甲種2類

泡消火設備の点検・整備と試験方法|発泡倍率・還元時間の測定をわかりやすく解説

結論から言います。

泡消火設備の点検で最も重要なのは、泡がちゃんと出るか泡の品質は大丈夫かの2点です。泡が出なければ意味がないし、出ても発泡倍率や還元時間が基準を満たさなければ消火できません。

通常の水系消火設備(ポンプ性能試験・配管耐圧試験など)の点検に加えて、泡消火設備では発泡倍率の測定25%還元時間の測定泡水溶液の濃度確認という泡ならではの試験が必要になります。

泡消火設備の点検 ── 3つの柱
水系共通の点検
ポンプ性能試験
配管耐圧試験
弁類の作動確認
泡の品質試験
発泡倍率の測定
25%還元時間の測定
泡水溶液の濃度確認
薬剤の管理
薬剤の変質確認
貯蔵量の確認
交換時期の判断

点検の種類と周期

泡消火設備の点検は、他の消防用設備等と同じく機器点検総合点検の2種類があります。

種類 周期 内容
機器点検 6ヶ月に1回 外観・機器の作動確認
総合点検 1年に1回 実際に放射して総合的に確認

発泡倍率や還元時間の測定は総合点検で行います。実際に泡を放射して、泡の品質を確認する試験だからです。

外観点検のポイント

機器点検ではまず外観を確認します。泡消火設備で特に注意すべき項目を整理します。

泡消火薬剤タンク

  • 貯蔵量 ── 規定量が貯蔵されているか(液面計やゲージで確認)
  • 変質・沈殿 ── 薬剤が変色・沈殿・分離していないか
  • 腐食・漏れ ── タンク本体や配管接続部に腐食や漏れがないか

混合装置

  • 外観の損傷 ── プレッシャープロポーショナー等の混合装置に損傷や腐食がないか
  • バルブの開閉状態 ── 常時開であるべきバルブが閉まっていないか
  • 圧力計 ── 圧力計の表示が正常範囲か

泡消火薬剤の種類と性質」で学んだとおり、混合装置は水と薬剤を正しい比率で混ぜる重要な機器です。ここに不具合があると、泡の品質が大きく低下します。

フォームヘッド・泡放出口

  • 詰まり・変形 ── ヘッドや放出口に塵埃やゴミが詰まっていないか
  • 腐食 ── 金属部分に腐食が発生していないか
  • 周囲の障害物 ── ヘッドの放射範囲に障害物がないか

一斉開放弁

  • 弁体の状態 ── 弁が固着していないか
  • 手動起動装置 ── 操作部の損傷・表示の確認
  • 感知部 ── 火災感知器との連動が正常か
甲1との共通部分
ポンプ性能試験(締切運転・定格運転・150%運転)、配管耐圧試験、予備電源の試験などは水系消火設備と共通です。詳しくは「水系消火設備の点検と試験」を参照してください。この記事では泡消火設備固有の試験項目に焦点を当てます。

発泡倍率の測定

発泡倍率とは

発泡倍率は、泡水溶液がどれだけ膨らんで泡になるかを示す数値です。「泡消火設備の全体像と消火原理」で学んだとおり、膨張比と同じ概念です。

発泡倍率の公式
発泡倍率 = 泡の体積 ÷ 泡水溶液の体積
例:泡水溶液100mLが泡になって800mLになれば、発泡倍率は8倍

測定方法

発泡倍率の測定は、次の手順で行います。

① 泡を採取する

設備から実際に泡を放射し、一定容積の採取容器(コレクティングシリンダーなど)に泡を集めます。容器の容積は決まっているので、これが「泡の体積」になります。

② 泡の重さを量る

採取した泡の入った容器の重さを量ります。容器の重さ(空の状態)を差し引けば、泡だけの重さがわかります。

③ 泡水溶液の体積を求める

泡の重さ ≒ 泡に含まれる泡水溶液の重さです(泡の中の空気の重さは無視できるほど軽い)。泡水溶液の比重はほぼ1なので、泡の重さ(g)がそのまま泡水溶液の体積(mL)になります。

④ 発泡倍率を計算する

計算例:
容器の容積:1,000 mL
泡を入れた容器の重さ:350 g
空の容器の重さ:200 g
泡の重さ:350 − 200 = 150 g
泡水溶液の体積 ≒ 150 mL
発泡倍率 = 1,000 ÷ 150 ≒ 6.7 倍

判定基準

発泡倍率の判定は、使用している方式と薬剤によって基準値が異なります。

方式 発泡倍率の基準
低発泡(フォームヘッド等) 5倍以上
高発泡(全域・局所放出) 80倍〜1,000倍

低発泡方式で発泡倍率が5倍を下回る場合は、泡消火薬剤の劣化、混合装置の不具合、またはヘッド・ノズルの詰まりが疑われます。

25%還元時間の測定

25%還元時間とは

還元時間は、泡がどれだけ長持ちするかを示す指標です。泡は時間が経つと中の水分が重力で下に落ちて液体に戻ります。この現象を「還元」と呼びます。

「25%」とは、泡に含まれる泡水溶液の25%が液体に戻るまでの時間です。

25%還元時間のイメージ
泡の中の水分の4分の1
液体に戻るまでの時間
長いほど泡が長持ち = 高品質

測定方法

① 泡を採取する

発泡倍率の測定と同じく、設備から放射した泡を容器に採取します。

② 底に溜まる液量を観察する

泡を入れた容器を静置すると、泡の底から水分(泡水溶液)がじわじわと落ちて溜まっていきます。この液量を目盛りで読み取ります。

③ 25%に達するまでの時間を記録する

泡に含まれる泡水溶液の総量の25%が液体に戻った時点の時間を記録します。泡水溶液の総量は、発泡倍率の測定で求めた値を使います。

計算例:
泡に含まれる泡水溶液の量:150 mL
25%に相当する量:150 × 0.25 = 37.5 mL
容器の底に37.5 mLの液が溜まるまでの時間を測定
→ その時間が25%還元時間

なぜ「25%」なのか

100%還元(泡が完全に消える)まで待つと測定に長時間かかりすぎます。25%の時点で測定すれば短時間で泡の耐久性を評価でき、かつ消火性能との相関が高いことが実験で確認されています。

判定の考え方

25%還元時間は薬剤の種類によって大きく異なります。

  • たん白泡 ── 還元時間が最も長い(泡が壊れにくい)
  • 合成界面活性剤泡 ── 還元時間が最も短い(泡が壊れやすい)
  • フッ素たん白泡・水成膜泡 ── 中間

泡消火薬剤の種類と性質」で学んだ各薬剤の特徴と一致しますね。たん白泡は耐熱性・耐油性が高い=還元時間が長い。合成界面活性剤泡は泡が軽くて壊れやすい=還元時間が短い。

25%還元時間が基準値を下回る場合は、薬剤の劣化が疑われます。

泡水溶液の濃度確認

なぜ濃度が重要か

泡消火設備は水と泡消火薬剤を正しい混合比率で混ぜて初めて機能します。「泡消火薬剤の種類と性質」で解説した混合装置(プレッシャープロポーショナー等)が正確に動作しているかを確認する試験です。

  • 混合比率が低すぎる(薬剤が薄い) → 泡の品質が低下し、消火能力不足
  • 混合比率が高すぎる(薬剤が濃い) → 薬剤の無駄遣い+発泡に悪影響が出る場合もある

測定方法

泡水溶液の濃度は、屈折率計(リフラクトメーター)を使って測定します。

① サンプルを採取する

設備から放射された泡水溶液(泡になる前の液体)をサンプリングします。

② 屈折率を測定する

屈折率計にサンプルを数滴垂らし、光の屈折率を読み取ります。

③ 換算表で濃度を求める

泡消火薬剤のメーカーが提供する換算表(屈折率 → 濃度の対応表)を使って、測定した屈折率から実際の混合比率を算出します。

④ 規定値と比較する

その薬剤の規定混合比率(3%、6%など)に対して、実測値が許容範囲内かを確認します。

混合比率のズレは消火力に直結する
たとえば3%混合の薬剤が実際には1.5%しか混合されていなければ、泡の品質は大幅に低下します。発泡倍率は下がり、還元時間は短くなり、消火能力は激減します。混合装置の点検は泡消火設備の点検において最も重要な項目のひとつです。

放射試験(総合点検)

総合点検では、実際に設備を作動させて泡を放射する放射試験を行います。

試験で確認する項目

  • 放射量 ── 規定の放射量(フォームヘッド方式なら6.5 L/min・㎡以上)が確保されているか
  • 放射圧力 ── ヘッドやノズルでの圧力が適正か
  • 発泡状態 ── 泡が正常に発泡しているか(均一に発泡しているか、泡切れがないか)
  • 放射範囲 ── 防護区域全体をカバーできているか
  • 発泡倍率・25%還元時間 ── 放射した泡を採取して測定

一斉開放弁の作動試験

フォームヘッド方式の泡消火設備では、一斉開放弁が正常に動作するかの試験も重要です。

  • 手動起動 ── 手動起動装置を操作して弁が開放するか
  • 自動起動 ── 火災感知器の作動信号で弁が開放するか
  • 復旧 ── 弁を閉止して正常に復旧するか

流水検知装置と一斉開放弁」で学んだとおり、一斉開放弁は泡消火設備の「起動スイッチ」です。この弁が開かなければ泡は1滴も出ません。

泡消火薬剤の管理

泡消火薬剤は時間の経過とともに劣化します。劣化した薬剤では正常な発泡ができず、消火能力が低下します。

劣化のサイン

確認項目 異常の兆候
変色している(通常とは明らかに異なる色)
臭い 異臭がする(特にたん白泡は腐敗臭が出やすい)
沈殿・分離 底に沈殿物がある、液が分離している
発泡試験 発泡倍率や還元時間が基準値を下回る

たん白泡の劣化に注意

たん白泡は動物性たん白質を原料としているため、他の薬剤に比べて劣化しやすい特徴があります。特に高温環境での保管は劣化を早めます。腐敗臭がする場合は薬剤の交換が必要です。

一方、合成界面活性剤泡や水成膜泡は化学合成品のため、たん白泡より保存性は良好です。ただし、いずれの薬剤も長期保管すれば劣化は進むため、定期的な品質確認は不可欠です。

点検結果のフローチャート

泡消火設備の点検で異常が見つかった場合の対応を整理します。

異常発見時の対応フロー
発泡倍率が低い
→ 混合装置の点検 → 薬剤の品質確認 → ヘッドの清掃 → 改善しなければ薬剤交換
還元時間が短い
→ 薬剤の劣化を疑う → サンプルを採取して品質試験 → 基準不適合なら薬剤交換
混合濃度がずれている
→ 混合装置の調整・修理 → 再測定して規定値を確認 → プロポーショナーの交換も検討
泡が出ない・出が悪い
→ ポンプの確認 → 配管の詰まり確認 → 弁の開閉確認 → ヘッド・ノズルの清掃

甲1の水系点検との違い ── まとめ

泡消火設備の点検は、甲1の水系消火設備の点検をベースにして、泡固有の試験が追加される形です。

点検項目 水系共通 泡固有
ポンプ性能試験
配管耐圧試験
予備電源試験
発泡倍率の測定
25%還元時間の測定
泡水溶液の濃度確認
薬剤の品質管理
一斉開放弁の作動試験

試験で覚えるべき泡固有の点検は、発泡倍率・25%還元時間・濃度確認・薬剤管理の4つです。これらはすべて「泡の品質」に関わる項目で、水系消火設備にはない泡消火設備ならではの点検項目です。

まとめ問題

【問題1】泡消火設備の点検で、発泡倍率を測定する手順として正しいものはどれか。

(1)泡の温度を測定し、温度から発泡倍率を換算する
(2)一定容積の容器に泡を採取し、泡の重さから泡水溶液の体積を求めて計算する
(3)泡を放射した時間と放射量から発泡倍率を計算する
(4)屈折率計で泡の密度を測定して発泡倍率を求める

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正解:(2)
発泡倍率は「泡の体積 ÷ 泡水溶液の体積」で求めます。一定容積の容器に泡を採取し(容器の容積=泡の体積)、泡の重さを量って泡水溶液の体積を算出します。泡の中の空気の重さは無視できるため、泡の重さ ≒ 泡水溶液の重さとなります。(1)は温度とは無関係。(3)は放射量の確認であり発泡倍率ではありません。(4)の屈折率計は泡水溶液の濃度測定に使うものです。

【問題2】25%還元時間について、正しいものはどれか。

(1)泡が完全に消えるまでの時間の25%にあたる時間である
(2)泡に含まれる泡水溶液の25%が液体に戻るまでの時間である
(3)泡の体積が元の25%に減少するまでの時間である
(4)発泡から25分経過した時点での泡の残量を測定する試験である

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正解:(2)
25%還元時間は、泡に含まれる泡水溶液の25%が液体に戻るまでの時間です。泡は時間が経つと中の水分が重力で下に落ちて液体に戻ります(還元)。この値が長いほど泡が長持ちする=消火性能が高いことを意味します。(1)は定義が違います。(3)は体積ではなく液量の基準です。(4)の「25分」は無関係で、25は「25%」の数字です。

【問題3】泡消火薬剤のうち、保管中に最も劣化しやすいのはどれか。また、その理由として正しいものはどれか。

(1)合成界面活性剤泡 ── 化学物質が空気と反応して分解しやすいから
(2)水成膜泡 ── フッ素系化合物が光で分解するから
(3)たん白泡 ── 動物性たん白質を原料としているため腐敗・変質しやすいから
(4)フッ素たん白泡 ── フッ素と たん白質が反応して変質するから

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正解:(3)
たん白泡は動物性たん白質(牛や馬のひづめ等の加水分解物)を原料としているため、他の化学合成品に比べて腐敗・変質しやすいのが特徴です。特に高温環境では劣化が早まり、腐敗臭が発生することもあります。合成界面活性剤泡や水成膜泡は化学合成品のため、相対的に保存性は良好です。

【問題4】泡消火設備の総合点検で発泡倍率が基準値を下回った場合、原因として考えにくいものはどれか。

(1)泡消火薬剤が劣化している
(2)混合装置の混合比率がずれている
(3)フォームヘッドに塵埃が詰まっている
(4)加圧送水装置の非常電源の容量が不足している

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正解:(4)
発泡倍率が低い原因は、主に薬剤の劣化(1)、混合比率のズレ(2)、ヘッドの詰まり(3)の3つです。非常電源の容量不足(4)はポンプの運転時間に影響しますが、泡が正常に放射されている状態での発泡倍率には直接関係しません。非常電源は「泡が出続けるか」に関わる問題であり、「泡の品質」に関わる問題ではありません。

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