読み書きが中心
  • 系統図の流れ:貯蔵容器→容器弁→選択弁→配管→噴射ヘッド
  • 噴射ヘッドはすべて開放型(○)。閉鎖型(●)は使わない
  • CO₂の必要量:表面火災は0.8kg/m³、深部火災は1.6kg/m³
  • 開口部補正:閉じられない開口部1m²あたり5kg加算(CO₂の場合)
  • 局所放出は防護空間の体積(対象物+0.6m)で計算
  • 粉末消火設備は加圧用ガス容器・定圧作動装置・クリーニング装置を系統図に描く
  • 安全装置(音響警報・放出表示灯・手動起動装置・遅延装置・閉止弁)の配置を忘れない

これで甲種3類のガス系消火設備は全7記事が完了です。次のステップに進む準備が整いました。

理解度チェック問題

【問題1】ガス系消火設備の製図に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)ガス系消火設備の噴射ヘッドは閉鎖型であるため、図記号は●(黒丸)を使用する。
(2)ガス系消火設備の系統図では、ポンプの図記号(○にP)を描く必要がある。
(3)複数の防護区画がある場合、貯蔵容器群から各区画への分岐点に選択弁を描く。
(4)ガス系消火設備には末端試験弁が必要であり、図記号(○にT)を描く。

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正解:(3)
ガス系消火設備で複数の防護区画を1つの容器群で守る場合、どの区画に消火剤を送るかを切り替える選択弁が必要です。系統図では各区画への分岐点に選択弁を描きます。(1)はガス系の噴射ヘッドはすべて「開放型」なので○(白丸)が正しいです。(2)はガス系にはポンプがなく、貯蔵容器の圧力で消火剤を放出するため、ポンプの図記号は不要です。(4)は末端試験弁は水系消火設備(スプリンクラー等)の機器であり、ガス系には不要です。

【問題2】CO₂消火設備(高圧式・全域放出方式)の必要量計算に関する記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)電気室(表面火災)の必要量は、防護区画の体積1m³あたり0.8kgで計算する。
(2)繊維倉庫(深部火災)の必要量は、防護区画の体積1m³あたり1.6kgで計算する。
(3)容器本数は、必要量を1本あたりの充てん量で割り、端数を切り捨てて求める。
(4)閉鎖できない開口部がある場合は、その面積に応じて必要量を加算する。

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正解:(3)
容器本数は端数を「切り上げ」て求めます。切り捨てると消火剤が不足し、消火に必要な濃度が確保できません。例えば計算で4.3本になった場合は5本必要です。(1)(2)はCO₂の全域放出方式の必要量として正しい基準値です。(4)は閉鎖できない開口部からガスが漏れるため、開口部面積に応じた補正量を加える必要があり、正しい記述です。

【問題3】粉末消火設備の系統図に描く必要がある機器のうち、不活性ガス消火設備の系統図には描かないものはどれか。

(1)選択弁
(2)噴射ヘッド
(3)クリーニング装置
(4)音響警報装置

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正解:(3)
クリーニング装置は粉末消火設備に固有の機器です。粉末は放出後に配管内に残留するため、窒素ガスなどで配管内を掃除するクリーニング装置が必要です。不活性ガスやハロゲン化物は気体なので配管内に残留せず、クリーニング装置は不要です。(1)選択弁、(2)噴射ヘッド、(4)音響警報装置は、粉末でも不活性ガスでも共通して描く機器です。

【問題4(応用)】ある建物にCO₂消火設備(高圧式・全域放出方式)を設置する。防護区画は電気室(表面火災)で、寸法は縦12m × 横10m × 高さ3.5mである。閉鎖できない開口部が0.8m²ある。容器1本あたりの充てん量を45kgとしたとき、必要な容器本数として正しいものはどれか。

(1)7本
(2)8本
(3)9本
(4)10本

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正解:(2)
STEP1:防護区画の体積 = 12m × 10m × 3.5m = 420m³
STEP2:基本必要量 = 420m³ × 0.8kg/m³ = 336kg(電気室は表面火災)
STEP3:開口部補正 = 0.8m² × 5kg/m² = 4kg
STEP4:合計必要量 = 336kg + 4kg = 340kg
STEP5:容器本数 = 340kg ÷ 45kg = 7.555… → 切り上げて 8本

7本では315kgしか確保できず、必要量340kgに対して不足します。8本なら360kgとなり基準を満たします。容器本数は必ず切り上げです。また、開口部補正の4kgを加算し忘れると「336kg ÷ 45kg = 7.47 → 8本」で結果は同じですが、条件によっては加算忘れで本数が変わることもあります。開口部補正は忘れずに計算しましょう。

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