受験ガイド

消防設備士とは|仕事内容・年収・甲種と乙種の違い

消防設備士は、消火器、スプリンクラー、自動火災報知設備などについて、免状の種類に応じた工事・整備・点検を行うための国家資格です。

甲種は対象設備の工事・整備・点検、乙種は整備・点検を行えます。ただし、扱える設備は免状に記載された類に限られます。消防士・消防官とは別の資格で、主に民間の消防設備会社や設備管理の現場で活用されます。

この記事の結論

  • 甲種は工事まで、乙種は整備・点検まで行える。
  • 消防用設備等の設置・維持・点検は法令に基づく仕事だが、すべての点検が消防設備士だけの独占業務ではない。
  • 「消防設備士だけ」の公的な平均年収統計はなく、勤務先・職務・経験・地域で差が出る。
  • 関連職種の参考値として、job tagの「ビル施設管理」は令和7年賃金構造基本統計調査ベースで年収452.3万円。
  • 乙種は誰でも受験でき、甲種は受験資格が必要。

消防設備士とは

劇場、デパート、ホテルなどの建物には、用途、規模、収容人員などに応じて消防用設備等の設置が義務付けられています。消防設備士は、その設備の工事、整備、点検を免状の範囲内で行う資格者です。

名称が似ていますが、火災・救急・救助活動を行う消防官とは異なります。消防設備士は、建物に設置された設備を適切な状態に保つ技術職の資格です。

甲種と乙種の業務範囲

免状 工事 整備 点検 受験資格
甲種 できる できる できる 必要
乙種 できない できる できる 不要

ここでいう「できる」は、すべての消防設備を扱えるという意味ではありません。第1類の免状で第4類の自動火災報知設備を扱うことはできず、設備に対応する類の免状が必要です。

工事

設置、新設、増設、移設など、消防法令上の工事に該当する作業です。対象となる工事は甲種消防設備士の業務範囲で、工事の内容によって着工届などの手続きも関係します。

整備

点検で見つかった不具合に対する調整、部品交換、修理などです。作業内容と設備の種類に応じて、該当する甲種または乙種の免状が必要です。

点検

消防用設備等が正常に機能するかを、消防庁の点検基準・点検要領などに従って確認します。外観、表示、作動、機器の機能、設備全体の連動などを確認し、結果を点検票や報告書へ記録します。

消防法は、一定の防火対象物について、消防設備士または消防設備点検資格者に点検させることを定めています。一方、その他の防火対象物では関係者が自ら点検できる場合もあります。そのため「消防用設備等の点検は、すべて消防設備士だけが行える」とする説明は正確ではありません。

消防設備士の類と扱う設備

主な対象設備 甲種・乙種
特類 特殊消防用設備等 甲種のみ
第1類 屋内・屋外消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備など 甲種・乙種
第2類 泡消火設備など 甲種・乙種
第3類 不活性ガス、ハロゲン化物、粉末消火設備など 甲種・乙種
第4類 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、火災通報装置など 甲種・乙種
第5類 金属製避難はしご、救助袋、緩降機 甲種・乙種
第6類 消火器 乙種のみ
第7類 漏電火災警報器 乙種のみ

実際の対象設備には、パッケージ型設備や共同住宅用設備なども含まれます。取得する類は、勤務先で扱う設備や求人票の要件を確認して決めるのが基本です。

具体的な仕事内容

1.点検前の準備

建物の図面、設備一覧、前回の点検票、不具合履歴などを確認し、点検する設備と範囲を整理します。施設の利用者や管理者への案内、音響停止や連動停止の手順確認も重要です。

2.機器・設備の点検

設備に応じた試験器や測定器を使用し、外観、設置状態、表示、作動、警報、連動などを確認します。たとえば自動火災報知設備では、感知器の種類に対応した加熱・加煙試験器等を使い、受信機や地区音響装置までの作動を確認します。

消火器、消火栓、スプリンクラー、避難器具などは、それぞれ別の点検基準と点検要領があります。現場の都合で一律の手順に置き換えるのではなく、設備ごとの基準とメーカーの取扱説明書に従います。

3.不具合の整理と整備

点検中に見つかった表示不良、損傷、作動不良などを記録し、整備が必要かを判断します。軽微な調整から部品交換、機器更新、工事の提案まで、対応範囲は不具合の内容と保有免状によって変わります。

4.点検票・報告書の作成

点検結果を設備別の点検票へ記入し、必要な是正事項を建物関係者へ説明します。消防署等への報告義務を負うのは防火対象物の関係者ですが、実務では点検業者が報告書作成や提出を支援することがあります。

5.工事と施工管理

甲種消防設備士は、対象設備の設置・改修工事に関わります。現地調査、図面確認、機器選定、配線・配管・取付け、試験、届出書類など、担当範囲は会社や役割によって異なります。

主な勤務先と働き方

  • 消防設備の工事・保守会社:点検、整備、改修工事、報告書作成などを担当する。
  • ビルメンテナンス会社:建物設備管理の一部として消防設備の日常確認や法定点検対応を行う。
  • 電気・管・設備工事会社:建築設備工事と合わせて消防設備工事を担当する。
  • メーカー・販売会社:製品、保守、施工支援など、会社の事業内容に応じた業務を行う。

勤務形態は会社と担当現場で変わります。通常勤務だけでなく、施設の営業時間外に合わせた早朝・夜間・休日作業、複数現場への移動、出張、緊急対応が発生する職場もあります。

また、天井付近、高所、機械室、屋外、狭い場所などで作業する場合があります。求人を見るときは「日勤のみ」と決めつけず、勤務時間、当番、休日出勤、振替休日、移動範囲を確認してください。

消防設備士の年収

消防設備士免状を持つ人だけを抽出した公的な平均年収は公表されていません。消防設備士は資格名であり、実際の職業は消防設備の点検・工事、ビル施設管理、電気・設備工事などに分かれるためです。

関連職種の参考として、厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagは「ビル施設管理」について、令和7年賃金構造基本統計調査を加工した全国の賃金(年収)を452.3万円と掲載しています。また、ハローワーク求人統計による令和6年度の求人賃金は月額24.4万円です。

この数字は消防設備士の平均年収ではありません

job tagの統計は、厚生労働省編職業分類の「ビル設備管理員等」に対応する関連職種の値です。消防設備の専門会社、工事会社、ビル管理会社では、仕事内容と賃金体系が異なります。資格取得後の収入を452.3万円と保証する数字ではありません。

年収を見るときの確認項目

確認項目 見る理由
基本給と固定残業代 月給のうち、時間外手当を含む部分を分けて比較するため。
賞与と昇給 年収は月給だけで決まらないため。算定条件と実績を確認する。
資格手当 類ごとか、上限があるか、選任・実務従事が条件かを確認するため。
担当業務 点検中心、工事中心、施工管理、営業兼務などで責任と待遇が変わるため。
夜間・休日・待機 手当だけでなく、生活時間と実労働も比較するため。
移動・出張 運転、現場間移動、宿泊の有無が働き方に影響するため。
資格取得費用 受験料、免状申請、講習、教材費を会社が負担するか確認するため。

収入を考えるときは「免状を取れば一律に年収が上がる」ではなく、勤務先が必要とする類、担当できる業務、実務経験、関連資格、役割の広がりを確認します。

収入につながりやすい経験の積み方

  • 勤務先が扱う設備に合う類を取得する。
  • 点検だけでなく、整備、工事、書類作成の経験を増やす。
  • 複数類を取得し、担当できる設備を広げる。
  • 電気工事士など、実際の業務と組み合わせやすい関連資格を検討する。
  • 現場責任者、工程・安全・品質管理など、会社で評価される役割を確認する。

資格手当の金額や昇給幅は会社ごとに異なります。固定の金額や「全類取得で年収がいくら上がる」といった共通相場はありません。

消防設備士になるには

1.受験する類を決める

扱いたい設備、就職先の募集要件、現在の仕事との関係から類を選びます。消火器なら乙種第6類、自動火災報知設備なら甲種・乙種第4類というように、設備と類が対応しています。

2.甲種の受験資格を確認する

乙種は誰でも受験できます。甲種は、指定学科・履修科目、実務経験、対象資格、既得免状など、公式に定められた受験資格が必要です。甲種特類は、所定の甲種免状を複数持つことが受験条件です。

3.試験に合格する

甲種・乙種とも筆記試験と実技試験があります。実技は実演ではなく、写真、イラスト、図面等による記述式です。甲種特類を除き、筆記は各科目40%以上かつ全体60%以上、実技は60%以上が合格基準です。

4.免状の交付を申請する

試験合格だけで直ちに消防設備士免状が交付されるわけではありません。合格後、試験を受けた都道府県の案内に従って新規免状交付を申請します。

5.取得後も講習を受ける

消防設備士には、工事・整備に関する新しい知識と技能を習得するため、定められた期間ごとに都道府県知事が行う講習を受ける義務があります。

向いている人と確認したい点

向いている人

  • 法令、基準、手順書を確認して正確に作業できる。
  • 点検結果や不具合を記録し、相手へ説明できる。
  • 設備の構造や電気・機械の仕組みを学び続けられる。
  • 複数人での作業、施設担当者との調整が苦にならない。
  • 現場ごとの条件に合わせて安全確認を徹底できる。

応募前に確認したい点

  • 高所、屋外、機械室、狭い場所での作業があるか。
  • 早朝、夜間、休日、待機当番があるか。
  • 車の運転や長距離移動が必要か。
  • 点検、工事、営業、書類作成のうち、どこまで担当するか。
  • 未経験者への同行期間、研修、資格取得支援があるか。

同じ「消防設備士募集」でも仕事内容は大きく異なります。資格名だけで向き不向きを決めず、求人票と面接で具体的な1日の業務を確認してください。

将来性と需要の考え方

消防用設備等は、建物の用途や規模等に応じて設置が義務付けられ、定期的な点検と結果報告も制度化されています。このため、工事、整備、点検に関する業務は、建物の安全管理と結び付いた継続的な仕事です。

ただし、「建物がある限り失業しない」「AIに代替されない」とまでは言えません。建設需要、改修需要、会社の受注、地域、技術変化によって求人や仕事内容は変わります。

消防庁は、従来の点検方法に代替できる技術をまとめたカタログも公開しています。遠隔監視やデジタル記録が広がれば、確認方法や書類作成は変化します。一方で、現地の設備状態の確認、不具合判断、整備、工事、安全管理には、設備と法令を理解する人材が引き続き必要です。

よくある質問

消防設備士と消防士は同じですか

異なります。消防士・消防官は自治体の消防機関で消火、救急、救助、予防業務などを行う公務員です。消防設備士は、消防用設備等の工事・整備・点検に関する資格です。

未経験でも消防設備士になれますか

乙種は受験資格がないため、未経験でも受験できます。就職後に担当できる作業や教育体制は会社ごとに異なるので、未経験者向け研修と同行期間を確認してください。

最初に取るなら何類ですか

一律の正解はありません。就職希望先や現在の勤務先が扱う設備に合わせます。求人票で必要な類が明確なら、それを優先してください。

消防設備士の平均年収はいくらですか

消防設備士だけを抽出した公的平均はありません。関連職種の参考値としてjob tagの「ビル施設管理」は年収452.3万円ですが、消防設備士の平均を示す数字ではありません。応募先の基本給、賞与、固定残業、資格手当、勤務条件を比較してください。

乙種でも点検の仕事はできますか

できます。乙種消防設備士は、免状に記載された類の設備について整備・点検を行えます。工事は甲種の業務範囲です。

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まとめ

  • 消防設備士は、免状の類に応じて消防用設備等の工事・整備・点検を行う資格。
  • 甲種は工事・整備・点検、乙種は整備・点検を行える。
  • 一定の防火対象物の点検は、消防設備士または消防設備点検資格者が行う。
  • 点検、整備、工事だけでなく、準備、記録、報告書作成、施設担当者との調整も仕事に含まれる。
  • 消防設備士だけの公的平均年収はなく、関連職種の統計は参考値として使う。
  • 乙種は誰でも受験でき、甲種は受験資格が必要。
  • 勤務時間、担当業務、移動、資格手当、研修制度は会社ごとに確認する。

参照した公式ページ

法令、試験制度、統計、求人条件は更新されることがあります。受験時は消防試験研究センター、就職時は募集企業の最新情報を確認してください。

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