泡消火設備の点検は、6月ごとの機器点検と1年ごとの総合点検に分かれます。ただし、総合点検だからといって、すべての固定式設備で毎年必ず泡を放射するわけではありません。
この記事では、2026年3月6日改正後の消防庁「消防用設備等の点検要領」を基に、泡消火薬剤、混合装置、泡放出口、一斉開放弁、発泡倍率、混合率の確認方法を整理します。
- 機器点検は6月、総合点検は1年の期間ごと
- 固定式の低発泡で泡放射を伴う確認には、設置年数・薬剤交換後の年数などの条件がある
- 定期点検の判定は、設計図書や設備ごとの基準に照らす。一律に「5倍以上」だけで判定しない
機器点検と総合点検の違い
| 区分 | 期間 | 主な確認 |
|---|---|---|
| 機器点検 | 6月 | 外観、配置、損傷、表示、簡易な操作などで機器の状態を確認 |
| 総合点検 | 1年 | 設備の全部または一部を作動させ、総合的な機能を確認 |
「6月」「1年」は、消防庁告示に定められた点検の期間です。点検結果を消防機関へ報告する周期は、防火対象物の用途などによって別に定められているため、点検周期と報告周期を混同しないようにします。
機器点検で確認する項目
泡消火設備には、水源・加圧送水装置・配管などの水系設備と共通する部分に加え、泡消火薬剤と混合装置、泡放出口などの固有部分があります。
泡消火薬剤貯蔵槽と消火薬剤
- 貯蔵槽:変形、損傷、漏液、漏気、著しい腐食がないか
- 消火薬剤:変色、腐敗、沈殿物、汚れがなく、規定量以上あるか
- 圧力計・バルブ類:指示、作動、開閉位置、漏れなどが適正か
点検要領では、貯蔵槽の排液口から薬剤をビーカーやメスシリンダーなどへ採取して確認します。上・中・下の位置から採取することが望ましいとされています。見た目だけで薬剤交換を決めるのではなく、異常があれば製品資料や必要な性能検査と合わせて判断します。
泡消火薬剤混合装置と加圧送液装置
混合装置は、外形の損傷、漏水、漏液を確認します。調整機構があるものは、設定が設置時と同じか、配管部分の制限事項や能力が維持されているかを設計図書で確認します。
混合方式や製造業者によって機能が異なります。点検要領も、機構を熟知しないまま調整機構の調整・整備を行わないよう注意しています。
泡放出口と放射障害
- 泡ヘッドや泡放出口に変形、損傷、著しい腐食、詰まりがないか
- 泡ヘッドの周囲に泡の分布を妨げるものがないか
- 高発泡用泡放出口の周囲に泡の流動を妨げるものがないか
- 泡ヘッドが必要な部分に設けられ、未警戒部分が生じていないか
一斉開放弁
外形は、漏れ、変形、損傷、著しい腐食、電磁弁端子の緩みなどを確認します。機能確認は設置後15年を経過したものが対象です。
設置後20年未満のものは、15年を経過した日から5年以内に確認します。設置後20年を経過したものは、直近に正常を確認した日から5年以内が次の確認期限です。同じ期間内に総合点検で機能を確認した場合は、その日に実施したものと扱われます。
移動式のホースと格納箱
格納箱の扉、表示、ホース・ノズル、接続口、開閉弁、表示灯を確認します。ホースは、製造年の末日から10年を経過した後の点検では耐圧性能も対象です。ただし、耐圧性能の点検から3年を経過していない場合は除かれます。
総合点検は固定式・移動式で異なる
固定式の泡消火設備
原則として非常電源に切り替え、手動式起動操作部または自動式起動装置を作動させ、加圧送水装置、表示・警報、電動機の運転電流、運転状況などを確認します。
固定式の低発泡では、設置後または消火薬剤交換後15年を経過したものが分布等の放射確認の対象です。たん白泡消火薬剤を用いるものは5年です。
- 全放射区画数の20%以上の区画で、水により分布と放射圧力を確認
- 確認した区画のうち、加圧送水装置から最遠の区画で泡を放射
- 混合率と発泡倍率が適正か確認
消防庁の別添2に定める「消火薬剤の機能を維持するための措置」が講じられている場合には、実際の泡放射によらない確認方法を採れる例外があります。したがって、「固定式は総合点検のたびに必ず全区画で泡を放射する」という説明は正しくありません。
高発泡を用いる固定式では、水による放射で放射圧力を確認します。設備の方式を分けず、低発泡の測定手順をすべての高発泡設備へそのまま当てはめないようにします。
移動式の泡消火設備
移動式は、非常電源へ切り替えた状態で遠隔起動操作部を操作し、任意の泡消火設備から放射します。加圧送水装置、表示・警報、運転状況に加え、発泡倍率・放射圧力・混合率などが設計図書に基づく範囲内かを確認します。
発泡倍率の測定方法
発泡倍率は、空気を混入する前の泡水溶液量に対する、最終的な泡の容量の比です。消防庁の点検要領には、薬剤と発泡方式に応じた2つの測定方法があります。
| 測定方法 | 主な容器 | 発泡倍率 |
|---|---|---|
| その1 | 1,400mL泡試料コンテナ | 1,400mL ÷ 泡試料の正味重量(g) |
| その2 | 1,000mL目盛付シリンダー | 1,000mL ÷ 泡試料の正味重量(g) |
いずれも、泡試料コレクターで泡を2個の容器へ採取し、余分な泡や容器外側の泡を取り除いてから正味重量を量ります。計算では、泡水溶液1gを1mLとして換算します。
空の容器:200g
泡を満たした容器:350g
泡試料の正味重量:350-200=150g
発泡倍率:1,000÷150=約6.7倍
薬剤や方法によって使用する容器が違うため、すべてを「1,000mL容器で測る」と固定しないことが重要です。
25%還元時間の測定方法
25%還元時間は、採取した泡に含まれる泡水溶液の25%が、液体として排液または還元するまでの時間です。泡が完全に消えるまでの時間ではありません。
- 発泡倍率を測定した泡試料の正味重量を求める
- 正味重量を4で割り、25%に当たる液量を求める
- 容器から排液・還元した液量を時間ごとに記録する
- 25%の液量に達する時刻を求める
たとえば正味重量が200gなら、25%容量は50mLです。2分時点で40mL、3分時点で60mLなら、消防庁の例では比例計算により25%還元時間は2.5分となります。
25%還元時間は、泡の水保持能力や流動性を見る指標です。ただし、薬剤名だけで「必ず最も長い」「必ず最も短い」と順位を固定するのではなく、適用される規格、設計図書、製品の性能値に照らして判断します。
混合率は屈折率計だけで測るとは限らない
点検要領では、発泡倍率測定で採取した水溶液を用い、糖度計法・比色計法・電気抵抗法のいずれかで混合率(希釈容量濃度)を測定します。
糖度計は屈折を利用する測定器ですが、測定値をそのまま濃度と決めつけるのではなく、薬剤に対応する検量線や製品資料により換算します。判定は設計図書に基づく範囲内かどうかで行います。
定期点検と設置時の試験基準を混同しない
消防庁の設置工事完了時の試験基準では、低発泡の発泡倍率は5倍以上、25%還元時間は、たん白泡・水成膜泡で60秒以上、合成界面活性剤泡で30秒以上とされています。また、3%型の希釈容量濃度は3~4%、6%型は6~8%です。
これらは設置時の試験基準です。一方、定期点検の点検要領は、発泡倍率・放射圧力・混合率などを設計図書に基づく範囲内で判定します。設置時試験の数値だけを、すべての既設設備の点検判定へ一律に当てはめないようにします。
異常があったときの考え方
| 異常 | 確認する資料・箇所 |
|---|---|
| 混合率が範囲外 | 設計図書、薬剤に対応する検量線、混合装置の設定、配管・バルブ |
| 発泡倍率が範囲外 | 混合率、泡放出口の詰まり、放射圧力、薬剤の性能 |
| 薬剤に変色・腐敗・沈殿 | 製品資料、採取試料の性能検査、貯蔵槽の状態 |
| 一斉開放弁が作動しない | 弁本体、電磁弁、端子、起動回路、止水弁・排水弁の状態 |
原因を一つに決めつけて薬剤や機器を交換するのではなく、設計図書と製造業者の資料に沿って切り分けます。実設備の操作・分解・調整は、設備の構造を理解した有資格者等が安全を確保して行う作業です。
確認問題
問題1
泡消火設備の法定点検期間の組合せとして正しいものはどれですか。
(1)機器点検1年・総合点検3年 (2)機器点検6月・総合点検1年 (3)機器点検3月・総合点検6月
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正解:(2)
泡消火設備は、機器点検を6月、総合点検を1年の期間ごとに行います。
問題2
固定式の低発泡で、泡放射を伴う分布等の確認対象となる年数の説明として正しいものはどれですか。
(1)すべて毎年 (2)設置後または薬剤交換後15年、たん白泡は5年を経過したもの (3)設置後30年を経過したものだけ
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正解:(2)
さらに、消火薬剤の機能を維持するための措置が講じられている場合の例外もあります。
問題3
1,000mL目盛付シリンダーを使い、泡試料の正味重量が200gだった場合の発泡倍率はいくつですか。
(1)2倍 (2)5倍 (3)20倍
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正解:(2)
1,000÷200=5倍です。空容器の重量を差し引いた正味重量を使います。
問題4
点検要領に示される混合率の測定方法に含まれないものはどれですか。
(1)糖度計法 (2)比色計法 (3)電気抵抗法 (4)泡の色だけによる推定
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正解:(4)
点検要領は、糖度計法、比色計法または電気抵抗法を示しています。
公式資料
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